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2008年11月

2008年11月30日 (日)

今日のぐり「餐休 泉田本店」

久しぶりに会ったリアル知人から「いつもぐり見てるよ~」と言われて驚きまくっている管理人です。
隠れてひっそりやってるつもりだったのに、いったい誰なんだよバラしたのは…
まあしかし、本業であるぐり研究活動を評価してくださっているというのはありがたい話だと思いますね。

それはともかくとして、おかげさまで当「ぐり研ブログ」もしぶとく未だに連日無休の更新を続けさせていただいております。
駄文を読みに来てくださっている大勢の皆様方の御支援のお陰をもちまして、今月は何と11/4「阪南市立病院問題の奇妙な経過」の記事がブログプロバイダーのカテゴリ別月間ランキング一位を獲得したそうで、これにもびっくりして思わず魚拓取ってしまいましたよホント。
しかしまあ、こうして見るとどうも若干、カテゴリの趣旨からずれているような気もしないではない、ような…?

今日のぐり「餐休 泉田本店」
こちら岡山県南部にチェーン展開する老舗ラーメン屋の本店なのですが、向かいは同じく老舗の「浅月」支店と、なかなかに興味深い立地ではないでしょうか。
ここはベーシックな醤油スープの支那そばと、胡麻ペーストが味のベースになった名物そばがあり、一般的には名物そばの方が人気で昔からの熱心なファンがいるようなのですね。
その名物そばをここで以前に食べた折には、うまいことはうまいけれども少し古い方向性のうまさと言いますか、「スープがうまい店」を売り文句とするラーメン屋としてはどうよ?とややピンと来なかったところがあって、今回は支那そばの方を注文しました。
ところで全然関係ないですが、この近辺って「さんきゅう」と読ませる店がやたらあちこちに点在してないですか?地域の伝統?う~む…

カウンターで見ていると店長なのでしょうか?親父さんの麺茹での仕事ぶりはなかなか堂に入ったもので「本店は一味違う」と言われているらしいのも納得という感じです。
出てきたのは見た目ごくありきたりと言いますか、良くあるあっさり醤油ラーメン風という感じでしょうか。
ここまでなのは珍しいほど熱々のスープは新鮮な驚きはないもののちゃんと丁寧な仕事がされたと思わされるもので、後に残る魚風味の引きの強さも好みに合うもの。
個人的好みからするとやや醤油ダレの味が強めなんですが、たっぷりめに乗せられたネギと一緒に口に運ぶと味のバランスは決して悪くありません(ちなみに後日情報では醤油ダレは希望で調節してくれるそうです)。
老舗にしてはデフォルトでもかなり堅めに茹で上げられた麺も格別特記するほどではないにせよ、スープにもよく合って地味にうまいといったところ。
いかにも老舗の味という感じのチャーシューにメンマも決して今風ではないんですが、スープと同じレベルのしっかりした仕事ぶりは十分に感じさせてくれます。

全体のまとまり、バランスというところも込みで評価しても悪くない、と同時に、今の時代としては決して傑出したうまさを誇るラーメンと言うわけでもないと言うところでしょうか。
このラーメン、登場した当時はほんとにすごい衝撃を与えるくらいのうまさだったんだと思うんですよね。
今の時代に新規に始めるまじめなラーメン屋の水準はかなり上がってきていますから、ぱっと入って何気なく食べたところでは普通に丁寧に仕事をしている普通のラーメン屋という味になってしまっているのかも知れませんが、時を経ても通用する老舗の伝統の味というものはきちんと評価されるべきかなと思いますね。
ところでこの本店の味は支店よりもうまいとマニアに根強い人気なんだそうですが、ラーメンチェーン店として考えた場合にそういう味のばらつきというのは必ずしもいいことじゃないと思うんですがどうでしょうか?

ちなみに至ってシンプルと言ってもいいこのラーメンに対して\680という微妙な値付けをどう評価するかですが、決して高くはないと思います。
同じ老舗でもたとえば百万両のように安いことも一つの売りになってきた店もあれば、やまとのように昔から高いねと言われてきた店もあるわけです。
昨今の外食産業はどこも原価率が上がって大変だと聞きますが、店側が手間もコストもかけて真面目に仕事をして、顧客がそれを正当に評価して支持するという良い関係こそが真っ当な商売の基本じゃないかと思いますね。

なお、以前に来た時たまたま休憩時間に入りかけていたのか、客の前で見せるにはいささかどうよ?と思うようなちょっと気の抜けすぎた店員の態度が垣間見えていたことがあったのですが、今回に関しては接客面で注文を付けるような場面は皆無であったことも併記しておきます。
何の商売であれ従業員のモラール(士気)が高い職場ってのは外から見えない内部もマトモなんだろうなあと思えてしまうのは、日々の生活に疲れているってことなんでしょうか(苦笑)。

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2008年11月29日 (土)

救うべきか、救わざるべきか ~ 全国に広がる公立病院の病根(2)

昨日から公立病院ネタをやっていますが、今日ももうちょっと続けます。
一昔前は公立病院と言えば医局命令で嫌々ながら逝かされる場所も多かったわけですが、医局の権威・権力というものがなくなってしまうと医師を確保できるかどうかは各々の病院の吸引力、魅力といったもの次第になってきました。
もちろん公立病院でも魅力的なインセンティブを提供すれば勝ち組と転じる可能性は十分あり得るのですが、給料が安い、労働はきつい、仕事はしにくいetc.と条件が悪い上に自ら医師の招致を試みることなく医局派遣に頼っていた多くの公立病院が今や崩壊の瀬戸際に立たされているわけです。

医師退職、4年間で計140人 県立病院 /岩手(2008年11月20日岩手日報)

 県立病院に勤務する医師(常勤医)の退職に歯止めがかからない。2007年度は、前年度に比べて9人多い37人(定年退職、大学の医局人事を除く)が退職。データがある04年度以降、4年間の退職者数は140人に上る。過酷な勤務体系で心身ともに疲弊している現状が背景にあるとみられ、県立病院機能の維持が困難になっている。

 県立病院に勤務する常勤医は614人(07年度末)。臨床研修医は増加する一方、開業や民間病院への転職を理由に退職する医師が後を絶たない。
 04年度の退職者数は38人、05年度37人、06年度28人、07年度37人。

 県医療局の調査(1-2月)によると、県立病院に勤務する医師390人の平均超過勤務時間は月54時間24分で、このうち100時間以上は12・3%を占める。

公立病院のほとんどが赤字経営を続ける現在、地方の自治体病院は財政的にも「お荷物」になっている場合も多いのですが、問題は特に僻地自治体病院などはハコモノ需要や地域の雇用を維持・確保する公共事業的側面も有していることです。
こうした病院のスタッフの地元出身比率を見ると事務系職員・准看護師>看護師>医師と専門性が下がるほど地元出身者が多いという傾向が見て取れる場合が多いのですが、以前にも書きました私立病院に対して奇妙に優遇されている公立病院スタッフの職種も全く同じ順となっていることに留意ください。
昨日も紹介しました佐賀県立病院などもそうですが、地方公立病院で時々行われる独法化反対や廃院反対といったデモを主導しているのがこうした地元出身の専門的技能の乏しい割に高い給与を得ている(=他に行き場のない)長期雇用スタッフであって、地元と縁が薄く民間施設などに移った方がより報われる医師ら「余所者」専門職スタッフとの間の温度差は顕著です。
非効率的な運営で多額の赤字を生み続ける地方公立病院に対しては医師集約化を掲げる政府ならずとも整理・削減を検討すべきではと考える人間は多いと思いますが、その際には「おらが町の病院」に固執する地域住民と並んでこうした永年勤続スタッフの問題が立ちはだかっているわけです。
こうした人間模様にも注意しながら、各地の公立病院整理の現況を眺めてみましょう。

北の医療 公立病院はいま/不良債務の累積 /北海道(2008年11月26日朝日新聞)

■重なる悪材料 収支直撃

 医師不足、患者の減少、病床の縮小、診療報酬の引き下げ、病院改修費の重荷、自治体からの繰入金の減少……。公立病院の経営悪化には様々な理由がある。
 その多くの要素を抱えてしまったのが、赤平市の市立赤平総合病院だ。

 短期的な資金不足を意味する不良債務の累積額は、07年度末で27億6805万円。92年度末に4515万円の債務を抱えて以来、ほぼ毎年膨らんできた=表。うち急増した時期は2回。1回目は93~95年度、2回目は02~07年度だった。

 1回目は病院改修の時期。総費用は約45億円で、「当時は診療報酬が右肩上がり。無謀な計画ではなかった」(斉藤幸英事務長)と言うが、年平均2億5千万円を30年間償還する内容は打撃を与えた。

 2回目は、厳しい事態が立て続けに生じた。

 まず、市からの繰入金の急減だ。95~01年度は、国が病院会計の健全化を目的に、同市の繰入金の一部を肩代わりした。この間の繰入金は約6・2億~7・9億円だったが、国の措置が終わった02年度は約3・8億円。さらに市財政の悪化を受け、05~06年度は約2・6億円になった。

 現行の臨床研修制度が始まった04年度からは医師が減り続ける。派遣元の大学病院に引き揚げたり、民間病院に移ったりした。常勤医は03年度末で18人いたが、04年度以降、毎年2~3人が辞め、現在は7人。05年9月に麻酔科、今年4月に産婦人科と皮膚科が休止に追い込まれた。麻酔科休止で05年度に432件だった手術数は減り、07年度は176件だった。
 看護師も減った。03年度末は132人いたが、市の財政悪化で早期退職制度が導入されると、06~07年度に大量退職があり、いまは82人。

 医師・看護師の流出は、病床の削減に直結した。人員不足で十分な態勢を取れなくなり、191あった一般病床は、07年7月に31床、今年5月に40床が廃止され、120床になった。また、医師減少によるペナルティーも受けた。医療法は前年度の患者数に対して必要な医師数を定めており、この数の70%に満たないと診療報酬が減らされる。06年9月に医師が1人辞め、翌月から半年間で900万円の収入減となった。
 これらの影響で、06年度の医療行為に伴う収益は、3年前に比べて7億円少ない約23億円だった。
 経費削減策としては、職員給与は今年4月から26~30%カット。清掃や運転業務の委託も廃止し、斉藤事務長らも救急車を運転する。

 最近、久々の朗報を得た。病院を取り上げたテレビ番組を見た関西の医師が、条件が合えば年明けから常勤医となると伝えてきた。麻酔科医の資格も持つ整形外科医で、診察面でも手術面でも増収が期待できる。
 「今している努力を以前からしていれば、という反省はある。今後は不良債務を出さないようにしていくしかない」。斉藤事務長は語る。

大阪府松原市、市立松原病院を来春に閉院へ(2008年11月28日朝日新聞)

 大阪府松原市は、来年3月末に市立松原病院(桑田博文院長、162床)を閉院する方針を決めた。医師不足や患者の減少により、07年度末の累積赤字は40億円近い。財政難で老朽施設の建て替えもできず、再建は難しいと判断した。
 総務省は全国の自治体に今年度中に公立病院の改革プランを策定し、経営を改善するよう求めているが、財政難の自治体が医師不足による病院経営の悪化を食い止めるのは容易でなく、閉院や機能の縮小が各地で進む恐れがある。

 同病院は大学病院の医師派遣の減少や激務による退職などで01年度に12診療科に38人いた常勤医が27人に減り、900人以上いた1日の外来患者も500人近くになった。24時間救急については、04年に内科、07年に小児科をやめ、病床も07年に221床から162床に減らすなどスリム化を図ったが、病床利用率は逆に70%を割り、「医師不足と患者減少の悪循環を断ち切れなかった」(長谷川修一事務局長)。
 老朽化した本館と北館など4病棟の建て替えも、約100億円かかる見込みで、財政上難しい。こうした現状から、同市は経営立て直しは現実的でないと判断した。

 中野孝則市長は「不採算でも必要な医療の確保に努めてきたが、これ以上の経営改善は難しい」と話す。12月議会に病院廃止を諮り、近隣病院と病床の割り振りなどについて調整するという。

計画への理解求める 岩手県立病院無床化で知事(2008年11月26日河北新報社)

 岩手県医療局が計画している6カ所の県立病院・地域診療センターの無床化について、達増拓也知事は25日、盛岡市内であった市議会議長会との懇談会で、「思い切ったことをしないと、岩手全体の医療体制が崩壊してしまう」と医療局の方針を後押しし、関係市町村に理解を求めた。

 達増知事は地域の拠点病院も医師不足に陥っている現状に触れ、「(診療センターを)応援する医師が過剰負担に耐えられなくなり、退職すれば岩手の病院がダウンしてしまう」と体制見直しの必要性を訴えた。

 2004年の病院再編計画で、県が診療センターの無床化を打ち出しながら、最終的に有床にしたことにも「衆院議員だった当時は(無床化を懸念し)、過疎切り捨てはまずいとの意識を持っていた」と言及。知事就任後の県立病院勤務医との意見交換で現場の窮状を訴えられ、無床化が医師確保に欠かせないとの見方を示した。

 達増知事は医師確保について「地域経済対策と並んで岩手が直面する最大の課題。医師不足への対応が県政課題の半分を占めると言ってもいい」とも述べ、解決に全力を注ぐ決意を見せた。
 議長側からは「県立病院を取り巻く環境の厳しさは承知しているが、県民が安心して暮らせるように地域の実情を考慮してほしい」と無床化に反対する声が上がった。

病床数あたりの建設費、非専門職スタッフを中心とする相対的な高給と低い労働生産性など、同じ医療を行っても公立病院では民間病院に比べて黒字化が困難な効率の低さが構造的に存在していますが、問題はこれをどうするかと言うことですね。
厚労省の方針としては医療の質を担保する意味でも現状で既に不足している医療資源はなるべく集約化したい、特に不足が深刻化している産科、小児科に関しては以前から自治体宛に直接要請するなどかなり積極的に動いているのですが、この結果として地方の中小病院は縮小、廃止に追い込まれることになります。
一方で面白いと思うのは、総務省が中心になって僻地公立病院に対する支援措置を検討しているのですが、どうも最近の方向性としてもっと地方の中小病院への支援を手厚くしていこうじゃないかと言うことになってきているようなのですね。
正直厚労省としては効率の悪い中小病院にはさっさと潰れて欲しいというのがホンネなのだと思うのですが、このあたり今後各省庁間でどういうことになっていくのか要注目だと思います。

小児・産科医師の集約化へ補助金 患者拠出の病院支援(2006年08月25日朝日新聞)

 小児科や産科の医師不足対策で、厚生労働省は来年度、特定の中核病院に医師を集中させる「集約化」に本格的に乗り出す。医師が足りない地域の病院が入院患者を中核病院に委ねることを条件に、高齢者医療など他の分野に転換するための費用を国が一部負担する。地域の医師確保策を後押しするのが狙いで、来年度予算概算要求に関連費を盛り込む。ただ、地方には集約化で医師が引き揚げられることへの懸念もある。

 厚労、総務、文部科学の3省は昨年8月、医師不足が深刻な産科や小児科の医院や病院に入院する患者を中核病院などに集め、医師一人ひとりの負担を軽くするなど、集約化・重点化の推進を決めた。各都道府県に、今年度中に対策の必要性を検討し、具体策をまとめるよう求めた。
 しかし、厚労省の今年4月時点の調査では、対策の必要性を検討していたのは、静岡、三重、兵庫、奈良、徳島、青森(産科のみ)、大分(小児科のみ)の7県だけ。28都府県は、検討の具体的なスケジュールも決まっていないなど、足並みが乱れている。

 都道府県が二の足を踏む理由の一つが、中核病院に医師をとられる医療機関の反発だ。重点化が進めば、中小の病院では、小児・産科の外来だけを残し、入院患者の受け入れをやめることになる。医師を召し上げられるだけでなく、患者も明け渡す形になり、経営面で打撃を受ける可能性もある。都道府県からは、「医師を引き揚げられる地域の対策を考える必要がある」(栃木)、「連携する病院への財政上の支援策を明確にしてほしい」(神奈川)など、国の財政支援を求める声が上がっていた。

 厚労省が補助対象に想定しているのは、中核病院との連携が期待される山間部やへき地の自治体病院や民間病院など。重点化に協力して小児科や産科の入院患者を受け入れない代わりに、高齢者介護など地域のニーズにあった分野に切り替える場合、必要な医療機器やベッドなどの設備整備費の一部を国が負担する。
 厚労省は当面、自治体病院など公的病院を中心に集約化・重点化を進める方針だが「補助制度を充実させ、将来的には民間病院にも協力を仰ぎたい」としている。

公立病院に関する財政措置、最終報告まとまる(2008年11月25日CBニュース)

 過疎地の公立病院などに対する国の財政支援などを議論している総務省の「公立病院に関する財政措置のあり方等検討会」(座長=持田信樹・東大大学院教授)は11月25日の第6回会合で、最終報告書を取りまとめた。過疎地の医療や産科、小児科、救急医療など、いわゆる「不採算医療」については、「診療報酬上の措置と財政上の措置(地方交付税、国庫負担金など)の適切な組み合わせにより、医療提供体制を確保すべき」とした上で、今後の財政措置は「充実の方向で対処すべき」としている。
(略)
 このうち、過疎地の医療を充実させるための財政措置としては、「不採算地区病院の運営費」と「過疎地における施設整備費」を挙げており、「不採算地区病院の運営費」については、「不採算地区病院に関する特別交付税の適用要件などについて、次の通り改正すべき」とした。
 具体的には、▽規模要件については、現行の「病床数100床未満かつ1日平均外来患者数200人未満」などに代え、財政措置の対象となる病院の範囲の拡大を図る▽地域要件については、現行の「当該市町村内に他の一般病院が所在しないこと」などに代えて、例えば、自動車での移動時間が30分以上掛かる距離にある―など、要件を緩和することを求めている。
(略)
■産科・小児・救急、「措置の水準の充実を図るべき」
 産科、小児科、救急医療に関する財政措置としては、公立病院に勤務する医師の人件費について、国家公務員である勤務医の給与が09年度以降に改善されることに合わせ、「公立病院に勤務する医師についても、地方公共団体において適切に対応できるよう、所要の地方財政措置を講じるべき」とした。

 産科・小児科に関しては、「周産期医療と小児医療病床に関する特別交付税措置について、地方公共団体における一般会計などからの繰出金の実態を踏まえ、措置の水準の充実を図るべき」とした。救急医療に関しても、09年度以降に実施される救急医療への国庫補助制度を踏まえ、「措置の水準の充実を図るべき」としている。
(略)
 また、「公立病院改革推進に関する措置」では、病床数に応じた普通交付税措置に際し、09年度以降の各病院の病床利用率の状況を反映することについて、「検討を進める」としたほか、「11年度以降の普通交付税算定における反映に向け、その内容・程度、具体的な実施時期、移行措置などについて、慎重に検討の上、結論を得るべき」とした。
 具体例として、報告書では「病床利用率が90%を超える部分については反映の対象外とするなど、救急患者の受け入れなどに備えた政策的空床保持の必要性に配慮する措置を検討するとともに、小規模病院においては、必ずしも病床規模に比例しない固定経費的な財政需要が相対的に多額に上ることを踏まえつつ、過疎地の不採算地区病院に関する財政措置について全体として必要な配慮を行うべき」などと求めている。

やや総花的な総務省はともかく厚労省の方針を好意的に捉えるならば「小児科、産科は需要の多い都市部へ、地方は老年期医療へ特化を」といった医療の分業制度推進とも見て取れるのですが、現実問題としては果たしてどうなのでしょうか?
患者の側から多かれ少なかれ誤解されていることですが、医者を筆頭とした医療スタッフは肩書きが同じであれば同じ仕事が出来るというわけではないし、同じ内科医、外科医と言っても出来ること、出来ないことは一人一人異なります。
それだけ医療というものは専門性によってかなり細分化されているわけですが、これらは単に技能の差のみならず従事するスタッフの性格・行動の差としても現れてくるものです。
ごく大雑把な傾向として言えば、例えば救急や外科系などの担当スタッフは見るからにせっかちな人間が多い一方で、慢性期疾患を扱う内科系などではゆったり構えたタイプが多いと言ったことですが、これは朱に交われば赤くなるということもあるし、そもそも性格的に合う分野を専門として選択する者が多いという当たり前の行動に伴う結果でしょう。

医師であれコメディカルスタッフであれ急性期の仕事に慣れた人間は慢性期の仕事は肌合いに合わないし、慢性期で長年過ごしてきた人間にとって急性期の仕事はついていけないといった塩梅で、病院の診療科を再編すると言うことはすなわちそこに集まるスタッフの顔ぶれを決める、ひいては病院の性格を決めるということに直接つながってくる訳です。
早い話が急性期病院と療養型病床の間に存在する医療の差(優劣ではなく、違い)も主に保険点数設定など医療制度の差に由来するかのように言われていますが、むしろ主因となっているのはそれぞれの施設にいるスタッフの行動パターンの差ですよ。
今までの日本の中小病院はともすれば何でもありのミニデパート化して何をするにも中途半端だったのは確かな一方、逆に言えば中のスタッフの多様性を維持する効果はあったのですが、再編と集約化によって病院ごとの役割分担が明確化され、どんどん同じ傾向のスタッフだけが集積するようになってとどうなるでしょう?
世の中には患者の体力の許す限りひたすら病気を切りまくる医者も必要ですし、最後の瞬間を楽に看取る技術に長けた医者も必要なのは当然ですが、この町の病院にはブラックジャックばかり、隣町の病院にはドクターキリコばかりとなれば何だかバランスが悪いなと思いませんか。

地方公立病院を減らしていく方向で動くにしろ、何とか支援しながら維持する方向で動くにせよ、いずれにしても現状そのままでということはまずもってありえないわけです。
医療資源が限られており質的に今より落とすことは許されないとなれば集約化は避けられないでしょうが、集約化という作業は単に「近所の病院がなくなってちょっと不便になりますよ」なんて話にとどまらない医療の質的な転換をもたらす可能性が大いにあるわけですよ。
研修医にはしばらく田舎にいってもらうことにしようとか、医師は強制的に配置すべきではないかなんて話もそうですが、政府からのアナウンスにしろそれを報じるマスコミにしろ、単に頭数の問題として扱われるばかりで質的な意味に全く触れられることなく語られているのが何とも不可解です。
医療事情に疎いマスコミはともかく、万一にも厚労省が気付いていないのであればあまりに現場を知らない監督省庁としての怠慢であるし、知った上で「医者ってどれも同じようなもんだろ?」という国民の誤解に乗じているというのであれば何とも不誠実な話ですよね。

十分な説明とそれに基づく同意が求められるのは、別に医療現場に限ったことではないはずなのです。

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2008年11月28日 (金)

阪南市立病院問題で抗議の辞職 ~ 全国に広がる公立病院の病根(1)

市立病院問題で揺れる阪南市ですが、このたび同市公平委員会委員長が新市長の発言に対して抗議の意志を示すため辞意を表明したそうです。
この問題は当「ぐり研」でも本年11/1311/18と二度ほどお題として取り上げさせていただきまして、正直今さらな話題かなと思っておりましたら意外なほど大きな反響をいただきかえって驚いているところです。
ちなみに公平委員会というのは地方自治法に定められる組織ですが、職員の勤務条件等に関して要求したり措置を講じたりする委員会ですから、こういう問題には口を挟む立場にあるわけです。

阪南市:公平委員長が辞表 病院問題で「抗議」 /大阪(2008年11月26日毎日新聞)

 阪南市公平委員会委員長の妹尾正徳氏(75)が25日、市に辞表を提出した。任期は12月6日までだが、妹尾氏は「市立病院問題を巡る混乱に抗議の意思を示すため、あえて直前に辞表を出した」と説明。併せて福山敏博市長らに抗議文を提出した。

 妹尾氏は同委員を2期8年務めている。抗議文では「福山市長の不用意発言と事後対応の遅れで事態を悪化させ、病院のみならず市財政も危うくしている」と批判している。市立病院を巡っては、先月の市長選で初当選した福山市長が選挙戦などで「患者数に応じた報酬は公立病院になじまない」と給与見直しに触れたことを理由に、非常勤医師4人が12日に辞表を提出している。

この阪南市立病院を巡る一連の騒動では医師の給与だとか市長の発言だとかばかりが取り上げられていますが、なぜ人件費率9割なんてあり得ないことが起こっているのかについては誰も触れたがらないですよね?
阪南市の公平委員会がどのような実績を持っているのかは存じ上げませんが、こと市立病院職員の給与面に関してはずいぶんと評価に値する仕事をしてきたと言えるのではないでしょうか。
ただ残念なことには、話に聞く限りではこと医師の労働環境の面では決して良い職場とは言えなかったようで、今回の一連の市立病院問題もこのあたりが根本原因であったことは間違いないでしょう。

ところで、公立病院問題については当「ぐり研」でも初期の頃から何度も取り上げてきまして、今ざっと見た限りでも本年7/277/2810/3あたりはまさしくそんな感じの話題ですね。
何度も言うようで恐縮ですが、そもそも健全な病院経営がなり立つ目安がおおむね人件費率4割まで、5割を越えると赤字転落の可能性が高いとされていますが、全国の公立病院では人件費率6割、7割なんて異常事態が当たり前に起こっているわけです。
公立病院がほぼ例外なく赤字経営という第一の理由にこういった事情があるはずなのですが、何故かあまりマスコミなどでは報道されることがなくて、あいも変わらず「新臨床研修制度の影響で深刻化した医師不足が各地の公立病院の破綻を引き起こし」云々なんて明らかにミスリードな解説を垂れ流すばかりなのは興味深いところですね。
この辺りの事情に関して、珍しく僅かながらも記事になっているものがありましたので紹介しておきます。

第6部 「地域医療の行方」〈6〉病院改革「外部の目」で(2008年11月26日  読売新聞)

 ――総務省は入院ベッドの利用率が低い病院に大幅なベッド削減を求めた。「医療よりも経営を重視するのか」との反発もある。

 「誤解されている面が多く残念だ。確かに経営効率の悪い病院には規模縮小を求めている。だが、それは人もカネも無駄遣いしているからだ。かつて夕張市立総合病院は171床を抱えながら、利用率は30%以下だった。昨年4月に19床の診療所にしたが、隣の栗山町に赤十字病院があり、地域医療も崩壊していない」

 ――多くの自治体病院は経営立て直しのめどが立っていない。

 「経営改革が進まない病院では、労働組合が強い場合が少なくない。年功序列の給与体系を変えられず、事務職員や看護師の給与が、医師より高い場合もある。これでは医師も定着しない。私が道外の自治体で携わった病院改革委員会は、メンバー全員を他地域の医師や専門家で構成して成功した。利害関係がない人の方が『本当に地域に必要な医療とは何か』を判断できる。真剣に地域に医療を残したいのなら、それくらいの覚悟と決断が必要だ」

 ――赤字でも地域に欠かせない医療機関もある。

 「もちろん一方的に経営改善だけ求めているわけではない。総務省のガイドラインには、国が今後、必要な病院には財政支援を行うことを明記している。例えば根室のように脳外科手術や出産ができず、釧路まで車で2時間以上かかるような地域には、(手術・入院を伴う重症患者を受け入れる)2次救急の医療体制を完備しなければならない。しかし根室市立病院は今、常勤医が12人で夜間の救急患者も原則受け入れていない。こういう病院は重点的に支援する」

全くの個人的見解というやつですが、公立病院というところは運営目的なり患者層なりといった面でなかなか難しいところもあるわけですから、世間並みの労働をこなした者に対して待遇面で世間の相場より多少優遇するとか言うことは必ずしも否定されるものではないのかなとも考えています。
現実問題公立病院スタッフは上記のように民間より優遇されているのですから過去の待遇改善に向けた努力の成果として誇っていいのだと思うのですが、問題はこうした待遇改善のための努力が何故か医師だけは素通りしており、「公立病院医師=民間より薄給で激務」という図式が業界の常識化しているということですね。
公立病院が医師不足を嘆くならばまずこうした状況を改善しなければならないのは自明のことだと思うのですが、実際にはどうなのかと言うことをかつて話題になった佐賀県立病院の事例で見てみましょう。
まずは「県政へのご意見」コーナーに寄せられて一部で話題になった意見を幾つか取り上げてみますが、正直これだけでも十分お腹いっぱいって感じですよね(苦笑)。

佐賀県立病院好生館職員の勤務状態について (平成18年12月13日 回答)

 研修医ではないのに、研修医扱いとして好生館に派遣されている医師の家族です。

 休みは一日たりともありません。これは職業柄仕方ないとは思えるのですが。一週間のうち家に帰ってこれるのが半分もあればいいほうです。毎晩泊り込んで、寝る暇もなく働きづめです。帰って来た日でも、病院からの電話が殺到し、夜もろくに眠れません。
 やつれた顔を見るたびにいたたまれない気持ちになります。
当直として働いている日以外は手当ても出ません。超過勤務手当ては皆無です。日々雇用職員としての扱いになっているからとは思いますが、ボーナスもなし、扶養手当もなし、住居手当すらありません。
 給料の収入は一ヶ月で手取り29から30万円くらいですが、実際に働いている時間を考えると、時給に直せば200円足らずです。
 事務員に、月から金曜日までの週5日間、8:30~17:15の間のみ働いた形として、印鑑を打たされるそうです。
 実際はその何倍も働いているのに・・夜中の0時に呼び出され、朝方10時過ぎまで寝ずに働いても、ただ働きです。土日も終日(ひどいときは24時間)働いても、一円たりとももらえないのです。
 この現状を県はご存知でしょうか?これだけ身を粉にして働いても、生活は苦しいもので共働きでも大変です。市県民税は高価、払っていくためにどれだけ家族が犠牲になっていると思いますか・・・
 こんな状況で「すべての人が輝き、活躍できる県」といえますか?給料のことは仕方ないとしても、好生館に勤める勤務医の雇用状態についてもっと考えてもらえないでしょうか?このままでは、過労死してしまいます。
 どうか、お願いいたします。

【関係課の回答】
 県政提案メールをいただきました。ありがとうございます。

 また、日頃から好生館の医療業務のためにご尽力をいただき、まことにありがとうございます。

 好生館の職員の勤務については、やむを得ず長時間、深夜に及ぶことがあり、ご家族の皆様にも厚く感謝を申し上げます。
 給与の面や勤務時間の面について、できる限りの改善を図りたいと考えているところですが、公的な病院としての制約などがあり、必ずしも思うに任せない点があることも事実でございます。
 ご提案は改めて、県の関係部署にも伝えさせていただきます。

 一朝一夕に解決できる課題ではございませんが、優秀な医師の育成確保、そしてそのための勤務条件の改善は、最も重要な経営課題の1つと考えているところです。
 好生館を設置する県の方でも、現在経営の自由度を増す方策の検討が進められているところですので、今後ともご理解とご協力をお願い申し上げます。

県立病院好生館嘱託医の処遇に関して (平成19年6月11日 回答)

 県立病院好生館の嘱託医は、月に数10~100時間の時間外労働をこなしていますが、時間外労働に対する対価が全く支払われていません。

 明らかな労働基準法違反の状態と考えます。速やかに改善をお願いします。速やかに改善がなされない場合、法的手段に訴えることも辞しません
 今年4月から県立病院では電子カルテが導入されており、「いつ誰がどこでカルテ入力をしたか」はすべて記録されています。
 監査を行えば、ほとんどすべての嘱託医が無給で月に長時間の時間外労働をしている実態を隠すことは不可能です。
 公的施設としてすぐに金銭的な面での早急な対応は難しいと思いますが、少なくとも時間外労働実態把握のために、時間外勤務簿を正確に記入することから始めることはすぐにでも可能なはずです。(現在、嘱託医には時間外勤務簿はありません)

 若手医師の過労死が問題となっている中、県として自主的に監査を行われ、現状を改善してくださることを望みます。
 1ヶ月後を目処に改善がなされていなければ、法的手段を含め、私の持ちうるすべての権利を用いて現状改善を県に対して迫ります。

※同趣旨のご意見が他に1件ありました。

【関係課の回答】
 御指摘の研修医の勤務について、これまでにも同様の県政提案メール等をいただいており、好生館では現在、研修医のあり方について、実態を把握・分析しながら県庁内の関係する部局とも協議し、検討を進めています。

「時間外勤務簿を正確に記入することから始めることはすぐにでも可能なはず」とのご指摘ですが、この件については、研修医の位置付けをきちんと行ったうえで、具体的対応を決定する必要があると考えています。早急に検討を行い、方向性を出していきたいと考えていますので、ご了承ください。

 また、当直など医師の負担軽減も重要な課題です。昨今の医師不足のなか、厳しい状況ではありますが、スタッフの確保など医療体制の充実についても努力していきますので、ご理解をいただきたいと思います。

県立病院好生館職員の勤務状態は改善されましたか。 (平成19年11月9日 回答)

 県政へのご意見(管理人注:上記「佐賀県立病院好生館職員の勤務状態について」)で記されている、県立病院勤務医師の劣悪な労働環境について、何らかの改善が図られたのでしょうか。
 何もフォローアップのリリースがないことから考えますと、県は何もしていないのではないかと疑いを抱いてしまいます。時間の経過とともに、この問題がうやむやになればよいと考えていらっしゃるということはないでしょうけど、何らかの広報が必要でしょう。

 研修医のみならず、すべての医師の早急な労働基準法遵守を強く求めます。事務方による、勤務時間データの改ざんに強く抗議します。県の、この点についての対応のなさ(不作為)に抗議します。

事務員に、月から金曜日までの週5日間、8:30~17:15の間のみ働いた形として、印鑑を打たされるそうです。
 「勤務記録の勝手な書き換え」が告発されれば、如何なる事態を招くかはよくご存じのことでしょう。
 佐賀県の医療を崩壊させないために、県立病院には率先して勤務医の労働条件の改善を求めます。

【関係課の回答】
 嘱託医の時間外勤務の問題については、7月末までに各指導医の勤務時間管理状況等についてのアンケート調査や、各嘱託医の職場環境改善要求項目等についてのアンケート調査を行い、集約して医局内で協議し、対応方針を検討してきました。
 検討の結果、嘱託医も11月1日から、出勤簿・時間外勤務命令簿に基づき、実績分を支払うこととしております。また、月16日を超えて勤務以外の日に勤務を命じる場合も、時間外勤務の処理をしていきます。

平成18年の問題提起以来、早急に検討を進めた結果どういう改善が進められたのか?と言う点に自然と注目が集まるわけですが、平成19年11月の時点で「出勤簿・時間外勤務命令簿に基づき」働いた分は払いますよと明言していますよね。
さあこれで少なくともただ働きはなくなったのだろう、一安心だと思ってしまうところですが、これで終わっているようではこういう場所で取り上げられるニュースにはなりません(笑)。
本年5月になってようやく一般紙で記事になったものがこちらですが、組織ぐるみの犯罪行為がこれだけ明確になってしまった上に「残業記録は捏造して正確なものが残ってないので払いません」ですか(苦笑)。

時間外手当1億4000万円未払い 佐賀県立病院(2008年5月30日佐賀新聞)

 佐賀県立病院好生館(樗木等館長)が長年にわたり、職員の勤務時間記録を改ざんし、正当な時間外手当を支払っていなかったことが30日、分かった。改ざんは歴代事務担当者によって引き継がれ慣行化しており、始まった時期は不明だが、2006年度は研修医を除く全職員約520人で総額1億4000万円が未払いとなっている。同病院は昨年、佐賀労働基準監督署から是正勧告を受けていた。

 好生館によると、人件費を予算内に抑えることを目的に、医師や看護師らを含む職員が提出した「時間外勤務命令簿」の時間を一定の割合で減らしコンピューターに入力、時間外手当を実際より少なく算出していた。

 07年4月に病院のコンプライアンス(法令遵守)を見直し、自ら実態通りの時間外手当を支払うよう改めた。その後、同年5月に佐賀労働基準監督署から06年度以前の正当な時間外手当を支払うよう是正勧告を受けた。さらに、時間外手当の制度がない研修医に関しても時間外勤務の実態を把握するよう勧告があり、同病院側は研修医にも同年11月から正当な額を支払っている。

 03年度以前は記録が残っておらず、改ざんが始まった時期は不明。研修医を除く06年度分を試算すると、本来支払うべき手当は約4億1000万円だが、実際は66%の約2億7000万円しか払っておらず、約1億4000万円が未払いだった。

 同病院は未払い分を本年度中に支給する方針だが、労働基準法による時効(支給日から2年間)があり、その起算日をどう定めるかを含め「弁護士と相談し進めたい」としている。また研修医の勤務実態が分かっておらず、6月議会の補正予算案計上は見送った。

 未払いの時間外手当がある事実を知っていた職員は多く、ある看護師は「予算面で厳しく、ある程度は仕方ない」とあきらめていたという。同病院の中島博文事務長は「勤務実態に応じた予算をつくればよかったが、慣行化し急に変えることができなかった」と話した。

何という電波な…て言いますかね、医師に対する態度というものがこうまであからさまになってしまったこの病院と佐賀県当局の姿勢を全国の医者がどう思うかですよ。
あなたが医者であったとしたら、行きたいと思いますか?こんな病院に。
全国各地に医療に対する必死の情熱をもって医師集めに奔走している病院数多の時代に、ここが第一選択になってくるという人は少なくとも社会的多数派ではないと思いますね。
人が集まらない病院、人が逃げ出す病院には、それなりの理由があるということです。

長くなりましたので今日はとりあえずここまでにして、明日以降に続けます。

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2008年11月27日 (木)

救急問題ただいま迷走中 ~ システム改革に現場の声はどこまで反映されるのか?

先日東京都で相次いだ妊婦救急搬送の問題を受けて、関係者が桝添厚相に徹底調査を望む要望書を出したそうです。
まずはこちらの記事から紹介していきましょう。

妊婦受け入れ拒否「徹底調査を」…夫2人が厚労相に要望(2008年11月18日 読売新聞)

 東京都内で脳出血を起こした妊婦が複数の病院に受け入れを拒否される事例が相次いだ問題で、女性2人の夫が18日、舛添厚生労働相と面談し、再発防止や徹底した原因究明を求める要望書を手渡した。

 この日、厚労省を訪れたのは、10月上旬に8病院に拒否され、出産後に死亡した女性の夫(36)(江東区)と、9月下旬に少なくとも6病院に受け入れを拒否され、出産後に意識不明の重体となった女性の夫(39)(調布市)。2人は「二度と同じことが起こらないよう、徹底的に調査してほしい」などと要望した。

 舛添厚労相は面談後、記者団に対し、最重症の妊産婦や胎児の緊急治療にあたる「総合周産期母子医療センター」の設置要件について、「これからは、救急医療が同時にないと認めないという方向でやりたい」などと述べた。

この際に桝添厚相が「救急が出来なければ周産期母子医療センター設置を認めない」と発言したと報じられていますが、これはいささか説明を要する発言ですね。
先日も紹介しました「周産期・救急懇談会」でも北里大産科の海野教授が発言していましたが、そもそも周産期母子医療センターと言うものはその名の通り母子医療に関わるものであって、一般的な意味での救急が出来るかどうかは全く関係がないんですね。

海野信也委員(北里大学医学部産婦人科学教授)
「総合周産期母子医療センターが、母子救急の最後の砦であるように報道されているのだが、成り立ちの経緯はそういうものでは全くない。整備事業の主たる目的は、胎児と新生児の救急に対応できるだけのもので整備指針にも脳外科がなきゃいけないとは書いてない。産科、新生児、麻酔科の医師を置けばよくて、麻酔科は常勤である必要すらない。それで辛うじて施設基準をクリアしているような医療機関がかなりある。」

「え?それじゃ奈良の大淀病院や今回の東京みたいな症例はどうするの?」と誰でも思うところでしょうが、結論から言えばそんな症例に常時対応できる施設は全国でもそうそうはないというのが現状です。
今回の東京の事例を受けて桝添厚相は徹底的な調査を指示したと言いますが、その結果判ってきたことは産科救急に限らず救急医療全般における受け入れ能力の不足であって、「そんな素晴らしい医療体制は我が国には存在しませんでした」という事実だったということなんですね。
最近報道された中から幾つか救急に関連するニュースを拾い上げてみましょう。

周産期母子医療センターの7割、搬送受け入れ拒否を経験(2008年11月20日読売新聞)

 最重症の妊婦や新生児の救急治療を担う全国の「総合周産期母子医療センター」の7割が昨年度中、母体搬送の受け入れを断った経験があることがわかった。
 20日、厚生労働省が周産期医療と救急医療のあり方を検討する有識者会議に報告した。「新生児集中治療室(NICU)の満床」が拒否理由の9割を超え、厚労省はNICUの増床などを盛り込んだ対策の骨子案を同会議に提示した。

 東京都内で妊婦が病院に次々と受け入れ拒否されるケースが相次いだのを受け、厚労省が先月末から、45都道府県にある全75施設を対象に調査した。
 それによると、受け入れ拒否があったのは、回答した74施設の約72%にあたる53施設。このうち、理由をNICUの満床としたのが49施設と約92%を占めた。NICUの病床利用率は、90~100%が56施設と約76%に上った。NICUの充足状況では、22自治体が「不足」と答えた。
 厚労省が「24時間体制で複数医師の配置が望ましい」としている7床以上の母体・胎児集中治療室(MFICU)を持つ22施設のうち6施設は、土日や夜間に医師を1人しか配置していなかった。

重症患者の救急搬送時間、ワースト50件中12人が死亡(2008年11月14日読売新聞)

 2007年に東京都で救急搬送された重症患者のうち、119番通報から医療機関に収容されるまでにかかった所要時間ワースト50のケースで、少なくとも12人が死亡していたことが13日、総務省消防庁などの調査でわかった。
 中には、医療機関への照会回数が33回、搬送先に到着するまでに2時間56分かかった後に死亡していたケースもあり、救急医療体制の深刻な実態が改めて浮かび上がった
 総務省消防庁と厚生労働省が同日、民主党の長妻昭政調会長代理の調査要求に対し説明した。ただ、搬送時間と死亡との因果関係は不明で、長妻氏はさらに調査を求めている。

 照会回数が33回に上ったのは、90歳代の女性患者で、「誤えん性肺炎」で亡くなり、搬送から死亡までの日数は2日だった。「呼吸不全」で亡くなった80歳代の男性患者は、照会回数が21回で、搬送時間は2時間32分で、死亡までの日数は1日だった。長妻氏は「死亡までの日数が短い事例では、早く搬送されていれば、助かった患者もいたのではないか」と話している。
 また、死亡した12人のうち、搬送時間が長かった3人は火災や水の事故のケース。照会回数が3回以下と少なく、発生時に通報があり、救急隊が現場で待機したため、収容までの時間が長くなったと見られる。

 搬送後に回復して退院した事例でも、照会回数が50回、搬送に要した時間が4時間49分のケースや、照会回数が26回、搬送時間が4時間27分だったケースがあった。総務省消防庁によると、東京都では07年に、転院搬送も含め約5万人の重症患者を救急搬送している。

妊婦184人、脳血管障害に 06年 厚労省研究班調査 10人が死亡(2008年11月14日北海道新聞)

 

妊娠や出産に関連し脳血管障害を起こした妊婦は、二〇〇六年に少なくとも百八十四人おり、このうち十人が死亡していたことが厚生労働省の研究班(主任研究者・池田智明国立循環器病センター周産期治療部長)の調査で明らかになった。
 妊婦は胎児に酸素や栄養を送るため血液量増などで血管の負担が拡大、脳血管障害のリスクが高まるとされる。東京都内で十月、脳出血の女性が八病院に受け入れを断られ、死亡した事例などが明らかになっているが、国内の詳しい実態調査は初めて。

 調査は総合病院や周産期母子医療センターなど千五百八十二施設が対象。道内六十六施設を含む千百七施設が回答した。
 百八十四人の病名の内訳は、子癇(しかん)(高血圧などを伴う妊娠中毒症の一種)や高血圧性脳症八十二人(死亡二人)、脳出血三十九人(同七人)、脳梗塞(こうそく)二十五人(同なし)、くも膜下出血十八人(同なし)、脳静脈洞血栓症五人(同一人)など。
 死亡患者が多かった脳出血は診断までの時間が三時間以内なら死亡率が8%だったのに対し、三時間を超すと36%に上がった。また脳出血患者の72%は発症時に産婦人科を受診しているが、最終的な治療は85%が脳神経外科で受けていた。

こうした事態がなぜ起こっているのか、訴訟リスク等に絡んだいわゆる防衛医療の普及によって現場が昔ほど無理(無茶?)をしなくなったということもあるでしょうが、根本的な原因は需要が供給を上回っていることではないでしょうか。
たとえば石原都知事が自慢する東京都の医療体制にしても、その実態を見てみれば崩壊寸前と言うより、既に崩壊している事実を隠蔽していると言うに近いのではないかと思わされる状況のようです。

都のNICU満床 原因に周辺自治体から患者流入 広域的連携が必要(2008年11月18日産経新聞)

 東京都で相次ぎ発覚した妊婦の救急受け入れ拒否問題で、都内の産科救急施設の救急ベッドの恒常的な満床原因に、埼玉、千葉、神奈川県といった周辺自治体から患者が流入している実態があることが分かった。自治体ごとに産科救急施設の整備状況に大きな差があり、都心への流入が起きているとみられる。医療関係者らは、都県の枠を超えた仕組み作りの必要性を指摘している。

 問題になっている受け入れ拒否のケースで、病院側は「医師が別の出産に対応している」ことや「NICU(新生児集中治療室)が満床になっている」ことなどを理由にしていた。
 NICUなど高度な医療設備を持つ総合周産期母子医療センターは東京都の9施設に対し、神奈川県4、千葉県2、埼玉県1。東京では136万人当たりに1施設なのに対し、神奈川県218万人、千葉県302万人、埼玉県704万人とばらつきがあった。

 埼玉県唯一のセンターである埼玉医科大総合周産期母子医療センター(川越市)は、平成19年度に約500件の妊婦の母体搬送要請があったが、約200件しか対応できなかった。残る300件の多くが都内に搬送されたとみられる。県の周産期医療部会によると、県にNICUは83床あるが都の約3分の1。田村正徳センター長は「依頼数は受け入れ能力を完全に超えている。埼玉は都におんぶにだっこで何とかやりくりしている」という。
 4つのセンターがある神奈川県でも、県外病院に妊婦搬送するケースは少なくない。県によると、18年度の県外搬送事例は103件。全搬送件数の約1割に当たる。県外搬送の約8割が都内に搬送されているという。
 千葉県でも事態は同様。「東京東部に位置する都立墨東病院(墨田区)が、千葉県の妊婦の救急搬送の重要な受け入れ先になっている」と指摘する医療関係者は多い。

 周辺自治体でも総合周産期母子医療センターの整備構想はあるが、産科医不足が原因で実現しない状況だ。埼玉県では自治医科大学付属さいたま医療センター(さいたま市)で施設を整備したが、医師不足のため機能していない。
 医療関係者からは、立て続けに発覚した搬送拒否問題を受け、都の病院が周辺自治体からの搬送受け入れのハードルを高くすることへの懸念も出始めている

もともと首都圏は確かに医師人口も多いのですが、巨大な人口圧力を背にした医療需要に対しては過小な医療資源しか存在しなかった、しかも今や周辺各県からの医療難民もそろって東京都下に流入しているというのですから、いわば東京都救急医療の崩壊は必然であったわけです。
一番の問題はそうした医療の需要と供給のバランス崩壊を、「医者は大都市圏に偏在している」という神話を信じ込んで問題が顕在化するまで知ることすらなかった(現在も理解していない?)桝添厚相や石原知事のごとき無知な人々が医療行政の上にどっかと腰を据えているという現実でしょう。

こうした構造的な問題に対する有効な処方箋というものは存在しないのでしょうか?
実のところ東京のような巨大医療圏よりも、医療規模の小さい地方において先進的な試みが進んでいる場合があります。
旧世紀末頃には政府、マスコミ、国民がそろって医局潰しに邁進し、今では新臨床研修制度の影響もあって医師派遣システムとしての医局制度というものは全く昔日の面影がないほど落ちぶれ果てたものとなりましたが、実のところ地域医療を維持してきたのはこうした旧態依然たる医局制度の恩恵であったというのも医療関係者の間では周知の事実であったわけです。
まるで時代に逆行するように医局機能を積極的に強化、維持活用することで、地方でありながら今も有効な医療制度を維持している山形大の例を見てみましょう。

先生が消えていなくなった!絶望の医療崩壊ルポ(2008年12.15号プレジデントより)

(略)
東京23区には700床以上の大病院が21ある。その運営母体は大学が12(私立10、国立2)、都立が4、国立2、その他3。この12の大学病院のうち、8つは都心部の新宿・文京・港区にあり、残る4つは北部と南部に2つずつ。問題の起きた東部、西部地区には「分院」はあるものの、大学病院本院は存在しない。東京大学医科学研究所の上昌広特任准教授は話す。
「大学病院本院の不在は地域医療のうえで大きなマイナスです。養成機関である大学病院には多くの医師が集まるため、どの地域でも医療ネットワークの中核。それがない東部と西部はどうしても医師不足に悩むことになります」

12の大学病院のうち、都心部にある7病院は大正時代までに創設されている。残る5つのうち最も創立が新しいのは1971年の帝京大学医学部で、それ以降の開院はない。
専門病院でも需要の多い地域のほうが儲かる。たとえば癌研有明病院は3年前に大塚から有明に移転したところ、患者が増え、経営状況が改善した。本来、大学病院本院のない場所には大学の進出があるはずが、医療は自動調整が働かない。ベッド数の総枠規制という政治的失策の影響が大きい。

都立病院である墨東病院に対する要求は当初から過剰だったという。
『ガダルカナルの日本軍』に近い状況でした。地域唯一の中核医療施設でしたが、大学病院ではなく医師集めが難しかった。また約700床は私立大学本院の半分程度と、すべての診療科のレベルを高く維持するには困難な規模。それでも地域との連携で乗り切っていたが、2002年にERが開設され、三次救急の重篤患者だけでなく、一次・二次救急も担うようになり、パンクしてしまった」(上特任准教授)

病院の配置が人口に見合わないというのは全国的な問題だ。人口当たりの医師数が最も少ないのは埼玉県、茨城県、千葉県などの東京近郊の自治体。人口の急増に対して、公共投資がおろそかになっていたためだ。全国的には「西高東低」となっている。
(略)
日本では80年代以降、医師数に応じて医療費は増えるという「医療費亡国論」が唱えられ、増員が抑えられてきた。しかし欧米では90年代に「医師数と医療費は無関係」という学説が一般的になる。以後、先進諸国は医師増員に踏み切ったが、日本は約20年間、医師数を抑制してきた。日本の100床当たりの医師数は世界でも最低クラス。米国の5分の1でしかない。
医師不足は明らかだ。なかでも搬送拒否の問題が起きた墨東病院や担当医が逮捕・起訴された(のちに無罪確定)福島県立大野病院事件など、産科をめぐる医師不足は深刻である。
上特任准教授は「日本の周産期医療はいったん壊れるだろう」と悲観する。
「医療事故に対して訴訟を起こそうという圧力は引き続き高まっています。第二、第三の大野病院事件は必ず起きる。産科医が病院を立ち去るという状況に歯止めがかからず『もう出産ができない』という状況に陥らなければ、世論は変わらず、政治も動かない

消防庁によると、東京都における06年の妊婦の搬送拒否は528件。一方、秋田、福井、熊本、山形の四県は0件だった。四県のうち山形県は「周産期母子医療センター」の指定病院がない。山形大学医学部の嘉山孝正学部長は「あえてつくらせなかった」と説明する。
センター化はきわめて行政的な発想。医師にとって魅力がなければ人材は集まりませんし、搬送が1カ所に集中すればネットワークが壊れる。ハードよりもソフトの運用が重要なんです

医療はよく職人の世界にたとえられる。同じ外科でも心臓や脳、救急など「得意分野」によって能力は違う。そして何を得意としているかは、「素人」である役人にはわかりづらい。
02年に山形大学は県内の主要病院と「蔵王協議会」を発足させた。たとえば県内に産科の医師が「どこに」「どれだけ」いるかを調べ、搬送拒否のない体制づくりを整えた。医療者だからできる人材調整の仕組みだ。
こうした機能は従来、大学の医局が担ってきた。医局が新卒医師の人事権を握り、派遣先を調整していた。だが04年から新臨床研修制度が始まると、医師たちは医局に残らず、学歴と職歴を磨くため「ブランド病院」に集中するようになった。この結果、地方大学病院の多くは研修医を確保できなくなり、医局からの派遣に依存していた地域の中核病院は医師不足に陥った。
(略)
「私が取り組んだのは医局の『機能』の強化でした。小泉改革などを経て、医師の偏在を調整できなくなっていた。医師不足の解消には時間がかかります。医療者はいま何ができるかを考えるしかない」

近く政令指定都市に昇格するらしい岡山市でもER創設の動きがあるようですが、もともと岡山県というところは地方の中小県の割に二つの医学部を抱え比較的医療資源に恵まれたところでした。
そんな岡山でも「川崎医大の産科は講師と助教授の二人体勢になった」なんてトンでもない話が起こるというくらいですから、どうも行政が一方の主導を握っているらしいこの計画を見るとき、石原都知事がぶち上げた東京ER構想なるものがどういうことになっているかに思いを馳せないではいられない話ではあります。
スタッフの手配も含めて地方都市におけるこうしたシステムが実際に稼働までもっていけるものなのか、稼働したとして果たしてどこまで有効に働けるものか、今後の続報を生暖かく見守っていきたいところですね。

岡山市と岡山大、「ER」創設へ連携(2008年11月12日  読売新聞)

3交代制、24時間365日対応
 岡山市と岡山大が協力し、地域医療の向上を目指す「岡山大・市保健医療連携に関する委員会」(会長=高谷茂男市長、千葉喬三・岡山大学長、委員14人)は政令市移行に向け、救急や一般の患者を受け入れ、すべての症状を診察する「ER」(救急治療室)を創設する目標を盛り込んだ連携構想を示した。県によると、ERを備えた病院は県内にはなく、行政と大学が連携しER体制をつくることも珍しいという。

 ERは、全症状の患者を診断し、応急処置など初期診療を行う。手術などの治療は、専門の医師、診療科などに引き継ぐ。
 10日に委員会がまとめた構想では、市と岡山大が、医師や看護師が対応する「岡山総合医療センター」(仮称)を開設し、その中にERを設ける。ERは1~3室を想定。ER専門の医師を中心に3交代制を取り、24時間365日対応する。
 また、センターは同大学から研修医を受け入れ、学内に地域医療の向上に役立つ講座も開設することなどを確認。センターの設置場所、人員、費用などは未定で、双方の協力事項は今年度末までに決める。外部の病院との連携や、構想の中で市民病院をどう位置づけるかについても協議する。

 市によると、市内の主要7病院を利用した救急患者は、2006年度で計約16万人。5年間で約3割増加し、うち9割が軽症者という。同委員会は、患者自身では症状の判断が難しく、より高度な医療機関を頼ろうとする傾向が強まっているとみており、「このままでは、各病院で手術や入院が必要な重症患者を十分受け入れられなくなることが懸念される」とし、ERの必要性を強調している。
 高谷市長は「市民が安心できる政令市に向け、大きな柱が出来た。岡山型の救急医療体制『岡山ER』を実現させたい」と意気込む。千葉学長も「他の地域にない最適な医療体制実現のため、もっと手を携えるべきだ。使命感を持ち構想を進めたい」と話している。

いずれにしてもこうした試みの核心を握るのは、医師不足叫ばれる今の時代に必要な人材を確保できるかどうかですね。
山形大の例での「医療者だからできる人材調整の仕組み」とは言い得て妙ですが、医者も人の子ですから政策的に動かすためには桝添厚相の言うところのインセンティブで誘導するか、あるいは現場の実情に応じたきめ細かな手配をしていくかです。
厚相も口では判ったようなことを言っていますが、現実問題として政策に反映させることが出来るかどうかが一番問われているわけで、「桝添氏は昔から口だけ」などという不名誉な悪評を今後の行動でぬぐい去ることが出来るかどうかですね。

その意味では医局制度の崩壊は医師派遣システムの崩壊であるのと同時に、不十分ではあっても現場の医師達の声を吸い上げ代弁していたシステムの崩壊でもあるわけです。
医師会などという特定層の権益を代弁する団体の主張が医師の総意の如く扱われるのも、元はと言えばこれに対抗する団体がないことに起因するわけですが、現状では救急医療の現場を担当している医療従事者の声が吸い上げられていないことも大きな問題ですよね。
旧来の医局制度が必ずしも良いことばかりではありませんが、今後どんなシステムでその代用を果たすにせよ、少なくとも現場の声に対して聞く耳を持たない政策では医療従事者の誰からも支持はされないでしょう。
何より医局制度の縛りから解放された今の時代の医師達は、自分たちがどれだけの主体的な選択枝を持っているのかということをようやく理解し始めているのですから。

現場の意見をどこまで聞ける―厚労省周産期・救急懇談会(2008年11月21日CBニュース)

 議論の時間も少ないまま、先を急ぎ過ぎてはいないか―。相次ぐ妊婦の救急受け入れ困難の問題を受け、厚生労働省が緊急に開催を決めた「周産期医療と救急医療の確保と連携に関する懇談会」(座長=岡井崇・昭和大医学部産婦人科学教室主任教授)。11月20日に開いた第2回会合に、今後の対策についての骨子案が示された。しかし、会合では地域事例のヒアリングに90分以上が割かれ、骨子案についての議論は約40分ほど。自ら用意した資料の内容にほとんど触れることができなかった委員もいるなど、議論は不完全燃焼の様相を呈し、急いでまとめようと委員の発言をせかす座長の姿だけが目立った。委員は骨子案の総論には賛成するものの、各論となれば意見は分かれている。細部にどこまで現場の意見が反映されるのか、出口は見えないままだ。(熊田梨恵)

 この日の会合の資料に、同懇談会が年内にまとめる報告書のベースとなるとみられる「今後の対策について(骨子案)」が添付された。骨子案は、「良好な実績を上げている地域の救急搬送体制の例示」と「短期目標として実現可能な対策の検討」から成っており、会合での議論が内容を左右する「実現可能な対策の検討」の項目は、▽患者の病態と受け入れ施設のマッチング〔(1)病態の分類―必要な対応、処置と緊急度(2)施設の機能による分類(3)地域のネットワークの促進〕▽情報の伝達及び効果的活用〔(1)救急医療機関の状況=病床数、人員=の伝達とその迅速化(2)情報の統合、センター化(3)搬送先選定の迅速化=コーディネーターの配置=〕▽施設の機能充実と人員不足への対応〔(1)病床数の適正化=特にNICUの増床=(2)勤務環境の改善(3)パラメディカル、メディカルクラークの活用〕―の3つ。
 事務局や会合での岡井座長の発言によれば、骨子案は岡井座長が作成したもので、事務局は「中身にはノータッチ」としている。

 懇談会は年内に報告書をまとめなければならないため、あと数回の開催で議論の内容を取りまとめていく必要がある。このため、骨子案の内容にかかわる議論に時間を多く割くかと思われたが、同日の会合はヒアリングだけで予定していた120分のうち90分を使った。救急と産科医療の連携の事例などについて、3 人の参考人に加え、委員からも発表があったためだ。参考人には、日本助産師会の岡本喜代子副会長、厚労省から出向中の広島県健康福祉局の迫井正深局長、青森県立中央病院総合周産期母子医療センターの佐藤秀平・母体胎児集中治療部部長が招かれていた。

■病態で分類した受け入れを
 ヒアリング終了後、岡井座長は「残り時間が少ない」としながら、骨子案についての議論を始めた。「患者の病態と受け入れ施設のマッチング」の項目について、昭和大医学部附属病院で決めた母体搬送についての受け入れ判断基準を引き合いに、「病態を分類して、『この病態であればこの施設』というのを決めた方がいいんじゃないか。『この施設は胎児・新生児が強いから当然診る。母体が緊急のときはこちら』と整理する必要があるのでは」と述べた。さらに、病院の集約化の必要性にも言及し、「理想を言えば、大きな救急施設の中にどんなものでも受け入れられて、その中に周産期もあるというようなこと。日本はこれからそれを目指してほしい」と述べた。
 これに、杉本壽座長代理(阪大医学部救急医学教授)も同調した。ただ、「周産期すべてそうしろというのではなく、それぞれの役割がある」として、あくまで周産期母子医療センターや救命救急センターのほか、多くの診療科をそろえている大学病院で実施している模範的な例としてほしいと求めた。
 海野信也委員(北里大医学部産科婦人科教授)は、「そうはいっても(救急搬送について)取れないところや、機能しないところもある。実際の受け入れ実績も共に明らかにし、地域の先生方が評価しながらやれる仕組みも必要」と述べた。
 舛添要一厚生労働相は「医療者ではない立場から」と前置きした上で、「病態について、吐き気や嘔吐など、病態判断ができるのだろうか」と疑問を呈した。
(略)
 このほか、スムーズに搬送するためのコーディネーターの配置が骨子案に盛り込まれたことについて、池田智明委員(国立循環器病センター周産期科部長) が、地元の大阪府で運用がうまくいっている例を紹介し、「コーディネーターはOBの医師がよい」と主張した。これに対し、海野委員は「数少ない医師が現場に専念できる方がいいのでは」と述べ、医師である必要はないとした。海野委員は提出資料の中で、情報システムの更新や搬送先照会の実務は、原則として行政の責任で行うよう求めている。
 厚労相はコーディネーターについて、「質の問題に尽きる。力量によってうまくいくかどうかがあると思う。役所は『こんな資格がないといけない』とか、やぼなことは言わないので、コーディネーターの要件がどういうものかを詰めていただきたい」と述べた。

■画一的な情報統合は危険
 予定終了時刻を15分ほど超過しており、岡井座長は「周産期と救急医療の情報をネットワーク化するということで、皆さん異論はないと思う。情報をセンター化し、コーディネートして早く受け入れ先を探すということで、次の次の会に(案を)出したい」と述べ、議論を終えようとした。
 そこで田村正徳委員(埼玉医大総合医療センター総合周産期母子医療センター長)が、情報ネットワークの統合に異論はないとした上で、「関東圏、大阪圏で情報コントロールセンターをつくるようにしないといけない」と述べ、都市部の情報が周辺の県にも分かるようにしてほしいと求めた。
 さらに有賀委員が、周産期救急情報システムは都道府県単位だが、救急医療情報システムは、市町村消防の単位で運用していることを指摘し、「単純に一緒にやれるかは、地域で工夫が必要。地方は地方で上手にやっていくことがあるということでは」と述べた。
 岡井座長は「地方の特性で具体的にやるなど、地方の自分たちのやり方というのがある。ここ(懇談会)は全体のグランドデザインを考えるところだから、ここで皆さんの知恵をお借りして、いいものを考えていただきたい」と、ここでも早口で引き取った。

 最後に、阿真委員が発言した。「先生方はお母さんたちがどれほど不安を感じているかご存じかと思いながら聞いていた。本当にたくさんのお母さんたちがものすごく不安を感じている。これまで医療についてわたしのところになど来なかった一般のお母さんが、何か不安を感じて訴えている。不安は不安として、医療がいかに大切なものかに気付いている大事な時期だと思う。わたしたちができることを考えてきたから、次回話したい」。

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2008年11月26日 (水)

情報発信と交流 ~ 医療と被医療の相互理解のために

先日紹介しました川崎医大産科の先生が提唱するところの「妊娠の心得11か条」ですが、なんでも予想以上に反響が広がっているようです。

「出産は死の危険さえあります」 医師作成「妊娠の心得」大反響(2008年11月24日J-CASTニュース)

   産婦人科医がブログに書いた「妊娠の心得11か条」が、ネット上で大反響を呼んでいる。背景には、「飛び込み出産」の例のように、リスクに無知な人が増えていることがあるらしい。どうしてこんなことになったのか。

安全・安心が当たり前と思っている人が増えている

    「セックスをしたら妊娠します」
    「神様から授かったら、それがどんな赤ちゃんでも、あなたの赤ちゃんです」

   こんな当たり前とも思える「妊娠の心得」。それを「11か条」にまとめたのが、岡山県の川崎医科大学附属病院で産婦人科医長をしている宋美玄さん(32)だ。宋さんがこの11か条を、自らのブログ「LUPOの地球ぶらぶら紀行」に書き、医療介護CBニュースが2008年11月17日付記事で伝えると、たちまちネット上で話題が沸騰した。
(略)
   当然知っているべきこうした「心得」が、なぜ知られていないのか。
   まず考えられるのが医療の進歩だ。ピルなどの避妊手段が普及し、出産で命を落とすケースもかなり減っている。そして、こうした医療を過信して、妊娠・出産期間を通じて、安全・安心が当たり前と思っている人が増えていることがある。

高齢出産によるリスクも増えている

   医療過信の典型的な例が、「飛び込み出産」だ。

   奈良県で2007年8月29日、救急車で搬送中の妊婦(38)が16回も病院に受け入れ拒否されて死産したケースは、妊娠7か月にもかかわらず、かかりつけ医がいなかった。
   「飛び込み出産ですと、HIVにかかっているのか、赤ちゃんが逆子なのかという情報がなく、病院側も不安になって尻ごみしてしまいます。そうして、妊婦の方も、結果的に不利益を被ります」と宋さん。「マスコミの論調は、どんな妊婦でも命を救って当然というものです。妊婦が無責任なケースでも、救えなければ医療側が責められるというのはどうかと思いますね」

   都内では、脳内出血の妊婦(36)がたらい回しにされ死亡した事故が08年10月22日に発覚した。このケースはかかりつけ医がいた。しかし、宋さんは、病院が受け入れても助かったか分からない危険な状態であったのにもかかわらず、ニュースが搬送を断ったことだけを強調していると感じた。そこで、妊娠リスクの存在を知ってほしいと思い、「妊娠の心得11か条」を書いたという。
   とくに、晩婚化が進んでいる中では、高齢出産によるリスクも増えていると宋さんは指摘する。「なおさら、合併症の発症などリスクの高さに気をつけないといけません」

   ただ、はてななどの書き込みの一部では、リスク強調は不安を与えるだけ、ますます子どもが生みたくなくなるといった声も出ている。
   これに対し、宋さんは、「患者と医者は、立場が違うので溝があるのは当然です。だから、私たちが毎日の医療で安全に力を入れていることも知ってもらい、その溝を埋める架け橋になりたい。11か条は、そのためにまとめました」と話している。

「医者はもっと自ら声を出していかなければ」とは桝添厚相も口にするところですが、マスコミにも黙殺されていた一昔前と違って今はネットで自己発信するという手段があるのは良いですよね。
もともとはネット上から広まった「医療崩壊」という現象に対する危機感ですが、近ごろの医療業界ではそこからさらに一歩を踏み出してリアル社会での活動につなげていく動きが各地で見られるようになりました。
現場では当たり前の常識とされているようなことでも部外者には案外知られていなかったりするもので、こうした活動はどんどんやっていかなければならないと思いますね。
というわけで、最近の試みの幾つかを紹介してみましょう。

コンビニ感覚で夜間受診も 小児救急医療考える 保護者ら100人 応急処置など学ぶ 豊前市で講演会(2008年11月22日西日本新聞)

 混雑しないからと夜間にコンビニ感覚で小児科を受診する保護者‐。切迫する小児救急医療の実情と家庭での応急処置法をテーマにした講演会が19日、豊前市総合福祉センターであった。保護者ら約100人が参加、子どもに異変が起こった際の見極め方などを学んだ。

 講演会は、保護者の適正な病院の利用と核家族化の進展に伴う育児不安の軽減を目的に、豊前青年会議所(久冨竜志理事長)が企画した。
 豊前築上医師会によると、管内の小児科専門医は2人だけで、診療を行っている医師を含めても計13人しかおらず、小児科医師は不足している。豊築休日急患センターでの勤務に加え、行橋京都休日・夜間急患センターへの出張も余儀なくされ、勤務は多忙という。

 講師を務めた、まえだ小児科医院の前田公史院長が、発熱、おう吐、腹痛・下痢、誤飲などの対処法を紹介。「熱があっても夜眠れて、顔色が変わらなければ大丈夫」、「せき込みだし、じんましんが出てきたらすぐに受診を」など具体例を挙げながら説明した。
 2人の子どもを持つ築上町赤幡の保育士楳沢(うめざわ)佳代さん(39)は「子どもが発熱したときの対処法などとても参考になった」と話していた。

地域医療 街ぐるみ  南砺市 /富山(2008年11月22日朝日新聞)

住民も対象にセミナー 医師を支える人材養成に力

 医師不足に悩む南砺市が、医師以外の医療職の能力向上や、住民の医療知識を深める取り組みを始めた。名付けて「地域医療再生マイスター養成」プロジェクト。医師をすぐに増やすことが難しい状況で、勤務医の負担を軽くし、今ある医療提供体制を守ることが狙いだ。
(略)
 症状の緊急度を判断し、初期症状に対応できる看護師ら医療スタッフがいれば、医師の仕事は軽減する。医学の基礎知識を持つ住民が増えれば、「コンビニ受診」などの抑止にもなるはず――。プロジェクトが目指すのは、医療の提供側と受け手の連携だ。

 同市がプロジェクトを始めた背景には、深刻な医師不足がある。三つあった市立病院のうち、2月に旧市立福野病院を外来のみの診療所に転換。診療所の小児科診療は現在、2週間に1回だ。公立南砺中央病院は10月から、夜間の救急車受け入れを一部制限している。

 同市医療局の倉知圓管理者は「もう少し今ある『医療』を大事にしないと、崩壊しかかってしまう」。そこで、富山大付属病院総合診療部の山城清二教授と協力し、昨年12月、医療スタッフ向けのセミナーを開くことから始めた。

 人材を「守る」だけでなく、「増やす」取り組みも進行中だ。山城教授は5月下旬から週1回、同病院の後期研修医らと、市内で在宅介護を受ける高齢者を往診している。同市を一般的な病気を判断・治療し、必要なときは専門医に紹介できる「総合医」を育てる場にするのが狙い。

 同市医療局も「地域医療を目指す人に研修先に選んでもらえるようになれば……」と期待している。

地域医療を考える県民フォーラム:医師不足の打開策探る 鳥取で開催 /鳥取(2008年11月25日毎日新聞)

◇「住民の協力不可欠」

 医療や行政の関係者らが参加して地域医療の問題点を話し合う「地域医療を考える県民フォーラム」が24日、鳥取市内のホテルで開かれた。参加した約400人は医師不足の現状や打開策についての講演、パネルディスカッションに耳を傾けた。

 厚生労働省の栄畑潤・大臣官房審議官が「日本の医療事情について」と題し基調講演。「現在の医師不足問題は、産婦人科や外科などのリスクを伴う診療科の医師数が年々減少している『診療科の偏在』と、各都道府県や市町村で医師数にばらつきがある『地域の偏在』の“二つの偏在”によって生じている」と指摘。「研修を終えた医師が各地域で働くようなシステム作り、産科医や外科医のリスクを減らす法整備などの包括的な取り組みが必要」と述べた。

 パネルディスカッションには、藤井喜臣・副知事や能勢隆之・鳥取大学学長ら5人が参加。兵庫県丹波市の県立柏原病院の取り組みが紹介され、本当に必要な人が受診できるよう、気軽なコンビニ感覚での受診をやめるよう地域で取り組んだところ、時間外受診が約半分になったという。また、1カ月で20日以上病院に通っている患者が実際は月2回程度の診察で十分だったケースなどが報告され、現在の医療体制では、患者の需要に応えられるだけの医師がおらず、住民の協力も不可欠であることが強調された。

 行政と医療の相互の取り組みに関心がある男性会社員(32)は「行政、医療、住民がそれぞれ動かないといけないことがよく分かった」と話していた。

小児救急医療電話 利用者の8割、病院行かず…兵庫(2008年11月20日  読売新聞)

兵庫県まとめ 安易な受診 歯止めに効果
看護師らの対応に安心感

 夜間や休日に子どもが急病を発した際、看護師らが相談に応じる「小児救急医療電話相談」(#8000)の利用者のうち、約8割が実際には受診せず、電話相談だけで済んでいるとみられることがわかった。体調のちょっとした変化でも病院に駆け込む「コンビニ受診」の歯止めに一役買い、兵庫県医務課は「経験豊かな看護師らの丁寧な対応が、保護者に安心感を与え、症状で治療順位を決めるトリアージのような役割を果たしている」と分析している。

 #8000は県が2004年11月に始めた。ベテラン看護師や助産師、保健師が常時2人体制で月~土曜は午後6時~午前0時、日祝は午前9時~午前0時に無料相談に応じる。2005年度は1万678件だった相談件数は、07年度には1・8倍の1万9258件に増加した。

 県の集計によると、07年度の約83%にあたる1万5908件が病院の紹介などをせずに、症状の相談のみで済んだという。目的別では「受診すべきかどうか」が最多の7821件で、次いで「対処法を知りたい」が7622件だった。症状では、発熱が全体の約3割を占め、嘔吐、発疹、転倒・転落、誤飲と続いた。

 また、「親切に対応してくれた」との声も多く、核家族化が進み、身近な相談相手がいないためか、育児の悩みを打ち明けるケースもあるという。

半ば崩壊している医療を支えるのはひとり医療従事者のみならず、被医療者の側からの努力も必要であるということがご理解いただけるでしょうか。
こうやって医療側と被医療側の連携と相互理解が進むばかりであれば何も困ることはないのですが、時にどうしたものか行き違いが生じることもあります。
兵庫県では上記記事のように電話相談もやっているのですが、残念ながら先日は神戸市で小児救急当番病院の新聞告知をやめるというニュースがありました。
これも記事を読んでみますと、結局は医療側と被医療側の救急医療というものに対するとらえ方の行き違いが発端となっているように感じますね。

小児科救急の当番病院「新聞掲載を中止」 神戸 (2008年11月18日神戸新聞)

 神戸市内の病院でつくる市第二次救急病院協議会(吉田耕造会長)は十七日までに、神戸新聞など各新聞に掲載している休日・夜間の小児科当番病院について、十二月から紙面掲載をやめるよう求める方針を決めた。同協議会は「軽症患者の受診につながり、本来の診療体制が維持できない」と説明。一方、保護者からは「事情は分かるが、いざというときに不便では」などと不安の声も出ている。

 同市によると、小児科の二次救急病院の輪番制は一九九一年に開始。新聞紙面の掲載は九八年に始まった。同協議会の十一病院が協力し、六甲アイランド病院(同市東灘区)や西神戸医療センター(同市西区)などとともに、市内の小児救急医療を支えている。
 二次救急病院は手術や入院が必要な患者が対象だが、実際は軽症患者が九割ほどを占め、医師の負担が増えている。当番病院は平日一病院、土日曜は二病院だが、医師不足もあって体制維持が難しくなっているという。

 半数近くが新聞を見て来院したとの推計もあり、軽症患者の受診を抑えるため紙面掲載の中止を求めることにした。神戸市と同協議会は「迷惑をかける面はあるが、理解してほしい。各新聞社には当番病院を案内する電話番号を掲載してもらえるよう要請したい」とする。
 東灘子育てサークルネットの人羅亜矢子代表(41)は「今のままの掲載がありがたいが、救急医療が抱える問題も理解できる。案内の電話番号はぜひ載せてほしい」と話している。(紺野大樹)

■代替措置求める声も

 神戸市内の病院でつくる市第二次救急病院協議会が中止を決めた休日・夜間の小児科当番病院の新聞掲載。軽症患者が多く本来の診療体制が維持できないのが理由だが、子育て中の父母にとり子どもの病気は一大事。「できる限り掲載は続けてほしい」と存続を訴える声や、代わりに病院案内の電話番号掲載を求める声も多い。
 神戸市東灘区で一歳二カ月の長女を育てる母親(35)は「娘が四カ月のとき、初めて高熱を出した。病院を探そうと、思いついたのが新聞。すぐに確認できて助かった」と振り返る。「ネットで確認できるにしても、パソコンを立ち上げる余裕もないほど焦る。当番医が新聞に載っていないとパニックになりそう。できる限り新聞掲載を」と話した。

 一方で、軽症患者の受診が多いのも確か。十一月に開かれた市小児救急医療体制検討会議会合では、ある医師から「限られた小児救急体制で、現状をいつまで維持できるのか。お尻に火がついている状態」と危機感を募らせる声も上がった。
 神戸市などは、代替策として当番病院を案内する「こうべ救急医療ネット」の掲載を依頼する。働く親でつくるワーキングマザーズスクエア代表の山本玲子さん(33)=東灘区=は「絶対というときは番号が載っていた方がありがたいが、病院を紹介してくれる番号があり、きちんとつないでもらえるのならいい」と理解を示す。
 地域医療を守るため、安易な救急受診を控えるよう呼び掛ける「県立柏原病院の小児科を守る会」(丹波市)の丹生裕子代表は「当番病院の掲載中止はやむを得ないと思う。患者側も県の小児救急の電話相談窓口を利用するなど協力してほしい」と話す。(森 信弘、小林伸哉、今泉欣也)

本気で需給バランスが崩壊していてコンビニ受診抑制をはかるのであれば、まずファーストコールは電話相談として、受診が必要と判断された場合に当番病院を案内するシステムとした方がいいかなと思いますがね。

それはともかく、そもそも二次救急とは入院を要する重症患者に対応する施設であって、地方都市で二次救急輪番制を採用しているところでも医療機関に対して公示することはあっても、一般の紙面で市民向けに広報するような情報ではないと思うのですが。
一次、二次という区分を今後も維持するつもりであるのならば、広くアナウンスすべきなのは初診を担当すべき一次救急施設のほうであって、一般への二次急公示など単に現場の負担を増やすだけなのではないでしょうか?
この辺りは何故こんな情報の新聞掲載が始まったのかの経緯が分からないと何とも言えませんが、当時の担当者が何かしら勘違いして住民サービスか何かのつもりで始めたといったことであるなら、早急に是正すべきなのは当然ですね。

さて、あまり大きな話題にもなりませんでしたが先頃こういう記事が出ていたことはご存知でしょうか?

医学生の従事したい診療科、「内科」がトップ(2008年11月18日CBニュース)

 医学生や初期研修医らが「将来従事したい診療科」のトップは「内科」であることが、全国医学部長病院長会議などが実施した「臨床研修に関するアンケート調査」の速報値で明らかになった。11月18日に開かれた厚生労働省と文部科学省の「臨床研修制度のあり方に関する検討会」で公表された。

 同調査は、臨床にかかわる現場の医学生、研修医、指導医などの意識を把握するため、全国医学部長病院長会議と臨床研修協議会が共同で実施。医学生や初期研修医、卒後3-5年目の医師ら8945人から回答を得た。

 医学生の「将来従事したい診療科または基礎系の分野」は、「内科」がトップで14.1%。次いで「小児科」(11.5%)、「整形外科」(5.1%)と続いた。初期研修医についても「内科」がトップで13.6%。これに「小児科」(6.9%)、「整形外科」(6.2%)が続いている。また、医師不足が特に問題となっている「産科系(産婦人科・産科・婦人科)」は、医学生の6.5%、「救急科」は2.1%にとどまった。

 また、国などの公的機関による医師の計画配置については、医学生の49.3%、初期研修医の56.5%、卒後3-5年目の医師の58.1%が反対した。「賛成」と「一定の時期・期間であれば賛成」「インセンティブとの組み合わせなら賛成」の条件付き賛成を合わせた割合は、医学生45.3%、初期研修医38.4%、卒後3-5 年目の医師37.9%。

 このほか、医師不足地域で従事することについては、「条件が合えば従事したい」とする医学生は70.5%、初期研修医は65.4%と、3人に2人前後に上っている一方で、「条件にかかわらず希望しない」との回答も共に20.6%あった。
 「医師不足地域で従事するのに必要な条件」としては、医学生、初期研修医共に「処遇・待遇(給与)が良い」が最も多かった。

医学生7割「医師不足地域で勤務OK」条件は給与・住居(2008年11月19日朝日新聞)

 医学生の7割は、医師不足地域での勤務も条件次第でOK――。全国160の大学と研修指定病院の医学生・研修医らを対象にしたアンケートで、こんな傾向が浮かび上がった。ただ公的機関による医師の計画配置には半数近くが反対。結果を分析した厚生労働省は「医師不足対策は、強制でなく勤務環境の整備が大切だ」としている

 全国医学部長病院長会議と指定病院でつくる臨床研修協議会が共同で10月に実施。医学生、研修医ら約9千人から回答を得た(回収率61%)。

 医師不足地域での仕事に「条件が合えば従事したい」と答えたのは医学生が71%。だが卒後1~2年の研修医は65%、卒後3~5年の医師は59%、研修医らを指導する役割の指導医は47%と、年を重ねるごとに割合は減った

 医学生が医師不足地域で働く条件としたのは、「処遇・待遇(給与)がよい」(67%)、「居住環境が整備されている」「自分と交代できる医師がいる」(以上、58%)と待遇面が目立つ。「他病院との連携がある」(45%)など、医療体制を重視する声も高かった(複数回答)。

 一方、国などの公的機関が医師の勤務地を決める「計画配置」について尋ねたところ、全体の52%が「反対」。特に卒後3~5年の医師のうち58%、研修医の57%が反対し、医学生の49%より割合が高かった。

一見して「あれ?こんなものなの?」と感じた方も多かったのではないでしょうか?
産科系志望の学生が6.5%と言いますが、今実際にこれだけの率の学生が産科系に来ている医学部がどれだけあるものでしょう。
条件次第で(その条件もよく見ればなかなか厳しいものも多いのですが…)僻地勤務も可という学生に至っては学生の7割超という高率であること、そして卒後年数を経る毎に年々その比率が低下していっていることにも注目すべきでしょうね。
現場を知らない学生だからと言ってしまうのは簡単ですが、ここで考えるべきはこうした志を持った学生達がどのような経過をたどって社会の現実に目覚め志を曲げてしまうのか、それを防ぐためには何をどうしたら良いのかということではないですか。

一昔前までは(今も?)世間知らずの医学生を引っかけるなんてことはショボい仕事の代名詞のようなものだった時代がありました。
部活動も引退して適当に国試勉強なんてしてるサークルの後輩を近所の居酒屋あたりにでも誘い出して、「どうだおい?うちに来れば毎日若い看護婦と飲み会だよ?」なんて適当なことをささやいていれば幾らでも引っかかるなんて素晴らしい時代もあったのです。
もちろんいったん引き入れてしまえば「え?毎日飲み会?何それ?」で僻地病院だろうが奴隷病院だろうが叩き売ってしまえという医局の権威が強かった時代でもあったわけですが、何しろ学生自身が進路決定と言うことに関して大した情報収集をするでもなく、耳に入ってくる噂と漠然としたイメージだけで決めていたような状況でした。

今の医学生はどうでしょう?確かに相変わらず世間知らずのお気楽学生もいるでしょうが、年々多くの学生が自らの手で情報を集めようとするようになってきている、あるいは別な言い方をするならば、自分が世間知らずであることを自覚するようになってきていると感じます。
例の新臨床研修制度からこのかたマッチングだの何だのと難しいことを言うようになりましたから、自分で情報を集めてこないとあっという間に負け組転落という焦りもあるのかも知れません。
いずれにしてもいったん自ら知ろうとするようになった医学生たちは、昔のようなあり得ない空手形にそうそう引っかからなくなるだろうし、騙されたと感じた瞬間に手のひらを返すのも早くなるでしょう。
医療側と被医療側とのコミュニケーションの問題として考えると、こうした状況は大きなチャンスであると同時に、極めて危ない事態となる可能性も秘めているわけです。

医学生らが臨床研修制度をテーマに勉強会(2008年11月19日CBニュース)

 医学生らが自身のキャリアについて学び、意見を発していくことを目的につくられた「医師のキャリアパスを考える医学生の会」が、「臨床研修制度」をテーマに第1回の勉強会を東京女子医科大で開催した。会場には80人を超える医学生らが集まり、勉強会に招かれた「医療における安心・希望確保のための専門医・家庭医(医師後期臨床研修制度)のあり方に関する研究班」班長の土屋了介・国立がんセンター院長に対して質問や意見をぶつけた。

 土屋氏は初めに、日本の医師たちが医師を育てる教育について真剣に考えてこなかったことが今の世代の負担になっているとした上で、「現役の医師を代表しておわびしたい。何とか皆さんが医師を始めるころにもう少しまともな研修制度ができるように努力していきたい」と述べた。

 会場からは、「学生側に与えるインセンティブ」や「ローテーション」など、臨床研修制度に関する質問や意見のほか、5年生時に国家試験を受験する資格を認め、合格すれば実習を受ける権利を与えるなどの「卒前教育の充実」を求める声などもあった。

 同会の事務局の森田知宏さん(東大3年)は、「これほど大勢の人が集まるとは思っていなかった。こういう機会がないと、リアルタイムの情報を知る機会がなく、ネットに情報はあるがそれすら知らないという状況がある。何を求めるかという意見発信をする前に、何も知らないので、自分が何をしたいのかがまず分からない。選択肢も何もないので、この会を通じて漠然としたものを何か具体化できるお手伝いができたらいい」と、初の勉強会を終えた感想を語った。

最近では医療という業界がなにかと世間の注目を集めるようになっていますが、社会が医療について関心を抱くのと同等以上に、医療の側でも社会の動きに目を光らせ、耳を澄ましているということを常時意識していなければならないというわけですね。
なんでもないひと言に心痛める者がいるというのは医療側も被医療側も同じこと、医師不足やコンビニ受診問題などをはじめとする医療問題数多の今の時代においては、医療側から被医療側というだけでなく、被医療側から医療側に対しても相手を尊重しているのだという姿勢をアピールしていくことが大事になってきているということです。
となれば若い医師達を集め定着させるために必要なことは何かを端的に言えば、真摯に彼らの待遇を改善するよう努める、そして何より適当に嘘をついて騙そうとか二階に上げて梯子を外すなどといった不誠実なことはしないという、ごく当たり前のことになるのではないでしょうか。

医療であれ何の業界であれ人間同士の関係が基本である以上、最後にものを言うのはお互いの信頼であることは言うまでもありません。
「聖地」だの「心が僻地」だのと一度ついてしまったレッテルをはがすことがどれほど困難であるかを考えれば、何であれ思いつきで行動に走る前に少しだけ想像力の翼を広げてみることが必要なんだと思いますね。

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2008年11月25日 (火)

近ごろ見かけたちょっとアレなニュース

厚労省元幹部殺害事件の容疑者が自首したそうですが、首をひねるのはその殺害に至った理由です。
次官経験者を次々襲うつもりだったと言いますから相当なものがあったと思うのですが、自供によればその昔保健所にペットを殺された腹いせだと言っているとか。
さては最近流行り?の電波系かとも思うわけですが、こういう奇妙な行動が蔓延しているのはどうやら日本に限った話でもないようなんですね。

水兵を過失致死罪で起訴=「退屈だった」と供述-ロシア原潜事故(2008年11月24日時事通信)

ロシア太平洋艦隊の原子力潜水艦で消火装置が誤作動し、乗組員ら20人が死亡した事故で、同国最高検察庁のバストルキン捜査委員長は24日、正当な理由もなく消火装置のスイッチを入れた疑いで逮捕された水兵を同艦隊軍事捜査局が過失致死罪で起訴したことを明らかにした。有罪になれば、最高で5年の禁固刑となる。
 この水兵は徴兵ではなく、軍改革の一環として導入された契約制で軍務に就いていた。消火装置を作動させた詳しい経緯や動機は明らかにされていないが、一部のロシア紙は水兵が「退屈だったから消火装置のスイッチを入れた」という趣旨の供述をしたと報じている。水兵には精神鑑定が行われる予定という。 

これは怖い…退屈だったからとうっかり押してはいけないボタンを押しちゃったりしたら、みんなで午後の恐竜ごっこをする羽目になっていたかも知れないじゃないですか。
今日はいろいろな意味でちょっと怖いと言いますか、何か外れているかなという最近の話題を取り上げてみましょう。

心臓マッサージには「ステイン・アライブ」(2008年10月17日産経ニュース)

米心臓協会(AHA)はこのほど、心肺停止時の蘇生救急としての心臓マッサージ(胸骨圧迫)を行うときのリズムとして、ビージーズの1977年の大ヒット曲「ステイン・アライブ」が最適だとの研究結果を発表した。ロイター通信が伝えた。

 同協会は、心臓マッサージを行う際のリズムとして、1分間に100回の速さを推奨している。これを実際の楽曲に当てはめてみると、「ステイン・アライブ」は1分間に103拍と、ほぼ一致しているという。

 実際に大学で行われた心臓マッサージ訓練の際にも、「ステイン・アライブ」を聞くことで、正しい速度が保たれる効果があったとの報告があったという。研究者は「この曲は心臓マッサージにぴったりの上、だれでも知っている」と効用を強調している。

ああ、その…天下のAHAもこんなこと広めちゃっていいんでしょうかね…
それはともかく日本の若年層でこの曲知っている人ってどれくらいいるものなんでしょうか?
聞けば「ああそう言えば」という人は多いのかも知れませんが、とっさの時に誰でも思い浮かぶような曲かと言われると疑問符じゃないですか。
ここは是非とも日本なりに誰でも知っている心マのテーマソングなるものを検討していただきたいですね。

「私語は授業妨害」学部長が掲示 モンスター大学生が増えた!(2008年11月14日J-CASTニュース)

 「授業中の私語による授業妨害について」。こんな掲示が関西の名門私立大学に張られていたと新聞コラムが紹介し、話題になっている。私語は、教授らが注意しても効かないほど酷いというのだ。モンスター大学生が増えているということなのか。

■関西の名門私学が教室に掲示

 名門私立大学でも、私語が酷いのか。和歌山県の地方紙、紀伊民報の2008年11月11日付コラムがネット掲示板で紹介されると、掲示板やはてなブックマークなどで、こんな共感や驚きの書き込みが相次いだ。

 このコラムでは、関西でも有数の名門私学が、私語で「授業に大きな支障が出ている」と、学生の自覚を促す学部長名の掲示が教室にあったと紹介。その掲示では、「大学生にこのようなことを伝えなければならないことは、慚愧に堪えない」とまで書かれていたというのだ。そのうえで、コラムの筆者は、教授らが学生を静かにさせられずに学部長に言いつける現状を嘆き、そんな「幼稚化」した教授らは、「さっさと教壇を去ればいい」と指弾している。

 ネット上では、この名門私学がどこかという点とともに、なぜこんなに私語が酷いのかが論議に。書き込みを読むと、小学校の学級崩壊、モンスターチルドレンの「ゆとり世代」が大学生になったという指摘が多い。大学側の理由としては、競争激化の中で、教授らが「お客さま」の学生を注意できないことを挙げる声があった。
(略)
 一方、慶大の小林節教授は、他大学への特別講義などで、次のようなケースがあったと明かす。
  「こんな学生がいたことがあります。私語を注意すると、『先生、私たちの授業料で食っているんでしょう』と。しかし、教師と学生は対等ではありません。だから、『威張るな』と言いました。講義中に帽子を被っていた学生もいました。怒ると、次の時間にはいなくなりますね」

 なぜ平気で私語をする大学生がいるのか。小林教授は、こうみる。
  「大人が子どもを叱らなくなった、世の中全体の風潮でしょう。高校や予備校で私語を許してきた。その子が大学生になっているということです」

 私語対策には、各大学も苦慮しているようだ。

 神戸山手大学では、3年前から講義系の主な科目で、座席指定を義務付けている。「仲良しで固まったり、教室の後ろで目が届きにくくなったりすると、私語が増えるんです。学生から『後ろを注意しても静かにしてくれない』と要望があったのがきっかけです」。また、大阪電気通信大学では、2年前にゲーム機「ニンテンドーDS」を授業に使い始めたところ、私語が少なくなり、それもあって拡大導入した。「学生が授業に集中できるようになり、コミュニケーションも活発になった」といい、私語防止には授業の工夫も大切なようだ。

 慶大の小林教授は、教授が教授らしくすることで私語を防いでいる。
  「授業中の私語や携帯メールなどは許していません。『それが嫌なら出て行け』と言います。つまみ出すために、大学院生のティーチングアシスタント2人を付けたほどです。教室は教授以外に管理できないのに、それができないのは、だらしがないんです。学部長が口出しできるのは、学生が焚き火をしたなど特別な場合です。もちろん、教授が予習をきちんとして、最先端のいい講義をするのが最も大切で、私も心がけていますよ」

待て、DSで授業に集中できるようになったって、それもしかして別なことに集中してないか?!(苦笑)

それはともかく、自分らの知っている時代では居眠りや授業不参加はありましたが、こういうのはあまりなかったような。
これも時代が変わったということなのかも知れませんが、根本的には教授・講師が学生の顔を把握していないとこういうことになりがちなのかも知れないですね。
その昔には最初の講義で全学生の顔写真を撮って閻魔帳に貼り付けているというオッカナイ教官がいましたが、今の時代だったら個人情報保護法がどうとか叩かれかねませんね。

電車内に幼虫200匹バラまく 「驚く女性客見たかった」 35歳男を逮捕(2008年11月24日産経ニュース)

 走行中の京阪電鉄の特急電車内にミールワームと呼ばれる昆虫の幼虫約200匹をばらまいたとして、大阪府警枚方署と鉄道警察隊は24日、威力業務妨害の現行犯で兵庫県西宮市の会社員、水田学容疑者(35)を逮捕した。水田容疑者は「驚いた乗客の女性が足をばたつかせる姿を見たかった」と供述しているという。同電鉄では今月だけで同様の被害が他に18件あり、府警で余罪を追及する。

 調べでは、水田容疑者は同日午前10時ごろ、大阪府寝屋川市内を走行中の中之島発出町柳行き臨時特急電車の2階席で、座席の下にミールワームをばらまいたところ、警戒中の鉄警隊員らが確認、逮捕された。

 ミールワームは全長約2センチ。水田容疑者がもっていたリュックサックからは他にミールワーム約3600匹が入ったケース約10個が見つかっており、府警はこれらもばらまくつもりだったとみて調べている。
 ミールワームはゴミムシダマシ科の昆虫の幼虫の総称。小鳥など小動物のエサとしてペットショップなどで市販されている。

ちなみにミールワームの写真付き解説はこちらですが、どう見ても芋虫です本当にありがとうございました。
まあこんなものばらまかれれば大概の女性は(男も?)そりゃ驚くだろうとは思いますが、驚かせようと考えてみる方法論の選択としてそれはどうなのよと。
ところで壊疽などの治療法の一環としてこのところ日本でも蛆虫が臨床応用されるようになってきていますが、ミールワームをググってみていましたらばこんな動画が出てきました。
う~む、この旺盛な食欲?を見ればそれは傷口もキレイになろうというものですよね…て言うか、これじゃ余計なところまで囓られそうですが…

【トレビアン動画】パワハラか!? 遅刻した社員に反省文を読ませYouTubeに公開!(2008年11月25日トレビアンニュース)

ある企業が遅刻した社員を駅にて大声で反省文を読ませ、その模様を撮影した動画を『YouTube』に堂々と公開するという大失態を犯してしまった。
このような大失態を犯したのは『株式会社ファーストステップ』という企業。社員の3度目になる遅刻の罰として駅で反省文を読ませるという行為に及んだ。

同社のブログには“株式会社ファーストステップ遅刻罰。 貸会議室 渋谷”というエントリー名で以下の様に書かれている。

    みなさんこんにちは。
    先日遅刻の罰則を決めたのですが。
    Nさんが3回目の遅刻をしてしまったので、
    その罰の様子を載せます。駅に一人で行き、駅員に許可を
    とって撮影してきたものになります。

このブログに対してコメント欄は大荒れし、以下の様な意見が挙げられている。

・これは前代未聞、会社の失態ですね
・取引先に見られない事を願ってます
・この社員に訴えられるかも知れませんね。 もう手遅れですけど。
・何処の掲示板行ってもあんたの会社とブログのURLだらけだよ・・・涙
・社長かなんか知らんけど人間としての質を疑うね。

と、『YouTube』に動画を公開したことに対して批判が飛び交っている。
確かに反省文を読ませる会社は世の中にいくらでもあるのだが、それを公開配信したのはこの会社が世界初なのではないだろうか?
ましてやこのような動画を公開したら企業イメージが低下することくらいは容易に分かりそうなものだが……。

この騒ぎはブログ内だけでなく、『2ちゃんねる』にも広まり騒ぎは拡大している。
現在上記の該当エントリーは消されているが、『魚拓』やキャッシュページなどにより閲覧することができる。

今はセクハラやパワハラが問題となっている社会なだけに、罰則を課すときは十分に注意が必要だろう……。
社長の謝罪も『YouTube』で!?

動画と言えば本日のメインディッシュはこちらでしょうか。
遅刻する方も遅刻する方なのは異論なきところでしょうが、これはちょっと会社としても品位なり品格なりという点でどうなのよと言いますか、やはりやりすぎでしょ。
こうして会社名を出してやっちゃうと善良な社員さんにまで多大な迷惑をかけることになりかねないですから、早まったことをやっちゃう前に踏みとどまって欲しかったところです。
しかし昔ならリアルでさらし者とかやっていたところなのかも知れませんが、ほんとに「ネットにさらすぞ」が罰になる時代なんですね。

ところで「株式会社ファーストステップ」でググると中央区にあるコンピューターソフトなどを開発している会社と、目黒区にある貸会議室の会社とが引っかかってきます。
貸会議室云々というところから後者の方が該当する会社なんだと思いますが、ここの会社ではHPにメディア掲載歴を載せてるページがあるんですね。
たぶん今までのどんな記事よりも今回の記事の方が社会的に有名になったんじゃないかと思うんですが、この記事も掲載するんでしょうか?

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2008年11月24日 (月)

マスコミは国民の代弁者にあらず

じつは狙ってやってんじゃないかと感じるところもある毎日新聞ですが、その自爆ぶりは世間ではとっくに周知の事実化してしまっているようです。
近ごろではあきれるを通り越して心配されてしまっているというその様子を紹介してみましょう。

社説まで間違えた!? 大誤報連発の毎日新聞は大丈夫か(日刊サイゾー)

 19日、元厚生事務次官宅が相次いで襲撃された事件について、ネット上の百科事典「Wikipedia」に犯行を示唆する"予告"書き込みがあったとする誤報を伝え、「おわび」を掲載した毎日新聞。UTC(協定世界時)で表示されている「Wikipedia」の編集時刻を日本時間と勘違いし、事件後の書き込みを「事件前」だと思い込んでしまうという、あまりにも初歩的なミスにはネット上でも批判と失笑の声が渦巻いている。
 実は最近、毎日新聞によるこうした誤報が相次いでいるのだ。

 先日来、毎日新聞の英文サイトのコラム「WaiWai」が、いわゆる「変態ニュース」を無断掲載していて、社会問題になったことはご存じの通り。
「32社の新聞や出版社の記事を勝手に引用していたことも明らかになり、今年6月にようやく閉鎖になったね。契約記者の暴走をチェックしきれなかったことが原因だった。社長まで処分した上で、謝罪記事も出したけど、ネットユーザーが批判を繰り広げ、まだ尾を引いている」とメディア担当記者。
 だが、問題は英文サイトばかりにはとどまらない。なんと毎日新聞本紙も、誤報・虚報のオンパレードだというのだ。「しかも、社説や政府人事など、毎日の中でも一線の記者が手がけた記事ばかり。『いったい、どうしちゃったの?』と話題沸騰だよ」(大手紙幹部)
 それらを検証してみよう。

(1)9月30日朝刊の社説「危機乗り切りへ柔軟な運用を 米金融対策」
 社説は冒頭、「曲折の末、米国の金融安定化策がようやくまとまった。何はともあれ、法成立の運びとなったことが朗報だ。交渉が決裂でもすれば、金融機能が完全にまひし、計り知れない混乱が世界の市場を襲っていたかもしれない」と書いた。ところが、金融安定化法案は、米時間29日のうちに下院で23 票差で否決され、その後の世界的な株価暴落を招いたことは周知の事実。「同日の早いうちに用意した予定稿を差し替えず、ほったらかしだったんだろうね」(大手紙幹部)

(2)10月15日朝刊1面「日銀副総裁 平野元理事提示へ 政府、きょう国会に」
 平野英治元理事の顔写真入りで報じた1面スクープ。ところが、15日夕刊で朝日新聞など各紙は、現職理事の山口広秀氏を副総裁に昇格させる政府人事を掲載して毎日の記事を"訂正"。政府も15日中に、山口氏を充てる人事案を提示したため、世紀のスクープは大誤報だったと証明されてしまった。
 やむなくその後の報道で毎日は「政府は一時、元日銀理事で国際畑が長い平野英治氏の副総裁起用の方針を固めたが、日銀の企画部門など中枢業務にかかわり、金融政策全般に精通した山口氏のほうが適任と最終的に判断した」と苦し紛れの弁明。

(3)10月17日朝刊社会面「山口組 静岡・富士宮の後藤組を絶縁か」
 この記事は「指定暴力団山口組系の有力組織、後藤組の後藤忠正組長(66)が、山口組から絶縁されたとみられることが16日、警察当局の調べで分かった」と書き、「絶縁されると、山口組への復帰はできない」と、絶縁が既定路線であるかのように報じた。
 ところが、実際は「絶縁」ではなく、復帰が可能な「除籍」。その世界のしきたりからみると、あまりにも大きな違い。毎日も誤報の重さに気づいたのか、21日朝刊で「絶縁より軽い『除籍処分』にしたことが警察当局の調べで分かった。後藤組長が引退の意向を示したため、除籍で落ち着いた模様だ」などと、まるで誤報を他人の仕業のように報じているのだから、始末が悪い。
「毎日が絶縁と報じた前夜、警察当局の捜査4課の刑事たち、いわゆるマル暴担当たちは絶縁状が回ってこないので除籍じゃないかと気づき、後藤組長の除籍と引退までキャッチできていた。毎日は最初の情報を掴むのはうまいけど、そのあとは放置状態。チェック機能の甘さという意味では、英文サイトと同じ問題をはらんでいるんじゃないかな」(警察担当デスク)

 毎日新聞社長室は本誌の取材に、一連の報道が結果として見立て違いとなったことを認めた上、「事態の展開に応じて、読者への誠実な説明は果たしていると考えます。必要な場合は訂正、おわびを掲載しております」と回答。
 本誌は、朝日、読売、日経3紙による大手マスコミの寡占状態を突き破るためにも毎日の役割の大きさを重視しており、毎日新聞社長室には「是正の上に今後とも有益なる情報を国民に提供してくださることを期待いたします」と本誌の意思を伝えておいた。今もその気持ちに変わりがないことを強調しておきたい。

平素のマスコミの論調からすると「誤報」であれば許されるというものでもないのでしょうが、近ごろでは毎日新聞に限らずマスコミ全般でどうも誤報と呼ぶべきか捏造と呼ぶべきか区別しがたい報道が多いようです。
猫駅長を野良と誤報するくらいならまだ可愛げ?もありますが、たとえば先日の麻生氏「勘違い発言」のニュース、ワイドショーでは会場が冷え切っていたかのように報じられていましたが、実態はずいぶんと違ったそうですね。

首相 教員会合と勘違い?PTA大会で親批判

麻生太郎首相は19日、都内で開かれた全日本私立幼稚園PTA連合会全国大会であいさつし「しつけるべきは子どもより母親だと言った幼稚園の園長を尊敬している」などと保護者側に厳しい発言を繰り返した。

首相は「妹が幼稚園の先生をしていたので苦労を聞かされた」と切り出し、「お子さんの後ろに付いている親で苦労している人もいると思う」「はしの持ち方のしつけは家庭でやるものだと言おうものなら、あの先生は親切じゃないという話になる」と教員に話しかけるような表現が続いたことから教員の会合と勘違いした可能性が高い。

ただ、途中で保護者が多いと気付いたのか「子どもは愛情を持って育てるべきだ」と急に批判をトーンダウンさせた。

318 名前:名無しさん@九周年[sage] 投稿日:2008/11/19(水) 23:57:55 ID:w9bVH6ftO
これ、出席した人に聞いたら、概ね好評だったって。
役員やってる親は、先生以上にモンペと対峙してるから
もっと言っていいよって雰囲気もあったみたい。
麻生さんが間違いに気がつかない程度に、ウケてたらしく
テレビ見た人達が聞いたら、報道の仕方に驚いてた

▼ 383 名前:名無しさん@九周年[sage] 投稿日:2008/11/20(木) 00:05:06 ID:w9bVH6ftO
>328
うん
全然、場は凍りついてなかったって。
あと、役員するくらいだから、専業主婦率高いので、違和感もなかったらしい。
wktkで報告待ってたのに、拍子抜けしつつ、報道の印象操作に驚くママもいたよ。

こういう記事などを見ていくと、メディアが言うところの国民の声と我々が発している声というものは全く別物なのかなという気がしてきませんか。
先日も書きました奥田発言に震え上がるテレビ局という構図にしてもそうですが、どうも口では国民の代弁者と自称しながら実際は別な方向ばかり見ているんじゃないか?と思うマスコミが多いのが問題なわけです。
マスコミがこれだけ金になる産業となった現代において、彼らが公正中立であるというのはとっくに幻想となっていますが、そうであるならちゃんと自分たちのスタンスを明らかにするなり、他人を批判するのに「国民の怒りの声が」なんて他人の名を騙るようなことを言うなということですね。

毎日新聞がすっかり読者離れを起こして今や経営がヤバイなんてことは周知の事実になってきましたが、先日は「日本のクオリティーペーパー」を自認する朝日新聞が大幅赤字に転落というニュースがちょっとした話題になりました。
いずれも発行部数減少や広告収入低下などいろいろな要因があったようですが、結局のところ彼らが購読対象である消費者のニーズを満たしていない、あるいはそもそも時代の要求についていけていないことが根本原因のような気がします。
新聞を手に取る、テレビの報道番組をつけてみる、そこで目に飛び込んでくるニュースにどれくらい興味があるかと言うと、ほとんどの人にとっては「ああそう、それで?」という程度のものなんじゃないでしょうか?
そんなものに時間を浪費するくらいなら、自分の興味があるジャンルの話題をネットから自分で探し出して来た方が早いと感じることが多くなっていませんか?

今の時代は一方的に発信されるマスコミ情報のみではなく、視聴者自らが情報を検索し収集するということが当たり前に行われるようになってきていますが、一部メディアにおいてはかつての情報格差時代の幻想が抜けきっていないんじゃないでしょうか。
過日ルパート・マードック氏が新聞業界を批判したと報じられましたが、こういう問題は特定国の新聞業界のみの話でもなく、広くマスコミ全般に関わる共通した問題のように思えます。
マスコミ側の選別したニュースをただ眺めているだけで消費者が満足していられるのは、あくまでマスコミと消費者の興味と感性が一致している範囲内だけであるということをそろそろ彼らも認識していかなければなりません。
捏造まがいのでっち上げ記事で一時の興味を引いたとしても、結局のところは自らの業界の寿命を更に縮めていくだけに終わるんじゃないですかね。

★ メディア王マードック氏、時代についていけない新聞業界を批判(2008年11月17日AFP)

国際的なメディア王として知られるルパート・マードック(Rupert Murdoch)氏が16日、新聞業界について語り、新聞は「絶滅」しかけているわけではないが、編集者や記者の考え方のなかにはデジタル時代において時代遅れの部分もあると批判した。

 豪州出身のマードック氏は米メディア大手ニューズ・コーポレーション(News Corp)を率い、グループ傘下のメディアには英タイムズ(Times)紙や米経済紙ウォールストリート・ジャーナル(Wall Street Journal)ら大新聞が連なる。

 メディア企業もほかの業界同様、インターネットの登場によって新たな競争に直面しているというのがマードック氏の見解だ。しかし、他業界がインターネットを利益をもたらすものとみなしている一方で、「われわれの記者仲間のなかには誤ったとらえ方をしている皮肉屋もいる」と言う。「彼らは自分たち自身の死亡記事を書くのに夢中で、この絶好のチャンス到来に飛びつけないありさまだ」と皮肉を込めて述べた。

 各紙では印刷版の発行部数は今後も減少が予測されるが、ウェブサイト版や、顧客にカスタマイズしたニュースや広告のメール配信などの分野では拡大が見込めるとマードック氏はみている。

 同氏が考える現在の新聞業界最大の2つの問題点は、新しいテクノロジーから派生する競争と、「編集部門の中心部に広がっている自己満足と横柄さ」だ。「時代遅れになるのは新聞自体ではなく、新聞にとって最も貴重な財産である読者とのつながりを忘れている編集者や取材記者、経営者だ」

 マードック氏は旧来の新聞編集からの変化をこう語った。「昔はひとにぎりの編集者だけで、何がニュースかを決めることができていた。いわば神の決断のようなもので、彼らが取り上げた記事がニュースとなったし、彼らが無視した出来事は起こらなかったも同然だった。しかし、今は違う。編集者からそうした力は失われつつある」

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2008年11月23日 (日)

今日のぐり「そば道場 田舎屋」 「そばの館」

いやあ危ない危ない…カレンよくやりましたよホント。
しかし相変わらず綱渡りなのは同じことですからね…

ところで今日は二つやる予定ではなかったのですが、何故か行きがかり上そういうことになってしまいました。

今日のぐり「そば道場 田舎屋」
新見市南部の観光地「井倉洞」の側からうねうねと続く山道を登っていきますと、ちょうど井倉洞の頭上?に広がるのが草間台地です。
石灰岩質の台地だけにカルスト地形の見所は多々あるようで、新見市が宿泊観光も出来る「草間台地村」を整備していますが、暑い季節にはなかなか来るのによさそうなところですよね。
今回はその一角にある「そば道場 田舎屋」を訪問いたしました、が…

見た目は田舎屋風の一軒家ですが、こちら蕎麦打ち体験もできるというのが一つの売りらしいですね。
近隣に物産の直売所もあるせいか、こんなところにどこからと思うような人の数で、お店の外はちょっとした行列になっています。
中に入って蕎麦茶を飲みながら待つことしばし…というよりかなりたってからですが、注文のざる蕎麦が登場しました。

ザルの上に載っているのはいかにも田舎風の太打ち蕎麦ですが、蕎麦つゆにつけて口に運んでみると、う~む…
そもそもこの蕎麦つゆもダシの風味が立っていない上に、妙に甘ったるくて切れ味がなく、おまけにすりゴマまで散らされているという「ちょっと新蕎麦に合わせるにはどうよ?」なシロモノなわけです。
蕎麦自体も何と言うのでしょうか、田舎蕎麦系は基本的に嫌いじゃないんですが、蕎麦の風味、茹で加減、味とのど越し、いずれもちょっと悲しくなるというもので、これは一枚たいらげるだけでもう結構って感じですかね。
今日の味で判断する限り、蕎麦打ち実習なんてやる前に肝心の蕎麦の味をもう少し何とかしてもらいたいというのが正直なところです。

この日は特に混雑していたせいもあり道場の余地はありますが、見ている限り客室係のオペレーションにも厨房での蕎麦自体の扱いにも改善の余地は多々ありそうですね。
高みから見下ろす景色はちょっとしたものですし、夏の盛りにでも避暑がてら蕎麦打ちでもやってみようかというなら幾らかの楽しみにはなるのかも知れませんが、この時期に蕎麦を食いにわざわざ行く場所ではなかったですね。

今日のぐり「そばの館」
今日は本場の千屋牛でも食ってみる予定だったのですが、出だしがあまりにあまりだったので口直しと再調査をかねて「そばの館」を訪問しました。
前回に来ました時には今までになくちょっとアレな出来で「いったいどうしちゃったの?」と心配していたところですが、結論から言えば今日はよかったですよ。
先日はいったい何だったのかと思うほど切れ味のある茹で上がりで、新蕎麦らしい風味もなめらかな食感とのど越しもいつもの味わいを取り戻しています。
今日の味だったら前回の失点は十分に取り戻しましたかね。

前回も感じましたが、ここの蕎麦つゆは以前より味が立って良くなっているように感じるのですが、意識して変えてきているのでしょうか。
蕎麦つゆと言えばここの欠点なんですが、蕎麦つゆが結構器にいっぱいいっぱいで入ってくるんですよね。
店内には「ご自由におつかい下さい」なんて蕎麦つゆのとっくりが置いてあるんですが、これで不足するってことはまずないと思うんですが。
それ以前にこれで蕎麦を食い終わったところで蕎麦湯で希釈するような余地がろくにないものですから、やたらと辛い蕎麦湯を飲まなければならない羽目になってしまいます。
どうせあちこち蕎麦つゆを置いているんですから、是非ともデフォルトの量を減らすか、いっそ空容器に自分で注がせるようにしてほしいですね。

しかし今日もかなりお客は並んでいたんですが、ちゃんとやれば出来ると言うことならこの前は本当に何だったんでしょうかね?
う~む、謎だ…

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2008年11月22日 (土)

杏仁割り箸事件刑事訴訟控訴審判決 ~ そしてその後の世界へ

この11月20日に杏林大学病院での俗に言う「杏林割り箸事件」刑事訴訟の控訴審判決がありましたことは既にご存知の方が多いと思いますが、まずは記事から紹介してみます。

割りばし事故、2審も元杏林大病院医師に無罪…東京高裁(2008年11月20日読売新聞)

 東京都三鷹市の杏林大学付属病院で1999年、保育園児杉野隼三(しゅんぞう)ちゃん(当時4歳)ののどに割りばしが突き刺さっているのを見落として必要な診療を行わず死亡させたとして、業務上過失致死罪に問われた元同病院医師・根本英樹被告(40)の控訴審判決が20日、東京高裁であった。
 阿部文洋裁判長は「被告の医療措置に過失はなく、救命も困難だった」と述べ、無罪とした1審・東京地裁判決を支持、検察側の控訴を棄却した。医療事故の刑事責任追及に対し、厳しい司法判断となった。

 根本被告は99年7月10日、耳鼻咽喉(いんこう)科の救急当直医として、綿あめの割りばしをくわえたまま転倒し搬送された隼三ちゃんを診察した際、必要な検査を行わず、傷口に消毒薬を塗るなどしただけで帰宅させ、翌朝、隼三ちゃんを頭蓋(ずがい)内損傷で死亡させた、として起訴された。死亡後の解剖で約7・6センチの割りばし片が脳に刺さっているのが見つかった。
 06年3月の1審判決は、診断ミスがあったことは認めたが、治療しても延命の可能性が低かったとして無罪を言い渡したため、検察側が控訴していた。

 この日の判決は事故について、特異な例で当時は診療指針が確立していなかったとしたうえ、隼三ちゃんの意識障害も強くはなかったことなどから、「割りばしによる頭蓋内損傷を疑って問診をしたり、コンピューター断層撮影法(CT)検査などを行ったりする注意義務はなかった」と、被告の過失を否定した。
 また、救命の可能性についても、仮にCT検査を行ったとしても、割りばし自体を見つけることはできなかったなどとして、「延命も確実に可能だったとはいえない」と結論づけた。

割りばし事故:医師、2審も無罪 東京高裁(2008年11月20日毎日新聞)

 東京都杉並区で99年、保育園児の杉野隼三(しゅんぞう)君(当時4歳)がのどに割りばしを刺して死亡した事故を巡り、業務上過失致死罪に問われた医師、根本英樹被告(40)の控訴審判決で、東京高裁は20日、無罪とした1審を支持し、検察側控訴を棄却した。阿部文洋裁判長は「脳の損傷を想定するのは極めて困難だった」と述べ、1審が認めた治療の落ち度を否定した。
(略)
 1審・東京地裁は「脳の損傷を想定すべきなのに軽症と診断した」と根本医師の過失を認めたが、阿部裁判長は「当時の医療水準では、脳の損傷を疑ってCT(コンピューター断層撮影)検査などをすべき注意義務があったとはいえない」と過失を否定した。
 さらに「死因は具体的に特定できない」としたうえで「仮にCT検査をしたとしても救命や延命が確実に可能だったとはいえない」と結論付け、1審と同様に治療と死亡との因果関係を否定した。
 1審が「根本医師が落ち度を自覚し、隼三君の死後にカルテに加筆した」と指摘した点については言及しなかった。【伊藤一郎】

 ▽根本医師の話 結果として患者さんに痛々しい死の結果を生じさせ、改めて哀悼の意を申し上げます。本日の判決で過失そのものも否定され、裁判所の判断に感謝します。

 ▽東京高検の鈴木和宏次席検事の話 検察側の主張が認められず遺憾。

 ◇母文栄さん「隼三の死、無駄にしないで」
 「隼三の死が無駄にならないよう、医療に携わる皆様が努力してくださることを願います」。判決後に会見した隼三君の母文栄さん(51)は風呂敷に包んだ隼三君の遺影を抱きしめ、声を絞り出すように語った。「1審は過失を認めてもらえた。今回は納得のできない結果です。一言の謝罪を求めた9年間でした。『もう少し丁寧に診察すれば良かった』と言ってもらえれば苦しい闘いはなかった」と悔しさをにじませた。
 事故以降、インターネット上には両親を中傷する書き込みもあったといい、父正雄さん(57)は「隼三に障害があると事実でないことを書かれたり、遺族はクレーマーだという書き込みもあった」と心ない言葉の暴力に怒りをあらわにした。

まずは亡くなられたお子さんのご冥福をお祈り申し上げます。

判決原文に当たっていないので報道記事からの判断ですが、1審判決とは異なり、見落としや治療の落ち度といった過失を認めず、一審判決に引き続き死因との因果関係を否定したという内容でしょうか。
今のところこの事件については民事、刑事ともいずれも被告の責任を認めずという結果が続いていますが、今回の司法判断はネット上で行われた多くの医学的検証の結果ともっとも近いものではないかと言う気がします。
こういう大きな事件ともなると近ごろでは判決前から注目を集めるわけですが、福島大野病院事件判決といい今回といい、このところかなり「医学的見地からみて妥当」と思える判決が続いているような気がするのですが、司法的見地からみるとどのような評価になるのでしょうか。
こうした現場の感覚をそれなりに尊重した(ように見える)判決がちゃんと続いていたならば、あるいは今日の医療崩壊という現象ももう少し違ったものとなっていたのかも知れませんが…

ところで、遺族にとっては今回の刑事裁判というものにはどのような意味があったのでしょうか?
民事と異なって直接的な被害の補償や救済を目的にしているわけではないのでしょうが、判決後のコメントから推察するに何も得るところがなかったと言えるのではないでしょうか。
一連の裁判を通じて医学的事実というものはある程度明らかになってきているように思えますが、遺族の求める真実というものはそれと同じではないし、また今後どれほど裁判を繰り返しても求める真実に至る可能性は極めて少ないのかなと思わざるを得ません。
少なくともこの遺族にとって法廷と言う場は何らの救済を得られるものではなかった、しかしそもそも法廷と言う場は決して真実を求める場所ではないと言うところに、医療訴訟における患者側の不幸の根があるのかも知れません。

さて話はかわって、医療と司法という観点から少し前にこんな判決が出ていたことをご存知でしょうか?
このところ医療関連の記事ではにわかに注目を集めている東洋経済から引用させていただきます。

患者の身体拘束に高裁が違法判決、医療現場に与える衝撃 -(2008年11月13日東洋経済)

 「事実認定では納得できない点もありますが、病院の対応に非があったと裁判所に認めてもらえたことは本当にうれしい」
 愛知県稲沢市に住む栗木満里子さん(66)は、名古屋高等裁判所の判決を聞いて「母親の悔しい思いを晴らすことができた」と感慨深げだ。

 名古屋高裁は9月5日、栗木さんの実母(2006年に83歳で死去)が入院先の一宮西病院(愛知県一宮市、157床、多羅尾信院長)で受けた身体拘束による心身の苦痛について、同病院を運営する医療法人に50万円の賠償を命じる判決を出した(同法人は最高裁に上告)。一審の敗訴判決からの逆転劇だった。
 「病院で受けた身体拘束に関して、患者側が訴えた裁判はおそらく全国でも初めて。身体拘束を是とする全国の病院に警鐘を鳴らす意味は大きい」と、原告を支援してきた吉岡充・上川病院院長は評価する。

おむつでの排せつを強要 睡眠剤過剰投与の疑いも

 入院患者や入所高齢者の手足を縛る行為は、病院や介護施設で広範に行われてきた。主に転倒の防止や暴力行為の予防といった医療安全や、周囲の患者に迷惑を及ぼさないためのやむをえぬ措置として容認されてきた。しかし、「身体拘束で患者は心身を傷つけられ、結局は死を早める。病院が行ってきたことの多くは、決して患者のことを考えたものではない」と吉岡院長は指摘する。
 そして吉岡氏ら医療・介護関係者による「身体拘束ゼロ」への取り組みが実を結び、00年施行の介護保険法に身体拘束禁止規定が導入。やむをえず身体拘束を行う場合には、切迫性、非代替性、一時性の3基準を満たすことが必要とされた。
 とはいえ、廃止は道半ばだ。滋賀県が介護保険事業所を対象に行った調査(07年8月)では36%の事業所で身体拘束が行われており、入所者の約5%が実際に拘束を受けていた。認知症介護研究・研修仙台センターが実施した介護保険施設への調査(05年12月)でも、拘束を受けている人は約5%に達している。そして、要介護度が高い人ほど、拘束の割合が高くなっている。

 一宮西病院が責任を問われた高裁判決は、急性期病院であっても、「介護施設と判断基準が異なると解することはできない」とし、「拘束の内容は必要最小限の範囲で許される」とした。そのうえで3条件に該当するか否かを検証したものの、切迫性などは認められないとした。
 判決は、母親の日常生活機能が低下したことや夜間せん妄状態になったのは、病院関係者の不適切な対応が一因とも指摘。おむつによる排せつの強要、睡眠導入剤の過剰投与の疑いも、高裁は判決文に明記した。
 また、母親が入院していた当時、入院患者と比べて看護師が不足していた事実もなく、身体拘束によらず、本人にきちんと付き添って安心させて眠りにつくのを待つといった対応は十分にできたとした。

 高裁判決が全国の病院関係者に及ぼした影響は小さくない。しかし、医療関係者の認識はさまざまだ。認知症高齢者が入院する東京都内の精神科病院の看護師は、「医療現場の実態を知ったうえでの判決なのか。現状の看護体制では、身体拘束の廃止は現実的でない」と疑問を投げかける。医療の信頼性を高めるためにも、議論を深めることが重要だ。

こちらも判決原文に当たらず記事だけの評価ですが、こういう判決を見ると医療現場も司法判断というものについてもっともっと勉強していかなければならないと思います。
それはともかくとして、そもそもこの国の急性期病院で(慢性期でも、ですが)、認知症患者が入眠するまで看護師が付き添って安心させるなんてことが出来る病院なんてものが果たして存在しているのかどうかなのですが…
ここでいうような患者を寝付かせる時間帯なんてどこの病院でもたいてい病棟に二人とか三人であって、それで分担して仕事をなんとか回しているのが実情で、どうしても寝てくれない時には当直医まで動員して対応するしかないような病院もけっこう多いんじゃないですかね?
一宮西病院のHPを見ると現在も看護師募集を行っているようですが、もしや看護定数を充足していることをもって看護師が不足していた事実もないと認定しているというのではないでしょうね?

ちなみに原告を支援する吉岡充氏ご自慢の上川病院とは「縛らない医療」のトップランナーとしてその筋ではちょいと有名なところです。
こういう判決を見ると多くの医療従事者が感じるのではないかと思うのですが、何か医療訴訟があるたびに「その筋の権威」と言うものが登場して「いやそれはおかしい。私ならこんなにうまくやれた」と主張する、そして医療に対する要求水準がかさ上げされていく。
確かに施設毎の医療水準が異なるのも事実であり、もっと異なった医療があり得たのも事実でしょうが、こうした訴訟の場における判断基準となるのが「一部で行われている業界トップクラスの水準」に置かれるというのでは何か釈然としない人も多いのではないでしょうか?

刑事訴訟と違って民事訴訟における判断基準とはそうしたものではなくて、あくまで当事者双方の主張のどちらが妥当であるかを判断しているだけである、故により説得力のない訴えしか出来なかったものが正しい、正しくないとに関係なく負けることになるだけなのだとも聞きます。
確かにそれは司法的には正論なのでしょうが、しかし現場でやっている者の感情はまた別問題であるのも事実だとも思うのです。
この種の少額賠償判決は見舞金のようなもので実質的な医療側勝訴だという意見もありますが、特に医療現場のように実質が崩壊しきっている場合、名分だけが唯一残る心の支えとなっていることもまた理解しておかなければならないでしょうね。
「君たちは間違った医療をしている」と宣告されてなお踏みとどまっていられるほど、現場の人間に心身のゆとりはないということです。

今の時代は医療訴訟と言うものがそれなりにニュース性を持つとマスコミにも認識されているのか、ほんとうに報道に乗る機会が多くなりました。
進んで他人を傷つける行為を常態とする、あるいは元々が放置しておけば死に至るような患者を対象とする医療という行為自体が訴訟と言う場に向かないと言う考え方もありますし、過失を裁くという概念自体がはたして妥当なのかどうかも異論のあるところだと思います。
前世紀末に患者側の医療訴訟に対する関心が高まった時期がありましたが、今の時代は医療従事者の医療訴訟に対する関心がようやく高まりを見せ始めている時期とも言えるかも知れません。

ネットという新しい媒体も発達している中でいろいろな事例が検証されるわけですが、係争の場ですから双方納得するのは無理としても、双方が納得できないという結果に終わっている場合が思いのほか多いようなのですね。
患者側の感情と、医療側の感情と、どちらにとっても満足のいくものをもたらし得ていないのだとしたら、そろそろお互いがwin-winの解決を得られる別な道を模索していくべき時期ではあるのでしょうね。

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2008年11月21日 (金)

国籍法問題 ~ 公明党は多民族国家の夢を見るか?

割り箸事件高裁判決など色々と取り上げたい話題が多いのですが、とりあえず今日は昨日の続きを書きます。
昨日はあまり書かなかった国籍法改正の話ですが、少し見ただけではよくわからない話も多いと思いんですよね。
まずはこちらの不可解な記事から紹介します。

国籍法改正 誰も理解せぬまま参院も審議入り(2008年11月20日産経新聞)

 未婚の日本人の父と外国人の母の間に生まれ、出生後に認知された子の日本国籍取得要件から「婚姻」を外す国籍法改正案は20日、参院法務委員会で趣旨説明が行われ、審議入りした。法務委は同日の理事懇談会で、26日に1時間45分の参考人意見聴取、27日に4時間の一般質疑を行った後に委員会で採決することで合意。このため、改正案は28日の参院本会議で成立する見通しとなった。

 衆院法務委がわずか3時間の審議で改正案を採決し批判を受けたことから、参院側は「慎重な対応をしたい」(自民党国対幹部)として倍近い審議時間(5時間45分)を確保した形だ。だが、これで懸念される偽装認知への歯止めをどうするかなど、十分な議論が尽くせるかどうかは疑問だ。

 「この中で、国籍法改正案を全部理解している人は手を挙げてください」

 20日昼の自民党津島派の総会で、戸井田徹衆院議員はこう呼びかけたが、手を挙げた議員は1人もいなかった。改正案は国会議員も内容をよく把握しないまま、成立へと向かって突き進んでいるようだ。

改正案は今月4日に閣議決定されたが、国会議員らが問題点や危険性に気付いたのはその後のことだった。無所属の平沼赳夫元経済産業相は19日の「国籍法改正案を検証する会合に賛同する議員の会」で、こんなエピソードを紹介した。

「現役閣僚から『とんでもない法律が通りそうだから何とかしてくれ』と電話があった。『あなたはそれに閣議でサインしたんだろう』と言ったら、『流れ作業で法案の中身は分からなかった』と話していた」

 自民党では、改正案が衆院を通過した18日の役員連絡会や参院執行部会で問題指摘が相次いだ。執行部会では、国対幹部が「運用で(犯罪に)歯止めをかけていく工夫が必要だ」と述べ、尾辻秀久参院議員会長も「もう一度検討した方がいい」と語ったが、成立の流れを押しとどめるまでには至っていない

 一方、改正案を問題視する民主党議員からも「うちの法務部会(部門会議)も、『次の内閣』会合も通っちゃっているんだよな」との嘆息が漏れている。

完全な対立路線に舵を切っていたはずの与野党双方が諸手を挙げて賛成したこの法案ですが、当事者の誰も自分は詳しいことを知らない、自分は言われた通りただ手を挙げただけだと言うのです。
そうであれば「いったい誰がこうまで迅速に話を進めているのか?」という素朴な疑問がわきませんか?
ここにその答えを示す一連の記事があります。

国籍法改正案を了承 違憲判決踏まえ「婚姻要件」を削除へ 党法務部会(2008年10月22日公明新聞)

 公明党法務部会(大口善徳部会長=衆院議員)は21日、衆院第1議員会館で会合を開き、国籍法改正案を審査し、了承した。

 同法の改正は、婚姻関係のない日本人男性と外国人女性から生まれた子どもに対し、日本国籍取得を認めていない同法第3条を違憲とした最高裁判決(今年6月4日)を踏まえたもの。判決以降、98件の国籍取得申請が出されている。

 改正案では、同法第3条の婚姻要件を削除し、日本人男性による認知を国籍取得の要件とする。また不正な国籍取得を防ぐため、虚偽の届け出に対する罰則規定を設けたほか、20歳までに認知を受けたが、父母に婚姻関係がないことから、国籍取得が実現していない者への経過措置が盛り込まれている。

大口部会長らは「改正案には、わが党の要望がしっかりと反映されている。成立を急ぎたい」と話した。
 公明党は、最高裁判決の翌日、党法務部会が、鳩山邦夫法相(当時)に対し判決に沿った速やかな法改正を要望。
 その後、直ちに党国籍法第3条問題に関するプロジェクトチーム(PT)を設置し、改正へ向けた議論を重ねてきた。

 また8月には浜四津敏子代表代行とPTが同法第3条の削除のほか、偽装認知に対する罰則規定を設けるよう保岡興治法相(同)へ申し入れるなど、積極的に取り組んできた。

人権立国への確かな一歩に 公明が一貫してリード 婚外子の差別規定撤廃を歓迎(2008年11月18日公明新聞)

国籍法改正
 「児童は出生の時から(中略)国籍を取得する権利を有する」との「子どもの権利条約」第7条の規定を待つまでもなく、出生による子どもの差別は、いかなる理由があれ、許されない。一日も早く法改正を実現し、人権立国への確かな一歩を刻まなければならない。
 婚姻関係のない日本人の父親と外国人の母親の間に生まれた、いわゆる婚外子の国籍取得を可能にする国籍法改正案が国会に提出された。改正論議を一貫してリードしてきた公明党の要請を受け、スピード感を持って法案化を進めた政府の姿勢を、まずは率直に評価したい。

 現行法は、父親が日本人で母親が外国人の場合、父親が出生時に胎児認知すれば、両親に婚姻関係がなくても子どもは日本国籍を取得できるとしている。しかし、出生後認知の場合には父母が結婚しない限り、日本国籍の取得を認めていない。このため、当該の子どもは実質的に日本人として暮らしていても、法律的には“外国人”としての生活を余儀なくされている。
 こうした中、最高裁判所は今年6月、婚姻関係の有無で国籍取得を差別するのは、憲法第14条の「法の下の平等」に反すると判断。婚外子の区別を定めた現行法第3条1項を「合理的な理由のない差別」規定として、国に法改正を求めた。

 最高裁のこの違憲判決に素早く対応したのが公明党だった。判決翌日には早くも、浜四津敏子代表代行らが鳩山邦夫法相(当時)に会い、速やかな法改正を要望。併せて、党内にプロジェクトチームも発足させ、専門家らとの議論を重ねながら改正の中身も詰めてきた。
 こうした公明党の力強い取り組みでまとまった今回の改正案では、“違憲規定”である第3条1項の結婚要件が削除されているほか、偽装認知など不正な国籍取得行為に対する罰則も新設。経過措置として、これまで国籍取得が認められてこなかった人たちの国籍取得にも道を開いている。いずれも公明党の提案で盛り込まれたものだ。

子どもの権利を守れ!
 他党を圧倒する形で、公明党が国籍法改正に全力を注いできた理由はただ一つ、「子どもの人権の尊重が第一義」(浜四津代表代行)との考えからだ。父母の結婚の有無という、いわば「親の都合」で子どもが不利益を受けるような社会を放置しておいてなるものか――。党を挙げてのそんな思いと行動が、ここまで短期間での法案化を勝ち取ったと自負している。
 もとより、公明党が掲げる「チャイルドファースト(子ども優先)社会」の旗印は、単に児童手当や出産育児一時金など福祉分野だけに限ったものではない。「人権、教育から医療、文化まで、あらゆる場面で子どもを守り育む社会の実現」(太田昭宏代表)という骨太の構想だ。

 改正案が国会に提出された今、公明党はこの点を改めて確認し、衆参両院での議論も力強くリードしていく決意である。

こうまで自ら得々と功績を語っているわけですから、全ては公明党が主導して事を進めたと見ても根拠なき誹謗中傷などと言われることはないでしょうね。
そこで浮かぶ次なる疑問は「なぜ公明党がここまで突っ走るのか?」と言うことですね。
「他党を圧倒する形で、公明党が国籍法改正に全力を注いできた理由はただ一つ、「子どもの人権の尊重が第一義」(浜四津代表代行)との考えからだ。」なんて話を真に受ける人はいないと思いますが、公明党という極めて特殊な支持基盤を有する政党だけに何かしら他党にない背景事情があったのでは…と考える人も少なくないようです。
「博士の独り言」さんの下記の記事から抜粋してみましょう。

「目論む「外国人の日本人化」による党勢拡大」より抜粋

 一連の闇の諸法案にも指摘できることだが、なぜ、公明党が躍起となっているのか。それは、創価学会にとってメリットがあると同集団は判断しているからだ。その動きは、同党の機関紙「公明新聞」に記されている。

 云く、「公明党は、最高裁判決(6月4日)の翌日、党法務部会が、鳩山邦夫法相(当時)に対し判決に沿った速やかな法改正を要望」と。また云く、「その後、直ちに党国籍法第3条問題に関するプロジェクトチーム(PT)を設置し、改正へ向けた議論を重ねてきた」とある。同党が国会提出に向けて誘導して来た、その改正案については、云く、「改正案では、同法第3条の婚姻要件を削除し、日本人男性による認知を国籍取得の要件とする。また不正な国籍取得を防ぐため、虚偽の届け出に対する罰則規定を設けたほか、20歳までに認知を受けたが、父母に婚姻関係がないことから、国籍取得が実現していない者への経過措置が盛り込まれている」と。だが、その内容は、DNA鑑定などによる、「認知」客観的な立証プロセスが省かれ、ご存知の通り、刑罰も軽微に過ぎるものとなっている。いわば、「骨抜き」とも謂える「改正案」であり、その実は「改悪案」に他ならないことは、聡明な読者にはお気づきのことと思う。
(略)
 古い時代の脱会者諸氏によれば、創価学会のそもそもの目的は、荒唐無稽にも聞こえるが、この教団、とりわけ池田大作は本気なのである。日本国中を創価学会に帰依せしめ、あるいは屈服せしめる。政治では公明党が政権与党となり、日本経済を創価学会系の企業で支配し、経済力をバックボーンとした、創価学会の維持に有利な仕組みを作り上げる。それ以外の各界、たとえば、行政、司法、教育、メディア、芸能も創価学会が支配し、これらを全体統括する日本の最高権力者の座に池田大作氏が座る。これが、本来は、同教団の「永遠の指導者」池田大作が率いる創価学会の究極の目的であり、池田が「総体革命(そうたいかくめい)」と名づける“日本のあるべき理想像”としている事象である。
(略)
 しかし、国内では、かの言論出版妨害事件を境に、日本国中の多くの良識の抵抗が強まり、1970年代には、創価学会の布教は頭打ちの傾向を見せはじめた。そこで、布教の軸足に海外に向けるようになったのが80年代であった。これが、「国内」に続く、第2の布教選択とも指摘できる方向転換であった。しかし、海外諸国でも、その活動の激しさ、謀略性が海外でも認識されるようになり、その後、フランスをはじめとする数カ国で「カルト認定」が相次ぐ状況となった。海外布教というふれこみで、SGI(創価学会インターナショナル)が一時は隆盛を誇っていたが、この「海外」でも脱会者が増大し、現在は著しい縮退傾向に転じている。いわば、「国内」に引き続き、「海外」でも頭打ちになった。そこで、第3の「選択」ともいうべき、「外国人の会員化」へと軸足を変えた。それが現在の姿、と指摘できる。

 在日外国人に地方参政権を与える。この「地方参政権付与」にも公明党(創価学会)は異様なまでに熱心だが、その一方で、取得の容易化により、外国人に「国籍」を開放する。そのために、公明党を通じて、立法府である「政治を動かす」動きに出ている。その1つが、現今の国籍法「改正案」通過への動きに露呈している、と認識して差し支えない。そもそも、在日外国人部という組織を会内に設け、以前にも増して、創価学会は、外国人の取り込みに力を入れている。国籍の取得が容易になれば、いわゆる、法的に「日本人」の会員を増やし、同時に、公明党の基礎「票」を獲得できるからだ。

まさか幾ら池田大作氏の気宇壮大とは言え、そこまで遠大な…と誰しも眉に唾を付けたくなる話ではありますが、さてどうなのでしょうか?
実際の同党の行動を見てみますと、少なくとも現象面からは上記のような話もありなのかな、とも感じられる状況が見え隠れしてくるのです。
たとえば下記のような数字がありますが、現に保守政党と連立して政権を担当しているような小身代の政党としては確かに圧倒的ではありますよね。

【法案の国会への提出状況】この法案を国会に提出した政党は?

1998年(平成10年)に初めて外国人参政権法案が国会に提出されて以来の、各政党による国会への本法案提出状況は以下の通りです。
なお現存しない政党は、政党名をカッコ「( )」で囲んであります。(2008年11月現在)

【各政党の比較】※左から政党名、付与する権利の範囲、提出回数の巡
公明党 地方選挙権ほか多数 (各種請求権・就任資格など) 28回
民主党 地方選挙権ほか多数 (各種請求権・就任資格など) 15回
共産党 地方選挙権と地方被選挙権の両方ほか多数 11回

これを見ると民主党や自由党、保守党など相手構わず?組んでの共同提出をしていたものが、さすがに連立政権に加わってからは遠慮したのか近年は単独で延々と法案提出を繰り返しているようですね。
今現在審議中なのはこちら「衆法 163回14号 永住外国人に対する地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権の付与に関する法律案」というものではないかと思うのですが、政党・議員の中では反対しているのは自民党の馬渡龍治議員一人だけという状況のようですね。
面白いのはこれを見ている一般の人々の法案への評価では支持率わずか8%、実に169人中155人までが反対と言っているところで、このあたり民意が正しく議会に反映されているのかどうか疑問なしとしません。
同党の真意はどうあれ、いずれにしても「誰も何も知らないまま法律ができていた」などということは立法府にあるまじきことで、民意を反映した慎重な議論の末に判断すべき事ではないのかなという印象です。

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2008年11月20日 (木)

捏造するマスコミ、沈黙するマスコミ

どうも勝った記憶がないと思ったら、カタールには今回が初勝利だったんですね。
しかしさすがメツが監督してるだけあって、カタールは結果としては完敗でしたがああいうサッカーをしていけば必ず強くなりますよ。
ホームの相手が良いサッカーで最初からガンガン押し上げてきてくれたからこそ取れた3得点だったようにも思いますが、長谷部始め皆がホントにしっかり汗かいて頑張ってくれましたし、ひと頃宇宙開発ばかりだった玉ちゃんなんてまるで別人のように頼もしい頼もしい(苦笑)。
次戦のようなレベルの相手でも同じようなプレーが出来ればいいんですが、ね…

さて、先日の厚労省元官僚の殺害事件がかなり大きな騒ぎになっていますが、その絡みで毎日新聞がまたやってくれました。

「ウィキペディアで犯行示唆」 恥ずかしい大誤報を毎日新聞が謝罪(2008年11月19日J-CASTニュース)

  元厚生事務次官宅が相次いで襲われた事件をめぐり、毎日新聞がインターネット上の百科事典「Wikipedia(ウィキペディア)」に事件前に犯行を示唆する書き込みがあったと報じた。しかし、書き込みは事件後にされており、「大誤報」であることが明らかになり、同紙は「お詫びして訂正します」と謝罪した。

   元厚生事務次官の山口剛彦さん(66)が刺されて死亡し、元厚生事務次官吉原健二さん(76)宅の玄関前で吉原さんの妻靖子さん(72)が胸などを刺され、重傷を負った事件が相次いで発生したのは2008年11月18日のこと。毎日新聞のニュースサイト「毎日jp」では、2008年11月19 日未明に「事件6時間前にネット書き込み 犯行示唆」などと題する記事が配信された。
   記事では、「Popons」と名乗る人物が、事件前の11月18日午後0時半頃、誰でも編集できるネット上の百科事典「Wikipedia」の「社会保険庁長官」という項目で、「吉原健二」の前に「×」を記入し、「×は暗殺された人物を表す」との但し書きがあったと報じた。さらに、「アクセスの記録などから書き込みがなされたパソコンが特定できるとみられ、捜査本部は慎重に調べている」としている。この情報は11月19日朝のテレビ番組などでも紹介された。

「書き込みの時刻は事件前ではなく、事件の報道後でした」

   しかし、ネット上では「編集は事件後に行われた」などとする指摘が相次ぎ、大きな騒動になった。同記事は「Wikipedia」の記入時刻が協定世界時(UTC)で表記されているという基本的な知識を欠いたまま書かれたと見られ、ついには、事件後に編集作業を行った「Popons」氏が「Wikipedia」内で

    「ただいま、地元警察のほうへ、連絡し、謝罪の電話をいたしました。申し訳ございませんでした」「wikipediaの私の書き込みは事件後です」

と釈明・謝罪する事態にまで発展した。

   毎日新聞は「毎日jp」で配信した記事を11月19日朝までに削除したが、朝刊紙面では「ネットに犯行示唆?」と題する記事が掲載された。
   このため「毎日jp」は2008年11月19日昼前に

    「『ネットに犯行示唆?』などの見出しで、ネット版の百科事典『ウィキペディア』に犯行を予告するような書き込みがあったと報じましたが、書き込みの時刻は事件前ではなく、事件の報道後でした。おわびして訂正します」

とする文章を掲載し、「恥ずかしい誤報」について謝罪している。

さあ皆さん、ご一緒に。「また毎日かっ!!」

残念ながら「恥ずかしい誤報」をやるのは毎日新聞ばかりというわけではないようで、今度は先日の元空幕長発言問題に対する元記事と続報を続けて掲載してみましょう。

日中友好協会、日本政府に責任追及 航空幕僚長事件(2008年11月12日朝日新聞)

日本の日中友好協会は11日、前航空幕僚長が歴史を歪曲する論文を発表したことについて、日本政府に厳粛な処理を求める声明を発表した。新華社のウェブサイト「新華網」が伝えた。

この日、麻生太郎首相と浜田靖一・防衛大臣に送られた声明文は、田母神俊雄・前航空幕僚長が日本の過去の侵略事実を美化する論文を発表して解任された問題について、歴史の真相と平和を求める国際社会に対する重大な挑戦であり、田母神氏個人が責任を負うだけで決着がつく問題ではないとし、次のように続けた。

日本は植民地統治によってほかの民族の固有の文化を剥奪し、中国をはじめとするアジア各国を侵略して2千万人以上を殺害した。この侵略戦争の事実は否定できるものではない。
「三光政策」「731細菌部隊」「従軍慰安婦」など日本軍の加害事実は被害者だけでなく、加害行為を行った日本軍元兵士の証言でも明らかになっている。このような確固たる事実を否定して「濡れ衣」と言うのは全くもって許せないことだ。

今回の航空幕僚長事件が証明するように、自衛隊は侵略戦争に対して反省の色がなく、過去の日本軍と同じ流れをくんでいる。さらに恐ろしいことに、田母神氏は航空自衛隊の長官でありながら、集団的自衛権の行使と攻撃的兵器の保有に対する制限を解除するよう論文で主張した。

田母神氏が投稿した「真の近現代史観」懸賞論文には、ほかにも現役の航空自衛官94人が応募し、応募総数の3分の1を占めている。彼らの行為は戦前に軍部の特権を容認して重大な結果をもたらした事実を思い起こさせ、無視できないものだ。

日中友好協会は平和・民主、それにアジアと世界の平和に貢献する立場から、日本政府に自己責任を明確にするよう強く求める。田母神氏を解任するだけで決着のつく問題ではないし、自衛隊が継承する過去の日本軍の思想と体質の撤廃に全力を尽くし、再び戦争に踏み出さないためにも、侵略と植民地化統治を反省する歴史認識を徹底して明確にしてもらいたい。

11月12日付「asahi.com」の報道について(2008年11月13日加藤紘一オフィシャルサイト)

 11月12日付「asahi.com」で報道されました「日中友好協会、日本政府に責任追及 航空幕僚長事件」の記事についてですが、記事中の「日中友好協会」は、加藤紘一が会長を務めます社団法人日中友好協会とは関係がなく、社団法人日中友好協会では、この件に関して声明を発表した事実はございません。

 この報道に関して、事務所へお問い合わせを頂いておりますが、前記で報道されました日中友好協会とは一切関係がございませんので、ご報告させていただきます。

さあ皆さん、ご唱和ください。「またアサヒったのか!!」

毎日の場合はまだ単なる無知から来る誤報と解釈も出来るかも知れませんが、朝日の場合単なる誤報と言っていいものかどうか?
何しろ朝日と言えば、かつて教科書検定で「日本政府が『侵略』を『進出』に改めさせた」という大誤報?をやらかした挙げ句、ろくに謝罪も反省もしないまま他人を攻撃しつつけているという歴史的経緯がありますからね。

捏造誤報といった類はまだ報道への前向きな姿勢から来る勇み足と好意的に捉えるとしても、報道の被提供者としての我々が問題視すべきはむしろ彼らの報道しないという姿勢なのかも知れません。
先日衆院を通過した国籍法改正問題なども、詳細なまとめサイトがあちこちで立ち上げられるなどネット社会で以前から大騒ぎになっていた問題だけに、「表」のマスコミがどう報道するものか興味を持って見守っていたのですよ。
ところが審議拒否方針を決めていたはずの野党民主党も何故か参加する中での全く無風状態での採決もさることながら、その後のマスコミ報道のシンプルさはいっそ清々しいほどのものがあります。

国籍法改正案が衆院で可決、自民一部議員が採決前に退席(2008年11月18日読売新聞)

 日本人と外国人の間に生まれた子供の国籍取得要件から、父母の婚姻を外すことなどを内容とした国籍法改正案は18日の衆院本会議で全会一致で可決、参院に送付された。

 本会議では自民党の赤池誠章、西川京子、牧原秀樹衆院議員が採決前に退席した。
 本会議に先立つ衆院法務委員会で、自民党は反対の姿勢を示していた赤池氏を差し替えた。
 牧原氏ら3議員は「多くの国民が改正案に反対の意思表明をしている。もう少し審議をすべきだ」などと退席の理由を語った。

 同改正案は、最高裁が6月、日本人と外国人の間の子供の日本国籍取得に親の結婚を要件とした現行国籍法の規定を違憲とする判断を示したことを受けて、政府が今国会に提出した。

どちらかと言えば保守系と言われる読売をしてたったこれだけかい。
「多くの国民が改正案に反対の意思表明をしている」ほどの国民の重大関心事であるならこの報道姿勢はどうなのかと突っ込みたくなりますが、試しに主要紙のサイトで今回の国籍法改正についてメインで扱った記事を検索してみました(11月19日まで)。

読売新聞 … 記事5件。うち反対意見に関する記事1件。

国籍法改正案の早期採決、慎重派議員が反対申し入れへ(2008年11月17日読売新聞)
 日本人と外国人の間の子どもの国籍取得要件から父母の婚姻を外すことなどを柱とした国籍法改正案に慎重な立場の国会議員が17日、国会内で緊急会合を開き、14日に衆院法務委員会で審議入りした同改正案の早期採決に反対することを衆院法務委理事らに申し入れることを決めた。
 会合には、無所属の平沼赳夫・元経済産業相や赤池誠章自民党衆院議員ら14人が参加した。

朝日新聞 … 記事3件。反対意見に関する記事なし。

毎日新聞 … 記事2件。うち反対意見に関する記事1件。

国籍法改正案:自民と無所属の有志議員、採決先送り要求へ(2008年11月17日毎日新聞)
 自民党と無所属の有志議員が17日、国会内で会合を開き、結婚していない日本人の父親と外国人の母親の間の子供について、父親が出生後に認知すれば、日本国籍を取得できるようにする国籍法改正案の慎重審議を求めることで一致した。改正案は18日に衆院を通過する予定だが、本会議採決に先立つ法務委員会に、法案の問題点や採決先送りを求める文書を提出する。代表の平沼赳夫元経済産業相は会合で「証拠がなくても認知で日本国籍が取得できる歯止めのない法律だ」と批判した。

日経新聞 … 記事3件。反対意見に関する記事なし。

産経新聞 … 記事8件。反対意見に関する記事4件。

国籍法改正問題で慎重審議を申し入れ 有志議員32人(2008年11月14日産経新聞)
 国籍法改正案への懸念の広がりを受け、自民党の赤池誠章衆院議員ら有志議員32人は14日、衆院の山本幸三法務委員長らに対し、「国民の不安が払拭(ふっしょく)されるまで、徹底的な審議を求める」などとして慎重審議を申し入れた。また超党派の有志議員らも、17日に国会内で緊急集会を開き、同法案の問題点を検証することを決めた。

国籍法改正案審議入り 不正認知横行の懸念も(2008年11月15日産経新聞)
 未婚の日本人の父と外国人の母の間に生まれ、出生後に認知された子の日本国籍取得要件から「婚姻」を外す国籍法改正案は14日、衆院法務委員会で趣旨説明が行われ、審議入りした。自民、民主両党は同法案を30日の会期末までに成立させる方針で合意し、18日の衆院法務委で可決後、同日の本会議で賛成多数で衆院を通過する見通しだ。だが、偽装認知などダークビジネスの温床になるとの懸念が出ている。

 「最高裁に現状は違憲だといわれたから改正案を出した。それでどうなるかは、法律が施行されないと分からない。犯罪者はいろんな方法を考えるから…」
 政府筋はこう述べ、法案の危うさを暗に認める
(略)
 改正案は今月4日に閣議決定されたが、次期衆院選の準備に忙しかった衆院議員らにとって、「ほとんどの人が法案の中身を知らない」(自民党議員)まま手続きが進んだという。
 しかし、最近、保守系議員らから「生活に困った日本人男性と、子供に日本国籍を取得させたい外国人女性を対象とした不正認知の斡旋(あっせん)ビジネスが横行する」「罰則が緩い」-との批判が強まってきた。

 自民党の国会議員32人は14日、衆院の山本幸三法務委員長らに対し、「国民の不安が払拭(ふっしょく)されるまで、徹底的な審議を求める」として慎重審議を申し入れた。また超党派の有志議員らも、17日に国会内で緊急集会を開き、同法案の問題点を検証することを決めた。
(略)

「偽装認知の危険あり」 国籍法改正案に反対の議連結成(2008年11月17日産経新聞)
 未婚の日本人の父と外国人の母の間に生まれ、出生後に認知された子が日本国籍を取得する際、その要件から「婚姻」を外すことを柱とした国籍法改正案に反対する有志議員が17日、「国籍法改正案を検証する会合に賛同する議員の会」(発起人代表・平沼赳夫元経済産業相)を結成した。この改正案は偽装認知による国籍売買を招く恐れがあるとして、18日の衆院法務委員会での採決の延期を求めることを決議した。
(略)
 会合には議員本人14人を含む38人が出席。平沼氏が「男性が証拠もなく認知をすると日本国籍が獲得できる、むちゃくちゃな歯止めのない法律だ」と指摘した。出席者からDNA鑑定義務化や偽装認知の罰則強化を求める声が相次いだ。

 だが、自民党の村田吉隆国対筆頭副委員長は17日の記者会見で「自民党として党内手続きで了承している。(反対論は)トゥー・レイト(遅すぎる)だ」と応じない考えを示した。

国籍法衆院通過 法務委実質3時間、審議不十分の声(2008年11月19日産経新聞)

 未婚の日本人の父と外国人の母の間に生まれ、出生後に認知された子の日本国籍取得要件から「婚姻」を外す国籍法改正案は18日の衆院本会議で全会一致で可決、参院に送付された。今国会で成立の見通しだが、これに先立つ同日の衆院法務委員会の質疑では、与野党双方の議員からさらなる慎重審議を求める声が出ていた。国家の構成員を決める改正案の重要性に比べ、国会での扱いのあまりの拙速ぶりが目立った。

 「重大法案についてはきちんと審議をすべきだ」(自民党の稲田朋美氏)
 「もう少し慎重に時間をとりつつやってもらいたい」(民主党の石関貴史氏)
 「徹底的にやるべきだ」(社民党の保坂展人氏)

 18日の法務委では委員たちから審議の不十分さを指摘する意見が相次いだ。改正案は偽装認知など闇ビジネスを誘発する懸念が指摘されるが、実質的な審議はこの日午前に3時間行っただけ改正案に慎重な自民党の赤池誠章氏が採決に反対し、委員を村田吉隆氏に差し替える場面もあった。
(略)
 各党の法務委メンバーなど関係各議員のもとには、改正案に抗議し、慎重審議を求めるファクスやメールが殺到した。その中には、DNA鑑定の導入や、父子の同居・扶養の事実確認の必要性を訴えるものが多かった。このため、18日の法務委では(1)父子関係の科学的な確認方法を導入することの要否と当否について検討する(2)虚偽の届け出を行った者に対する制裁が実効的なものとなるよう努める-などの付帯決議を行った。だが、「努力目標」の付帯決議では、国民の不安払拭(ふっしょく)には至りそうにない。

 国籍法改正案は、最高裁が6月、同法の「婚姻要件」を違憲と判断したため準備され、今月4日に閣議決定された。だが、次期衆院選対策で地元に張り付いていた多くの議員は法案の内容を知らないうちに、手続きは終了していた。

国籍法自体に関しては、日本の国内法問題であるにも関わらず妙に某国の興味と関心を引いているようだとか興味深いネタも多いのですが、ここでは敢えて深入りしません。
今回のテーマに従ってマスコミの報道姿勢に絞って検証するなら、比較的早い段階でこの法案の問題点を追求してきた産経が幾らか採決前に批判的報道をなし得た程度で、他紙はほぼ完全にスルーしているという状況であることが明確に見て取れます。
その産経ですらこの件が問題になっていることを記事にしたのが衆院採決のわずか4日前という状況ですからまさに「トゥー・レイト(遅すぎる)」、当の国会議員達にすらほとんど法案の内容すら知らされないままに全てが進行していたという事態が浮き彫りになってしまったわけです。

普段から政治家の粗探しをするのにあれほど熱心なマスコミ各社のこのあまりに歩調の取れた姿勢はなんなんでしょうね?
こうした経過の詳細を知った上で「これって何かおかしいんじゃない?」と感じない人がいるでしょうか?
でもほとんどの人はそんな疑問なんて感じていないんですよ、何しろ全く知らされることすらなかったんですから。

こうした主要マスコミの「知らしむべからず(誤用例)」という報道姿勢はこの件に限ったことではありません。
例えばガス器具会社の問題は大々的に報じる一方で、それよりはるかに身代も大きく社会的影響も大きいトヨタの問題は華麗にスルーする。
日頃から他人を叩くことに関してはああまで喜々として興ずる人々が、トヨタに対しては批判するのに名を挙げることすらしようとしない
ようやくマイナーメディアでわずかばかりに「おかしいんじゃないの?」と声が上がりましたが、主要紙はこうした問題点の所在すら明らかにしようとはしていません。

“奥田発言”に早くも腰が引けているテレビ局 (ゲンダイネット)(2008年11月14日日刊ゲンダイ)

●すでに自粛の局も

 テレビ界がトヨタ自動車の奥田碩相談役の発言にビビっている。12日に首相官邸で開かれた「厚生労働行政の在り方に関する懇談会」で行ったテレビ批判である。

「あれだけ厚労省が叩かれるのはちょっと異常な話。正直言って、私はマスコミに対して報復でもしてやろうかと。スポンサー引くとか」と発言して、ワイドショーや情報番組が年金問題を取り上げることに対して、痛烈に批判した。
 これに対して、奥田相談役は出席した他の委員にも「言い過ぎ」と指摘されたほどだし、矛先がどうなのかと思うが、これがテレビ局への一撃になったのは間違いないだろう。

 というのも、トヨタはキー局にとって最大のスポンサーだが、すでに08年の広告宣伝費を前年の1083億円から3割弱削減することを今夏に発表している。しかも、トヨタはスキャンダルを起こしたタレントが出演している番組に出稿をストップさせるといった対応も素早いなど、キー局がもっともナーバスになる企業である。
 それに、今回の“奥田発言”がなくても、すでに政府批判や不景気情報を控えるように通達を出しているキー局もあるほどだ。あるテレビ関係者は「テレビで不況をあおると視聴者が財布のヒモを締め、企業の業績も悪化して広告主に影響するので、不況をテーマにした番組などをやめるように言われている」という。
 そんな時にテレビ局は奥田相談役のパンチを食らったわけだ。

報道に対する挑戦というのは簡単だけど、すでに赤字に転落した局もある中で背に腹は代えられない。厚労省関連もトーンダウンするしかないのでは」(キー局関係者)
 ここでひるんで自分で自分の首を絞めるか、毅然とした態度で結果を残すか。テレビ局はギリギリの選択を迫られているようだ。

トヨタがくしゃみをすればマスコミが風邪をひくというくらいなもので、今夏に同社の広告費3割圧縮という報道が出たころにはかつての「花王ショック」にちなんで「トヨタショック」なんて言葉がささやかれたほどマスコミと大スポンサーの関係は切っても切れません。
もちろんマスコミも営利企業ですからお得意様の顔色をうかがうのは当たり前のことですが、そもそもレクサスにしても費用対効果に疑問があるテレビCMを重視していないとまで言う今の時代、一方的に尻尾を振り続ける姿勢って何か間抜けに見えて仕方がないんですが。
そして何より、他人に対しては要求することあれほど厳しいマスコミが自らはこうした恣意的な姿勢を貫き、利用者である国民一般の知る権利を阻害していることは、ごく控えめに言ってもフェアではないと思いますね。

今の時代に生きる我々はこうして随時多面的な情報を比較検討出来るという点で以前よりも恵まれているわけですから、今まで一方的に他者を非難するだけの立場を占有していたマスコミに対しては、利用者である我々こそが批判の目を向けていかなければならないのではないでしょうか?

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2008年11月19日 (水)

医療と広報 ~ またも産科の話題で恐縮ですが…

厚労省の元幹部が相次いで事件に巻き込まれて、しかも政治的背景も疑われるということで大騒ぎになっています。
厚労省に色々と言いたいことがあるのは誰しも同じだと思いますが、こういう行為は許されるものではありません。
被害者のご冥福を祈ると共に、早いところ犯人が逮捕されることを願っています。

それはともかくとして、今日はまずは地方の小さな記事から近ごろ何かとこればっかりな産科関連の話題を紹介します。
崩壊が叫ばれて久しい産科医療には昨今珍しい喜ぶべきニュースだと思ったのですが、どうもそうそう良いことばかりでもないようで。

医師は50~70代の3人/鎌倉市医師会、産院の医療スタッフ内定

 鎌倉市医師会(細谷明美会長)は十七日、同市小町に開設を予定している産科診療所の医療スタッフが内定したと発表した。既に内定している雨森良彦院長(76)を含め医師は五十~七十代の男性三人。全国的にも珍しいという「医師会立」の産院は来年二月中旬から診療を開始する。

 診療所は市内でお産可能な産院が一カ所しかないという状況を受け二〇〇六年秋、市が医師会に計画を提案した。市も施設整備や運営補助として補助金約三億円を支出する。ベッド数は八床で、出産は三月から可能という。利用希望者にはオープンまで市内の産婦人科医で妊婦健診を受けてもらい、そこで診療所での出産の予約をしてもらう。

 医師三人のほか、二十~六十代の助産師九人、看護師三人が常勤する体制となる。雨森院長ら医師は三日に一度の当直勤務も行う。現在、以前の高齢者向け福祉施設(鉄筋二階建て、総床面積約六百三十平方メートル)を診療所に改修中で、一月中旬に完成する。

老人病院で院長自身も入院しながら診療を続けたなんてネタがありましたが、なにかそれを連想しましたね。
50~70代の医師三人が三日に一回の当直で回す産院ですか…色々な意味でいつまで保つものやら心配になってくる話ではありますね。
さて、このようなアンケートがあることをご存知でしょうか?
医師のみ答えて下さいということなので某所のカキコから転載させていただきますが、マスコミ(世論?)、判例(司法)、そして産科医自身の待遇の悪さ(行政?)が特に問題だという声が多いようです。

産科崩壊の原因(医師のみ答えて下さい)アンケート結果

 平成20年11月14日現在
1位 マスコミによる産科医叩き 33.5%
2位 産科医の待遇の悪さ、仕事の過酷さ 23.3%
3位 医療民事訴訟での非科学的な判決例 21.9%
4位 厚生労働省が出した産看護婦内診禁止通達 11.2%
5位 福島県大野病院産科医師の不当逮捕起訴事件 10.2%

マスコミに関しては医療業界は原則的に広告を出しませんからおいそれとどうこうなることはないでしょうが、それでも近ごろでは少し以前とは風向きが変わってきているのかな?という気配も時に感じてみたり。
医師会なんて高い会費を取ってるんですから、定期的に広告を打つなり冠スポンサー番組でも持つなりしてみれば面白いんじゃないかなとも思うんですがどうでしょうか?

まあマスコミ対策はともかくとして、少なくとも利用者となる一般市民に対してもっと啓蒙を進めていかなければいけません。
ひと頃「お産は病気ではない」なんてことがさかんにアピールされていた頃の反動か、どうも「お産=安全に終わって当たり前」という間違った認識が広まってしまったのは良い傾向じゃないですよね。
一昔前の文学などでも主人公と言えばたいてい母親がお産絡みで亡くなっているのがデフォだったくらいで、日本における周産期死亡率というのはこの半世紀ほどの間に二桁も急減して世界最高峰の水準になったのですが、問題はその実態です。
実際には紙一重の危うい状態の連続を何とか産科医療の進歩によって回避しての結果であるということをもっと周知徹底していかなければ、「産科医が身を削って頑張りお産の事故が減った。お陰で何かあれば医療ミスだと訴えられるようになった。」なんて話が笑い話ではすまなくなってしまいます。

産科医解体新書】(11)誤解多い「正常なお産」(2008年11月5日産経新聞)

 患者さんと医療従事者の間には、大きな温度差があります。何より大きいのは、分娩(ぶんべん)に対する、とらえ方の違いです。先輩たちと話すことがあります。「正常なお産とはなんだ? 自然なお産ってなんだ?」と。

 日本でのお産の9割は、赤ちゃんもお母さんも元気に退院していきます。その現実だけをもって、「正常分娩は安全だ」という“神話”が信じられています。

 正常分娩に関して、一般の人が誤解していることが、少なくとも2つあります。1つは事実誤認です。正常分娩とは、あくまでも分娩がすべて終了してから判断できることです。正常分娩を前提に介助をしていても、途中から異常分娩になることがあるのです。

 もう1つは、医療介入についてです。ちょっとした抗生剤投与も介入に含めれば、実は8割近くのお産に医療が介入しています。医療介入を不自然なこととして正常でないとするならば、ほとんどが異常分娩に分類されます。異なる角度からみれば、正常分娩は2割程度というとらえ方もできます。

 どんなに些細(ささい)に思える医療介入でも、何らかの根拠に基づいて行われています。根拠には妥当性が高いものから低いものまであります。さらに、昔は良いと思われていた根拠が、現在では逆の見解を示すものもたくさんあります。このような常に揺れ動いている根拠であれば、医療介入は必要ないと感じますか? 全く医療介入なしの自然分娩だけで、日本の周産期死亡率は世界一の低い水準を保てると思いますか? 

 結果的に何もしなくても何も起こらない2割ほどの分娩のために、残り8割の分娩への医療介入をやめてしまえるのか…それは難しい問題です。もちろん、重症になることはまれですが、可能性が低いからといって放っておける程の度胸を僕らは持ち合わせていません。現在の医療訴訟の原因で多いものの一つは、適切な時期に適切な医療介入をしなかったことが争点になっているのですから。(産科医・ブロガー 田村正明)

現代日本の産科医療について驚くべきことには、既に地域によっては周産期死亡率が上昇に転じ始めているらしいのですね。
いよいよ産科崩壊という現象の実社会への影響が現れてきたのかなという感じになってきていますが、一方で産科医療の崩壊から今こそ助産師を活用しようという動きも見られますがどうでしょうか?
実はこれと関連して少し前に話題になったデータがありますので、「産科医療のこれから」さんのところから引用させていただきます。

助産所からの搬送例は有意に死亡率が高い

助産所からの搬送例の実状と周産期予後

           北里大学医学部産婦人科・小児科*
         池田泰裕 鴨下詠美 望月純子 金井雄二
        右島富士男 谷 昭博 天野 完 野渡正彦*
    (日本周産期・新生児医学会雑誌 第40巻 第3号 p553-556)

 概 要
過去5年間に北里大学病院で受け入れた助産所からの母体搬送21例,新生児搬送15例の予後について後方視的に検討した.その結果,助産所からの搬送36例中4例が新生児死亡,1例か乳児死亡であった。同時期の1次,2次施設からの母体搬送742例中新生児死亡は34例(4.6%)であったが,助産所からの母体搬送21例中死亡例は4例(19,0%)で有意に高頻度であった.助産所か分娩取り扱い基準を遵守していれば救命し得た症例もあった。助産所は周産期救急医療システムの理解を深め,関連協力病院との連携を密にする必要があると考えられた.

ごく大雑把に言いますと、お産で何か大問題になって大学病院に搬送された症例を検討してみると、助産所から運ばれた方が産科医等から運ばれた場合より死亡率が高かったということですね。
詳細な内容は元サイトを参照していただくとして、ここで言うところの「助産所からの母体搬送21例中死亡例は4例(19,0%)で有意に高頻度であった.」とはいったい何を意味するのでしょう?
助産所の助産師が扱って良いのは法的にあくまで正常分娩だけとされているわけですから、当然ながらちょっとでも異状があればすぐ搬送してくるはずですよね。
逆に言えば多少の問題があっても対応できる開業産科医などの方がより重症になるまで手元で対応しようと頑張ってしまうわけで、普通に考えればそんな産科医でも手に負えなかった症例の方が死亡率は高く出そうなものなのです。
ところが実際にはこの逆の結果となっていたことが明らかになったというわけです。

たとえば元の論文によれば助産所から搬送された15例のうち9例が逆子や双子であるなど、そもそも助産所で扱ってはならない異状妊娠であって、しかもこの双子であるということがお産の瞬間になるまで判っていなかったと言うのですね。
なぜこんな奇妙な現象が起こるのか、論文にはこのような記述があります。

助産所分娩取り扱い基準では助産所分娩の対象者を限定しており,それ以外の症例は病院分娩を選択すべきであると明示されている.しかしながら当院への母体搬送・新生児搬送例を検討してみると,助産所分娩には適さない妊婦が経過中に医療機関を受診せずに,助産所で分娩していることもあることが判明した.さらには妊婦の,あるいは助産所のあまりにも強い「自然」分娩指向があるためなのか,搬送時期が遅れ重症・予後不良となった症例もみられた

要するに妊婦側の発想として「お産は今や安全なものになった」、そうであるならお産にも「自然であること」といった付加価値を求めたいということなのでしょう。
しかし過去半世紀の劇的な周産期死亡率低下も「産婆から医者へ」という妊婦の流れの変化が非常に大きく関与していたと言われているのです。
もちろん「安全性が同等であるなら」自然分娩志向もいいでしょうが、実際にはそうでないことは検証されている通り、まして昨今一部の「自然」を売りとしている助産所は半ばカルト化しているなどと批判されているものまであるのです。
全国の妊婦さんには強調しておきたいのですが、お産が安全であるというのはあくまでも十分に管理された場合においての話であって、それすらも決して100%を保証するようなものではないということをもう一度よく理解してから分娩に望むべきではないでしょうか?

従来の医療業界は一般向けの宣伝・告知が下手だったことがようやく当事者の間でも認識され始めていますが、これからの時代は広く国民一般に目を向けた商売をしていないとやっていけません。
正しく情報を知らしめることが大前提であって、その結果何を選ぶかは国民の選択なのですから、まずは業界総出でもっともっと情報を発信していかなければならないでしょう。
最近は下記のような活動も色々となされているようで(ちょっと内容はどぎついというか、ストレートすぎるところもありますが…)、確実に業界の意識改革が進んできているのはいいことだと思いますね。

妊娠のリスク知ってほしい―現役産婦人科医が11か条の心得(2008年11月17日CBニュース)

 相次ぐ妊婦の救急医療機関への受け入れ困難の問題を受け、川崎医科大附属病院(岡山県倉敷市)産婦人科医長の宋美玄さんが、思春期以降の男女に妊娠・出産に伴うリスクを理解してもらおうと、妊娠についての心構えなどを示した「妊娠の心得11か条」をつくり、自らのブログで公開している。宋さんは「お産は一般的に『安心、安全』というイメージがあるが、実際は死を伴うこともあるリスクあるもの。産婦人科に来る女性は既に妊娠している段階なので、早い時期から妊娠・出産に対する意識と正しい知識を持ってもらいたい」と話している。
(略)
「妊娠の心得11か条」を公開している宋さんのブログ~「LUPOの地球ぶらぶら紀行」
http://blogs.yahoo.co.jp/mihyon0123
(管理人注:「妊娠の心得11か条」の記事はこちら

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2008年11月18日 (火)

迷走中の阪南市立病院のその後

先日もご紹介しました阪南市立病院のその後の経過ですが、新市長がまた妙なことを言いだしたようです。

医師歩合制「今すぐは見直さない」阪南市長(11月14日朝日新聞)

 阪南市立病院の医師8人が辞表を提出した問題で、福山敏博市長は13日の市議会特別委員会で、当選翌日に報道陣に対して表明した医師の歩合制給与の見直しについて、将来的に病院の収支バランスを見極めたうえで検討するとし、「今すぐは見直さない。説明不足で真意が伝わらなかった」と釈明した。

 福山市長は委員会で、就任初日の12日夕に病院で医師6人と面談し、病院の維持に協力を求めたことを説明。面談を済ませていない医師とも早急に会い、慰留に全力を挙げる考えを示した。
 質疑で議員らは「病院を助けにきてくれた医師にまず謝罪すべきだ」「就任前に事態収拾に動き出す必要があった」「歩合制を導入した経緯も知らずに発言すべきでなかった」などと厳しく市長を追及。福山市長は「12日の就任後、市長として責任を持って対処する考えだった」「医師との面談で感謝の念は示した」などと説明した。
 答弁に納得しない議員からは「市長発言の重みをもっと認識すべきだ」「市長の今の姿勢では医師慰留を任せられない」との声も飛んだ

 また、病院側は辞表を提出した医師の退職希望時期を、12月末と来年1月末が1人ずつでほかは2月末と説明。仮に8人全員が退職した場合、10月の医業収入で概算すると、4割以上に影響することを明らかにした。
 医師の辞表提出を招いたことについて、委員会終了後の会見で福山市長は「私の発言に反省というか、先走ったところがあったという認識は持っている」と述べた。

収支バランスを見極めてと言われましても、今現在がすでに大赤字で、さらに市長発言で退職者続出となって赤字幅も天井知らずの大幅増が確定的なんですがね。
医療現場というものはまず医師がいなければ話にならないので、今の時代増収増益を目指そうと思ったらまず何としても医師を確保するというのが大原則なんですが、真っ向反対の方針を追求して今後どうやっていくつもりなんでしょう?
今回の件も別に金がどうこうという話ではなくて、全国どこでも医師を求めて熱心に招聘しようと努力している病院ばかりという現状で、どうせ働くならお互い納得して働けるところでと考えるのは当然ではないでしょうか?
安月給だろうが激務だろうがド田舎だろうが集まるところには集まっているんですから、金が出せないのならそれを上回るだけの何かを示せばいいだけのこと、逆にお金お金と大騒ぎするから「他には何もないのか」と痛くもない腹を探られることになるのですよ。

さて、マスコミさん達は相変わらず「2000万なんて高すぎ!医者はなんて強欲なんだ!」とバッシングに一生懸命なようですが(たぶんバッシングしている人たちの方がはるかに高給取りなんですけどね)、実際のところどのあたりが「相場」なんでしょうか?
以前にも書いたことですが、公立病院の給与体系というのは非常におかしなところがあって、病院という高度の専門性が求められる職場にかかわらず専門性が低い職種ほど優遇されているのですね。
今は医師も看護師も不足と言われていますが、それらは高度な教育を要し養成数も限られている専門職であるからであって、非専門職は幾らでも人が集まるはずなのです。
当然売り手市場なら給与は高くなるし、買い手市場なら安くなるはずが、公立病院に限ってはこれが逆転してしまっているのですね。

その結果どうなるかというと、普通健全経営で4割以下が目安とされる人件費が多くの公立病院ではなんと6割以上、今回話題の阪南市立病院のようなところになってくると驚くなかれ!人件費率9割という信じられない数字になってしまうのです。
これでまともな病院経営やれと言っても出来ないのは当たり前で、医師の給与がどうとか言う問題では全くないんですよ。
具体的な数字としてちょうど某所の落書き(苦笑)に分かり易いものがありましたから、引用させていただきました(医師給与改定前の数字です)。

■阪南市 平成18年度平均給与月額

事務職員 594,544円 平均年齢44歳
医師 1,117,745円 平均年齢42歳
看護師 554,063円 平均年齢40歳
准看護師 651,427円 平均年齢54歳

用務員平均給与35万(22人)(民間平均227k)
清掃職員平均給与37.4万(26人)(民間平均299k)
調理職員平均給与35.7万(8人)(民間平均260k)
ttp://www.city.hannan.osaka.jp/inter/jinji/jinjigyousei19.pdf

医師以外の給与も民間水準と比較してどれだけ乖離しているかを見ていただければ、どうしてこの病院が経営破綻したのかが見えてきませんか?
ちなみに大阪府の医師平均給与は全国でも最下位クラスですが、公立私立含めての平均で15年目(約40歳)で1400万と以前の阪南市立病院より高額なのが判りますでしょうか?
先年の給与改定で約1.8倍増の2000万という数字を出してきたのは決して根拠のないものではなくて、薄給激務で医師が全く集まらない中でせめて給与水準だけでも民間病院並みの水準にするというそれなりに考えた結果だったんですよね。
こうしてある程度周到に練られた医師確保策があったからこそ「本気」を感じて応えた医師がいた、ところがそれを一発でぶち壊しにしたのが新市長の「先走ったところがあった」発言だったのですよ。
信頼関係がなくなったから辞めるしかないという医師たちの言葉の意味が新市長には理解できたでしょうか。

すでに終わったものと考えていい阪南市立病院のことはともかくとして、興味深いのはこの件に対する世間の反応です。
繰り返しになりますが、これは言わば医師確保に対する本気度の問題なのであって、単なる給与問題に矮小化してしまうことは本質を見誤った議論にしか過ぎないのですが、やはり不景気の折ですから他人の懐具合が気になるというのも仕方のないことなのでしょうか。

新市長就任で阪南市の医師8人辞表提出 5派の意見(11月17日アメーバユース)

 大阪府の阪南市立病院における医師8人の辞表提出をめぐる議論がネット上で話題を呼んでいる。(略)
 ネット上では今回の件を受けて、医者を批判する派、医者を擁護する派、市長を非難する派、市長を擁護する派、市長を選んだ市民を批判する派、大まかに5派に分かれているようだ。

 医者を批判する派からは、「お医者はんもわがままやなぁ」「結局、能力のある人間は条件が悪いとさっさといなくなって割を食うのは他に働き口が無い人間」「医者は収入にこだわって、ごねるとかおかしいだろ」などの声があがっている。

 一方、医者を擁護する派からは、「辞める医者はお金が原因じゃないらしい」「お金以外の不自由や迷惑をただ金のために我慢しているんだから、当然」「辞める医師がかわいそう…」などの意見があるようだ。

 市長を非難する派からは、「なぜこんな市長が当選したのですか?」「頼んで来てもらったのに、市が給料下げるなんて約束違反」「市長のこの対応は一種の契約違反」など、市長の判断に対する批判があがっている。

 市長を擁護する派からは、「市長だって必死w」「市長…ガンバ」「福山どんまい」などがある。一方、この市長を選んだ市民を批判する派も。「当選させた奴、選挙に行かなかった奴が悪い」「選挙参加しなかった人には不満を言う権利はないと思います」などの声もある。

自治体が医療に対してどういう方針で臨むかはそれぞれの実情に応じて臨機応変なものであっていいと思います。
極端な話、今の時代自治体病院に黒字化などまず望めないのですから、特に阪南市のような近隣の医療資源に恵まれた都市部では自ら自治体病院を手放して、私立病院や周囲自治体病院に医療をおんぶにだっこするなんてことを考え始める自治体だってあっていいはずなんですよ。
ただし、どのような道を選ぶにせよ地域住民の合意のもとで行われるべきであって、もしも阪南市民が望んでいない方向へ新市長が一人突き進んでいるのだとしたら、それは為政者の暴走というものです。

今の時代、地域医療を維持することはどのような形であれ極めて困難な茨の道ですが、医療を壊すことは首長のたったひと言で容易に達成される…新市長は今回の事例を教訓にして、まずはその認識を持つべきでしょうね。

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2008年11月17日 (月)

東京都の救急医療はデスマーチ?

近ごろではすっかり救急問題で話題の地域となってしまった東京から、また新たなネタが飛び込んできました。
まずは記事から紹介してみます。

妊婦拒否:24施設を地域救急センター指定へ 都(2008年11月15日毎日新聞)

 救急患者の受け入れ拒否を防ぐために東京都は14日、重症患者を扱う2次救急病院の中から24施設を「地域救急センター」(仮称)に指定し、各病院間で受け入れ先を探す「東京ルール」を採用することを決めた。

 都などによると、高度な医療機関同士が受け入れ先を探すルールを決める。また、都内を12地域に分け、各病院で手術の可否や空きベッドの有無の最新情報を検索できる新システムを来年度にも導入し、素早い搬送先確保を目指す。

 また、脳内出血の妊婦が複数の病院に受け入れを断られて死亡した問題を受け、石原慎太郎知事はこの日、スムーズな救急搬送体制を整備するプロジェクトチームを発足させると発表した。石原知事は「都立病院や国立病院、地域の産科医などを束ねる機能を欠いていた。都民の不安を解消したい」と述べた。

 担当となる猪瀬直樹副知事は「年金問題で総務省が社会保険庁を監視しているように、直接の担当者以外でグループを作り問題の検証をしたい」と話した。

なるほど、監視をしていくと…今やすっかり犯罪者扱いですがどうしますよ?>東京都下の救急担当者。
と言いますか、知事の認識ではあくまでも医療リソースの不足などではなくて、各施設間の連携の問題であったということになっているんでしょうかね?>救急搬送問題。
つまり今でさえ「もう限界、勘弁してくれ」な医療現場を、今よりさらに効率よく酷使することが目指すべき道であると?
今後の調査検討の結果こういう認識を覆すレポートが出てくればまだ救いがあるのでしょうが、さて…

ところでこの「東京ルール」なる聞き慣れない言葉ですが、この実態がまた素晴らしいもののようなのです。
どうやら恐ろしいことに「一見ERっぽい」システムを指定病院に押し付けようということ、なんですね。
しかしこれ、押し付けられた病院の方でもずいぶんと大騒ぎになりそうな悪寒なんですが(苦笑)。

救急医療体制「東京ルール」を来年度からスタート(2008年11月14日 読売新聞)

 東京都は、急患の「たらい回し」をなくすため、病院間で受け入れ先を探す新たな救急医療体制「東京ルール」を来年度から始める。
 都内の24病院を「地域救急センター」に指定し、患者を受け入れられる病院を見つける。急患の受け入れで、病院同士で連絡を取り合って決める試みは全国初。都は「地域救急の新たなモデルになる」と期待している。

中核病院が搬送先探し

 急患は東京消防庁の救急隊が病院に照会し、搬送先を決めている。
 都救急災害医療課によると、東京ルールは、都内を12地域に分け、手術や入院が必要な重症患者を扱う2次救急病院の中から、1地域で2か所をセンターに指定。救急隊の受け入れ先探しが難航した場合、センターが救急隊に代わって患者を受け入れる病院を探したり、受け入れたりする。
 地域のほかの2次病院は、センターに空きベッド、当直医の専門や人数などの情報を提供する。
 それでも受け入れ先が見つからないケースでは、東京消防庁指令室の救急救命士が務めるコーディネーターが、ほかの地域のセンターと調整する。
 都救急災害医療課は、「たらい回しを防ぐには、地域の病院が責任を持って救急を支えるしかない」と話している。

 急患の搬送を巡っては、病院が「ベッドは満床」「当直医が専門外」「処置中」などと受け入れを拒否するケースが後を絶たず、10月に出産間近の妊婦が8病院に断られて、出産後に死亡する問題も起きている。
 都内では10年前と比べ、救急医療機関数は2割減少し、335か所(2008年)。一方、救急搬送患者数は3割増え、62万人余(07年)となっている。「夜間・休日になると、当直医が1人しかおらず、休業状態になる2次病院も多い」(公立病院医師)といい、より高度な医療を行う3次救急病院にしわ寄せが行っている。
 全国でみると、2次病院の当直体制(07年)は、1人が4割、2人以下が7割に上り、手薄な状況にある。
 東京ルールは14日、都庁で開かれる救急医療対策協議会で報告される。

あくまでも「応急措置」

 救急医療体制の「東京ルール」で、急患受け入れに、地域の病院が責任を持つことになる。地域救急センターが、2次救急病院の当直医の専門や空き状況を把握することで、効率性も増し、「たらい回し」対策につながるとされる。
 地域と病院の違いはあるが、東京ルールは、すべての患者を救急医が受け入れて診療科の医師へとつなぐ北米型ER(救急治療室)の地域版に一歩近づけようという試みとして、成否が注目される。
 しかし、たらい回しの原因である医師不足が改善されるわけではない。医師を急患受け入れの基幹となる病院に集約するのでもない。センター病院の負担ばかりが増え、新ルールが絵に描いた餅になる恐れもある。

要するにただでさえ過重負荷であっぷあっぷ言っている現場に、搬送先探しの電話番までやらせようってことですかそうですか…orz
「困った時の医者に丸投げ」って何ですかそれは?この人たちはどこが一番のボトルネックになってるか本当に判ってないんですか?マジで?
都とすればとりあえずたらい回しはしてないと言い張れるし、救急隊とすれば指定搬送先に置いて帰れば仕事は終わりになるから皆が幸せになれる素晴らしい!ってわけですか?
今まで以上に余計な仕事を、それも現場の医療機関でなくても誰でも出来る仕事を負担させられる指定病院でいつ「指定を辞退させていただきます」なんて話が飛び出すか、今から楽しみですよホント。

まあ報道ばかり見ているとまた「誤解」してしまうかもですから、当事者の石原都知事の認識を知るために会見での声を拾ってみるべきですかね。

【石原知事会見詳報】(1)「都合いい時だけ地方分権は無理」(2008年11月14日産経新聞)

 「冒頭、私から読み上げるものはないんですが、おそらくあとで質問に出るかもしれませんので事前にお答えしておきますがね、この間の都立墨東病院の妊婦さんの痛ましい事故ですけども、ケースとしてもね、脳出血を併発してね、非常にレアケースではありますが、しかしそれだけではちょっとすまない、と思います」

 「いろいろ調べました。週刊誌にもかなり綿密な報告をしてくれる所もあったりしてですね、そういうものも参照しましてね。東京には都立病院のほかに国立の病院、私立の病院、それからね、(東京都)医師会長にもお願いして、市井(しせい)の産婦人科のお医者さんの動員態勢なんかもお願いしたんですが、いずれにせよ、そういうファクターがいくつかありながら、ちょっとそれが束ねられた形で機能する能力を欠いていたという気がします」

 「これはですね、庁内から上がってくる報告を聞き合わすだけでは納得いかないことがあるんでね、猪瀬(直樹副知事)さんにお願いしてプロジェクトチーム(PT)を作ってですね、やっぱり機能整備というんでしょうかね。例えば、札幌などでは、こういう緊急の事態の時、どこの病院にどう送り込むか、差配する、差配師というのか、コーディネーター、そういうシステムがあるようですから。これもやっぱり参考にさせていただいてね、もっと綿密な機能というものを都内で講じていきたいと思っております」

 「ただね、これまた言い訳にもなりませんが、(都内には)かなりの数のベッドはあるんですね、産科のための。ただね、調べてみると、(利用者の)30%以上が都外の方ですね。要するに、周辺の県のそういう整備が必ずしも東京に比べて厚くないんで、むしろ、都外の方々がそこに入院しているということが実態としてある。それはそれで結構なことで、決して拒否するつもりは毛頭ありませんが、そういう事情も含めて、都内にある機能をもうちょっと十全に活用する、要するに医師の機能整備というものをするために機能を検証し、かつ建設していくPTのようなものを作ってですね、都民の不安の解消に応えていきたいと思っております」

 -今後PTの中で都外からの搬送について話が出るということか。

 「それは仕方ないでしょ、東京の機能ってたって、昼間ですね、神奈川、千葉、埼玉から300万超す人たちが来て、東京の運用してくださってるわけですからね。現に東京で働いている警察官や都庁の職員だって半分以上は都民じゃないんだよ、住んでいるところは。だからね、そんなこと言ってられないと思いますよ。これはやっぱりね、周辺圏もですな、その問題について思い切って整備してもらいたいけども、それが間に合わない状況には、それを東京が引き受けざるを得ないけども、それはそれでですね、やっぱりこれだけみんなポテンシャルありながらうまく機能できなかったうらみがあるから。札幌はね、規模も小さいけど、そこでやってるコーディネーターのシステムみたいな形を勘案しましてね、もっと合理的に安全に運用できるように考え直そうと思ってます」

なるほど、都知事閣下に言わせると東京には十分なポテンシャルがある、ただそれがうまく活用できていないだけだと、やはりそういう認識のようなんですね。
では石原氏自慢の都内産科の状況というものがどういうことになっているのか、「天漢日乗」さんの情報によるとこうなんだそうです。
…いやあ何と言いますか、繰り返すようで恐縮ですが決してネタではありませんので念のため。

「首都圏産科崩壊 東京大空襲始まる(その9)墨東病院11月の当直表は地獄の様相 都は墨東病院の常勤産科医を労基法違反の過重勤務で殺す気か」より抜粋

 墨東病院周産期センターの2008年11月医師当直表です。文字ずれてたりしたらごめん。(略)
産科・新生児科とも常勤医だけではとても回らず、非常勤の先生も混ざっています。この表では区別しませんでした。ちなみに私も以前大学病院時代、墨東ではない別の某都立病院で非常勤当直した事あります。外科だったけど、常勤だけではとても足りてませんでした。
 墨東では例の事件を受け、土日の産科当直をできるだけ2人体制にすると発表しました。しかも常勤医使って。
http://www.bokutoh-hp.metro.tokyo.jp/200811sanka.pdf
この結果がこの表であり、常勤医は月5?7回の当直になっています。無論翌日は休みじゃありません。
 まさしく「奴隷エンジン」ですね。私は特に、g-A先生のお体が心配です。
(略)
g-A先生の11月下旬は地獄だ。
 11/23 日直+当直(24時間連続勤務)
 11/25 日勤+当直+翌日8時間=32時間連続勤務
 11/29 日勤+当直+翌日8時間+当直+翌々日日勤=56時間連続勤務
(略)
大丈夫ですかっ、産科のA先生。
11/23の朝9時から12/1の夕方5時までの8日間、200時間の内
 労働時間 136時間
 業務を外れている時間(理想値) 64時間
なのだ。実際には、9時5時の勤務の日でも、お産の進み具合によっては、勤務時間はもっと長くなる。
 もしA先生が、病魔に襲われてもおかしくはない、苛酷な労基法違反の勤務を都が強いている
のである

まあ昨今では労働基準法などなど色々な法律を遵守している場所の方があまりないんだとは思いますが、これが都知事閣下ご自慢の周辺県の患者も引き受けるほど余力を持っている医療資源の実態かと思えばどうでしょうか。
「いやあ、いつもながら「天漢日乗」さんはちょっと大げさに言い過ぎるところがあるから」なんてお思いの皆さんもいらっしゃるかと思いますが、実際の当事者の声によるとこんな感じの認識らしいですよ。

都立病院医師の給与水準 石原都政で全国最下位

 妊娠中の女性が緊急入院を断られ死亡する事件が相次ぎ、都立病院の医師不足が大きな問題になっていますが、革新都政時代には全国の主要自治体病院で中位だった都立病院医師の給与水準が石原都政で最下位に後退したことが十四日、明らかになりました。日本共産党の松村友昭都議が都議会で追及しました。

 松村氏が都立病院医師の年間給与水準の推移をただしたのに対し、中井敬三病院経営本部長は総務省の資料を基に、全国の都道府県・政令市と比べ、革新都政時代の一九七六年度は五十六自治体中三十一位だったものの、自民党都政になって順位が下がり続け、石原都政の二〇〇六年度には六十一自治体中最下位に後退した事実を明らかにしました。

 松村氏は、石原都政が“医師の給与が高過ぎる”との包括外部監査の指摘や、都立病院への繰入金の二割削減を求めた「財政再建推進プラン」に沿って、待遇改善を怠ってきたと強調。待遇改善をはかり、産科・周産期医療で欠かせない女性医師の確保に努めるよう求めました。

 中井病院経営本部長は「都立病院の医師の充足率は高い」などと答えました。

いやあの、「医師の充足率は高い」ってあ~た、公立病院の定数を満たしてるから医師は足りてるなんて、満員電車でも車外にあふれていないからキャパは足りてると言うようなもので(r
今どきまともに救急やるような急性期病院でそんなこと言ってたら、あっという間に過重労働であっちでもこっちでも戦線破綻が目に見えているんですけど。
まずは机上の数字を睨んでいるだけじゃなくて、ちょっとでもいいから現場に出て当事者の生の声に耳を傾けましょうよ。

着々と死亡フラグ立てが進んでいる東京都救急医療体制ですが、まず明らかなリソース不足を認めていくところから始めていくのが筋じゃないんですか?
て言いますかね、やっぱりいるんですよ、牟田口の後継者って。
産科医を誤解させた二階さんだけじゃなくて、日本全国どこにでも牟田口さんの後継者だらけなんです。
彼らが今この瞬間も医療現場を追い込み、崩壊させていっているんですよ。

11月10日、司令官であった2階大臣は自らが立てさせた会見所に幹部を集めて
泣きながら次のように訓示した。
「諸君、当直医は、院長命に背き夜間救急を放棄した。受け入れ態勢がないから
医療は出来んと言って救急搬送を勝手に断りよった。これが病院か。
病院は空床がなくても受け入れをしなければならないのだ。
検査機器がない、やれ薬剤がない、機材がないなどは救急を放棄する理由にならぬ。
MRIがなかったらCTがあるじゃないか。CTがなくなれば、XPでいくんじゃ。
XPもなくなったら足で蹴って反応を見い。足もやられたら口で噛みついて意識を確かめい。
当直医には応召義務があるということを忘れちゃいかん。
病院は公立である。知事が守って下さる・・・」
以下、訓示は一時間以上も続いたため、当直明け通常勤務後の残業の連続で、
立っていることができない医師たちは次々と倒れた...

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2008年11月16日 (日)

今日のぐり「そば茶屋いきいき」「天の(天乃うどん店)」

ファジアーノ 3-1 横河武蔵野FC
後半一気の見事な逆転劇で残り二試合であと一勝とリーチがかかりました。
いよいよ次節ホーム最終戦がどうなりますか、ですな。

それはともかく、最近本業のぐり研活動も滞り気味なので今日も二ついってみましょうか。

そば茶屋いきいき
尾道インター前を通過してまっすぐ北上すると、見えてきました「甲山いきいき村」。
近ごろでは珍しくない地域の農産物などを扱っている道の駅なんですが、ここの二階にあるのが本日のお題であるところの「そば茶屋いきいき」なんですね。
どう見ても目立つ看板出しているような場所でもないのですが、お昼時はちょっとした行列になっていることも多いのでご注意ください。

ここは普通の蕎麦(二八)に加えて数量限定で十割も扱っているんですが、せっかくの新蕎麦の季節ですので十割の盛りをいただきました。
打ち粉の加減なんでしょうか?ここの蕎麦の舌触りはちょっと独特ですよね。
しかしこの日は少し腰がひけていたのか、茹で加減の見極めがちょっとばかり甘かったかなという印象でしょうか。
蕎麦の香りも悪いものではないんですが、せっかくの十割蕎麦なんですからもっとぶわっと来て欲しいですね。
個人的にはここの店の場合、蕎麦としての完成度から言うと普通の蕎麦の方がいいのかなと言う気はしますが、こういう選択枝があるのは歓迎したいです。

良いところを挙げますと、ここは蕎麦つゆは別容器に入っていて自分で好みに注ぐのですが、蕎麦湯をいただくにはこういうのがありがたいですね。
蕎麦つゆの味自体はさほどどうこう言うレベルのものではありませんが、たっぷりの蕎麦湯をいただいているとまあいいかと寛大な気持ちになってきます。
地の産品の買い物がてら、秋の山野の色づき具合を眺めながらドライブの途中で立ち寄るにはちょうどよい店かも知れません。

天の(天乃うどん店)
県道からちょい入った住宅街の裏側の田園の一角(と言うしかない立地)に立つ全くうどん屋っぽくない店構えという、この界隈では珍しいスタイルでやっている店です。
この店はガイドブック等の露出はしない方針なんだそうですが、こういう立地と言いまさにクチコミでしか広がりようがない店という雰囲気を発散しまくっていますね。

入ってすぐの券売機で食券を買いますが、混み合った狭い店内では相席が基本です。
トッピングの多い一部メニューは別として、価格帯としてはおおむね\300前後でしょうか?一部のセルフの店よりは高く、一般店よりは安くという値付けですね。
うどん好きの視点からは他に選ぶべきメニューもあるんでしょうが、ここは比較検討の意味でぶっかけ(冷)を注文してみました(しつこい)。
ちなみにぶっかけの食券出すだけで黙っていると温ぶっかけになるので猫舌派の皆さんは要注意です。

丼に入って出てくるのは見るからにつやつやと輝くうどんで、舌触り、歯ごたえ食感、そして味ともなかなかによろしい。
基本的にはどちらかと言うと柔らかめのうどんなんで、何だこれ腰ねえじゃんと言い出しそうな人がいそうですけどね。
ただこれはこれでうまいことはうまいんですが、どちらかと言うと醤油うどんの派生系って印象があってぶっかけとしての完成度には高い点はあげられませんかねえ。
うまいうどん屋とうまいぶっかけうどんを食わせる店とはイコールではないという、ここにもその一例を見た思いですが、素直に他のうどん食えよって話ですよね(苦笑)。

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2008年11月15日 (土)

事故調いまだ迷走中

先日も第15回のことを少し書きました死因究明検討会の第16回目が記事になっています、が…これがまたよくここまでと思うような話になっているようですね。

3団体からヒアリング―死因究明検討会

 「第16回診療行為に関連した死亡に係る死因究明等の在り方に関する検討会」(座長=前田雅英・首都大東京法科大学院教授)が11月10日に開かれ、全日本病院協会、全国医学部長病院長会議、医療過誤原告の会の3団体からヒアリングを行った。

 全日病の徳田禎久常任理事は、医療事故の原因究明などを行う委員会の名称が、自民党案の「医療安全調査委員会(仮称)」に変更されたとして、「委員会の本来の設置目的からずれてきた」と批判。同検討会の「医療の安全の確保に向けた医療事故による死亡の原因究明・再発防止等の在り方に関する試案」の第3次試案については、「原因究明・再発防止と責任追及が同じ組織で行われることになる、第3次試案には反対の立場を取る」ことを明言した。
 また、日常の診療において患者、家族の信頼を得るために、▽患者、家族に診療内容を十分に説明することで納得してもらうこと▽リスク回避も考慮した診療システムの構築▽診療記録を電子化し、修正された場合の記録(時刻、修正理由等記載)も残るような、改ざん不可能なシステムづくり▽診療の経過を必要に応じて説明(予定通り進まない場合も)▽医療行為で患者に不利益をもたらす結果になった場合、診療記録を提示して説明し、患者、家族の疑問も記録すること―の5点を医療機関に義務付けるべきだとした。

 全国医学部長病院長会議の「大学病院の医療事故対策に関する委員会」で委員長を務める山形大の嘉山孝正医学部長は、「ハイリスクの医療を担う大学病院は、医療事故への対応を厳しく行っている」と、この10年間の大学病院の意識や制度の変革を強調。第3次試案の内容については、「事故調査と患者救済が混在している。この2つは分けて考えるべきだ」と述べた。
 さらに、医療安全調査委員会については、「多くの大学病院の調査委員会は十分に機能している。機能していない病院に厳重なペナルティーを科すようにすれば良い。(医療事故の調査などは)大学病院を中心に行えば、明日からでも動く」と力説した。

  25年前に娘を医療事故で亡くした、医療過誤原告の会の宮脇正和会長は、第3次試案の「医療死亡事故の届出」について、届出範囲に該当すると医療機関の管理者が判断したにもかかわらず、虚偽の届出を行う、もしくは故意に届出を怠った場合、「死者や社会に対する明確な犯罪行為として、厳しく対応すべき」だと発言。さらに、「内部告発者の救済制度を明確にしてほしい」と訴えた。

 質疑応答の中で、嘉山氏は「やはり医療サイドと患者サイドの相互理解が進んでいない。宮脇さんが受けたことは犯罪。カルテを隠ぺいしたとか、書き直したことは公文書偽造。それと医療の結果が悪いことは全く別だ」と反論。徳田氏は「医療安全の観点で事故死をどうとらえるのかという議論を、ここでしっかりやってほしい」と述べた。

ええと…一読して話の流れが見えた方、いらっしゃいますか?
頭の悪い管理人には「なんだこの要領を得ない記事は」という印象なんですが、どうも実際の検討会の方は記事以上に大荒れだったようですね。
いつもお世話になっている「ロハス・メディカル ブログ」さんで実際の発言を掲載しているんですが、どうもまあ皆さんいい歳をして何という…な内容です。
何とかまとめてみようかとやってみたのですが、とうていまとまりそうにないのでいくつかチェックだけ入れてみました(苦笑)。
もうあっちもこっちも到底意見が集約化されてきたなんて状況じゃないってことだけは判るという話ですね。

死因究明検討会16(1)より

堺秀人(神奈川県病院事業管理者・病院事業庁長)
「(略)さて嘉山先生に質問。刑事捜査や刑事裁判にかかわるところに各方面からたくさんの意見が出された。資料2-4-4では山形大での取り組みで事故発生時にどのように警察署へ届け出るか決められている。これが現時点での山形大の方針なのだろう。一方で嘉山試案では医師法21条に関して、医療関連死を異状死に含めないとなっている。若干の違いがあるようだが、この点の説明をお願いしたい」

嘉山孝正(大学病院の医療事故対策に関する委員会委員長・山形大学医学部長)
「山形大のマニュアルは拡大解釈された医師法21条、法医学会のガイドラインに則っている。ただし、これがいいと思っているわけではない。ただ法を破るわけにいかないから、こうなっている。でもあれは法医学会が勝手に拡大解釈しただけだと思っている。法医学会にも聴いたが、こんなことになるとは思っていなかったということだった。実は昭和23年に外口局長のすごい先輩の医政局長通達で、医療については異状死の対象から外すというのが出ている。その後、あまりにも目に余る一部の医師がいたために警察が入ってくるようになって、という流れがあるんだと思う。だから昭和23年の局長通達のようにやっていただければということで、この試案になっている。ただし勘違いしてもらったら困るが、犯罪はダメ。カルテ改ざんや事故の隠ぺいは犯罪だから。

ご存知の通り、医師法21条というのは有名な「医師は、死体又は妊娠4月以上の死産児を検案して異状があると認めたときは、24時間以内に所轄警察署に届け出なければならない。」というものですね。
福島県・大野病院事件でも起訴理由の一つとして取り上げられた通り、時代に合わないと指摘されて久しい条文ですが、厚生省独立の翌年に早くもこういう通達が出ていたとは知りませんでした。
と言いますか、それが生きているのであれば色々と話が変わってくるはずなのですが、どこで反故にされたのでしょうか?

永池京子(日本看護協会常任理事)
「(略)現代の医学をもっても解剖しなければ十分に分からないような時に納得しない遺族は当然いる。協会の中の看護倫理委員会にも、一生懸命説明をしたけれど納得してもらえなかったというような報告がいくつか来ているので。嘉山参考人にも伺いたい。大学病院が調査委員会として機能した時に、解剖したとしても分からないことは出てくるのでないか。そういう時に遺族が納得するか。宮脇参考人には、大学病院が調査委員会の機能を果たして納得いかない内容の報告が出てきた時に納得はいくか(ママ)、大学病院が調査委員会の機能を果たすことについてどう思うか」

嘉山
「失礼ながら永池委員の意見は自然科学をやっている人のものとは思えない。分からないことがあるなんて当たり前のことなんで、分からないことがあるから我々も日々研究しているんだし、たとえ人類としては分かっていることであっても宇宙船の仕組みなんかどんなに説明されても分かるはずない。だから患者さんご家族がどれだけ説明しても理解できないということは起こり得る。(略)どうやったら分かることができるかと言うけれど、説明する方と受ける側との間に信頼関係がある場合は、理解度が上がる。上がるというより、分かったような気になる度合いが上がる。(略)今不幸なのは、不信感があるために理解度が下がってしまうこと。早稲田の和田先生がやっているような間を取り持って理解度を上げていく取り組みがとても大事だ。我々が一つひとつ順番に情報を丁寧に説明していくことによって、理解したような感じがする、そこをめざすしかない。信頼を築くことこそが一番大事だ」

宮脇正和(医療過誤原告の会会長)
「10月2日に日弁連から発表された院内調査委員会についてのアンケート調査によれば、これは300床以上の病院の25%から回答を得たそうで全部で1900件の委員会が設置されていたが。大学病院の関係者で委員会を設置してのが6割で、しかし4割は患者からの聞き取りもやっていない。現在のこの状況で納得しろと言われても納得できない」

嘉山
「今のお話、患者さん家族の気持ちをsatisfyすることに焦点が当たっているということがよく分かる。しかし、それは医療事故を調査するのとは別の方策で行うべきだ」

ま、どっちの言い分もそれなりにお説ごもっともとしかいいようがないんですが、いきなりこの話題が「罵り合い」の引き金を引いちゃったみたいです(汗)。
当事者は嘉山氏と木下勝之氏(日本医師会常任理事)ですが、「警察は勝手に介入しないと約束した!」だの「全国の医師が事故調案に賛成だ!」だのといった医師会の嘘が既に色々と明らかになっている今の目で見ると、どっちが正しいか明らかと見えてしまうのは気のせいですかね?
で、この罵り合いに法学の権威たる座長の前田氏が乱入していくのが以下の(3)の部分なんですが、はっきり言って過去ずっとやってきた定義論争の延長ですかね…一部だけ抜粋してみますが。

死因究明検討会16(3)

木下
「医療界として了承した身として申し上げるのは、この第三者機関は責任追及はしない、と。ただ、その時にこれは明らかにヒドイという例は通知してほしい、それを警察・検察は尊重する、そういう仕組みになっている。通知しないとするならば、今まで通り警察の方が判断する。そこから見れば非常に狭められたことだけ通知すればよいのだから、対象が非常に狭くなって、我々医療側も動きやすくなる」

徳田禎久(全日本病院協会常任理事)
「大変申し訳ないが、それでは責任について判断していて、責任追及の一端を担っていると言わざるを得ない。何度も同じことを繰り返すが、医療安全のためには、当事者が包み隠さず話すということが大切で、そのことをどう担保するのか。一般的に責任を追及されると分かっていると本当のことを言わなくなってしまう。医療安全という観点から、事故死をどのように位置づけるのか、その結論をいただいたうえで改めて意見を述べる機会をいただきたい。1人1人の委員から、ご意見を伺えればと思う。そのために、もう一度時間を割いていただきたい」

前田雅英(座長・首都大学東京法科大学院教授)
「大学病院の院内事故調でこれは犯罪じゃないかというのが出てきたらどうするのか」

嘉山
「何が間違ってて何が正当な医療か我々でも判断をくだすのは難しい。この委員会とは別の話になってしまうが、医療界が自律してこなかったのは確か。木下委員にも申し上げたいが、日医にはガバナンスがない。自律的な組織をつくって自分たちで処罰していくのが専門家としての義務だと思っている。でも、それを刑法でやるのは萎縮医療を招くだけだ

話はまだまだ続きそうなんですが、結局事故調試案が出てきたころにあちこちから提出された反対意見のレベルから全く議論が進んでいないという感じですかね?
この点では調査と処罰は別系統でやると明記した民主党案の方がおおむね受けがいいようなんですが、それにしても結局処罰感情なるものをどうするか、司法の介入をどうするかという問題は先送りされるだけのように感じます。

ところがですね、こんな異論百出で到底まとまるものとも思われない話を、厚労省はすでに「説明会」なんてものまで開くと言っているわけなんですよ。
しかしまあ、参加するメンツを見るだけでも実にそうそうたるものがあるんですが…まともな反対意見など口に出しそうなのは全医連の黒川氏くらいか?
おおかた見切り発車でも「事故調は出来ます!」という既成事実化をしておけば後はどうにでもなるという魂胆でしょうが、いつもの後先考えない行動が後でどんな大事になるか…

医療安全調で「地域説明会」を開催―厚労省(2008年11月11日CBニュース)

 医療事故の原因究明と再発防止に当たる医療安全調査委員会(仮称)について理解を深めてもらおうと、厚生労働省は11月19日の九州地区を皮切りに、東海北陸、近畿、東北の各地区で「地域説明会」を開催する。参加費は無料。

 第1回は、福岡市の福岡国際会議場で午後4時から6時まで開催。診療行為に関連した死亡の原因を究明する制度(死因究明制度)の検討状況について、厚労省大臣官房参事官の岡本浩二氏が報告するほか、医療事故の調査に関するモデル事業の福岡地域代表の居石克夫氏(九大大学院教授)が講演する予定。

 パネルディスカッションでは、西日本新聞社会部記者の坂口由美氏がコーディネーターを務め、岡本氏、居石氏のほか、池田俊彦氏(福岡県医師会副会長)、大野優子氏(医療過誤原告の会)、黒川衛氏(全国医師連盟代表、真珠園療養所内科医)、小林洋二氏(弁護士、患者の権利法をつくる会事務局長)が意見を述べる。

 今後は、12月18日に東海北陸、同24日に近畿、来年1月25日に東北地区で開催を予定しており、その後は未定。今回の説明会について、厚労省の担当者は「各分野から幅広く集まって議論し、さらに理解を深めてもらいたい」と参加を呼び掛けている。

この話、結局どのあたりを落としどころにするかなんですが、これだけ悪印象が根付いてしまった医療事故調案はばっさり斬って捨てた方がいいんじゃないでしょうか?
厚労省の事故調案についてはすでにさんざん突っ込みが出ていますが、要するに「結局誰にとっても求めていたものを得られなくなる(可能性が高い)制度であることが最大の問題点だと思うのです。
であるならば、誰にとっても異論無く幸せになれそうなところから攻めていくのがスジというものではありませんか?

以前にも紹介しましたが、弁護士会などが進めているようなものを含めて紛争解決の第三者機関(ADR)を広めていく、さらには北欧型の広範な医療無過失補償制度を導入するあたりが最も異論が少ないのではないでしょうか。
加えて今のシステムでは医師免許停止などの行政処分は実質的に有罪判決が出た後で下される形になっていますが、この順序を逆にして医療側自身の手で悪質な同業者に対する処分を下していくシステムを考えるべきだと思いますね。
医療行為の正否を判断するのはあくまで医療専門家によるべきだし、司法に「売り渡す」のも感情的にどうかと言うのであれば、自ら率先して迅速かつ適切なペナルティーを課すシステムを立ち上げなければ社会的にも受容はされないでしょうから。

おおむね医師たる者、司法から「お前は犯罪者だ!」と言われるとカチンと来るものですが、同業の先達から「あんた全然駄目だね」と言われると結構納得してしまうものです(いわば条件反射でしょうか…)。
そのためには原因究明と再発防止のシステムであるべき医療事故調とは別に、最低限の「これは明らかに処分されても仕方ないだろ」と言うものを医療側専門家が迅速に審理する組織を用意するべきでしょうが、事故調と違ってこの場合は全ての真実を究明するが如き詳細さは必要ないと言うところがミソですね。
とにかく少しでも疑問がある症例はとりあえずさっさと調べ、絶対確実にクロというものだけに迅速に処分を下す、それが必要なマンパワーと患者側の「処罰感情」、そして医療側の「被処罰感情」との折り合いをつける落としどころではないでしょうか。

そして何より、一番の基本は患者や遺族の求めるところの「真実」に対して医療界がどれだけ真摯に応えられるかなのですが、最後に少しばかり意外と言っても良いニュースを紹介して終わりにしておきます。

患者さんのお医者さんに対する信頼度は何パーセント?

この度患者コミュニティサイトLifePaletteでは、Webマガジン ColoredDaysMagazineの企画として、患者さんとお医者さんの間に横たわる不信の実態を探るべく、主治医に対する信頼度アンケートを実施いたしました。アンケートは、がん患者さんを中心としたLifePaletteのアンケートパネル65名から寄せられた結果を収集・分析しています。
アンケートにお答えいただいた方の年齢層:20代(3%)、30代(12%)、40代(34%)、50代(30%)、60代(11%)、70代(5%)、無回答(5%)

■-------“主治医を自慢できる?”に対し、“はい”が7割弱-------■
「あなたは主治医を自慢できますか」という問いに対して、“はい”と回答した人は、全体の69パーセント、“いいえ”と回答した人は17パーセント、“わからない”2パーセント、無回答12パーセントという結果になりました。

主治医を自慢できると答えられた方は全体の7割近くおられ、世の中で言われるほどの医療不信は、主治医という対個人レベルでは、そこまで深刻かつ広範囲にみられるものではない、と感じられました。

■-------“お医者さんは大変”と心配する声が9割超-------■
また、「お医者さんは大変だなと思ったことはありますか?」という問いに対しては、“思ったことがある”が95パーセント、“思ったことがない”が3パーセント、無回答2パーセントという結果になり、9割を超える方が、お医者さんの業務に対して、忙しすぎる、休む暇がないようである、業務内容が多岐にわたる、などの声を寄せてくださいました。

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2008年11月14日 (金)

注:「KY」は朝日新聞社の登録商標ではありません。

憲剛が間に合ったのはよかったんですが、一方で名波引退ですか…
あの灼熱のアジアカップは間違いなく名波の大会だったですね。
モリシも辞めたし、時代はどんどんと変わっていくわけだ…

そんな中で変わらず牟田口後継者としての王道を突き進む二階氏ですが、一応発言は撤回することにしたそうです。
しかし面白いのは、総理の原稿誤読なんてどうでもいいような話は鬼の首を取ったように報じるマスコミさん達が、こういうはるかに影響力の大きな問題はスルーしているということですね。
医療問題に強いと自負している(らしい)某読売新聞など全く報じる気配すらありませんし。

二階経産相も失言 「医者のモラルの問題」発言撤回(11月13日産経新聞)

 東京都内で脳内出血の妊婦が相次いで救急搬送を拒否された問題で、二階俊博経済産業相が「医者のモラルの問題」と発言したことから、医師などの団体から抗議が相次いだ。二階経産相は13日、謝罪した上で発言を撤回した。

 発言は10日、二階経産相が舛添要一厚生労働相とともに、病院の情報伝達システム開発を両省で強力して行うことを表明した際に飛び出した。

 二階経産相は搬送拒否の問題に触れ、「医者のモラルの問題だ。相当の決意を持ってなったのだろうから、忙しいだの、人が足りないだのということは言い訳に過ぎない」と、発言した。

 これに対し、全国医師連盟が「産科救急の問題は、基本的に人員や施設の不足に起因」とした上で、「発言でモチベーションが下がり、さらに離職する産科医が増える」と抗議声明を発表。他にも2つの市民団体から抗議の声が挙がった。

 13日の参院厚労委員会でも足立信也議員(民主)が発言の真意を質問したところ、二階経産相は「発言が医療に携わるみなさまに誤解を与えたことをおわび申し上げ、発言を撤回する」という回答を寄せた。

経産相が発言撤回し、謝罪 妊婦拒否「医者のモラル」(11月13日47NEWS)

 相次いだ妊婦受け入れ拒否をめぐり、民主党の足立信也参院議員は13日の参院厚生労働委員会で、二階俊博経済産業相が舛添要一厚生労働相との会談で「医師のモラルの問題」と発言したとして、その適否をただした。経産省幹部は二階氏が発言を撤回し「不愉快な思いをさせ、おわびする」と話していることを明らかにした。
 足立氏によると、二階氏は10日、妊婦の容体などを各病院で共有する情報伝達システム開発について、舛添氏と話し合った際「忙しい、人が足りないというのは言い訳」などとして、医師のモラルに疑問を呈した。この発言を伝え聞いた日本医師会などが強く反発しているという。
 経産省幹部は答弁で、二階氏が「今回のような悲しい出来事を二度と起こさないため、医師として専門的な立場から協力してほしいという趣旨だった」と釈明していることも伝えた。

報道によれば何をどう誤解されたのかも判らないし、医師として専門的な立場から協力を云々とどう読んだらそういう趣旨になるのかも理解不能なんですが、どうもこれ記事の筆足らずであるとかそういう話ではないようですよ。
昨日参議院の厚生労働委員会でこの二階氏発言が取り上げられたのですが、「産科医療のこれから」さんでも掲載されているように、生音声を聞いても何か何やら全く意味不明。
そもそも二階氏本人が出てこないんだから意味不明のコメントを代読させられる官僚もいい迷惑だろうと同情しますね。
誤解と聞いてふと思ったんですが、二階氏発言の真意は医師の「モラルmoral(道徳、倫理)」ではなく「モラールmorale(意欲、やる気)」だったのかもですね(思いっきり曲解)。
そうであれば確かに部分的には同意ではあるんですが、問題はなぜ現場が志気喪失に至ったかということを考えれば、当事者には全く自覚がないんだね~という話でFAでしょうか。

ところで足立議員も質問中に言及していますが、以前に紹介しました「兵庫県立柏原病院の小児科を守る会」が素早い抗議声明を出しているのですね。
今回の件では珍しく日医がさっさと抗議の声を上げているんですが(ただこれも、日医の公式見解って形でもなさそうですね)、現場に対する影響力からすればこうした市民の声の方が百万倍も大きいのではないでしょうか。
これで救急学会あたりが抗議声明でも出せばもっと面白いことになるのかなと思うのですが、医師の世界も時代にあわせてそういう動きの速い体制を構築していってもいい時期だと思いますね。

三階(産科医)を五階(誤解)させてしまった二階氏の話はこれくらいにして、こちらもうお一方話題の御仁がいらっしゃいます。
先日経過をお伝えしました阪南市立病院の医師大量辞職問題ですが、昨日お知らせしました医師8人辞表提出という事態を受けて、新たに就任した福山市長がまた日和ったことを言っているということです。
こちらの方は二階氏発言とは逆に医療業界に与える社会的影響はほとんどないと思いますが、わりあいネタになりそうな話であるせいかワイドショーなどでも結構取り上げられているようですね。

阪南市立病院問題 市特別委で新市長が一転発言 (11月13日MBSニュース)

 大阪府・阪南市立病院の医師8人が一斉に辞表を出した問題で、医師の給与引き下げを主張していた新市長が一転、13日朝の特別委員会で「引き下げるとは言っていない」と発言しました。
 12日、市長に就任したばかりの阪南市の福山敏博市長は13日朝、市議会の病院特別委員会に出席しました。

 福山市長は、市立病院の医師の給与の引き下げを主張してきましたが、その後、病院の医師8人が一斉に辞表を提出したため、内科などの診療ができなくなる恐れが出ています。
 しかし13日朝の特別委員会で、福山市長は「給与を引き下げるとは言っていない」と一転した発言を行い、給与の歩合制を無くすかわりに地域医療手当を上乗せするなどの代替案を示しました。

阪南市長が弁明 医師8人の辞任問題(11月13日KTVニュース)

大阪府の阪南市立病院で医師8人が待遇の見直し方針に反発し、一斉に辞表を提出した問題で、市長は「給与引き下げとは言っていない」と弁明しました。
阪南市議会では、13日の午前10時から市立病院関連特別委員会が開かれ、就任したばかりの福山敏博市長が答弁に臨みました。
阪南市立病院では、医師の退職が相次いだため、給与を大幅に引き上げて医師を確保していました。ところが、先月の市長選で現職を破って当選した福山市長が就任前の会見で、医師給与の見直しに言及したため、医師が反発して12日、8人が辞表を提出しました。
13日の委員会で、福山市長は市の医療体制の見直しについて語ったことの真意が伝わっていないとし、「給与引き下げとは言っていない。医師の慰留につとめている」などと弁明しました。しかし議員からは、疑問の声が相次いでいます。

往生際が悪いと言いますか、医師側も辞任の理由は給与引き下げではなくて「信用できなくなった」と言っているんですけどね。
福山市長に関しては噂レベルではいろいろとあるようですが、誰が市長をやるにしても阪南市自体が夕張化の半歩手前という状況で、病院を潰すにしても巨額退職金で財政破綻、続けるにしても慢性赤字で財政破綻と結構「詰み」になってきているようです。
こういう問題は多かれ少なかれ全国の公立病院を抱える自治体で起こっている現象ですが、民間なら黒字に出来る分野ですら赤字にしてしまうのが公立病院体質というものなのですから、いい加減最低限の公共サービス的部分以外は手を引いて縮小均衡を図るべきだと思うんですけどね。

あるいは公立病院改革の前に立ち塞がる最後の壁とは、「隣の町にもでかい総合病院があるだから、オラとこの町にもないとは許せねえだ」という地域住民のエゴであるのかも知れないです。

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2008年11月13日 (木)

地方の医療行政あれこれ ~ 人が逃げ出す自治体と集まる自治体

予想通り二階発言の二の字もマスコミの俎上に載らない今日この頃、皆様におかれましては如何お過ごしでしょうか?(笑)。
Yahoo!のニュース検索で見ても、医療系派遣会社関連のCBニュースでわずかに一つ、二つ散見されるのみですからね。
一方で奥田氏発言などはずっと大きく取り上げられたりもするわけですから、国民一般の関心がそちらに向いているのか、あるいはマスコミ自体の何らかの意図があるのかですが。

さて、少し前に大阪の阪南市立病院の愉快な話を取り上げましたが、いよいよ辞表提出にまで至ったようですね。

阪南市立病院、医師8人が辞表提出 新市長就任日に(2008年11月12日産経新聞)

 医師の大量退職から経営難に陥った大阪府阪南市立病院で、新たに確保した医師が新市長の病院経営見直しなどに反発し辞意を伝えている問題で、医師8人が12日、辞表を提出したことが分かった。この日就任した福山敏博市長は話し合って慰留する考えだが、市立病院の運営は再び厳しい局面を迎えた。
 この日午前中に、辞表が提出された。関係者によると、常勤的に診療をしている医師2人のほか、当直医などで、来年2月末などに退職する意向という。
 阪南市立病院は、医師の大量退職で昨年7月に内科が休診。その後、歩合給を導入して医師の平均年収を約2000万円に引き上げる待遇策を掲げるなどして医師確保を進め、今年9月に内科の診察を再開するなど再建に乗り出していた。しかし、10月の市長選で現職を破り初当選した福山市長が、歩合給の見直し検討などに言及していた。
 医師らは、福山市長の発言は、給与体系を見直した議会の議決を無視したもので、信用できなくなったなどとして反発。これまでに辞意を表明していた。
 市側は慰留に努めるが、辞職につながれば、医療収益が大きく減少するなど、運営に支障が出るおそれがある。

良く言って契約不履行、普通に言って詐欺まがいの行為ですから当然の結果と言えば結果なんですが、いやしくも大阪であるなら少しはオチをひねれよとも言いたくなります。
しかし市長選の一番の争点とも言うべき問題だった市立病院関連でこうまで不用意な発言をしてしまう新市長とはどのような人物なのでしょうか?それも市民の選択の結果ではあるわけですが、う~む…
釣った魚に餌はやらぬとか朝三暮四という言葉が思い浮かびますが、こういう自治体の病院にこれからも引っかかってくれるお猿さん…もとい、医者がたくさんいるといいですねえ。

さて、こういった話題は大阪の地に限らずで、はるか南の沖縄でも楽しい話があるようです。
時系列を追って琉球新報から二つのニュースを取り上げてみましょう。

県病院事業局、医師手当など全廃(2008年10月28日琉球新報)

 県病院事業局が県立病院で働く医師298人の医師手当、調整額の全廃、初任給調整手当の支給限度額の引き上げなど手当の見直しを2009年度実施の方向で検討していることが28日までに分かった。病院事業局は、医師手当などの見直しの理由を「人事院勧告に従い、医師確保のための初任給調整手当を引き上げる財源としたい」と説明している。一方、県立病院医師は「医師確保のために働いている中堅医師の給与が削減されるのは本末転倒」と批判しており、離島・へき地の医師確保が困難になるとの指摘も出ている。
 特殊勤務手当の医師手当は、県庁を除く本島中南部以南の勤務地で月額4万5000円、県庁(事務職)・北部で同9万5000円、宮古・八重山で同16万円、南北大東島の診療所で同20万円が支給されている。全廃されると、年間総額で2億3520万円の削減。調整額は同1億4151万円の削減となる。
 一方、勤務35年目までの医師に支給される初任給調整手当については、県人事委員会の勧告に従い、上限を月額30万6900円から41万900円に引き上げることを検討、年間総額では3億4371万円の増額となる。
 同局は今月23日に県公務員医師労働組合、県公務員医師管理職労働組合に提案したが、組合側は受け取りを拒否。来月上旬あらためて提案したいとしている。
 親富祖勝己県公務員医師管理職労組執行委員長は「医師手当は特に確保が難しい離島、へき地での勤務に手厚く支給されている。それがなくなれば、離島、へき地の医師確保が難しくなり、医療が崩壊する。また若い医師を指導する中堅医師への影響も大きく、中堅医師の流出にもつながり、研修制度も崩壊しかねない」と指摘している。
 県公務員医師会が昨年5月に会員226人を対象に実施した「医師偏在化問題と医師手当に関する意識調査」では医師手当が廃止された場合、47・5%が「退職したい」と回答、「最後まで勤務する」とした9・5%を大きく上回っている

県、全廃を再提案 医師調整額 /沖縄(2008年11月11日琉球新報)

 県病院事業局が県立病院で勤務する医師298人の医師手当や調整額など手当ての見直しを検討している問題で、同局と、県公務員医師管理職員労働組合、県公務員医師労働組合の2回目の交渉が10日、県立南部医療センター・こども医療センターで行われた。
 局は給与の調整額について2011年4月に全廃することを再提案。10月の1回目の交渉で提案していた医師手当の全廃、初任給調整手当の上限額の引き上げについては具体的には提案しなかった。
 局の試算によると、調整額の全廃で県全体で年間2億5000万円が削減される。医師1人当たりでは平均で年額86万4800円、最高142万4000円の減額となる。2労組は「調整額は超勤、賞与、退職金、年金にまで影響する」とし受け取りを拒否した。
 県公務員医師管理職労組の親富祖勝己執行委員長は「調整額が全廃されれば、時間外勤務が多い医師、過酷な勤務状況の医師らの給与の下げ幅が大きい。医師確保が難しいこの時代に逆行している」と指摘した。
 医師手当について県病院事業局は提案文書の中で「今後も(労組と)よく話し合っていきたい」との考えを示した。

そもそもの事の発端は人事院勧告で医師の初任給手当を引き上げるよう言われたことなんですね。
これを「産科医を中心に待遇改善が図られてきているから」と拒否したのが昨今産科絡みで何かと話題の東京都なんですが、一方こちら沖縄の場合は初任給手当を引き上げる分を医師手当を引き下げて相殺するという素敵な方法を選んだということです。
沖縄の場合も近ごろの例に漏れず色々と医療問題を抱え込んでいるのは確かなんでしょうが、どうも噂を聞く限りはあまり頭の良い対応をしているようには思えません。
今回の件も全国にあまねく広がる医師不足の現状を知る者なら、誰もが同様な危惧を抱く話だと思うのですが…

批判ばかりではアレなので一応県当局をフォローしておくと、沖縄というところは比較的最近まで日本の医療制度外に置かれていたせいか今もちょっと独特な医療事情があるんですね。
今でも米国式医学教育をやっている病院があったりで、将来はアメリカに渡って医療をやりたいなんて夢を持つ人々には一定の人気を誇っていましたから、これでもちゃんと医者が集まるのならいいのでしょうかね。
虎ノ門のように奴隷労働と言われつつ昔から人気の病院もあるわけですから、金銭や待遇以外のインセンティブを提示出来るかというチャレンジの一つとして生暖かく見守ることにしておきましょうか。

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2008年11月12日 (水)

貧乏人が思わぬ大金を手にすると…?

昨日お伝えした二階俊博経産相の名言?「政治の立場で申し上げるなら、何よりも医者のモラルの問題だと思いますよ。忙しいだの、人が足りないだのというのは言い訳にすぎない」ですが、さっそく全国医師連盟が噛みついたようです。
桝添厚相のお言葉に従って医師連盟も地道にこういう声を出す活動を続けていくことが大事なんじゃないかと思いますが、例によって二階発言もこの声明もマスコミには黙殺されそうな気配なんですよねえ…
まあそうなったらそうなったでますます楽しいことになりそうですから、いずれにしても当面は事態の巻き起こした波紋に要注目ってところでしょうか。

さて、今日も昨日の続きで医療費問題をちょいと絡めて医療業界の今後を考えてみましょう。
まずは先日報道されたこちらのニュースから紹介します。

介護労働、8割が「やめたい」(2008年11月7日  読売新聞)

多忙、低賃金など原因県医労連調査

 県内の介護・福祉労働者のうち約8割が仕事をやめたいと思った経験があることが県医療労働組合連合会(県医労連)のアンケート調査でわかった。人手不足による多忙な業務に加え、低賃金などの労働条件が主な理由だ。

 調査は昨年12月~今年3月、県内の病院や特別養護老人ホームなどの介護福祉施設を対象に実施し、介護福祉士やヘルパーら825人が回答した。

 「職場をやめたいと思うことがあったか」という問いに対し、「いつも思う」「しばしば思う」「時々思う」と答えたのは合わせて58・4%で、「まれに思う」を加えると81・3%に上った。職場をやめたい理由は、「賃金が安い」「忙し過ぎる」「家族に負担がかかる」「仕事のやりがいがない」の順で多かった。

 過去1年間の事故の質問では、47・5%が「あった」とし、内容(複数回答)は「転倒」が32%、「転落」10・6%、「誤薬など薬にかかわる事故」6・6%だった。

 07年10月の賃金総額は、「15万円未満」が22・4%、「15万円以上20万円未満」が39・9%、「20万円以上25万円未満」が21・4%。「10万円未満」は7・2%に上り、全体の平均は18万7400円で全国平均19万5400円を下回った。県医労連の高橋勝行書記長は「介護報酬を引き上げるなどの根本的な解決策が必要」と話している。

ひと頃介護サービス業者の不正請求問題がずいぶんと叩かれましたが、不正をやってもまだ赤字という実態は華麗にスルーされたままです。
辛うじて黒字という業者であってもその中身を見ていくと上の通り、現場の犠牲の上にかろうじて続けられているというだけに過ぎません。
サービス自体に対する需要は幾らでもある、どこでも人手不足で今の時代に求人は幾らでもある、それでも人は集まらないし事業としても継続が難しい。
こういうのは誰が悪いんでしょう?現場の努力不足ですか?

一足先に医療が完全崩壊してしまったイギリスの例を見るまでもなく、医療を崩壊に導く低医療費政策もいい加減に見直すべきではないかという声は徐々に高まっているように思います。
日本の医療スタッフは国際比較で見て明らかに他国よりよく働いている質は世界トップクラスに高い(WHO公認世界第一位、ただし過去形ですが…)、そのくせ金のある国ほど沢山つぎ込むと言われる医療費は何故かずいぶんと低い
しかし世界でも指折りの経済大国を自称するわりにはその相対的に低い医療費でさえ支払い限度いっぱいいっぱいだという、すると誰かが現場の努力(ヒラリーの言うところの「聖職者さながらの献身」というやつですね)を帳消しにするほどトンでもないことをやってるんじゃないかとは思いませんか?
低医療費政策はいい加減に何とかしないといけないのは確かだとしても、何にお金を使うかを間違うと医療は何一つ改善しないまま支出だけが増えたということになりかねないということですよ。

いずれにしても医療にもっと金を出せと要求するならば、どこを幾ら増やすかという議論もそろそろ必要な時期ではあります。
慶應大商学部教授の権丈善一氏とご存知虎ノ門病院の小松秀樹氏がこのあたりを語り合っていますが、経済学者の権丈氏曰く「当面」4.5兆円が必要だということです。

医療再生にはなぜ負担増が必要か◆Vol.6

 ――医療は患者やその家族にならないと、現実問題として捉えにくい一方、教育問題は誰でも直面する問題です。

  権丈 だから教育の方が、勝つかもしれません。以前、あるインタビューで「5年で1兆円の財源があったら、何に使うべきですか」と聞かれたことがあります。その時は答えなかったのですが、5年で1兆円使えても、医療はどうなるものでもありません。それなら、教育や環境の問題に使い、医療については負担増の必要性を国民に訴えていくべきですし、それを訴える正当性が医療にはあると思っています。

 そのためには、「いったい、どのくらい必要なのか」、その「見積書」を出す必要があります。例えば100億円や1000億円といった単位で医療の問題が解決するのならば、今の運動方針を続けられても良いと思う。しかし、日本の医療を再建するには恐らく兆の単位が必要ですね。兆の単位になると、他の支出から持ってくることは難しい。

 ――「見積書」はどのように作成すればいいのでしょうか。 

 権丈 前期高齢者については、来年から窓口負担が1割から2割に上げることになっていますが、その見直しが検討されています。では、1割に抑えるためにはいくら財源が必要か、その中で国庫負担をどうするか。救急、産科、小児科医療を再建するには、何をやる必要があり、それには幾らかかるのか。

 人件費については、積み上げが必要です。例えば、医師の場合、勤務時間を法廷労働時間内に抑えるためには何人の増加が必要か、夜勤明けに医師が休むことができるようにするには医師が何人必要でそのためにはいくらかかるのかなどの検討を行うことです。何十年も前に決めた医療法標準の医師数すら満たしていない医療機関が多いのですから、これを満たすためには何人必要なのかです。労働条件の改善は急務です。「昔は。少ない人数でこれだけ当直をこなしたんだ」などと言われても、若い人たちはかわいそうです。

 目に見える、国民に分かる形で「見積書」を提示することです。「見積書」を作ると、必要な医療費の「単位」が分かります。今までは、こうした計数感覚を踏まえずに議論してきたわけです。

 小松 「実は最近、権丈先生から、「医療費を7兆円増やすなら、何に使うか」と聞かれました。

 権丈 日本のGDP比の医療費は8%ですが、そのうち公費負担は6.6%です。それをドイツ並みの8.1%に上げるには、7.5兆円必要です。フランスレベルだと10兆円の財源が必要。そこまでは無理でしょうから、7兆円の財源が回るとしたら、何に優先的に使っていくかを小松先生にお聞きしたわけです。「ヨーロッパ標準の医療費を」ということは、医療政策の研究者や医療者が揃って言ってきたことですけど、それが幾らなのかはあまり意識されてこなかった。7兆円の公的医療費の使途を小松先生が知り合いに聞いてくださったところ、本当に詳細な試算が返ってきました。お持ちしたのはその一部です。

 小松 この試算が当たっているかどうかは分かりませんが、議論のたたき台にはなるわけです。ただ、「見積書」を作るのは、そう簡単な作業ではありません。例えば、私は急性期病院のことしか知りません。臨床を何年かやって、さらに医療制度や臨床に精通した方が何人か集まって、急性期から慢性期まで幅広い視点から作る必要があります。

 権丈 そのようにしてたたき台を作って、議論していくことが必要です。「医療費を増やすべき」という点では、私と小松先生と意見は一致しているのです。

 医療は、一つのサービスを購入することでもあります。その負担を上げるためには、「購入できるものは何なのか」をある程度、納税者に見える形にすることが必要なのです。年金だったら、「6万6000円を7万円にします」と言えば、どれくらい恩恵を受けるかは想像できます。一方、医療の場合は、「医療費を、国民1人当たり年間4万4000円増やして約5兆円必要です」と言われても、どんな医療を受けられるようになるかは分かりません。

 確かに「見積書」を作るのは簡単ではありませんが、医師や経済学者をはじめとした社会科学者、そして官僚を含めて、何人かの専門家が協力すればできると思います。「見積書」の作成と並行して、医療不信や政府不信をどう払拭するかが課題になってきます。

見積書のイメージ
 まず、診療報酬です。日本の病院の平均利益率は小泉政権登場前の段階で3~4%台でした。入院医療は現在実質的に利益が出ていません。かと言って、全ての医療機関が黒字転換するというわけにも行きません。キリがないからです。8~9割の医療機関が安定経営に戻るのを目標にするのが順当でしょう。取りあえず、小泉政権前の水準に戻すために、入院医療費15兆円を5%プラスするのに7500億円弱必要です。

 さらに急性期病院については、小泉政権以前から概ね赤字ベースでした。安定した経営のためには、10%程度の利益が必要と考えます。全国約2000の急性期病院……(中略)。

 非医療専門職員(無資格者)の増員は短期で達成可能です。急性期病院だけでなく、あるいはむしろ慢性期病院や福祉施設の方がその効果は大きく期待できます。医療・福祉関連の就業者数は既に600万人弱で、全就業人口の9%前後を占めています。非専門職は500万人弱です。そのうち病院での就業者は170 万人ほどで、看護助手が20万人、事務職員が15万5000人、その他の非専門職が9万人います。合わせて45万人です。病院勤務医数を約18万人として、医師1人当たり非専門職を1人ずつ増員すると考えて、約18万人増やすには、1人当たり年間人件費平均500万円として9000億円で充分です。(中略)

 以上、経営安定化に1兆5000億円、非専門職に1兆円、研修医養成プログラムに1兆円。存亡の危機にある診療科に対して1兆円で、総計4兆5000億円です。

 当座、これだけあれば日本の病院医療の建て直しはできます。

実際のところそれで足りるのかと言えば感覚的にはどうも否定的ではあるのですが、あくまで当座の措置としてはこのあたりが財政的にも落としどころかなとも思いますし、何より医療費増額へのアプローチとしてこういう定量的な方法論というものが必要なのは確かですよね。
しかし医療費増額に総論賛成という一方で、当然ながらスポンサーたる国民の皆さんには「金を出せば医療は本当に何とかなるのか?」という疑問もあるのではないでしょうか?
医療というものはなかなか目に見える成果と言うものが出しにくいところで、特に日本のように数字的指標からはもともと世界トップレベルの医療をやっている国では「これだけお金をかけたらこれだけ改善しました」というデータは出しにくいでしょうが、やはり金を出す側とすれば「それでどうなったの?」は気になるところです。

医療現場も旧来の殻を破り、営利的活動も含めて創意工夫して色々と新しいことをやってみたらいいと思うんですが、今の医療の抱える大きな問題は新しいことが出来ない診療報酬体系にあります(法的縛りに関してはこの際無視するとしても)。
一部の特殊な医療を行い得る専門病院は別として、現状ではまず救急、産科、小児科といった赤字部門は速攻で廃止して、健康人相手に健診でもバンバンやって黒字を確保というやり方でないとなかなか儲けが出ないでしょう。
何をやるにしてもまず原資と儲けがなければどうしようもないのは当然ですが、長く続いた医療費削減政策によってどの医療機関も設備投資などに回すような資金の余裕などありません(何しろ医療機関の半数は赤字なのです)。
今や銀行も病院へは金を貸したがらないと言うほどで、新しいチャレンジをするための基礎的体力が全く欠けているわけですから、その意味で医療費増額が状況を好転させる可能性はあるとも思えます。

しかしその一方では、必ずしも資本が潤沢であればうまくいくとも限らないのが現在の医療業界というものでもあるのです。
よく他業種の人が「医療業界は無駄が多い」なんてことを言いますが、現実問題として他業種からの医療参入と言うのは全くといっていいほどうまくいっていません。
オリックスが高知医療センターで見事に失敗して世間の物笑いの種になったのは記憶に新しいところですし(もっともオリックス自体は汚職絡みでボロ儲けという噂もありますが…)、朝日新聞が経営に参加した小倉記念病院が産科を廃止したのは日頃産科不足を紙面で云々する同紙の立場としてどうよ?と話題を提供したものでした。
そもそも金の心配がなければうまくいくのであれば全国の国公立病院がこうまで窮状を訴えるはずがないのですから、金さえ出せば問題が解決するような言い方は過剰な国民の期待感と将来の失望を招くミスリードと言えるでしょう。

結局のところ「金をもらってさてどうする?」に対する現場の明確なコンセンサスがまだ存在しないまま、単にもっと金を出せと騒いでるだけじゃないかと言われても否定できないのが現状でしょう。
今のところ経験則的に判っていることは「うまくいく病院とは人を集められる病院である」あるいは「スタッフが逃げ出すような病院は何をどうしようが駄目である」と言うことだけではないでしょうか。
医療がマンパワー集約型産業であるからにはごく当たり前とも思える話ですが、そうであるからこそまず現場の待遇改善を目指すべきであって、そのための一手段としての医療費増額であるということを再確認しなければならないでしょう。
現場の待遇改善と言う形で還元されないままハコモノなどに幾らつぎ込んだところで、そんなものは全く無意味であるということを常に念頭において金の使い道を考えていかなければなりません。

実際に資金が今まで以上に使えるという前提で、医師などの養成数増といった以外の当面出来る対策とは何でしょうか?
医療費増と現場負担軽減とを絡めてみると、給与改善による人集めとスタッフ増員というのはごく簡単な解決策としてありそうに思えます。
この場合のスタッフとは専門性によって国内の総数が限られている医師、看護師等の専門職よりも、それらの業務をサポートする一般職員と捉えるべきでしょうね(高給を出して医師を集めれば必ずどこかから医師がいなくなるわけですから)。

公立病院などでよく見かける「働かないが永年勤続で給料だけは高い」人たちは論外として、そもそも医療現場における非専門職の意義とは何でしょうか?
医師は医師にしか出来ない仕事に特化し、看護師は看護師がすべき仕事に専念する、より専門性の低い職種に委ねられる仕事はどんどん下請けに出していくことが理想なのは確かにその通りでしょう。
決まり切ったルーチン仕事や書類関係はどんどん人任せにすべきなのですが、現実にはどうかと言えば、専門性を発揮すべきスタッフが一見どうでもいいような雑用仕事に振り回されている場合が多いわけです。
診療報酬縛りによって十分なサポートスタッフを導入できないという財政上の問題ももちろんありますが、そういった分業が進まない理由というのもちゃんとあったわけで、その一番の理由が医療現場には突発的、非定型的なイベントが満ちあふれているということなんですね。

医師が常駐する病院などでは何かトラブルがあると(医師の仕事じゃなさそうな話でも)たいてい最終意志決定者として医師に相談が行きますが、そうでない介護施設などでは医師不在の間に「どうしてこんなことになったんだ?」と愕然とするほど問題がこじれている場合が結構あります。
実際にはどうかはともかく名目上は医師たるもの、医療現場における全ての問題に精通しているという建前になっていますから、総合的な判断力では断片的知識しか持たない他の人間よりも優れていると思われているわけです。
もちろん無能あるいは説明下手な医師によって問題がこじれる事も多々あるだろうし、最初から医師が対応する場合と非医師がセレクションを行い最後に医師が対応する場合とで、トータルとしてどちらがマシなのかデータはありません。
ただ一つ言えることは、医師として能力、識見に優れ自他共に要求水準の高い「有能な医師」ほど他人任せにすることに不安を感じ、結果として多くの仕事を抱え込むことになっているという現実です。
全国どこでも医師は不足しており、有能な医師はさらに希少であるという現実を顧みれば、これは非常にもったいない話ですよね。

医者という人種は往々にして他人に任せたがらない職人気質の人間が多いこともありますが、「これを人任せにしたら患者の不利益になるのでは?」という不安を感じながらやむなく余計な仕事を抱え込んでいる者が多いのも確かでしょう。
昨今流行のEBMに則って考えれば、他人任せにして専門職の負担を減らすことが結局は医療の質的向上につながるという明確なエヴィデンスでも示されれば、頭の硬い医者達も納得するのかも知れませんが(誰かやってみませんかね、そういう仕事)。
いずれにしても患者のためにというなら短期的視点のみならず長期的視点に立っても考えてみるべきであって、真に医療現場の改革を目指すならまず医療スタッフの意識改革から行っていかなければならないのでしょうね。

金がないことに慣れきった医療現場は急に金を出してくれると言われてもどう使ったらいいのか判らず、医療費を増額しても当分は満足に結果が出ないということは覚悟しておいた方がいいんでしょう(イギリスなどはまさにその状態ですね)。
当面国民の皆さんに出来る最も安上がりで効果的な方法とは、目の前の疲れ切った医師や看護師たちに向かって「私たちはもうこれくらいの医療で十分ですから、そんなに頑張らなくてもいいんですよ」と声をかけ続けることなのかも知れません。

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2008年11月11日 (火)

背後から撃つ者 ~ 牟田口の後継者達ここに在り

ここに至って政府筋からあ~らら、それを言っちゃあ(rなニュースが続きます。
う~ん、何なんでしょうねえこれは。
やはり以前から言われている通り、国を挙げて医療潰しに邁進しているわけなのでしょうか?

妊婦受け入れ拒否、夫が再発防止訴え(11月10日TBS News)

 今回のケースでは、最初に搬送を断った杏林大学病院側が「切迫感が伝わってこなかった」としているのに対し、飯野病院側は「脳障害であることは伝えており、切迫感は伝わっていた」と病院間での言い分が食い違っています。

 また先月4日、墨東病院など都内の8つの病院に搬送を断られた36歳の妊婦が死亡したケースでも、病院の間で言い分が食い違っています。

 病院同士の主張が食い違う今回の問題。舛添大臣はコミュニケーションがうまくいかない現状を、IT技術を駆使して解決できないかと、二階経済産業大臣と急遽、会談しました。

 「お医者さん同士のコミュニケーションがうまくいっていない。IT技術を活用した形で、両省で協力しながら国民のためになる仕事をしたい」(舛添要一厚労相)

「政治の立場で申し上げるなら、何よりも医者のモラルの問題だと思いますよ。忙しいだの、人が足りないだのというのは言い訳にすぎない」(二階俊博経産相)

 2人の大臣はIT技術者にアイデアを出してもらい、大学病院で実験を行うことで一致しました。

またここでも「足りぬ足りぬは(r」ですか…orz
現場のモラルの問題だの努力不足だのと言っている分には政治の責任も問われなければ金も出さなくて済むわけですから、確かに「政治の立場で申し上げるなら」そういう問題になるんでしょうけど。
で、その「忙しいだの、人が足りないだのというのは言い訳にすぎない」二階と「IT技術を活用せよ」の桝添が「それじゃ大学病院で実験してみよう!」と一致したのがこれですか(すでに敬称略w)。

妊婦受け入れ拒否 円滑搬送へモデル事業 厚労省と経産省(11月10日日経ネット)

 東京都内で脳障害を起こした妊婦が相次いで受け入れを拒否された問題で、舛添要一厚生労働相と二階俊博経済産業相が10日会談し、IT(情報技術)を活用し、患者の病状や病院の体制などを共有し、搬送を円滑にする情報伝達システムを共同で開発し、早期に国立病院などでモデル事業を行うことを決めた。

 具体的なシステムの内容は不明確で、普及にも相当のコストと時間が必要とみられ、効果を疑問視する声もある。

 この問題では、かかりつけ医と救急病院の意思疎通の不十分さや、地域の病院の空きベッド数や受け入れ可否の情報を集めたシステムが不正確だったことが課題として指摘されている。舛添厚労相は「緊急時の受け入れ要請で情報ギャップが起こらないように最先端の技術を使いたい」と経産省の協力を要請した。

またハコモノに金かよ…orz

桝添も先日の東京の一件以来、医療現場の声に真摯に耳を傾けてきたはずじゃなかったんですか?
その上で久しく前から役に立たないことだけは立証されているシロモノに今さら巨額の金とマンパワーをつぎ込むって何なんですかね?
こいつら揃いも揃ってホンモノなのか?それとも表向きの目的以外の裏の効能の方を期待しているってことなのか?

お金も手間暇も余っているんならそういう非効率な行為も文字通り「将来に備えた実験」として許されるでしょうが、今は医療も財政もそんな無駄が許容される時期じゃないはずですよ。
それでどこの誰がどれだけ懐が潤うのか知りませんが、いい加減にお馬鹿な発想で医療現場を混乱の渦に巻き込むことだけはやめてください。
貴方達の行為は単に役に立たないだけでなく、はっきり言って医療現場の迷惑であると共に納税者たる国民に対する裏切りですよ。

こういう連中は放置しておくとして、現役の財務省官僚でもある松田学氏が先日、医療と経済との関連からも含めてこんなことを言っています。
必ずしも細部に異論無しとはしませんが、何かと世間知らずな医療業界にとってはいろいろと傾聴すべき提言も含まれているようですので紹介しておきますね。

医療を語れるのは医師しかいない(2008年11月4日CBニュース)

 「医療や社会保障に財源をもっと投入しなければ、日本の経済社会全体が回らなくなるのは明らか。そのためには、医師が医療の外にある他の社会システムの人々に対して共通言語で語り掛け、今の世界情勢における日本の位置、その中での医療が抱えている問題を共有できるようにしなければならない。医療を語れるのは医師しかいない」―。こう語るのは、新刊「競争も平等も超えて―チャレンジする日本の再設計図」の著者の松田学さん。現役の財務省官僚である一方、これまで日本の政策決定に大きな影響を与えてきたといわれる「言論NPO」という非営利政策シンクタンクの理事を務めるなど、さまざまな活動を行っている。「議論を通じて合意を形成していくため、発想のヒントにしてほしい」。松田さんが著書に込めた思いを聞いた。(熊田梨恵)

■国民に判断材料が提供されていない
(略)
―医療界をどう見ていますか。
 それぞれの時代で注目を浴びるシステムというのがあります。これまでは「官」バッシングがありましたが、今は医療界に対する関心がこれまでにない高まりを見せている中で、医師がバッシングされているようにも見えます。これは医療に対する国民のニーズや期待の大きさに対し、医療が応えられないことについてのギャップが大きいために起こっているように見えます。今後の超高齢社会では、医療が立ち行かなくなってはならず、医療システムを利用するユーザーの立場から見ても、これを持続可能なものにするために何とかしなければいけません。特に、日本がこれからどういう国になるかは、社会の高齢化というものをチャンスとして生かせるかどうかに懸かっています。

■医療は日本経済最大のけん引役に

―高齢化が「チャンス」である意味を、もう少し教えてください。
 そもそも医療を「コスト」でなく「価値」としてとらえるよう、発想を転換する必要があります。医療を「バリュー」としてとらえてみれば、それは超高齢社会における「健康という価値」、バリューの創造になります。医療システムも、エンドユーザーに対する価値提供システムの一つです。そして、他国に例のない超高齢社会に入る日本でこそ、健康関連分野での消費振興が、今後の日本経済の最大のけん引役になれるはずです。現在、32兆円余りの日本の国民総医療費は、他の先進国と比べても、GDP(国内総生産)規模から見て50兆円あっても不思議ではなく、今後の超高齢社会で「健康」それ自体を価値としていけば、日本には100兆円の潜在マーケットが存在すると言っても大げさではないとされています。
(略)
■他システムを納得させるため、医療界からの発信を

―それを実現するには、国民から合意を得なければなりません。しかし、そのプロセスがなかなか進まないように見えます。
 こう言うと失礼に聞こえるかもしれませんが、医師と議論すると出てくる意見はしっかりしているし、素晴らしい理解力を示される。ただ、その内容が行政や現行システムに対する批判にとどまっていることが多いのが残念です。例えば行政というものは、政治や世論、あるいは組織の論理などの制約の下にしか動けないものです。それらを外側から突き崩すしか現実を動かす手段はありません。医療界を超えた共通認識の土台をつくり、体系性を持った収束した声へと合意形成を図ることで、政治も初めて動くことができます。しかし、国民から見るとやはり医師は強者。医療以外の他のシステムの人々が、そこに一定の資源投入を合意するところまで至るためには、彼らをも納得させられる論理を彼らと共有することが必要です。
 まず世界の中のアジアという枠組みがあり、その中で日本が将来をどう描いていけるのか。その下に日本の経済社会全体の設計があり、それと整合的に医療システムのあり方が位置付けられてくる。そうした全体の中で、なぜ医療への資源投入が必要になるのかを示さなければいけません。これを語るのは、医療界でなければできません。医療は経済学者などが分析できるほど単純なものではなく、メディアや政治なども医療を詳しく論じられる人は極めて少ない。それはプロだけが理解できる、かなりの複雑系のシステムです。問題の所在を示し、思考の材料を提供できるのも医療界だけです。つまり、医療界が医療の立場を超えた社会全体の視点に立って問題提起をしていかなければ、日本の社会は一歩も動かないということです。

―医療界自身が動いて問題提起し、議論を通じた合意形成に動くべきであると。
 医療財源を諸システムの組み合わせで再設計しなければ、医療という国民生活にとっての最重要分野の一つが持たないことを医療サイドから提起することは、日本の社会システム全体が共通に抱えている課題や、その解のあり方を示すことにもなります。この本では、「官」「民」「公」というそれぞれ異なる論理の複数のシステムを有機的に組み合わせることで、医療問題のソリューションが得られることを提示しています。実は、そうした組み立ては、日本全体の再設計に問われている課題そのものなのです。それをわたしは「日本版ニューディール」として提案しています。今の日本は、それを医療システムから始めるべき状況にあります。ですから、社会システム全体を鳥瞰(ちょうかん)する視点を医療界の人々に持っていただくことが必要なのです。

日本は土建大国だと言われて久しいですが、戦前はもちろん戦後の高度成長以前までの道路事情などを考慮すれば、当時ああいう社会的インフラ整備に金を回したことは先を見据えた見識ある行為だったと思います。
しかし今や時代は流れ、国土の隅々まで立派な舗装された道路網は整備された一方で、医療に関してはほころびが目立つようになった。
道を歩かずに生きていける人間がいないのと同様、どんな人間であれ医療に関わらずに生きていくことが限りなく不可能なこの時代に、そろそろ医療というものをもっと国民産業として持ち上げていっても良い時期なんじゃないですかね?

「国民全般に広く還元される」という論法で土建業界への公費投下が肯定されるのであれば、「国民全てが等しく関わる」という視点から医療業界への公費投下も肯定されてしかるべきだと思いますね。
医療と言えば高度の専門性を備えた特殊な業界という認識があるかも知れませんが、医療に限らずどんな業界であれ専門性の高みははるかに広大な裾野によって支えられているわけです。
例えば昨今の日本では医療と介護(非医療)を分離しようと言う話になってしまっていますが、本来この二つは密接かつ不可分に関わり合っているものであって、ほんとにその道の専門家でなければ行えないような仕事は実はそう多くはないのですね。
医療の現場では医療の専門家でなくとも出来る仕事は(熱意があれば)いくらでもあるわけで、実際にそこいらのスーパーで働いているパートのおばちゃんと同じような普通の人たちが一生懸命現場を支えている一大産業でもあるという事実をまず認識しましょう。

医療費は削るべきでないものまで必死で削って崩壊寸前にまで追い込んだ現状で約30兆円、厚労省の熱心に主張するところによれば、こうまで必死で削減しなければ今よりはるかに大きくなると言います。
では、医療費が大きくなって何が悪いんでしょう?(医療業界は天下り先としてうまみがないので厚労省はその拡大に不熱心だという噂はありますが…)
不景気でどこの業界も求人削減だ、採用内定取り消しだと大騒ぎの中で、これだけの規模でこれだけ人手不足が顕著な産業なんて他にどこかあるんですか?
そうであるなら国民みんなでもっと広く医療に関わって国民産業としてさらに大きく育てていきましょう、シャベルやツルハシを振るかわりにみんなでお爺ちゃんお婆ちゃんを抱えてみましょうってことですよ。

長くなったので今日はこのあたりまでにして、明日以降はこうした視点からもう少し医療費問題を考えてみたいと思います。

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2008年11月10日 (月)

声を出せと言うのなら出しましょうよ皆さん

お上と現場という視点で見ると面白い話を二題ばかり紹介しておきます。

死因究明をめぐる溝は埋まったのか(2008年11月4日CBニュース)

 「毎回そうやって溝は埋まっていると言う。だからみんな駄目になっている」―。日本救急医学会の堤晴彦理事は10月31日、「死因究明等の在り方に関する検討会」(座長=前田雅英・首都大学東京法科大学院教授)で、前田座長の「大きな溝があるように見えて、ほとんど溝がないように思う」との発言を痛烈に批判した。また、「(医療事故の原因を調査する第三者機関)医療事故調査委員会が設置された場合に協力する意思はあるか」との委員からの問いには、「納得するものなら必死でやる。しかし、納得しない形になったときに、協力しろと言われても、力は入らない」と述べた。堤氏は、「『医』と『法』の対立ではなく、対話を求める」として、対話の場の設置を厚生労働省などに求めている。

 同検討会の15回目となるこの日の会合では、医療事故調査委員会の設置に異論を唱える3学会からのヒアリングが行われた。

 堤氏はヒアリングの冒頭、「(第三者機関の設置を柱とする)大綱案に関して対立構造にあるかのようにいわれているが、本質的に意見の違いはない」と断った上で、賛成派と反対派に分かれる理由について、賛成派は「性善説」に立ち、反対派は「性悪説」に立っていると指摘。「賛成派は、大綱案がこの検討会で議論された精神通りに運用されれば、うまくいくと期待していると思うが、反対派は、法律というのはいったんできてしまえば、どのように運用されるか分からず、悪意を持つ人がいれば何とでも変えられたり、解釈したりできると疑っている。わたしたちもそのような立場に立っている。反対派ではなく慎重派と呼んでいただきたい」と語った。
 また、検討会にオブザーバーとして参加している警察、検察について、「現状を見る限り、警察はその他の犯罪捜査で手いっぱいで、医療事故の捜査まで手が回らないというのが本音で、事故調ができるのを静かに待っている。検察も無罪判決が続いて事故調が報告書を作ってくれるのを歓迎している。文字通りオブザーバーの立場で高みの見物をしている」と皮肉った。さらに、医療事故の被害者の弁護士にとっても得する話で、反対する理由はないとした上で、「医療事故調査委員会の設置に関し、反対派が少数に見えるのは、警察も、検察も、患者側の弁護士も物を言わない、そういう意味での反対が少ないということではないか」と指摘した。

 ヒアリング後の委員らの意見交換で、前田座長は「話を聞くと、大きな溝があるように見えて、ほとんど溝がないように思う。同じ制度をどう評価するかについて、性善説と性悪説のどちら側から見るかで全く色が違って見えることがあろうかと思う」と述べた。
 これに対し、堤氏は「毎回同じことを言っている。それが(会合が15回)続いた原因だと思う」と指摘。その上で、「座長は刑法学者であり、医療事故の刑事責任はどうなのか、など自分の本職できっちりやることが仕事だと思う。もし、この医療事故調査委員会が将来に向けた医療安全をやるのならば、座長を降りて医療側が座長に座るべき」などと批判を繰り広げた。
 前田座長は「いろいろな見方があり、わたしは(溝が)埋まってきていると思うし、新聞などでも埋まってきていると評価されていると思う」とした上で、「勝手に警察にやられては困るという気持ちはよく分かる。ただ、警察側も医師の協力なしには立件できない。主として医療が主導して、法律家の意見も入れて、『法』と『医』の現場を踏まえた対話の場をつくっていこうというのが偽らざる気持ち」と述べた。

 座長批判を繰り広げた堤氏は、委員からの「医療事故調査委員会がもしできたら、協力するのか」との質問に対して、「いかなるものかで変わってくる。納得するものなら必死でやる。しかし、納得しない形になったときに、協力しろと言われても、力は入らない。どんな事故調になるかで決まると思っている」と答えた。

 また、日本救急医学会が求めている「医療事故における業務上過失致死罪の明確化」などについて、「何が業務上過失致死になるのかということをあいまいにしたままでは、いかなる調査委員会をつくっても、うまく機能するとは全く思えない」と強調。明確化に向けて「『医』と『法』の対立ではなく、対話を求める」として、対話の場の設置を厚労省に求めた。

この前田雅英氏なる座長は司法畑ではそれなりに有名人だそうですが、ざっと調べてみると少年犯罪抑制のために厳罰化を叫んだことで知られている御仁のようですね。
批判の内容もさることながら、救急医学会の理事である堤晴彦氏が反対派の急先鋒として論陣を張っていることにご注目ください。
ちなみに同検討会での堤氏の発言全文につきましてはこちら「産科医療のこれから」さんでまとめていただいていますが、これを読んで「ほとんど溝がない」と思えるものかどうか。

ついでいつもお世話になっているロハス・メディカル ブログさんから、厚労省の「周産期医療と救急医療の確保と連携に関する懇談会」の見所を。

『周産期・救急懇談会1(ハイライト)』より発言部抜粋
海野信也委員(北里大学医学部産婦人科学教授)

墨東病院で脳出血の妊婦さんが亡くなった件を発言の前提としている。
「厚生労働省の周産期医療対策整備事業に関して。総合周産期母子医療センターが、母子救急の最後の砦であるように報道されているのだが、成り立ちの経緯はそういうものでは全くない。整備事業の主たる目的は、胎児と新生児の救急に対応できるだけのもので整備指針にも脳外科がなきゃいけないとは書いてない。産科、新生児、麻酔科の医師を置けばよくて、麻酔科は常勤である必要すらない。それで辛うじて施設基準をクリアしているような医療機関がかなりある。

当直医に関しても、マスコミが調査して2人いないところが多いというようなことを書いているけれど、墨東は別として、大多数の1人当直のところはそれで違反でない。平成8年にスタートした時には複数の当直が条件になっていた。ところが、それだと一般の医療機関では医師が足りなくて施設基準を満たせないという県が多かった。センターが一つもない県がかなりある一方で、でも現場からはセンターがほしいという声も強くて、平成15年4月21日付で厚生労働省の雇用均等・児童家庭局長から通知が出て、NICUが6床以下の場合はオンコールを置けば1人当直でよいことになった。決して悪いことではなくて、それならできるということで、各県の県立中央病院なんかがどんどんセンター化していった。一方で、センターで医師を一生懸命増やそうとしなくてもよくなって、医師不足の問題が放置されることになった。私がいた長野県では2人当直を置いていたのだけれど、通知が出てからは1人でいいんだからと言うことで、当直代が1人分しか出なくなった。私がオンコールに回ったので給料が激減したのだけれど、当直が2人いないと責められても、そういう決まりになっているのだから仕方ない。

もう一つ周産期救急情報システムも問題にされている。しかし整備指針には作れとは書いてあるが、どう運用しろとは書いてない。実際問題、高次医療機関が限られている地域では、端末を見るより電話した方が早いから作っても仕方ない。先ほど話のあった山形のようなやり方が常道だ。そういうところにもシステムだけはお金を使って作ってしまった。一方でNICUの絶対的不足は放置されてきた。今の時点でもNICUを増やすという方向は出されていないし、同様に後方ベッドの問題も明らかにならない。だから整備事業を見直してほしいと、産科婦人科学会では要望している」

池田智明委員(国立循環器病センター周産期科部長)

「一昨年の厚生労働省科学研究で全国の総合周産期母子センターにアンケートした。母体の脳血管系の救急について10のセンターが『対応できない』と回答した。『どのようにしたら』と質問したところ全ての施設の責任者が、自分のところに受け入れ体性をつくるのは非現実的であり近くの救急病院や大学病院と連携したいと答えた(後略)」

有賀徹委員(昭和大学医学部救急医学講座主任教授)

「積み残しになるといけないから言っておく。資料3の2頁目、都道府県に対して出した通知の『周産期救急情報システム及び救急医療情報システムの運用状況を確認した上で、必要があれば適切に改善するよう検討を行うこと』という項目について。東京都と東京消防庁との関係であれば何となくイメージできるのだけれど、たしかに厚労省が50年代から都道府県ごとの救急医療情報システムは整備を進めているけれど、しかし全県の救急を一体に運用しているような所はない。基本が市町村消防だからだ。それと全県一体の周産期救急とどうやって連携するというのか。この通知をポンと投げて都道府県に考えろというのだが、どういうイメージで考えろといったつもりなのか。要は、50年代から大きなお金をつけたものが成り立ってなかったということなんだが、だからこの通知の趣旨がよく分からなかった。この件を何とかしようと思えば、厚生労働省だけでなく総務省とも連携しなけらばならないと思う」

いやあ、爆弾が落ちるわ落ちるわ(苦笑)。
いいんですかね、こうまで言っちゃって…まあ例によって一般マスコミは全部スルーして厚労省の公式見解だけ垂れ流しするのかも知れませんけど。
ちなみに名前の出ている各委員の主な母体である所属学会も挙げてみますとこうなります。

海野信也、池田智明 日本産科婦人科学会
有賀徹 日本救急医学会

さて、政府の事故調案に対してはっきり反対の姿勢を示している学会というのがあるのですが、それが日本救急医学会、日本産婦人科学会、日本麻酔科学会、日本消化器外科学会といったあたりなんですね。
そうした反対派の学会の人たちを招いてのこういう議論をしました、その結果総論賛成という結論が得られましたという政府・厚労省のアリバイ作りの意図が見え見えな気がするのは自分だけでしょうか?
問題はそうした意図に乗っかってくれる人ばかりではなかったということなんですが、同情する気にはなれませんね。

桝添大臣は現場の医者はもっと声を上げろと言っていましたが、問題は声を上げたところで果たして上の人間にそれを聞くつもりがあるのかということではないでしょうか?
たとえば先日の東京での件を受けて民主党が医療現場の惨状を黙認してきた厚労省を批判しています。

厚労省が「労基法違反を黙認」と追及―民主(2008年11月7日CBニュース)

 民主党の「厚生労働部門会議」が11月7日に開かれ、東京都内で妊婦が8病院に受け入れを断られた問題を取り上げた。同党の議員らは、医師不足の現実を直視して対応策を取っていれば、今回の問題は起きなかったとの認識を示し、「厚生労働省が、医療現場での労働基準法違反を黙認してきたせいだ」などと、厚労省の責任を厳しく追及した。
(略)
 同会議で厚労省の担当者は、「最終的な(受け入れ)病院に行くまでのシステム(救急医療情報システム)の問題が指摘されているので、改善していかなければならない」と述べた。これに対し、蓮舫参院議員らは「いくらシステムをつくっても、現場の情報を入力する人がいない」「受け入れる人(医師)も足りないし、(NICUが)ずっと満床だったら(この問題は)解消しようがない」などと追及した。

 山井和則衆院議員は、「医師の多くは労基法を守っていないが、患者に迷惑を掛けないようにと黙って隠し続けてきた」と述べ、多くの医師の「善意」によって医療現場が支えられている現状を訴えた。原口一博衆院議員は「厚労省は医療を管理する一方で、医療者を守るという責務もある」と強調し、医療現場で労基法の順守を徹底するよう求めた。

 足立信也参院議員は、多くの医療機関が建前では「宿直」と称して医師に「夜勤(時間外労働)」をさせている実態について取り上げた。足立議員によると、3 年ほど前に多くの医療機関に労働基準監督署が立ち入り、医師の宿直を「これは時間外勤務だ」と指摘し、過去にさかのぼって追徴課税した。追徴課税された病院は、医師の「夜勤」を黙認しておきながら、報酬も「宿直」の分しか払っていなかったという。

 会議の最後に、鈴木寛参院議員は「次回は労基法の担当者からヒアリングして、(医療者向けに)新しい(労働基準の)ガイドラインやスタンダードをつくることなども検討していきたい」と述べた。

労基法違反については、万年医師不足の超売り手市場であるはずの医療現場においてさえろくに自己の権利を主張してこなかった医者たちも確かに悪かったのかも知れません。
しかし先日来色々と言われていた墨東病院に関しても、そもそも以前から「もう限界。勘弁してくれ」と悲鳴はずっと上げ続けていたわけですよ。
ところがその声を全く無視して更なる現場への負荷を強いる体制を強いようとしている、この場合悪いのはもっと大きな声を出さなかった医者なのですか?
いったいどれだけの声を出したら現場の声に応えるつもりがあるというのでしょう?

幸いにも今の研修医達は声を上げることに対してかつてのような妙な遠慮はありませんし。
医療側もどんどん言いたいことは言っていく時代になってきている中で、それに対してどういう答えが返ってくるのかを誰よりも当の医療側が見守っていることを自覚してもらいたいですね。
不平不満と怨嗟に満ちていようと声が上がっている間はまだいいですが、今のままでは声もなく消え去っていくのみの医者達が増える一方だと思いますよ。

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2008年11月 9日 (日)

今日のぐり「羽根屋 大津店」「蕎麦の館」

よっしゃ遼ちゃんキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!!
勝て!残り全部勝て!

ま、それはともかく(コホン)。
当「ぐり研」更新のついでに時々アクセス解析ってのをのぞいてみるんですが、これがけっこうおもしろいんですね。
だいたい大まかな傾向として平日は多く週末は少ないんですが(て言うか、君たち仕事さぼってアクセスしてんのかい?!)、長期で比べてみると時々不自然にぽんとアクセスが増えてる日があるようです。
たいていはトラックバック張ったサイトからの流れとかが多いようなんですが、中にはプロバイダーのほうで本日のおすすめにされてる日があったりするようなんですね。
たとえば先日の11月4日がちょうどそんな日だったんですが、その時のウリ文句がこんな感じです。

ぐりのぐりによるぐりのための……「ぐり」って何?
●ぐり研ブログ

「ぐり」の理解と研鑽に努める「ぐり研究会」の活動報告。ラーメンから社会問題までを豊富な資料で一刀両断。
なかでも医療問題については、報道されない現場の現実も交えて熱く語っています。

うむ、熱く語っていますか(笑)。
しかしなかなかよく見ていらっしゃるじゃないですか?こういうのも誰か担当者が全部のサイトを見て回ってんですかねえ?お役目ご苦労様です。

「ぐり」って何?と言われますと、何かはわかりませんと答えるしかありません。
そもそも考えてみてください、正体がわかっているようなものを研究したところで何のおもしろみがあると言うんですか?
「ぐり」とは何か、それがわからないから研究する、それゆえの「ぐり研」なんです。
どうです?首尾一貫していると思いませんか?

今日のぐりその一「羽根屋 大津店」
さて皆さん、いよいよ新蕎麦の季節がやってまいりました!
これが食わずにいられようか!ということで、本日最初にやってまいりましたのがこちら「羽根屋 大津店」。
久しぶりに来てみると何やらバイパスが開通していたみたいで、一瞬どう行ったものかと迷ってしまいましたよ。
しかしまあ、さすが神在月の出雲です!蕎麦屋はどこも満員御礼で入れませんでした!(どうでもいいような蕎麦屋まで満員とは!)

それはともかく老舗の蕎麦屋の支店という位置づけのごく小さな店なのですが、基本的に技術はしっかりした店だなという印象をもっています。
ここの蕎麦の特徴は蕎麦打ちの技術に裏付けされた食感、のど越しの良さに加えて蕎麦自体の濃厚な味わいといったところでしょうか?
ここの蕎麦つゆがまた深い味で実に良い感じなんですが、普段のここの蕎麦とあわせるとどちらも濃いので時にちょっと重いかな?と思わないでもありません。
しかし一年でこの季節には新蕎麦の香りでうまい具合に全部がまとめられて、これがまあ実にいい塩梅なんですね。
以前この時期にこの店で食った蕎麦は「なんじゃこりゃ!?」と思うくらいに絶品の出来だったことがありますが、この日もそうまでは言わずとも十分に良いお味でした。

この方面では蕎麦だけだったら荒木屋のそれが好きなんですが、蕎麦つゆも込みで考えるとここの味も捨てがたいですね(裏メニューでラーメンがあるらしいですが、この店ならさもありなん)。
大社から遠くバイパス開通もあってちょっと一見さんには入りにくい場所になってますから、こういう混雑する日は(相対的に)入りやすくなっているのも短気な人間にはありがたいところでしょうか。
ただしそうは言っても至って小さなお店で駐車場も狭いものですから、特に休日の昼食時は待たされる覚悟はしておいた方がよろしいでしょう。

しかしやはり蕎麦どころだけに、お客さんもほんとに蕎麦が好きなんですねえ…こういう地域の食文化に支えられた店ってのは強いですよ。

今日のぐりその二「蕎麦の館」
今日の二件目は山を越え谷を越えてやってまいりました「蕎麦の館」。
蒜山インターをおりてすぐ、道の駅に併設されている見るからに観光客向けっぽい感じの蕎麦屋なんですが、これが意外にもあなどれません。
こちらも休日のせいか目一杯混雑して駐車場にも入れないような有様でしたが、何とか隙間をこじ開けて停車…いやマジで大混雑ですよ。
いやあ、観光地の飯屋って出る量の日差がものすごいことになりそうですけど、特にこういう日は大変なんでしょうねえ(<ここ伏線ね)。

で、あっさりと結論。
この店は個人的には結構お気に入りではあるんですが、今日の味だけで評価するなら正直ペケ、ですかね(それでもたいていの店よりはマトモな味ですが)。
ここの蕎麦の一番の売りは口に含んだ時に香り立つ何とも豊かな蕎麦の風味だと思うんですが、この日に限っては何故かぶわ~っと来ないんですね。
ついでにいつもならしゃっきりすっきりな食感も、なぜかこの日はだらけすぎ。
これだったらわざわざ新蕎麦の季節を狙って来た甲斐がなさ過ぎるというものですよ。
ん~?そう言えば今日に限っては注文してから妙にあっという間に出てきたような気がしましたが、いくら大混雑しているとは言えまさかね…

良い面もあげときますと、ここは以前から蕎麦つゆが少し弱いかなと思っていたのですが、今回は何か改良されたのか悪くなかったですね。
ただし羽根屋のそれに比べるとまだまだ無難で悪くないけど特に…というレベルにとどまっているのは感じられました。
まあしかし、地道に改良していく気があるのであればこれだけの蕎麦を打つ店なんですから、いずれもっとよくなるんじゃないでしょうか。
一度で見捨てるには惜しい店ですので、シーズンのうちに再訪したいですね。

関係ないですがここの向かいにある道の駅、せっかく蒜山名物の羊肉を買って帰ろうと思ったらオーストラリア産ラムばっかりってどうなのよと。

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2008年11月 8日 (土)

世の中にある不思議なもの

先日こういう怪しげな?記事が出ていましたが、皆さんご存知でしょうか。

土星の台風は六角形 探査機カッシーニが撮影(2008年10月16日 朝日新聞)

【ワシントン=勝田敏彦】米航空宇宙局(NASA)は13日、土星の両極にある台風の赤外線映像を公開した。土星を周回する探査機カッシーニが撮影した。台風の雲が鮮明にとらえられ、北極にある台風には、地球二つ分ほどの大きさの六角形の構造があることがよくわかる。

 両極の映像は6月中旬、雲の上空約60万~65万キロから撮影された。北極にある六角形は半径が約1万2千キロ。時速500キロにも達する速さで動く雲は、水硫化アンモニウムと呼ばれる物質だと考えられている。

 六角形構造は1980~81年に土星に接近したNASAのボイジャー1号、2号の観測で見つかった。

 研究チームのケビン・ベインズ博士によると、六角形構造は地球の台風でも見られるが、せいぜい数日間しか続かない。28年間もこの構造が安定して存在するのは土星の北極以外では知られておらず、理由はわかっていない。土星の北極にあるのに南極にない理由もわかっていない。

ちなみに動画で見るとこんな感じですが、ほんとに六角形がぐるぐる回ってんですね。
いや~なんじゃこりゃな感じですが、ちなみにこれを見て某アニメの絶対障壁を思い出した人、素直に手を挙げて(笑)。
どうも自然現象らしからぬほど立派なこの六角形なんですが、実はわりあい身近なところでも当たり前に起こる現象らしいですね。

味噌汁と気象

(あまり具のない)熱い味噌汁をお椀に入れてしばらく置いておくと、下からモクモクと味噌が上がってきて不思議な模様を作り出す。さらにうまくいけば表面に六角形が並んだ模様になることもある。
これはベナール型対流、ベナール・レイリー型対流と呼ばれるもの。熱い味噌汁に対して上表面は冷やされるので、ある温度差になると対流が始まる。この対流では上昇と下降がきれいに並び細胞状になるのが特徴で、最も安定するのが六角形という形。(ベナールセル)
この対流は気象において重要なもので、上昇気流と下降気流が交互に並び気象分布を決める、また狭い範囲で見ても雲の成形にも関係してくるもの。そういえば味噌汁に表れる模様は雲に見えなくもない?

こういう独特の渦をベナール渦(ベナールセル)と言うそうですが、静かな液体(気体も)表面が均一に加熱されると対流によってこういう六角形が並ぶと言うことです。
いろいろとシミュレーションしている人もいて、六角形のみならず色々な模様が出来るようですが、そう言えばスープの表面に見たことがあるような模様もちらほらと。
う~む、何気ない身近な世界にも意外と楽しいものが隠れているものです。

自然界には「いったい何がどうなったらこんなものが?」と思えるようなものが沢山あるんですが、中にはあまりに規模が壮大すぎて宇宙から見なければ判らなかったというトンデモないものまであるのですね。
1965年6月に打ち上げられたジェミニ4号に乗り込んだ宇宙飛行士ジェームズ・マクディビット(James McDivitt)とエドワード・ホワイト(Edward White)が地上を眺めていると、アフリカはモーリタニアのど真ん中に妙なものが見えてきたそうです。

「ん?おいジェームズ、あいつはいったい何だい?」
「どうしたエドワード?何か見えるのかい?」
「ちょwww見てみろよ!でかい目玉が俺たちのこと睨んでるぜ!」
「オーッ!マイガッ!!」

…なんて会話があったかどうかはともかくとして、「サハラの目」なんて呼ばれたりもする「リシャット構造(Guelb er Richate)」の全容が初めて捉えられたのはこの時のことだったそうです。
しかしどう見てもこれは確かに「目」としか言いようがない形ですよねえ。

Fig1_3 Fig2_2 Fig3 

 

 

いったいこりゃ何なんだ?と誰でも思うところですが、とりあえず判っているのは噴火や隕石の衝突で出来たもの「ではない」らしいということくらいのようですね。
目の部分全体が周囲から200mほど低い窪地になっていて、丸い瞳の部分の直径がおよそ50kmほど。
同心円になっている部分は標高差100mほどの高低差があって、硬い岩石でできた「山」の部分と柔らかい岩石で出来た「谷」の部分とが交互に配列しているとか。
どうも浸食で柔らかい部分が削られて出来た地形らしいのですが、なぜこんなに丸くなったのかは未だに判らずじまいなんですね(あるいはこれも、対流なんてものが絡んでるんでしょうか?)。

この地形だけでも十分「世界不思議発見」なんですが、世の中には面白い人もいて、リシャット構造はオーパーツの資格十分と論証しちゃってたりしている。
う~む、ネタから離れてもこういうアプローチもなかなか面白いかもですよ。

汝、未知なる知恵を欲する者よ、神秘の果実を受け取るがよい

これだけ大きなものなら、さぞかし有名なのだろう、と「サハラの目」「リシャット構造体」「オーパーツ」あたりで検索してみたのだけれど… 面白いほど出てこない!リシャット構造体を英語で入れて検索してもほとんど情報が出てこない。なんということだ、オーパーツを求める人々よ、これは確かに「工芸品」じゃないけど、キミたちは神秘を求めていたんじゃないのか?
神々の指紋のあの人もスルーとは、なんたる手落ち。

世の中にはロマンを求めたい人が多くいるという。超古代な、誰が作ったかわからない、神や宇宙人の存在を考えたくなるような、しかもまだ証明されていないものが欲しいらしい。
ならばコイツをいじくるのだ。自分で資料を探してネタをつくればいい。
(略)
アフリカは、古くから住む土着民と、移住してきたアラブ人とが交じり合っている。アフリカの神話はすべて口伝だが、混血や民族の分散によって、古くからの神話は多くの場所で消えかかっている。「超古代で神秘的な」ものを求める人的には、ここはやはり土着民の古い伝承なんかが欲しいところだろう。

古くからの伝承を今も持っている人たちは、モーリタニアの北、アルジェリアとモロッコの山奥にいるという。
モーリタニアからそう遠くはない。好都合だ。

さらに、アフリカの神話というのは、部族が異なっても、ある程度のアウトラインが似ているものが多い。
彼らの信じる「全知全能の神」という概念についての解説を抜き出してみよう。

    ガーナのアカン人はこの神をブレキイリフヌアデ「すべてを知り、見る者」と言っている。他方、南部アフリカのズールー人はこの神を単純に「賢い者」ウキリと呼んでいる。ウガンダのガンダ人によれば、神の「偉大な目」はあらゆる場所、あらゆる時に絶え間ない眼差しを注いでいる。その目はけっして瞬かない。ナイジェリアのヨルバ人は、何ものも神の目から隠れることはできないと主張している。
    ~「世界神話辞典」 アーサー・コッテル 柏書房

ビンゴ。もう、これでいいじゃん。(笑)

うむ、これだけの不思議なものが単なる自然現象であるはずがないって気がしてきましたよ(笑)。

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2008年11月 7日 (金)

医療現場の過労死がようやく問題になってきた

…らしいです。
そうしたことが話題になるようになったきっかけの一つがとある裁判なのですが、まずはそちらから紹介していきましょう。

医師の過労死、損害賠償請求を棄却-東京高裁(2008年10月22日CBニュース)

 小児科医中原利郎さん(当時44歳)がうつ病によって自殺したのは、最大で月8回に及ぶ当直勤務をこなすなど過重な業務が原因として、遺族らが、勤務先だった病院を運営する立正佼成会の「安全配慮義務違反」などを理由に損害賠償を求めた民事訴訟の控訴審判決が10月22日、東京高裁であった。鈴木健太裁判長は、民事訴訟で東京地裁が否定した「過重な業務とうつ病との因果関係」は認めたものの、「病院側が(中原さんの心身の変調を)具体的に予見することはできなかった」として、原告側の訴えを棄却した。(山田利和・尾崎文壽)

 判決は、中原さんが1999年3月に月8回、週当たり 2回の割合で当直を担当し、翌4月には、6回の当直のうち、当直を挟んで通常勤務や半日勤務を行う連続勤務が4回あったことを挙げ、「3月と4月の勤務は過重で、著しい身体的心理的負荷を与えたというべき」などとして、中原さんの業務の過重性を認めた。
 また、中原さんが勤務していた立正佼成会附属佼成病院(東京都中野区)の小児科の部長が退職したのを受け、中原さんが部長代行になった直後の同年3、4月ごろ、常勤医や日当直担当医の減少という事態に直面したことについて、「部長代行としての職責から、問題解決に腐心し、見過ごすことのできない心理的負荷を受けたというべき」と指摘した。
 これらを踏まえ、「主として、99年3月以降の過重な勤務、加えて、常勤医の減少などによって大きな心理的負荷を受け、これらを原因とした睡眠障害または睡眠不足の増悪とも相まって、うつ病を発症したというべき」などとして、過重な業務とうつ病との因果関係を明確に認めた。

 一方、「安全配慮義務」については、過労で自殺した社員の遺族が電通の責任を求めて提訴した「電通事件」で、最高裁が2000年3月24日に出した「使用者は、雇用する労働者に従事させる業務を定めて管理するに際し、業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷などが過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないように注意する義務を負う」などとした判決を引用。
 しかし、中原さんについては、「過重な勤務であっても、病院側が、中原さんの疲労や心理的負荷などを過度に蓄積させて、心身の健康を損なうことを具体的客観的に予見することはできなかった」などとして、病院側の「安全配慮義務違反」には当たらないとする見解を示した。

 中原さんの訴訟については、07年3月14日の行政訴訟の判決では、「うつ病は過重な業務によって発症した」と労災認定したが、同29日の民事訴訟の判決では、「うつ病と業務との因果関係が認められない」と、同じ東京地裁が“正反対”の判断を示していた。行政訴訟では、厚生労働省が控訴せず、労災が確定していただけに、高裁が、医師の当直勤務の過重性や病院の「安全配慮義務」について、どのような判断を示すかが注目されていた。

中原氏が亡くなられたおりに残された遺書が支援サイトで公開されていますが、死にゆく一小児科医の訴えが当時大きな反響を呼びました。
今回の控訴審裁判の結果については全医連が「医師流出の誘因になる」と声明を出すなど、医療界のあちこちから大きな反響が寄せられたことは記憶に新しいところです。
高裁判決を受けて遺族はさらに上告するということですが、まだしばらくは経過を見ていく必要があるかと思いますね。

個人的には病院への民事請求訴訟よりも、労基署が「業務に起因しない」として遺族補償を給付しなかったことの方に大きな意味があったと考えています(後に行政訴訟にて労災確定済み)。
弁護団によると小児科医の過労自殺が労災と認められたのは中原氏が初めてとのことですが、かねて医療現場では過労死レベルの労働が当然のように要求されてきている現実がありました。
「宿直勤務中に仮眠や休養は十分可能で、肉体的・精神的に過重勤務とは言えない」などという労基署側の主張が全く現場の実情を無視しており法廷で退けられたのは当然でしょうが、そもそもそうした違法な労働環境に甘んじて声を上げることのなかった医療関係者にも問題がなかったとは言えないのではないでしょうか。

昔からあの先生が急死した、この先生が亡くなったと言う話を身近で聞いたことのない医師はいないと思いますが、報道されて公になる医師の過労死数と現場での実感とは大きく差がある印象があります。
月100時間以上の時間外労働を行うと医師の面接を受けなければならないことになっていますが、「面接に来る患者より面接する医師の方がよほど超過勤務が多い」なんて笑えない話もあるくらいですからね。
「超勤があまりにきついので労基署に相談したら、こっちが医者と判った途端に電話を切られた」なんて都市伝説?があるそうですが、実際のところ厚労省のおかしな見解をはじめ医師に対してだけ別な労働基準が適用されてんじゃないかとも考えさせられる話はいくつもあります。

第1回「増える過労死」(連載企画「KAROSHI-問われる医療労働」)(2008年11月04日CBニュース)
勤務医は平均でも“過労死水準”
  「病院など医療機関に勤務する常勤医の一週間当たりの勤務時間は、平均で63.3時間。一週間に40時間を超える労働時間を時間外労働とする厚生労働省の『過労死認定基準』に基づくと、常勤医は一か月当たり約100時間の時間外労働をしていることになる。勤務医は平均で『過労死認定基準』を超えて働いている」
 勤務医の労働実態に関し、「過労死弁護団全国連絡会議」の代表幹事、松丸正さんが強調する。

 過労死について、厚労省は 2001年、「脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準」を示し、「発症前1か月間におおむね100時間、または発症前2か月間ないし6か月間にわたって一か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と(疾患)発症との関連性が強く、過労死と判断される」との「過労死認定基準」を示している。

 松丸さんは、「63.3時間という常勤医の一週間当たりの勤務時間は、厚労省が06年に発表した『医師需給に係る医師の勤務状況調査』の結果だが、これは常勤医が通常勤務している医療機関での労働時間にすぎない。常勤医には、当直のアルバイトなどをしている若い医師も多く、実際にはもっと長時間労働をしており、厚労省が勤務医の労働時間を適正に把握しているとは言えない」と指摘する。その上で、「問題なのは、過労死認定基準を超える労働が、勤務医では常態化していることだ。もはや、勤務医の過労死は特別なことではなく、“当たり前”になっている長時間労働から起きている」と問題視している。
(略)
 こうした状況に対し、森岡さんは、「労働者の働き過ぎの傾向が強まっているが、中でも医師や看護師などの医療現場の労働条件が、他の業種と比べて著しく悪い」という。
 実際、「過労死110番」には近年、医師や看護師などの命と健康に関する相談が増えている。同連絡会議が昨年11月に集約した「医師の過労死・過労自殺」によると、これまでに22件の過労死・過労自殺が労災認定されているが、このうち昨年に認定されたのは6件で、顕著な増加傾向を示している。

第2回「壊れる医療現場」(連載企画「KAROSHI-問われる医療労働」)

勤務医を脅かす当直問題
(略)
 当直について、厚生労働省は2002年3月の通達で、「宿日直(当直)勤務とは、所定労働時間外、または、休日における勤務の一態様であり、当該労働者の本来業務は処理せず、構内巡視、文書・電話の収受または非常事態に備えて待機するものなどであって、常態としてほとんど労働する必要がない勤務」と規定している。

 しかし、勤務医の当直について、千葉さんは、「日中の通常勤務を終えた後、午後5時から翌朝の9時までが『当直』に当たるが、この16時間はいくら働いても勤務にはカウントされない。このため、代休はないし、交代勤務もないまま、翌日の通常勤務に突入する。すると、34-37時間、残業(時間外労働)があれば40時間の連続勤務になってしまう」との実態を明かした。
(略)
“違法状態”の医師労働
 30数時間から40時間にも及ぶ勤務医の当直などについて、同連絡会議の代表幹事・松丸正さんは、「勤務医の労働条件の何が法的に問題なのかというと、勤務医の労働現場は、『労働基準法』の視点からは完全に“壊れている”としか言いようがない」と、その深刻さを指摘する。

 「勤務医に労基法がない」ことについて、松丸さんは4つの点に基づいて説明する。
 まず、勤務医の労働時間が把握されていないことだ。松丸さんは、「労基法の労働時間の定めは、労働時間が適正に把握されていなければ意味がないにもかかわらず、勤務医の場合、病院が勤務時間を把握していないことが多い」と指摘。その上で、「労災認定を申請しようにも、弁護士は、勤務医のポケットベルや電子カルテへのアクセス記録、手術や麻酔の記録などから、間接的にしか勤務時間を把握できない。病院が勤務時間を把握していないことが、長時間勤務を生み出している元凶と言える」と語る。
 また、労働時間を原則、一日8時間、週40時間と定めている労基法の枠を超えて労働時間を延長する際、その時間外・休日労働の限度時間について労使間で協定を結ばなければならないとする労基法36条(「三六協定」)に関する問題がある。「厚労省は、限度時間の枠を月45時間、年間360時間と定めている。しかし、医師については『三六協定』が締結されなかったり、締結されていても形だけだったりして、長時間労働に歯止めを掛けるはずの『三六協定』が形骸(けいがい)化している」。
 さらに、多くの医療機関では、勤務医が所定労働時間を超えて勤務しても、残業手当が支給されていないのが実態とし、「医療機関にとってコストが掛からない労働時間であることが、勤務医に長時間労働を招く大きな要因になっている」。
 加えて、当直の問題について、松丸さんは、「厚労省が、医師の当直は『監視・断続労働』として、労働時間にカウントしなくていいと通達している。これは、当直時に救急対応などが少なかった20-30年前の通達で、現在の当直の実態と乖離(かいり)している」と批判。最高裁が、警備員の仮眠時間を労働時間と認定した02年2月28日の「大星ビル管理事件」判決を挙げ、「勤務医の当直は労働時間に該当する」として、厚労省が勤務医の当直について見直す必要性を強調する。

労災の認定基準を見て面白いと思うのは、基本的に「周りの同僚も普段やってないような普通じゃない業務」を強いられた場合に認められるものだと言うことですね。
たとえば特に過重な業務とは「日常業務に比較して特に過重な身体的、精神的負荷を生じさせたと客観的に認められる仕事」をいい、「業務量、業務内容、作業環境等具体的な負荷要因を考慮し、同僚労働者または同種労働者にとっても、特に過重な身体的、精神的負荷と認められるか否かという観点から、客観的かつ総合的に判断」するとなっています。
そうなると素朴な疑問なんですが、全国の医師達が皆そろって「特に過重な身体的、精神的負荷を生じさ」る業務に日常的に従事している場合に、それに耐えきれず過労死した者は労災と認められるのでしょうか?
今回の中原氏の事例を始め医師の過労死認定が極めて稀と言う現状を側聞するにつけ、どうも国の基本的立場として認めていないんじゃないかという危惧がなしとしないのです。

「小売り店員の労働時間は実際に接客やレジ打ちしている時間しか認めない」なんて話が出たら「そんな馬鹿な!」と誰でも思うと思いますが、「医師の労働時間は実際に診療している時間しか認めない」が堂々と厚相の国会答弁になってしまうのがこの国の不思議なんですね。
パイロットの労働や休息に関して航空法で事細かに決められているのはよく知られていますし、昨今過酷な運行スケジュールが問題視されるトラック業界ですらちゃんと規定があるわけです。
同様に命を預かる職業であるのになぜ医者は特別扱いなのでしょうか?もしや特権階級認定ですか?(逆の意味で…)

有名な佐賀県立病院のように公の組織が長年計画的に勤務記録を改ざんしてまで医師を奴隷労働させていたという事例などを見ても、「黙って耐えていれば誰かがいいようにしてくれるだろう」なんて甘い幻想を抱いてきた労働者としての権利主張の欠如が使役者側をつけあがらせてきた一因ではないでしょうか?
「立て!万国の労働者!」ではありませんが、これからの時代は医者という人種も色々な意味で社会常識を身につけていかなければならないと思いますよ。
幸いにして近ごろの研修医はそういう点では実にしっかりしてるなと関心させられますが、彼らの指導者層たる中堅、ベテランの先生方はくれぐれもご用心くださいね。

先生方が過労死したとしても、国はなにひとつ報いてはくれません。
そして何より、そんな過労死寸前の医師に治療されたいなんて考えている患者はおそらくどこにもいないと思いますよ。
「患者のために頑張る」と言う志は立派ですが、頑張る方向を間違ってしまっては空回りするばかりで誰一人幸せにはならないのですから。

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2008年11月 6日 (木)

産科はどこもいっぱいいっぱい

墨東病院の方がようやく下火になったと思ったら、マスコミにとっては新たな燃料投下になったようですね。
昨日も少しだけお伝えした東京の妊婦脳出血症例の続報ですが、当初かかりつけから搬送を要請された杏林大が「釈明会見」をしたそうです。

妊婦拒否の杏林大釈明会見 緊急性伝わらなかった(2008年11月5日東京新聞)

 東京都調布市のかかりつけ病院で脳疾患が疑われた妊婦が、杏林大病院(三鷹市)などから受け入れを断られた問題で、杏林大病院総合周産期母子医療センターの岩下光利副センター長は5日、記者会見し「病棟が満床だった上、かかりつけ病院側から緊急性がうまく伝わらなかった」と釈明した。
 岩下氏によると、9月23日午前3時すぎ、当直医2人が帝王切開手術中に、妊婦のかかりつけ病院である飯野病院から搬送依頼の電話があった。手術後、当直医が飯野病院に電話したところ「軽度の意識混濁、手の震えはあるがバイタルサインは安定している。いくらでも待てるので受け入れてほしい」との返答があり、緊急性は低いと判断。「他の受け入れ先を探す」と伝えたという。
 一方、飯野病院側は「緊急性があると判断したから受け入れをお願いした」と、杏林大には切迫状況を伝えていたと強調した。

【妊婦重体】「緊急性は低いと判断した」 杏林大病院が会見(2008年11月5日産経新聞)

 東京都調布市内の病院で嘔吐などの症状を訴えた30代の妊婦が、9月に杏林大学病院(三鷹市)など少なくとも都内の4病院に受け入れを断られた問題で、杏林大病院総合周産期母子医療センターの岩下光利副センター長が5日、記者会見し、受け入れを拒否した理由について「妊婦の状況から緊急性は低いと判断した。脳出血と分かっていれば受け入れた」との見解を示した。

 同病院の説明によると、9月23日午前3時から3時半にかけて、調布市の飯野病院から妊娠41週の妊婦の搬送依頼を受けたが、3時42分まで当直の医師2人が帝王切開の手術中だったため依頼を断った。

 帝王切開手術の終了直後、再び飯野病院から搬送依頼の電話があったが、杏林大病院の母体・胎児集中治療管理室(MFICU)と産科病棟はすべて満床だったうえ、医師2人が術後の対応に追われていたため搬送を断った。

 緊急性が低いと判断した理由について、岩下副センター長は、「2度目の搬送依頼を受けた際、当直の医師が飯野病院に妊婦の詳しい状況を聞いた。その時の説明では、妊婦に軽い手のふるえや軽度の意識混濁などがみられるが、呼吸や脈拍などは安定しているとのことだった」と説明した。

また「分かっていれば受け入れた」ですか…
病棟は満床、当直医は手術中、現場の状況を知っていれば単純にキャパシティーをオーバーしていただけの話と知れるのに、何故こういう頓珍漢なことを言うかなあ…
「当時の当院の状況では受け入れは無理でした」と素直に言っておけばいいものを、わざわざ突っ込まれるような事ばかり言うから現場で必死に働いているスタッフも患者・家族も皆が後味の悪い思いをしなきゃならなくなるんですよ。
ほんと、医療関係者はもう少し対人折衝とか広報とか言う領域に関して勉強しないといけないと思いますね。

今回の件でかかりつけと杏林病院の重傷度に対する認識の差が問題になっているようですが、こうした認識の違いは産科救急に限らずよくあることです。
かかりつけは自分のところでは手に負えない重症だと考えているからこそ送ろうとするわけだし、搬送先はいつもそうした症例を扱っているわけですからね。
しかし根本的な問題は救急最後の砦であるべきこの種の施設で「うちでなくとも対応出来る程度の軽症の人が来てもらったら困る」と言うほどに余裕のない体制を強いられているリソースの欠乏ではないんですか?
超急性期を扱う救命救急センターのような施設は本来常時スタッフや病床に余裕がなければならないのに、何故いつも満床近くで回していなければ経営がなり立たないような状況を強いているのかってことに思いが及ばなければこの種の問題はいつまでたっても解消しないと思いますよ。

さて話はかわって、先日の墨東病院の件を受けて、読売新聞がこんな調査をしています。

妊婦搬送、大都市ほど拒否…周産期医療センターを全国調査(2008年11月2日読売新聞)

 先月上旬に脳出血で死亡した東京都内の妊婦が、「総合周産期母子医療センター」のある病院など8病院で受け入れを拒否された問題を受け、読売新聞が全国75か所の同センターを対象に調査した結果、搬送の受け入れを「断る場合がある」というセンターが4割弱に上り、特に大都市部で多いことが分かった。

 逆に地方では大半が「原則すべて受け入れる」としている。産科医不足を背景に、土日などに「当直2人体制」が維持できないセンターは5割近くに上った。

 調査は、各センターからの回答や都道府県への取材により、71か所の状況を把握した。妊産婦の受け入れを要請された場合、「断る場合がある」は26か所(約37%)。内訳は、東京都内の全9か所、神奈川、福岡県の各3か所、大阪府と栃木県の各2か所、埼玉、千葉、茨城、群馬、和歌山、広島県と京都府の各1か所。首都圏の1都3県では回答した15か所のうち14か所(約93%)に上った。断る理由で最も多いのは「新生児集中治療室(NICU)の満床」。都市部でハイリスクのお産に対応するNICUが不足している実態が浮き彫りになった。ほかに「医師不足」「手術中」などもあった。

 大都市部では「拒否率」が5割超のセンターも7か所に上った。ただ、「ハイリスクの妊婦を受け入れるため、軽症の妊婦を断っており、適切な転院搬送の結果」(大阪府立母子保健総合医療センター)といったケースも含まれている。

 「原則すべて受け入れ」は45か所(約63%)で、地方都市で県内唯一というセンターが多かった。

 都立墨東病院がいったんは妊婦受け入れを拒んだのは「土曜日で当直医が1人しかいない」との理由だった。調査で土日や夜間に「1人体制」の時があるとしたのは34か所。その多くは規模が小さい地方のセンターで、待機医師の呼び出しで対応していた。「(大都市部と違い)うちが断れば、ほかに受け入れ先がない」(山口県立総合医療センター)といった声が複数あり、地方で当直体制が厳しいにもかかわらず、受け入れ拒否が少ない背景として、責任体制の問題も関係しているとみられる。

この調査でそれぞれの施設における実際の受け入れ数や他施設への再搬送数、搬送時間などもあわせてデータを取ってみれば、もうすこし面白いことが分かったかも知れませんね。
それはともかく、明らかに無理のある体制でそれでも何とか地方の医療が維持されているのは、担当エリアの人口すなわち搬送症例数が少ないということもあるでしょうが、まさしくあり得ないほどの現場の努力に頼っている現実があります。
産婦人科医会の調査によれば、この一年間で分娩を取り扱う病院が8%の減少(1281施設から1177施設へ)を来したと言います。
お産を取り巻く状況は昨日より今日、今日より明日と悪化していく一方であって、少なくとも今後数年~十数年という単位で劇的な改善は見込めないでしょう。

現場は「もうこれ以上は無理、勘弁してくれ」と悲鳴をあげっぱなしの状況であるのに、一体いつまで「重症だと分かっていればもうちょっと頑張れた」なんて欺瞞を続けるつもりなんですか?
出来もしないことを出来る出来ると言い張り、実際には出来ていないことの方がよほど無責任な態度だとは思わないんでしょうか?
上の人間も現場の判断ミスみたいな背後から鉄砲で撃つような真似はいい加減にやめて、「現状のリソースではこれ以上の負荷に現場は耐えられません。いま以上を求めるのならどこか他に削るべき部分を決めてください」という方向に踏み出していかないといけない時期が来ているんじゃないんですか?

多少なりとも救いなのは、現場に対する無謀な労働強化を図ろうとした墨東病院を支援する動きが出てきていることです。
もちろん周囲の施設とて余力を残しているわけではないでしょうが、前線の傷兵に向かっては兵糧弾薬も送らず大和魂で頑張れ!いつか神仏の守護がある!なんて戯言を吐いているよりはよほど気持ちが伝わる話だと思いますよ。

妊婦死亡:墨東病院当直1人の日に「当番」制…都協議会(2008年11月6日毎日新聞)

 東京都立墨東病院(墨田区)などに受け入れを拒否された妊婦が死亡した問題で、都周産期医療協議会(会長、岡井崇・昭和大医学部教授)は5日、墨東病院の当直が1人になる日は他の総合周産期母子医療センターが代わりに妊婦搬送を受け入れる「墨東当番」の導入を決めた。
 受け入れ拒否をした時に産科当直が1人しかいなかった墨東病院は10月末、11月の休日当直を「可能な限り2人体制にする」と発表した。しかし、新たな医師は確保できず、5日間は終日あるいは日中が1人当直となる見通し。協議会ではこの時間帯について、都内にある別の八つのセンターが代わって対応することで一致。輪番制とし、今月最初の1人当直となる8日にも導入する。
 都内では既に、センターが杏林大病院しかない多摩地区をカバーする「多摩当番」が導入されているが、墨東病院はこの当番から外すことも決まった。協議会に出席した墨東病院の小林剛院長は「墨東病院のある地域は分娩(ぶんべん)数が多いのに施設数が少ない。隣接する千葉、埼玉からも患者がかなり入ってくる。本当にぎりぎりの状態」と理解を求めた。

悪い方向に想像するならば、各地で起こっているドミノ現象と同様に、これが地域医療崩壊連鎖反応の最初の一歩にならなければいいんですが…
しかしまあ、この状況でこの人たちは…あんたら仮にも事態の最終責任者だろうにこういうことやってる場合なのかと小一時間(r
こういう低レベルな争いに終始している人たちが上にどっかと居座っているんですから、本当に全部が崩れ去ってしまうのも遠い先の事じゃないかも知れませんね。

都の対応間違っていた“妊婦たらい回し”、私を批判した石原都知事は赤っ恥かいた(2008年11月3日スポーツ報知)

 先月、脳出血を起こした妊婦が、都立墨東病院など8病院に受け入れを拒否され死亡した。この問題への対応をめぐり、舛添要一厚労相(59)と石原慎太郎東京都知事(76)が対立。互いへの激しい非難合戦に発展した。舛添氏は「都の対応が間違っていたのは、証明されつつある。私を批判した知事は赤っ恥をかいた」と強気な姿勢を崩さず。まだまだ、論戦は続きそうだ。一方で麻生太郎首相(68)の消費税率アップ発言には「議論すべきことで、適切な提案」と期待感をにじませている。

 ―病院施設が充実されていると思われた東京で、妊婦が“たらい回し”されて亡くなった。
  「大変にゆゆしきことだ。墨東病院は今年7月から、週末の当直医は1人きり。しかも、研修医という状態だった。考えられない。根本的な問題は医師不足。過去10年以上にわたり、厚労省は『医師は余っている』と言い続け、歴代大臣も何もしてこなかった。私が大臣になって対策を講じてきたが、医師の育成は10年はかかる。その矢先に、こんな問題が起きてしまった」

 ―石原知事と対立は。
  「私はあくまで都の対応を指摘しただけ。都知事を名指ししてないのに、知事が一人で熱くなって、マスコミがバトルに仕立て上げたんだ」

 ―なるほど。
  「そもそも、墨東病院は『総合周産期母子医療センター』という全国に74か所ある施設の1つで、国が補助金を出している。だが、地元の医師会が墨東の体制がひどいから、改善をするよう東京都に申し入れていたのに、都はずっと放置してきた。さらに、今回の問題が報道で明るみになるまで、厚労省に報告していなかった。だから私は『東京都に任せられない』と言ったんだ」

 ―知事の意見に納得できたのか。
  「国と都のどちらの言い分が正しかったか分かってきて、メディアは都批判に回りつつある。今回の妊婦の遺族が、どこで会見したか? それは厚労省だ。都立病院で起きた問題なのに、都庁ではなかった」

 ―つまりは。
  「遺族は都に抗議の意思を示す意味があったと思う。勝負はついたでしょ。知事はあんな発言をして、今、赤っ恥をかかされている。知事は行政のあらゆる分野に目を向けなければならないが、少なくとも医療分野に関しては、私の方が知識は豊富だ。都の役人の受け売りだけでなく、自らの目で事の本質を見ないと。医師不足に関して、国も改革を進めているのだから、都も都立病院の再編など、できることはあるはずだ」

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2008年11月 5日 (水)

マスコミは堕落した?! ~ もうたらいは回さなくていいの?

東京でまた「妊婦たらい回し」が発生していたそうです。
といっても少しばかり旧聞に賊する話題なのですが、本日の報道から拾ってみましょう。

妊婦拒否:杏林大病院など6病院も 女性意識不明の重体に(2008年11月5日 毎日新聞)

 おう吐や半身まひなど脳内出血の症状を訴えた東京都調布市の妊婦(32)が今年9月、リスクの高い妊婦に対応する「総合周産期母子医療センター」に指定されている杏林大病院(東京都三鷹市)など6病院から受け入れを拒否されていたことが分かった。女性は最初の受け入れ要請から約4時間後に都立墨東病院(墨田区)に搬送され出産したが、現在も意識不明の重体。子供は無事だった。

 都内の別の妊婦が10月、墨東病院など8病院に受け入れを拒否され死亡した事故の約2週間前に起きたケースで、妊婦に対する救急医療体制の不備が改めて浮かび上がった。

 この妊婦のかかりつけ病院だった調布市の飯野病院によると、女性は出産のため9月22日に入院。23日午前0時ごろからおう吐や右半身まひなどの症状が出た。脳内出血の疑いがあり、医師が外科治療が必要と判断、午前3時ごろから複数回、杏林大病院に受け入れを要請したが、「産科医が手術中で人手が足りない」と拒否されたという。

 一方、杏林大病院によると、要請を受けた時、当直医2人が手術中で、約1時間後に再要請を受けた時も術後管理や空きベッドがなかったことから受け入れられなかったという。岩下光利・同大教授(産婦人科)は「飯野病院からの連絡に切迫性はなく、外科措置が必要との認識はなかった」と話している。その後、杏林大病院は飯野病院と分担し、小平市など多摩地区の3病院と23区内の2病院に問い合わせたがいずれも受け入れを拒否されたという。

 東京都内の周産期医療システムでは、多摩地区の総合周産期母子医療センターなどで受け入れができない場合は、23区内の八つの総合周産期母子医療センターが輪番で対応することになっており、午前5時半ごろ、約25キロ離れた墨東病院での受け入れが決定。同7時ごろ、搬送されたという。

この件に限らず相変わらず産科医療関連の話題が連日のように各新聞紙面を賑わせています。
何しろ産科と言うところは一つの病気で二人の命に関わるだけに話題性が大きいということなのでしょう。
もちろん医療崩壊という現象は産科に限らずの問題ですから、ここから医療全体に話が広がっていくのが望ましいのは言うまでもありませんが、記事を見て何か違和感を感じませんか?

妊婦たらい回しに関しては他の追随を許さない報道姿勢を誇るはずの毎日新聞が、なんと今回まったくたらいを回していないんですよ。
…どうした毎日、堕落したのか?

そういう視点から最近の医療報道を見ていますと、色々とマスコミ各社の「今までになかった報道姿勢」と言うものが見え隠れしてくるようで興味深いですね。
今日は「前とはちょっと違う?」ってところに注目しながら最近の医療関連の話題を追っていきたいと思います。

産科医療事故遺族が再発防止訴え 奈良でシンポ(2008年11月3日  朝日新聞)

 医療事故について考えるシンポジウムが3日、奈良市の奈良女子大であり、福島県立大野病院と奈良県大淀町の町立大淀病院でともに出産時に亡くなった女性2人の遺族らが再発防止を訴えた。

 大野病院で04年、医師が癒着胎盤をはがす際、大量に出血して死亡した女性(当時29)の父、渡辺好男さん(58)は「娘は手術の25日前から入院していた。手術に至るまでの医療者の判断の全容が知りたい。それが私の求める真実です」と話した。事故は刑事事件に発展し、遺族への中傷もあった。「医療者だって患者になるかもしれない。我が事として再発防止策を考えてほしい」

 大淀病院で06年、出産途中に脳出血を起こして亡くなった女性(当時32)の義父、高崎憲治さん(54)は、東京都で8病院に受け入れを断られて脳出血で死亡した妊婦の例に触れ、「うちと全く同じ。今は当たり前の医療が当たり前に行われていない。だから、遺族は家族の死を受け入れられない」と強調。産科救急だけの問題とせず、妊婦に頭痛があれば、まず脳外科医のいる病院に搬送するなど、実効性のある対策を求めた。

かなわぬ「病院との対話」医療事故シンポ 奈女大で遺族語る(2008年11月4日  読売新聞)

 「医療事故遺族が求める真実とは」と題したシンポジウムが3日、奈良市の奈良女子大で開かれ、福島県の病院で4年前、帝王切開手術を受けて死亡した女性の父の渡辺好男さん(58)が出席。「真相究明と再発防止のために病院との対話を求め続けたが、かなわなかった」と心境を吐露した。

 同大学の栗岡幹英教授(医療社会学)の呼びかけで開催。渡辺さんら遺族や医師らが、医療事故の患者側と医師側の対立の解消策などを話し合い、医学生ら約80人が耳を傾けた。

 渡辺さんは「娘を亡くして、直下型地震に襲われたような悲しみに見舞われた。それは今も癒えない」と話し、業務上過失致死罪などに問われた手術の執刀医を今年8月、無罪とした福島地裁での裁判などについて「娘が入院した25日間の真実が知りたかった。病院側が教えてくれなかった情報が後からいくつも明らかになり、ショックを受けた」と振り返った。

 また、大淀町立大淀病院で一昨年、出産時に意識不明に陥り、19病院に転院拒否された末に亡くなった高崎実香さんの義父の憲治さん(54)は「医師と遺族、行政が一緒に再発防止策を考える場を」と訴え、金沢大付属病院産婦人科の打出喜義医師は「当たり前の医療を普通に行えば、訴えられるようなことは起きない。医者は日々、何が起こっているか患者らと話し合い、共有できる関係を築くべきだ」と呼びかけた。

朝日と読売という言わばライバル関係と言える二社の記事を並べてみて、何か気がつきましたでしょうか?
ちなみに大淀病院問題では決して外すことの出来ない毎日新聞が昨年春の同様なシンポを報じた時にはこんな感じでした。
比べてみればおわかりいただけるかと思いますが、どうも両紙とも以前から使っていた医療事故「被害者」という表現を注意深く外しているようなんですね(またそのうち復活するかも知れませんが)。
そう言えば「たらいまわし」という妙な用語に関しては随分とあちこちからクレームがついたんだと思いますが、最近ではあまり新聞紙面でも見かけなくなりましたね(テレビでは未だに…ですが)。

医療現場で患者死亡など望ましからぬ有害事象が発生したからと言って誰かが悪かったのかと言えば、そうでない場合も多いわけです。
強いて言えば病気が悪いという言い方がもっとも正確なのかも知れませんが、被害者と言えば加害者が誰なのかという話になるわけで、以前から十把一絡げに「被害者」という表現は不適切なのではないかという指摘は根強くありました。
そもそも医療事故という表現自体も誤解を招きやすいという指摘があるのですが、さりとて適切な代替用語も思いつかないので仕方なく使っているというところでしょうか。
いずれにしても奈良・大淀病院事件報道の発端となった毎日新聞が「亡くなった患者が6時間放置されたというのは誤報ないし捏造では?」と突っ込まれた際の「その間、何も処置されなかったという遺族の強い思いがあり、遺族から見れば、結果的に放置されたというのは間違いでないと思います」などと苦しい弁解をしていたことを思えば隔世の感がありますね。

若手は手取り月20万円台 信じられない勤務医の待遇(2008年11月2日 J-CASTニュース)

   医者というと高給、お金持ちというイメージが付きまとうが、勤務医はどうやらそうでもないらしい。非常勤の若手だと、手取りは20万そこそこ。高給どころか、「コンビニ店員」と同レベルという嘆きの声が医師の間から聞こえる。正規の職員でも、他の職種に比べて高くないと医師たちは主張する。過労死しても不思議がないほど労働時間の長さ。それを考慮すると結構安いのである。それが近年起きている「医療崩壊」にもつながっている。

高校教諭よりも給与が安い?

   日本医師会がまとめた給与に関する調査結果によると、医師の年俸は814.9万円(35.4歳、所定内給与+残業手当など込み)だった。パイロット(39.3歳)が1381.7万円でもっとも多く、大学教授(55.8歳)が1189.1万円、記者(36.3歳)が962.2万円、高校教諭(35.4歳)が849.6万円。この調査だと、同年齢で医師は高校教諭よりも安いという、意外な結果になっている。

   例えば、国立病院や都府県立病院だと「基本給+地域手当(もしくはへき地手当)+初任給調整手当」の合計が給与となる。初任給調整手当とは、民間病院との給与格差をなくすために、プラスされるもので、医師や歯科医、助産師などに支給される。ちなみに、東京都が現在募集をかけている都立病院の常勤医師の給与は、採用サイトによると「医師免許取得3年目で月収48万3500円程度、5年目で51万9300円程度、10年目で59万8500円程度」。このほかに扶養手当、住居手当、通勤手当、宿日直手当、ボーナス(08年度は年間4.5カ月分)がつく。

   数字だけみるとそう安くはない。一流企業の会社員並みといってもいい。ところが、医師や看護士らの労働組合「日本医療労働組合連合会」の担当者はこう指摘する。

    「時間外労働が過労死寸前の80時間近く、それに見合うだけの額をもらえていないのが現状です。もっとも、まともに時間外手当を支払えば、病院は倒産してしまうかもしれませんが…」

   都内の病院に勤める医師も、

    「看護師は時間外手当をもらえるが、医師は(ほとんど)もらえない。労働基準法違反が横行している

と怒りをあらわにする。

   労働に見合うだけの給与をもらえず、モチベーションが下がり、退職する医師が急増している。2008年4月、がん治療の権威である「国立がんセンター」で、麻酔医が相次いで辞め、手術に支障がでていると報じられた。その理由の一つに、給与の不満があったと言われている。

08年度の見込み支給額 約360万円

   国立がんセンター中央病院の土屋了介病院長は「東洋経済」2008年11月1日特大号で、常勤医師の給与の実態を明かしている。

    「彼らにはボーナスはありますが、超過勤務手当てをほとんどもらっていない。一律、月に数万円程度です。看護師の場合、業務命令の超過勤務に関しては100%支払われます。検査技師も実働の70%くらいは払われています。ところが、医師については実働の数%程度。予算が余った分を医師に機械的に割り振っています」

   若手や中堅医師の流出が激しいため、人事院は国の医療施設に勤務する医師の年間給与を09年4月1日から平均で約11%引上げるよう政府に求めている。しかし、肝心の時間外労働手当については触れていなく、今後の課題となりそうだ。

   さらに、厳しい状況に置かれているのが、非常勤の若手医師だ。「月の手取りは20万円。コンビニエンスストアの店員と(手取りが)さほど変わりない」とまで言われている。非常勤国家公務員の身分で、何時間働いても週30時間分しか給与が出ないからだ。

   医師国家試験に合格すると、2~3年間研修医として勤務し、さらに専門分野の知識と技術の修得を目的とした研修(レジデント)が行われる。レジデントの対象は27歳~32歳。

   国立がんセンター中央病院は現在、採用サイトでレジデントを14人募集している。そこには「08年度の見込み支給額 約360万円」とある。これなら手取りは20万円台だ。

   全国でも非常勤医師は多い。厚生労働省が全国8943の病院を対象に行った調査(06年度)によると、常勤は14万5813人、非常勤は35万3778人。薄給な非常勤のほうが断然数が多いのである。そのせいか、アルバイトをせざるをえないという構造になっている。

幾つか誤解や勘違いと思われる記述も散見されますが、いやこういう記事が出るようになったんだね~と隔世の感がありますね。
一昔前は医療現場の過酷労働と言えば白衣の天使ネタばかりでしたが、実は正規公務員だったり組合に守られていたりの看護師などコメディカルスタッフの方が非正規職員、非組合員が多い医師よりよほど労働者としての立場が強いんですけどね。
ワイドショーあたりで大学や公立病院の異様に高い人件費率の謎なりスタッフの労働の実態なりを突っ込むようになると随分と面白いことになるんでしょうけど、色々な意味で無茶苦茶荒れそうですからねえ…

出産費未収が昨年12億円、大学・公立病院で多発(2008年11月3日  読売新聞)

2007年に出産費の未収金があった医療機関が全国で977施設あり、総額は12億4500万円に上ることが、日本産婦人科医会(東京・新宿区)が初めて行った調査でわかった。

 出産を扱う全国2843の医療機関すべてを対象として今年9月に調査、1977施設から回答を得た。未収金には入院費や新生児介助料を含んでおり、一部でも支払われなかったのは5414件。都道府県別の未収金は神奈川が1億4799万円と最も多く、愛知の1億1770万円、東京の9647万円と続いた。1施設平均では、山梨の193万円、栃木の151万円が目立った。

 同医会によると、妊婦健診を受けずに出産間際になって受診する「飛び込み出産」は、身元を十分に確認できないことがあり、未収になるケースが多いという。石渡勇・常務理事は「出産育児一時金を他の用途に充ててしまう例も増え始めている」と指摘する。

 群馬県高崎市の産婦人科病院長(71)は、「3人産んで一度も支払わなかった女性もいる。未払い金は、開業医には死活問題。『支払えないなら公立病院で産んでほしい』と妊婦に告げる開業医仲間もいるほどだ」と話す。

「支払えないなら公立病院で産んでほしい」って、またえらくストレートですな(苦笑)。
ちなみに妊娠出産は病気でないというのがこの国の公式見解ですから、ここに医師としての倫理がうんたらなんて言うのは的外れな話でしょうかね。
しかし飛び込み出産=踏み倒し予備軍だとか、一時金使い込みだとか、今までの「患者さま=弱者」という視点オンリーではなかなかこういう「現場のホンネ」は書けないですよねえ。

おもしろいのはこれと相前後するように同日には政府が未収金対策として、今まで「医療保険→妊婦→病院」という流れだった出産一時金支払い方式を「医療保険→病院」と直通にする方針を打ち出したことですね。
事前に産科医会と政府側との折衝はあったのでしょうが、以前の医療行政に見られた動きの鈍さとは対照的な最近の流れは何なのでしょうか?
要するに今まではさぼっていただけってことがバレるじゃないですか(苦笑)。

医療の「テレビドラマ」は増えてます。でも、「報道」が日本医療をダメにしている?

 脳内出血を起こした東京都内の妊婦が、緊急時の受け入れ先になっている7つの病院をたらい回しにされて出産後に死亡した問題は、
東京でも深刻な“産科医不足”が、起きていることを浮き彫りにしました。
(略)

正しく報道している?
 このような、私たちの日々の暮らしにとても密接に関係する医療問題の本質については、メディアも正しく報道していく必要があると思うのですが、例えば“福島県立大野病院産科医逮捕事件”についての新聞の見出しは、以下のようなものでした。

「帝王切開のミスで死亡、医師逮捕 福島の県立病院」(産経新聞)

 今年出た判決によると、医師側に過失は無く“帝王切開のミス”ではなかったということになります。2006年に逮捕された時点では“帝王切開のミス”の可能性はあったかもしれませんが、この断定的な見出しからするとそれは“誤報”ということになります。
 そして、この“誤報”が社会にもたらす大きな影響をメディアは認識していたのでしょうか?
 この事件の報道のトーンにより多くの医学生に、産婦人科は非常にリスクが高いとのイメージを持たせてしまった可能性は大いにあります。
実際に、この年の産科医の志望者は4割も減りました

正義の味方になりたがってないですか
 また、この事件がきっかけで多くの病院で、重篤患者に対する“たらい回し”が起こる傾向が強まり、今回の脳内出血を起こした東京都内の妊婦の死亡問題に繋がっているとも考えられます。
 医療現場における事故を、個人の責任に帰着させるようなメディアの報道姿勢は確かに“医療ミス”としてスキャンダルが大好きな読者、視聴者の関心を煽るには効果的かもしれません。“悪徳医師を断罪する正義の味方”になりたがるのが、日本のメディアの本質でもあります。
 しかし、その一方で、現場で必死に頑張っている医療従事者の方々に、医療事故のリスクを必要以上に恐怖訴求することになり、結果、人材不足、施設不足などを引き起こし、最後に不利益を被るのは我々国民一人ひとりなのです。
 また、患者側も医療が高度化し、患者側の選択肢が増えている以上、インフォームドコンセントに基づき、患者自身、その家族はきちんと説明を受けて納得したうえで治療を受けることが必要となってきています。

スキャンダルは要らないです
 ワイドショーでスキャンダラスに騒ぎ立てるのでななく、“事件の本質は何だったのか? その事件が起こった背景は何だったのか?”をつき詰めて、正しい情報を提供していくことこそが、メディアの役割として重要なのです。
 今医療現場で重大な問題になっている“モンスターペイシェント”もメディアが医療事故を大きく扱うようになり、患者の権利が声高に叫ばれ、病院で患者が“患者様”と呼ばれるようになった時期から増え始めたと言われています。
 このような患者の存在が、過酷な労働環境の下、疲弊している医師をさらに追い詰め、結果として医師偏在や医師不足の原因となっていることを患者は認識すべきであり、患者サイドとしては求める医療サービスの限界を知る節度と、医療機関を選ぶ知恵が求められていることを知るべきです。

「チーム・バチスタの栄光」「小児救命」「風のガーデン」
 医療という公共性の高い領域では、メディアの果たす役割は非常に大きいと言わざるを得ません。そんな中で最近非常に気になるのが、病院を舞台としたテレビドラマが増えているという現象です。この秋のクールでも「チーム・バチスタの栄光」「小児救命」「風のガーデン」と3つもあります。夏のクールも「コード・ブルー―ドクターヘリ緊急救命」「Tomorrow」がありいずれも高視聴率でした。
 中でもこのクールの「小児救命」は、小西真奈美扮する小児科医・青山宇宙が24時間体制の“青空こどもクリニック”を開業する物語で、番組のHPでも今の小児科医不足の現状を訴えています。しかし、このドラマが、視聴者にどんな影響を与えるかは未知数です。
 例えばこのドラマを見た医学生が“やっぱり小児科は大変だからやめておこう”と考えるのか“こんな深刻な状況を自分が変えてやろう!”と思うのかは分かりません。小さい子供を持つお母さんたちの“24時間開いてる病院はやっぱり便利よね”という安易な期待が高まってしまう可能性もあるでしょう。
 ドラマという領域では、マスメディアであるテレビの持つ大きな影響力は、まだまだ健在です。そんな中今まさに医療の分野におけるマスメディアが果たすべき本来の役割を考える時期にきています。

なんですかこの「率直に自己批判しろ!」な内容は。
どこぞの2chあたりのマスコミ批判スレの内容を引っ張ってきたかと思えるような内容は(実際にその通りなのかも知れませんが)。
最後はやや手前味噌な感じもなきにしもあらずですが、この通りに自己改革できるのだったらマスコミを見る世間の(そして医療界の)目も随分と変わることでしょうね。
もっともマスコミ絡みの話題で常に問題になるのが「彼らが言ったことの1/10でも自分で実行することがあるのか?」ってところなんですが。

なんにしろマスコミという業界は「弱者の味方」を演じたがりなんだと思いますが、いよいよ医療業界もマスコミに「弱者」として認識され始めたってことなんですかね?
しかしなんと言いますか、彼らに擦り寄られて率直に喜ぶべきなのかどうなのか微妙なところなんですが…

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2008年11月 4日 (火)

阪南市立病院問題の奇妙な経過

大阪府阪南市の阪南市立病院がなにやらとても面白い?ことになっているようです。
そもそも発端となったのは昨年6月に報道された同病院内科崩壊の話で、これ自体は関西都市部の地域中核病院クラス崩壊という目新しさはあったものの、しょせんは当時どこにでもありふれていた公立病院崩壊ネタととらえられていた話ではありました。

阪南市立病院、内科閉鎖へ(2007年6月25日)

常勤医5人退職…後任メドたたず

 大阪府阪南市が、医師不足で7月以降に市立病院の内科を閉鎖せざるを得なくなり、財政再建団体に転落する恐れが出ている。

 病院の収入が減るうえ、退職してもらう看護師ら最大約60人に退職金を払うことで生じる病院事業会計の赤字を補てんすると、市の一般会計の累積赤字が最悪で約20億円に膨らみ、再建団体転落の危険ラインを突破する。市は医師探しに奔走している。

 同病院(185床)の内科では、和歌山県立医大から派遣されている常勤医5人全員が、今月末で退職する。さらに、同医大が補充を断ったため、非常勤の医師4人も「常勤医がいないと緊急時の対応が不安」などとして同時に辞めることになり、内科を閉鎖せざるを得なくなった。同病院の収入は昨年度の見込みで20億9300万円で、そのうち内科が37%の7億7400万円を占め、閉鎖すると、大幅減収になるのは必至。一方、市の試算では、閉鎖に伴って「余剰人員」になるために退職してもらう看護師ら約60人の退職金が約6億9200万円にのぼり、病院事業会計は今年度だけで10億4500万円の赤字になる見込みだという。

ま、内科医がごっそり退職したことの経緯に関しては色々と噂はあるのですが、伝え聞くところではこの手の公立病院の常であまり待遇は良くなかったらしいと言うことですね。
金銭的にももちろんですが、もともと内科が忙しいなど労働条件もよくなかったことで、いろいろと貯まっていたものが爆発したという感じのようです。

もともと経営的にはよかったとは言えない同病院ですが、稼ぎ手の内科がごっそり抜けたことでますます経営悪化が進行したのは想像に難くない話。
何しろ内科のバックアップがなければ外科系その他も満足な仕事はできませんから、いつものように退職の連鎖が発生するのは当然のことでしょう。
半年ばかりが経過した今年1月にはついに入院全面休止というあれ?この道はいつか来た道舞鶴市民病院?な状況にまで転落してしまいます。

阪南市立病院、入院を全面休止へ 医師の大半が退職(2008年1月29日)

 大阪府阪南市は28日、市立病院(185床)の入院受け入れを4月から全面休止する方針を市議会特別委員会で明らかにした。11人いる常勤医師のうち少なくとも7人が3月末で退職する見通しとなり、後任の確保も難しいため。医師不足は全国的に深刻化しているが、大都市近郊の公立病院が入院を全面休止するのは異例だ。岩室敏和市長は「存続を含め、病院の今後について2月中旬に結論を出したい」としている。

 阪南市立病院は1953年開設。近隣の泉南市と岬町を含む約15万人医療圏の中核病院と位置づけられている。

 市によると、退職する見通しなのは整形外科、胃腸科・外科、小児科、麻酔科の医師。いずれも和歌山県立医科大(和歌山市)出身で、大学による「引き揚げ」とみられる。院長と小児科医の2人が4月以降も外来のみ診療を続ける意思を表明し、歯科口腔外科の2人は未定という。

 同市立病院では昨年6月末、過重勤務の懸念を理由に9人いた内科医が一斉退職し、内科診療を全面休止した。ほかの科の診療は続けてきたが、入院患者数が前年の約3割にまで激減。市幹部によると、和歌山県立医大の医局から「手術の機会が少なくなっている病院に医師を派遣し続けることは難しい」との意向が伝えられたという。

 阪南市は昨年夏以降、外部に経営を委ねる「公設民営化」や民間移譲も検討し、民間医療団体などと交渉してきたが、今もめどは立っていない。

さすがにこうした事態を受けて当時の岩室市長らも色々と手を打ってきたようで、まず医師の待遇改善にしなければならないと気がついたのは良いことだったと思います。
例えば今年春には公立病院では珍しい歩合制の導入で実質医師給与の大幅アップ!をうたったことがちょっとした話題になりました。
ま、病院公式HPで悲鳴混じりの医師募集呼びかけをするところまでは許せるとしても、トップページでいきなりフォントまで変えて「給与改定2000万!」なんて書いちゃうのはさすがにやりすぎかと思いますけどね(つか誰だよこの下品なページ作った奴は)。

医師確保へ「歩合制」で年収大幅増 大阪・阪南市立病院(2008年5月5日)

 大阪府阪南市は、勤務医の流出が続く市立病院(185床)に、診療実績に応じた歩合制を導入して医師給与を大幅に引き上げる方針を決めた。年収は現状より900万~1200万円程度増えて約1.8倍になる見込みで、全国水準を一挙に超える。公務員としての自治体病院医師に歩合制を適用するのは全国でも異例という。

 自治体病院は激務の割に報酬が低く、医師に敬遠される一因といわれる。同病院でも過重勤務への懸念から昨年6月末に内科医全員が退職。今年4月からは11人いた常勤医が5人に減り、補充が急務になっている。市は「地域医療を守るために協力してくれる医師に報いる給与体系が必要」と説明する。

 市が市議会に示した素案によると、現状の年900万~1300万円程度の基本給とは別に、患者数に応じた能率給を導入。入院1人につき1800円程度、外来1人で470円程度をそれぞれ支給する。1日平均で入院7人、外来20人を診ると年800万円強になる計算だ。
(略)
 諸手当を含む現在の平均年収は、全国平均より約200万円低い約1300万円(06年度)。これが新給与体系の導入によって、経験5年目の医師で約2千万円、20年目の部長級で約2600万円になると試算する。民間病院の水準を参考にしたという。関連の条例改正案を6月定例市議会に提出する方針。

 ただ、同病院は今年度、市の歳出の8%にあたる11億8千万円を一般会計から繰り入れても2億6千万円の不良債務が出る見通し。全職員の給与は医療収益の9割超で、全国平均(50%強)を大幅に上回る。新給与体系について、一部市議は「市民の理解が得られるだろうか」と疑問視しており、論議を呼ぶ可能性もある。

ま、職員給与が医療収益の9割って時点で「さすが公立病院…」と言いますか、もう終わってる病院の断末魔といいますか、とにかくヤバイ状況なことは明らかなんですが、問題はこの記事最後の一文。
この期に及んで「新給与体系について、一部市議は「市民の理解が得られるだろうか」と疑問視しており、論議を呼ぶ可能性もある。」というなら、この一部市議さんは医師の待遇を改善しない代わりに病院がなくなることに対する市民の理解を得るよう説明義務を果たさなければならないわけですがね。
一部市議の見識はともかくとして、給与引き上げの効果があったのか幾らかは新しい医師も集まり、今年9月から無事内科の入院も再開されたそうです。

内科再開に一安心 阪南市立病院(2008年09月17日)

 医師の大量退職で昨年7月から休止していた阪南市立病院の内科の外来診療と入院受け入れが、今月から再開された。市民らはひとまずほっとした様子だが、阪南、泉南両市と岬町の2市1町を合わせた15万人医療圏を支える中核病院の再生はこれからが正念場だ。
(略)
 内科の再開にこぎつけられたのは、常勤医2人、非常勤医1人を新たに確保したからだ。このうち内科の常勤医は今月着任。さらに別の非常勤医が26日から加わり、金曜の午前中の外来患者を診る。これで内科の外来診療は、月~金曜の午前中と金曜午後の態勢になる。

 07年度末で約9億8千万円の累積赤字を抱える病院経営の立て直しには、休止で離れた患者がどれだけ戻るかがカギになる。しかし、「まだ患者さんが戻ってくる傾向は見られない」と同病院事務局の森下伊三美経営企画課長は話す。
(略)
 岩室敏和市長は「内科の再開で市民の期待に応えられてほっとしている。今後も病院全体の医療サービスの充実を図っていく」と話している。

普通ならこれでめでたしめでたしで終わっていそうなところなのですが、この場合ここからが本番なのですよ。

さて、ちょうど今年の10月に阪南市長選がありましたが、当然ながらこの市立病院問題というものが主要な争点となったことは想像に難くありません。
現職の岩室候補、新人の福山候補とも市立病院再建を公約に掲げて戦ったわけですが、ここで注目すべきは選挙戦の際の福山候補の公約なのですね。

選挙:阪南市長選 現職と前副市長の争い 市立病院問題が争点--告示 /大阪

◇市立病院の建て直しを--福山敏博候補(58)=無新
 34年9カ月、行政に携わってきた。市立病院を立て直さなければ、毎日赤字が増えていく。招へいした医師が辞めてしまえばまた同じことの繰り返しだ。人脈を生かして大学や近隣の公立病院とのネットワークをつくる。現市政では必要な政策も実施できていない。税収をどう生かすか、見直さなければいけない時期だ。ぜひチャンスをいただきたい。

「人脈を生かして」というその人脈がどのようなものであるのかここでははっきりしませんが、「医師が辞めてしまえばまた同じことの繰り返し」という言葉からそれなりの問題意識をもって私立病院問題にあたることが予想される公約ですよね。
市長選自体は結局新人の福山候補が勝って新市長になったのですが、今回最大の問題はこの「同じことの繰り返し」を批判して当選した新市長がどういう方針で市立病院問題に臨んだかということ。
で、予想通りのオチと言いますか、こういうことになってしまったわけです。

阪南市立病院、待望の医師はや辞意…給与見直しに反発(2008年10月31日)

 大阪府阪南市立病院の内科医ら5人が辞職の意向を病院側に伝えていることがわかった。同病院は今年6月、医師の平均年収を1200万円から2000万円に引き上げたが、26日の市長選で初当選した元副市長が給与を引き下げる意向を表明したため、5人が反発したとみられる。大量退職となれば、内科の休止など病院運営に影響する恐れも出てきた。

 関係者によると、辞意を示したのは、内科と総合診療科の医師5人。

 同病院は昨年7月、和歌山県立医大から派遣されていた医師9人が相次いで退職したのを受けて、内科を休止し、一時は入院患者の受け入れもできなくなった。このため、市は、医師確保策として、給与を引き上げる歩合給制度を導入。大阪市内の民間病院などから医師を招き、今年9月から内科を再開したばかりだった。

 ところが、今月26日の市長選で、同制度の導入を主導した現職の岩室敏和市長が、新人の元副市長の福山敏博氏に敗れて落選。福山氏が当選後、「(歩合給制度は)公立病院になじまない」などと発言していた。

非常勤医3、4人も辞意…阪南市立病院(2008年10月31日)

 大阪府阪南市立病院の常勤医5人が退職する意向を病院側に伝えている問題で、別に非常勤医3、4人も同様に辞める意思を市側に示していることがわかった。同病院の医師は約30人で、病院としての機能を保てなくなる恐れも出てきた。

 関係者によると、今月26日の市長選で初当選した元副市長の福山敏博氏が、歩合給制度の見直しと和歌山県立医大を中心とした医師招(しょう)聘(へい)策を打ち出したことに医師らが反発。「詐欺にあったようなもので、市への信用を失った」として計8、9人が辞意を表明した。入院患者の手術が終わる来年2月頃に退職する可能性が高いという。

やはりあれですかね、「2000万円も出せば和歌山県立医大の助教授クラスが飛んでくる」なんて発言もあったんですかね?(苦笑)。

いや~最近の医師は奴隷根性が薄くなってきているのも確かなんでしょうが、この新市長もなかなかに動きが速くて素敵です(苦笑)。
そもそも和歌山県立医大が医師を出せないよと言ってきたのが一連の問題の発端だったわけですが、この新市長はどういう人脈でそれを覆すつもりだったのでしょうか?
しかもこうまで露骨に「釣った魚に餌はやらない」な態度ってもうなんと言いますが、あまりにあまり過ぎてかえって清々しいものがあります。

同病院が今後どういう経過をたどるのか判りませんが、とりあえずこの一事だけをもってしても立派に聖地確定、ですかね。
くれぐれもお断りしておきますが、ネタではありませんので念のため。

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2008年11月 3日 (月)

これもカルチャーギャップというもの?

「職場で嫌われたい人のための101の方法」なるものがあるそうです。
元々はこちらのサイトの方が言っていることなのですが、なるほど地味に効きそうだと思えるものあり、ちょっとずれてない?と思えるものあり、やはり少しばかり日本人とは違うかなと。
ためしに「これは?」と思ったのを幾つか抜粋してみますが、どうも匂いネタが多いような…?

職場で嫌われたい人のための101の方法

5.風邪を引いている人とはマスク着用で話をする (それは基本でしょ?)
8.ツナサンドを冷蔵庫に放置したまま忘れる (匂いが臭いってこと?)
9.コピー機の警告音のボリュームをあげておく (コピー機の警告音ってそんな鳴るものか?)
15.会議中にコーヒーを音を立ててすする (日本人にはちょっと判りにくいか?)
17.金曜日に残業する人のまわりで掃除をする (???)
21.開いたツナ缶を机に置きっぱなしにする (やつらはツナ缶に何か恨みでもあるのか?w)
27.偽の解雇通知を人のデスクにおいておく (しゃれになりません)
29.車に近づいてきたタイミングを見計らってエンジンをかける (???)
30.よい朝を過ごしてくれるよう呼びかける (?????)
41.人が話しをしているときに相手の目をじっと見つめる (見ないか普通?)
48.ひまわりの種を食べる (連中好きだよね、ひまわりの種)
51.匿名でいろんな人に花を贈りまくる (誰がやったか判らないんじゃ嫌われようがないような…)
52.おやつにチートスを持ってくる (注:Cheetosってチーズ風味のお菓子ですよね。臭いってことか?)
53.廊下をあるくとき片足を引きずって歩く (なぜこれで嫌われる?普通大丈夫かって心配されないか?)
55.匂いのきついものをランチで食べる (ま、ニンニクぷんぷんなんてのは接客業ではちょっと…)
63.病気で会社に来る (日本人ならよほどのことでもなければ来るよねえ普通…)
65.会議中に携帯電話に出る (普通にいそうだ…)
74.メモをすべて目立つ色の紙に書く (目立って悪いのかな?)
81.炭酸飲料を振って冷蔵庫に入れておく (基本!それ基本!)
85.タイピングがやたらうるさい (メカニカルキーボードってやたらうるさいですよねえ…)
87.みんなに芸能人から取ったニックネームをつけてあげる (けっこう普通、では…?)
91.普通のコーヒーとカフェイン抜きを入れ替えておく (カフェイン抜きのコーヒー自体あんまり見ません)
95.人の天井に鉛筆を刺しておく (ダモクレスの剣??)
100.会議の予定を終業時間に組む (どこぞの業界ではそれがデフォなんですが…)
101.イヤホンをしたまま、大声で話しかける (額に眼鏡のせて”眼鏡眼鏡”ってやつ?)

近ごろは宇宙人?の出てくる缶コーヒーのCMシリーズが結構面白いなと思って見ているんですが、あれも一種のカルチャーギャップネタですよね。
実際よその文化圏の人間と話していると時々「???」なことがあって、向こうも表情から見る限り似たようなこと感じてんだろうななんて思うものです。
それでも東アジア圏の中では日本人ってのは西洋のマナーに通じている方であちゃらでもそこそこ評判は悪くないとは言いますけどね。

向こうの人間がこっちに来たときも同じようなカルチャーギャップはあるんでしょうが、日本人からすると「なぜそこに?」というところに引っかかってたりして面白いものです。
ためしに幾らか拾い上げてみましょう。

外国人が日本に来て驚いたこと

・ウォシュレットの噴水をみて外人さん大爆笑! (最近は結構あちゃらでも流行りつつあるようですね)
・夕方以降、リーマンがパチンコに没頭する姿。マジで、残業だと思ったそうだ。
 「コレハ、ナンノ工場ナノデスカ?」って外人さんはマジで聞くらしいぞ。 (昔どっかの中国人歌手も同じこと言ってたな)
 みんな真面目な表情して機械に集中している。
 外国のギャンブルな感覚からすると、ハイテク使った単純作業で工場の部品を生産
 しているように見えるらしい。ちなみに日本のパチンコ屋ではアルコール禁止だが、外国
 ではギャンブルはビール飲みながらサンドイッチかじって行なうのが普通な。
 日本が異常なだけだろ。
・病院があまりに安いと驚いていた。病気になったら飛行機使ってでも (ちなみに外国の手術代はこんな感じ
 日本に来ると行っていた。あちらでは入院が1泊30万円で保険も効か
 ないとのこと。
・日本のテレビは何で料理番組ばかりなのかと聞かれた。 (お手軽に出来てそこそこ視聴率も稼げるらしいですね)
 ホテルでテレビを見ていたら、全局料理番組だったって。
 そんなこと、おいらに聞かれても困る。
・十数年前の話だけど、イギリスから来た人(黒人)が言ってたこと。
 ・テロがない。安全で平和な国だ。
 ・若い奴はみんな学校か会社に行ってる(ぶらぶらしてる若者を見かけない。)。
   みんな真面目だ。
 ・ラリってる若い奴を見かけない。いい国だ。
 ・挑戦人が日本の悪口を言っても冷静だ。イギリスだったらボコボコにされる。 (それも怖いぞw)
   みんな優しく大人しい。
・細長いビルの立体駐車場。あれを中南米系の家族が、 (いわゆるタワーパーキングのことかな?)
 かなり珍しそうに写真撮ってた。
・ホームスティで来てるフランス人と一緒に白川郷の民宿に泊まった時、
 トイレが綺麗な洋式でウォシュレットまで備わっていたのに驚いてた
 「こんなに立派な古民家なのに、こんなトイレを付けていいのか?」と騒いでた (あ~たしかに言われてみれば)
 よく考えてみればあれ世界遺産なんだよな、リフォームはOKなのかと・・・
・ドイツ人は、肉じゃがで飯を食ったり、じゃが芋入りカレーライスが信じられないそうな。
 米は主食。ドイツ人にとって、じゃが芋は主食。主食をおかずにして飯を食う・・・ (お好み焼きを主食に飯を食う…)

しかし田舎の人気のない場所にある自販機ってのはたしかに結構不思議がられるんですよねえ。
日本=治安がいい国であるってことはご先祖様にも感謝しないといけませんよホント。
こっちみたいなのになると笑える一方で、本人にとっては本気で大問題だったんだろうなあとちょっと同情しますけどね。

お前らの国どうなってんの。

今日午前一時くらいに岩手にいるダチ(黒人)から電話があった。
ちなみに俺は東京人。お互い23。
「マイガッ!○○ヘルプミーsdfghrvbんm、。・¥jkl;」
落ち着け、聴き取れん。
「アパートが!アパートが揺れた!!」
ん?地震?(ネットで確認する)・・・あー俺寝てたから気付かなかった。結構デカかったぽいね。
「結構!?結構なんてレベルじゃghjkl」
OK落ちつこう。なんかケガとかした?物壊れた?
「本棚から大量のゴーストスイーパー美神が落ちてきた。あとパトレイバーも。」
サンデー厨乙wwwwまぁ一応ガス漏れとか気を付けろよ。
「ちょ、え、そんだけ!?すっごい揺れたんだよ!?チャイニーズレベルだよきっと!」
四川省の?確かにそうかもね。
「あれで何万人も死んだんだ!きっと大学の同級生も・・・(´;ω;`)ウッ…」
大丈夫だと思うよ。
「俺もきっと明日から生活できないよ・・・水も食べ物も無くなるだろうし電気だっていつ止まるか・・・
 このアパートは大丈夫かな?倒れたりしないかな?」
俺には分からないから明日大家さんに聞きな。水と食べ物は不安なら今から買いに行ったら?
「やだよ!今外出たくないよ!危ないよ!(米ではこういう時暴動が起きたりする)」
まあ、流石に今はコンビニも商品が散乱してるかもな。まあ、とにかく大丈夫だから。
落ちついて寝ちゃいな。
「うぅ・・・パパァーママァー地震マジこえーよー(´;ω;`)」
23歳児かおまえは。
「〇〇、助けにきてくれよマジで…ほんと地面が揺れたんだよ…
 なんでまだ建ってるんだよこのアパート・・・」
おやすみー。なんか困ったらまた電話して。(ガチャ

んで、今朝9時ごろ。
「〇〇、近所の小学生共が登校してる。お前らの国どうなってんの。」

その後黒人は死者どころか「6歳の女の子が転んで怪我をしました」
と報道してるTVを見た後大学をサボって寝たみたいです。

いやあ、ご同情いたします。
で、あんまり染まってしまうとこういうところまで墜ちてしまうそうです(苦笑)。
あ~たしかにそんな「ガイジン」けっこういるいる…

外国人が「日本に長く居すぎてしまった」と実感するのはこんなとき

1.山手線のホームで人波を左右に押し分けながらかいくぐり、電車に飛び乗り、ドアが閉まらないように手で押さえ、その間にかばんを電車に引っ張りこむ。その理由が、少なくともあと2分は電車が来ないためだとわかっているとき
3.自動販売機で、何のためらいもなく紙幣を入れるとき
 (海外の自動販売機はお釣りがきっちり出てくる可能性は10分の1以下で、壊れている可能性は何十倍もあることから勇気がいる)
5.初めてのスキーで、新品のロシニョールの高性能なスキー板を持ち、エアロダイナミックスなスキーウェアとそれに色のマッチしたゴーグルを装着して登場し、雪かきをしながら転げ落ちていくとき
6.選挙車のスピーカーから騒音・爆音をたれ流されても、「ショーガナイ」と思うとき
 (欧米ではあれほどの騒音は違法なところが大半)
9.信号の色のことで青か緑か揉めはじめ、あれは青だと思い始めるとき
 (日本人は青と緑の区別がつかないと思っている人もいる)
11.ガソリンスタンドで車から降りもせず、集団で押し寄せてくる店員がフロントガラスを拭いているのを、当然のことのようにただ待っているとき
12.自分の国に帰ってから、みんなと飲みに行って、全員のビールを注ぎ始めるとき(ビールを注いであげるなんてことはない)
16.電話中にお辞儀している自分に気付くとき
18.母国の両親と電話中に父親に「どうしてぶつぶつと文句でこちらの話しをさえぎるのかね」と言われるとき
 (日本人は相手の話しが終る前に話し始めることで有名)
20.トラックがバックするときに、童謡を流していてもおかしいと思わないとき
23.英文学専攻がバカ女を形容するときのオブラートに包んだ言い方だと思うとき
 (英文学というと欧米ではシェークスピアなどの古典にも強く才女のイメージであるが、こちらで英文学科というとシェークスピアの一節も言える女が居ないらしい)
26.車の最初のオプションがTVセットでも不思議に思わないとき
27.夏に半そでを着始める日付が決まってると思うとき
28.赤の反対は白なんだと思うとき
32.握手とお辞儀を同時にする芸術をマスターしたとき
36.どうでもよい商品に4重の包装紙が当たり前だと思うようになったとき
38.外国人の友人に必ず「日本滞在年数」を尋ねて種類分けし始めるとき
39.田んぼに囲まれた全く何もないとてつもないへんぴな場所で、飲み物の自販機を見つけても驚かず、電源がどこからきているのかも不思議に思わず、そのぽつんとした自販機がコーラを買ったあとにお礼を言ってくれることにも何も思わなくなったとき
(海外で人気のない場所の自販機は盗難にあって当然)
41.JRやタクシー会社に27本ほど寄付したあとでも、まだ玄関には透明傘が溢れかえってるとき
44.10月に半そでを着ている外人に向かって「寒くないの?」と聞き始めるとき
45.「ノー」を伝えるとき、鼻の上で手を左右に振るとき
49.12月の日曜日は全て忘年会の二日酔いの回復のために用意されていると思うとき
55.一つの会話につき3回ずつ謝罪している自分に気付くとき
57.片手チョップスタイルと連続お辞儀が混雑を通り抜ける手段だと思い始めるとき
59.外人の知り合いにまで血液型を聞き出すとき
61.自国に帰ったときにタクシーのドアが開くまで待ってしまうとき
63.外人だけが集まるパーティで、誰かが乾杯を言うのを待ってしまうとき
68.単語にアンダーラインを引くのに定規を出すとき
69.日本の何もかもがノーマルに思えるとき

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2008年11月 2日 (日)

今日のぐり「味助」

世間では連休なんだそうで、どうりであっちもこっちも道路が混んでるわけですよ。
関係ないですが高速道路というところは最低速度という規定があったように思うんですが、渋滞で最低速度以下になっちゃった場合には切符切られないんですかねえ?

今日のぐり「味助」
最近ちょっとカロリー計算がどうとか打算的なところが多かったりするぐり研究会ですが、今日は久々にがっつり高カロリーでいきますよ。

ところで福山界隈にはうまい肉を食わせる店が結構多いんですね。
個人的には「都」「一龍」そしてこの「味助」を御三家扱いしていますが、雰囲気的に(庶民には)敷居が高い「都」や、親父のキャラ的に(失礼)敷居の高い「一龍」あたりと比べると、ここは至ってのんびりと肉を食らうことに専念できるのが高ポイントなところです。
肉を食らうのに専念と言えば聞こえはいいですが、実際のところ他に飯くらいしかないものだからひたすら肉を食い続けるしかないとも言いますけどね(汗)。
何しろ以前にメニューに載っていた焼きそばを頼もうとしたところが「ん?そんなものねえよ?」とあっさり却下された時は唖然とするよりむしろ笑いましたよ(笑)。

それはともかく、神辺の町中も過ぎて井原市寄りにある店は見たところ何ともパッとしないというか、ありきたりの田舎の焼き肉屋っぽくて構えずに済むのは確かですね。
この店の場合メニューを見ながらあれもこれもと頼んでいるとたいてい「あ~お任せでやらせてくれんかね」と言ってくるので、最近はもっぱらお任せで注文することが多いのです。
ちなみにおまかせにしてもあれを食いたい、これを出せとあらかじめ頼んでおけばちゃんと出てくるのですが、良い肉が入っていない日ははっきり出せないと断られます(肉自体がないわけではないようなので、親父さんのこだわりでしょうか)。
この辺りはあらかじめ電話で予約を入れて予算や何が食いたいかなどを伝えてくれればその通りやってくれるようですので参考までに。

ちなみにお任せの内容はその日の肉と客の顔で決めているようで、女子供が多い日は少なめで食いそうな男ばかりなら多めというのが大まかな傾向のようですね。
そんなに腹が空いていない時に野郎ばっかで押しかけると時に「こんなに食えねえ!」ってくらいに出てくることもありますので、小食であるとか言う場合もあらかじめ伝えておいた方がよろしいかと。
まあそんなこんなでこの日もお任せ野郎ばっかりコースで頼んだのですが、タンだのホルモンだのヒレだのロースだのもう予想以上にたくさん出るわ出るわ…最近どうも目をつけられてんのか?と思うことなきにしもあらずなのでありました。

巡り合わせかこのところ結構無いと言われることが多かったりする牛タンがこの日はちゃんと出てきましたが、この普通よりずっと厚めに切った牛の舌はさっと焼いてレモンでいただくとなかなかよろしい。
一部メンバーから希望があって追加で(おい!)刺身なども頼んだのですが、ここの牛刺しは生肉が苦手な者にもあっさりさっぱりと美味しくいただけます。
「美味しんぼ」原作者のカリーこと雁屋哲のお陰で?ひところ「脂肪の融点が高い牛肉では、サシの多い肉は刺身に向かない」てな説が蔓延していた時期もあったようですが、まともな肉の脂はちゃんと体温で溶けますしね(トロより融点高いのは確かですけどね)。
初めて見た者はそろって「まるでステーキみたい!」なんて言うくらいの分厚い肉をじっくり焼いていくと良い塩梅で脂がしたたってきますから、こいつをタレよりも塩胡椒であっさりやっつけちゃうのが自分の好み。
良い肉には飯ももちろん合うんですが、おすすめはちょっと腹具合を残しておいてワサビ茶漬けでさらっと口に残った脂を流してしめるってパターンですか。

最近は韓国式の焼き肉屋なんかで色々と肉以外のメニューも揃っていたりするのはあれはあれで楽しくていいんですが、たまにはこういう塩梅でひたすら肉だけ腹一杯食うというのも不健康でよろしいものです。
とにかく他の何をおいてもかっつり肉を食わせろという根っからの肉好きには文句なくおすすめ出来る店ですが、ご来店の際にはくれぐれもしっかりハラをすかせておくのがよろしいようで。
さ~て、超過剰な摂取カロリー分をどうやって消費しましょうかね…

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2008年11月 1日 (土)

明かされる産科医不足の実態

先日の「東京妊婦たらい回し事件」を受けた総括が進んできているようですが、マスコミ各社も今回ばかりは専らお得意のバッシングより医師不足といった面へフォーカスを当てている様子です(遅いっつうの)。
足りない足りないと言いつつどれくらい足りなかったのか定量的データがなかった産科医不足の実態について、産科学会が今さらながらに初の調査をしたというニュースが新聞紙面等を賑わせていますね。
まずは記事を紹介しましょう。

産科医、月300時間の拘束 過酷勤務明らか、初の実態調査

 全国の一般病院や大学病院に勤める産婦人科医が、診療や待機などで拘束されている時間は月平均で300時間を超え、中には500時間以上の医師もいることが、日本産科婦人科学会による初の勤務実態調査の中間集計で31日分かった。

 単純に1カ月30日として割ると、300時間の場合は休日なしで毎日10時間、最長の例では同16時間拘束される計算になる。

 学会は「過酷な勤務の一端が数値で示された」とし、厚生労働省に報告。詳しい内容を11月1日に都内で開く公開市民フォーラムで発表する。

 集計は一般病院の221人、大学病院の76人の勤務医からの回答を基にまとめた。一般病院のうち、当直勤務がある一般病院の医師は月平均4・2回の当直をこなし、病院にいる時間は月平均301時間だった。

当直がない一般病院では、実際に病院にいる時間は平均259時間だったが、お産があると必ず呼び出される「病院外での待機時間」も含めると、拘束時間は平均350時間に上った。

 一方、大学病院の勤務医は、大多数が一般病院でのアルバイトもこなすため拘束時間は平均341時間と長く、当直は月平均5・8回。最長で505時間だった。

拘束時間が月300時間超と言うと、単純計算で週80時間くらいでしょうか。
留意すべきなのは別段産科が特殊な環境と言うわけでも何でもなく、内科だろうが外科だろうが救急や脳外科や小児科だろうが、こういうレベルの労働環境はごく当たり前になってきていることです。
「それくらいなら俺の方がよほど(r」なんて言いたくなったそこのあなた!いずれにしてもあなたも産科医も労基法無視の職場環境こそが問題なのですから、不毛な奴隷自慢はよしましょう。

さて、今回のデータの取り方がどのくらい実態を把握しているかは判りませんが、申告された数字より実働時間が短いということはまずあり得なさそうですから、労働時間は少なくともこれ以上ということは確定出来るかと思いますね。
とりあえず今後の議論のたたき台として数字が出たことはいいことなんじゃないでしょうか。

こういうデータが出てしまったことによって、労働者の管理監督もしているはずの厚労省がどういう態度に出るかということが一番興味のあるところですね。
先日は桝添厚相が「現場の医師は声を上げろ」とありがたくもおっしゃってくださったからでしょうか、早速思う存分に声をあげているようです。
当然ああまで言ったのですから厚労省としても何らかの実効性ある対策を打ち出してくれるものと期待しておきますが、さてどうなりますことやら…

産科医の過酷な労働環境を厚労相に訴え―産科婦人科学会

 日本産科婦人科学会の吉村泰理事長らと舛添要一厚生労働相は、今回同学会から提出された緊急提言について、15分程度の懇談を行った。
(略)
岡井崇理事「今回の墨東病院の件は、患者さんの受け入れ先を探すことに時間がかかったことが本質的な問題。墨東病院の当直医師が人手不足だったことが端緒となった。東京都は規模が大きいから救急医療機関が分散して置かれており、総合周産期(母子医療センター)は9つだ。9つの病院で空いている所を探すのに時間がかかることはしばしばあるが、普通の周産期救急では、どんなに時間がかかっても最後には何らかの対応ができている。ただ、今回はかなり特殊なケース。おそらく脳の血管の病気があったので突然出血したということだから、普通の救急では珍しいケース。現在は妊産婦死亡、母体死亡が著しく減っている。昔はこういう症例はほんの一握りで、(妊産婦死亡)全体の中の比率が少なかったが、ほかのケースが助かるようになってきているので、比率として増えてきた。そういうものへの対応を今以上に強化しないといけないと、わたしたちは感じた。周産期救急体制に、母体疾患のあるようなケースを重視するなら、一般救急との連携を今以上に良くするためにどうするかだ。
 根本には医師不足。救急施設も適性に配置されていない。東京でも施設数が多い地域と手薄な地域がある。施設の規模も小さい。365日24 時間体制にしようとすると、いつもベッドを空けておく必要があるし、医師も余裕がないといけない。救急患者を診ていて、次も受け入れてというのは無理。例えば、産科の当直が2人で、帝王切開をし、難しいケースも対応していてというのは無理。NICUも分散しており、空いているベッドを探すだけで大変。(救急医療機関の)規模が大きければ、いつもどこかのベッドが空いていて、人も何とかなるのが理想の姿。
 病院を大きくするなど、規模を適正にするのはすぐにはできないだろうし、これまでは行政が強制的権限を持たず、病院のやり方に任せてきた。だが、こういう事件を受けて救急医療を考えるなら、行政もその辺に権限を持つようなシステムで適正配置し、規模も大きくするなどやっていかないと、都立病院の人手不足を解決しても、他で同様のことがいつ起こるか分からない。長期ビジョンでやっていく政策を打ち出していただきたい」
(略)
海野信也・「産婦人科医療提供体制検討委員会」委員長「学会で調査している、産婦人科勤務医の在院時間調査がある。大学病院を除く一般病院全体で、月間在院時間が平均290時間、時間外の月間在院時間が115時間で、若い年代の医師の在院時間が長い。大学病院医師は病院の応援で当直に行くので、そういう非常勤施設での在院時間を含めると、全体としては月平均で 340時間。これが産婦人科医の過酷な勤務実態を表した一つの数字。大学病院は週85時間。この調査の目的は、できるだけ(労働環境を)改善していくための基礎データとしてのもので、たまたま出たので持ってきた。効率化を考えていなければ」

澤倫太郎副幹事長「東京に在籍する医師は多いが、休日や夜間には、千葉、静岡、神奈川、群馬、栃木などにも行って、医療圏を形成している。プリフェクチャー単位じゃない。そういったことも現場の意見。われわれは本当に疲弊している

厚労相「貴重な提言を頂いた。来週にも救急や産科の医師を集め、集中的に意見を伺いたい。すぐに具体的な案は出ないかもしれないが。長期的なあらゆる観点からの処方箋(安心と希望の医療確保ビジョン)を出した。短期的にどうするかの具体策が欲しいと思っているので、検討を始めたい。日本産科婦人科学会の協力も頂ければと思う。ありがとうございました」

こいつら自身がものを判ってなさそうな気配といいますか、突っ込み所が幾らでもあるのは当面スルーするとして、来週にも更にヒアリングをやるそうですから、この機会に参加者の先生方は言うこと言っておいてもらいたいですね。

「今回はかなり特殊なケース」というのは、妊婦の脳内出血という症例としての頻度は確かに多いものではないでしょうが、今回の事例を統括する言葉として適当なものなのかどうか。
むしろ医療リソースが常時限界近くまで酷使されており、それを上回った瞬間に搬送不能という事態が発生してしまう恐れがあるという点ではまさしくこれが常態であるということを認識しておかなければならないと思うのですがね。

いずれにしても今回の事例が「たまたま、運悪く」だったと捉えるのではなく、程度の差こそあれいつ再現されてもおかしくないという現状から対策を考えていかなければならないわけなのですが、問題は根本原因たるリソースの不足。
解決策は受け皿を大きくするのか、利用する側を制限するかしかないという点をまず認めましょうよ。
受け皿はすぐには大きくはならない、一方で妊婦に限らず一定の割合で重症というものは出てくるわけで、それらに対しては常に最善最良の医療を提供するべき というのが社会的コンセンサスであるのなら、そうでない部分をどう削っていくのかという議論もそろそろ必要なのではないですか?
何より現場が崩壊しかかっているこの時に一番やってはいけないことは「みんなの元気をちょっとずつ分けてくれ!」で今以上に現場に頑張らせてしまい、システムのフリーズに追い込んでしまうことなのですが…

【妊婦死亡】墨東病院、可能な限り2人当直体制へ

 東京都内の妊婦が都内8病院で受け入れを断られ、出産後に脳内出血で死亡した問題で、問題が発生した都立墨東病院(墨田区)は、11月の土日祝日の当直体制を、これまでの1人体制から可能な限り、2人体制へと強化するとした。

 都によると同病院の11月の当直が全日2人体制になるのは、土曜日5日間のうち4日間(1、15、22、29日)と、日曜祝日の7日間のうち3日間(2、3、24日)。また、23、30日の日曜日は夜間当直のみ2人体制となる。

 当直が1人体制の日は問題発生時に当直に入っていた研修医は入らず、常勤医師による当直体制をとる。 今回は、同病院内の当直に入る産科医15人の中で、当直回数を増やしながら2人体制を実現。都は「かなり無理をしており、11月中は緊急対応としてやる」と述べ、今後は他の医療機関からの協力を得ながら当直体制の充実を図りたい意向だ。

いよいよこれは死亡フラグが立ったかな…
未来永劫続く救急医療の中において瞬間最大風速的に「かなり無理をして」「11月中は緊急対応としてやる」ことに、都の「ええかっこしい」アピール以外のどんな意味があると言うんでしょうか?
「もう限界!勘弁してくれ!」と悲鳴をあげている現場にさらなる負担を押し付けているようじゃあホントに墨東さんも長くはないかも知れないですね。

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