« 宇宙船「神舟7号」の悲喜劇(続報) | トップページ | みんな貧乏が悪いんやっ! »

2008年10月 6日 (月)

足りぬ足りぬは…が足りぬ

まず始めに、医療過誤原告の会ホームページにこんな素晴らしいイベントの広報が出ていましたので紹介します。

人権講座 「ネット社会と人権侵害-医療被害者の経験すること」

奈良女子大学で、下記の企画がございます。 ご多忙中恐れ入りますが、ご出席いただけましたら幸いです。恐れ入りますが定員の都合がありますので、ご参加のときは、お手数ですが事前にお知らせ下さい。よろしくお願い致します。

人権講座 「ネット社会と人権侵害-医療被害者の経験すること」

 杉野文栄 (杉並割り箸事故事件) 30分
 高崎憲治 (大淀町立病院事件) 20分
 山口研一郎 やまぐちクリニック院長 20分
 質疑応答 20分

 日時 10月10日(金) 16:30-18:00
 場所 奈良女子大学 生活環境学部会議室 約80席

 趣旨
    医療事故被害者は、事件そのもので本人および家族に身体的・精神的・社会的被害が及ぶだけではなく、その後の社会から受けるバッシングによっても大きな被害を受ける傾向がある。この講演会では、1999年7月に杉並区の養護学校行事で綿飴を咥えて転倒し、口蓋内に折れた割り箸が残留してなくなった事件の当事者である杉野さんと、大淀町立病院で出産中に脳出血を起こし搬送先が6時間見つからずにようやく受け入れられた病院で1週間後に亡くなられた女性の義父に当たられる高崎さんから、事件後に、とくにネット上で医師等から受けたバッシングについて語っていただく。
   また、医師の立場から、山口研一郎氏よりネット社会において医療被害者の人権をどう守って いかなければならないかについて語っていただきます。

              奈良女子大学 栗岡幹英

演者の方々のうち前二者は皆さんご存知の通り有名な両事件における患者ご遺族の方、山口氏はこちらのように以前から大淀事件などでコメントを出している方ですが、御高名な功名心先生のシンパということでよろしいようですね。
これで協賛が毎日新聞とかであったらば医療関係者必聴と言うことになるところですが、いずれどなかたが講演内容をレポしてくださることを期待しております。

イベントの紹介はそれくらいとして、こちらも興味深い記事がありましたので紹介しておきます。

医療改革テーマにフォーラム―構想日本

 民間の非営利シンクタンク「構想日本」(加藤秀樹代表)は9月30日、「医療改革」をテーマに東京都内でフォーラムを開いた。6人の医師とNPO関係者らがそれぞれの立場から医療現場の現状と改革の必要性を訴えた。

 山形大医学部の嘉山孝正部長は、外資系コンサルタント企業のマッキンゼー・アンド・カンパニーの就職説明会に「東大医学部の学生が23人も訪れていた」ことも取り上げた。フォーラムにはマッキンゼーに入社した国立大医学部卒の元医師も来場していた。元医師は医学部を卒業して2年間の研修を終えた後、医療現場を離れたという。嘉山部長らに「なぜ医師を辞めてマッキンゼーで働こうと思ったのか」と尋ねられ、元医師は「研修を終えて、医療現場は明らかにおかしいと感じた」と率直な感想を述べた。これに対し、東京医科歯科大大学院の川渕孝一教授が「多くの国税を使って医師になれたのに、良心の呵責(かしゃく)は覚えないのか」と質問。元医師は「(マッキンゼーは)最初から3年だけと決めていたので、来年4月には退職して医療現場に戻る予定だ」とした。

 また、嘉山部長は、臨床現場でろくに仕事もせずに高収入を得ている医師がメディアに頻繁に登場しているとして、「『美人整形外科医』などと持ち上げられて、命に関係ない仕事で金ばかり稼いでいる」と痛烈に批判した。同時に、「楽で高収入を得られる仕事ばかりを評価する」一部メディアの姿勢と、「(それを受け入れる)国民性と価値観」にも疑問を投げ掛けた。

 医療現場の疲弊と医師不足問題も論じられた。北里大医学部の海野信也教授は産婦人科医療の崩壊について説明した。海野教授が産婦人科医約160人の「在院時間」のデータを取ったところ、月平均295時間(週70時間以上)にも上ったという。「分娩できる医療機関は、毎年100以上減っている。分娩施設が減ると、残った施設に分娩が集中し、診療の質は低下。余裕がなくなって産婦人科医から撤退、という悪循環になっている。わたしも同じように週70時間以上働き、月10回の当直をこなしていた。現在、若い医師にも同じことをやらせている。人手が足りないので、そうしないと現場が回らない状況だが、そういった積み重ねが産婦人科医を減らしたのかもしれない」と述べた。
 川渕教授は、「10年前と比べて分娩数は8%減っているが、分娩できる施設は32%減っているというデータを見たり、産婦人科医の2割が70歳以上と聞いたりして驚いた」と話した。
 埼玉県済生会栗橋病院の本田宏副院長は、「医療には限界と一定の割合で不確実性がある。全力を尽くしても、治療の途中でお亡くなりになる方もいる。最近ではそういったケースも医療事故を疑われることもあるし、訴えられる危険性もある」と語った。また、絶対的な医師数の不足により、一人で何役もこなさなければならない状況についても言及。「本来なら専門医がやるべき抗がん剤治療、救急治療、緩和ケアをわたしがやっている。患者は当然のように専門医がやってくれていると思っているが、実態はそうではない」と述べた。
 大阪府立母子保健総合医療センターの森臨太郎企画調査室長は、新生児科で1か月間病院に住み込んで、通常の診療と並行して3時間置きにNICUで新生児の血液検査をした経験を話した。「意識がもうろうとしていた。医師の間ではこの手の話は武勇伝として語られるが、治療を受ける患者側から見たらどうだろうか。そんな状態の医師に診てもらいたいだろうか」と、長時間労働に疑問を投げ掛けた。

 医師不足を一時的に解消する案も幾つか挙がった。川渕教授は、「余っているといわれている歯科医に研修を受けてもらって、麻酔医として活用するのはどうか」と提案。これに対し、嘉山部長は「全身管理は麻酔のプロでなければ難しい。しかし、チーム医療の一員としては戦力になるかもしれない」と述べた。
 嘉山部長は、「医学部生の5年時での国家試験受験」を提案。「4年時に一度臨床をやって、また卒業して2年やるのは時間の無駄。5年で国家試験を受けさせて臨床研修の期間を短縮すれば、それだけで一気に16000人増える」と説明した。
 医師不足を解消する手段として、治療だけでなく予防に焦点を当てた話題も出た。森室長は英国が2003年に始めた「家庭医制度」を紹介。各地域にプライマリーケアを担当する家庭医を配置して、地域住民の健康度がアップすると、医師にインセンティブが付くシステムだという。森室長は「これだけで医療崩壊を防ぐことはできないが、防ぐための一つのパズルにはなり得る」と話した。

登場人物にそうそうたるメンバーが揃っているだけのことはあって、突っ込み所が多すぎてどこから突っ込もうかと迷うような話ではあるのですが(苦笑)。
ちなみに記事中の川渕孝一なる人物は医大教授と言うことになっていますが、元々医学畑出身ではない厚生省官僚上がりです。
彼がどのような経緯で現在のポストに就任しているのかも興味あるところですが、彼の発言には厚労省という組織の感覚が見て取れて面白いなと思いますね。
しかしまあ、今どきこのレベルの認識で医療改革を語ろうとは逆に恐れ入りますね。

ちなみに某便所の落書きで使用されているコピペを紹介しておきます。

★Q 医者を1人育てるのに、数千万の税金が注ぎ込まれているというのは本当ですか?

☆A 医学生にかけられる純粋な教育費用の一例として、医系単科大学である浜松医大を見てみましょう。

財務諸表 http://www.hama-med.ac.jp/university/report_open/PDF/zaimushoryo.pdf
事業報告書 http://www.hama-med.ac.jp/university/report_open/PDF/jigyouhoukokusho.pdf

これらのデータによれば、浜松医大は教育経費は2億5391万円、学生数は1027名(うち医学生595名)。
すなわち、全学生平均で年間24万7千円。6年間では256万円にしかなりません。
仮に全教育経費が595名に集中したとしても、年間42万6千円にしかならないことが分かります。
言うまでもなく、国立大医学生は年間50万以上の学費を支払っており、
医者1人育てるのに数千万かかるというのは単なる「都市伝説」でしかないことが分かります。

参考までに、一橋大・東工大・東京藝大の教育経費と学生数を見てみましょう。

http://www.hit-u.ac.jp/guide/information/pdf/H16zaimu.pdf
http://www.hit-u.ac.jp/guide/pdf/06-30-1.pdf
http://www.hit-u.ac.jp/guide/pdf/06-30-2.pdf
http://www.titech.ac.jp/about-titech/j/fs.pdf
http://www.titech.ac.jp/about-titech/j/gakuseigaiyou-j.html
http://www.geidai.ac.jp/guide/public/publicinfo_pdf/20050915_01.pdf
http://www.geidai.ac.jp/guide/public/publicinfo_pdf/20050915_03.pdf

同様に、年間教育経費はそれぞれ、10万2千円、38万8千円、26万6千円になります。
これにより教育経費は、 理工系>芸術系、医学系>文型 であることが分かります。
いずれにせよ「私大は論外、国立大の学費でさえ高すぎる」というのが現実でしょう。

さて、世の中には「楽で高収入」の仕事もあれば、「きつくて低収入」の仕事もあります。
人間どちらか好きな方を選べと言われれば、他の条件が同じであればまず前者を優先的に選ぶ人間が多く、そちらが一杯になってきて初めて後者にも人が流れてくるというのが当たり前の現象ではないでしょうか。

もちろん「資格が取れるから」「社会に貢献できるから」等々色々な理由付けによって厳しい環境でも進んで献身的に業務をこなすという人間もいるでしょうが、決して多数派ではないでしょうね。
医師は長らく普通でない選択をする人びとが多く存在してきた得意な職業ですが(苦笑)、さすがにこの情報化社会において労働者として当たり前の選択を自ら回避するほど浮世離れした人びとは多くはなくなってきた、少なくとも国民が求める医師数を充足するほどにはと言うだけのことなのです。

しかしそうした当然の選択をする人間が多くなってきたことは、果たして「痛烈に批判」されるようなことなのでしょうか?
特別な聖人君子や奴隷根性の人間でなければ務まらないような場所ではなく、当たり前の良識と誠実さ、そして社会一般と共通する価値観をもった「ごく普通の人間」が携われる職場環境であってこそ、社会に求められる規模を持ち当たり前の社会常識が通用する医療現場が維持し得るのではないでしょうか?
とすれば批判されるべきは当然の選択を行った現場の臨床医ではなく、彼らにとって魅力的な職場環境を提案できなかったばかりに現場の離反を招いた人びとであったということが言えるのではないでしょうか?
例えば医学部長であるとか医学部教授であるとか、あるいは厚労省官僚といった人びとこそが。

彼らのような人びとがどこで何を言おうが第一線の臨床医の耳に届くことはあっても心にまで届くことはまずないでしょうが、最後に彼らに送るべき言葉として、有名な次のエピソードを紹介して終わりにしたいと思います。
国民の皆さんが医師に求める資質とは佐藤師団長のそれでしょうか、それとも牟田口軍司令官のそれでしょうか?

昭和19年3月、牟田口廉也中将率いる第十五軍(第15、31、33師団)を中心とする約10万の日本軍が、インパール平原に拠る英軍を駆逐せんとした「インパール作戦」が実行に移された。軍司令官の功名心とインドの革命家チャンドラ・ボースへの政治的配慮により作戦は発動された。

日本軍は補給計画がなく、牛や山羊といった輸送用の家畜を食料に転用する計画であったが(ジンギスカン作戦)、頼みの家畜の半数がチンドウィン川渡河時に流されて水死、たちまち破綻した。物資が欠乏した各師団は相次いで補給を求めたが、牟田口の第15軍司令部は「これから送るから進撃せよ」「糧は敵に求めよ」と空電文を返すばかりであった
第31師団はイギリス軍の不意を突く事に成功し、インパールの北の要衝コヒマを占領していたが、一粒の米、一発の弾薬も届かない状況を危惧した第31師団長・佐藤幸徳陸軍中将は「作戦継続困難」と判断して度々撤退を進言する。
しかし、牟田口はこれを拒絶し作戦継続を強要したため双方の対立は次第に激化し、佐藤は、
「善戦敢闘六十日におよび人間に許されたる最大の忍耐を経てしかも刀折れ矢尽きたり。いずれの日にか再び来たって英霊に託びん。これを見て泣かざるものは人にあらず」
と返電し6月1日に兵力を補給集積地とされたウクルルまで退却させた。その後7月3日作戦中止命令が出され、作戦は失敗に終わる。
戦死者3万。傷病兵4万、チンドウィン河の右岸に集結できた第十五軍の3個師団の残存兵力は作戦前の三分の一であった。そしてその退却路は「白骨街道」といわれた。

7月10日、司令官であった牟田口は自らが建立させた遥拝所に幹部を集めて次のように訓示した。
「諸君、佐藤烈兵団長は、軍命に背きコヒマ方面の戦線を放棄した。食う物がないから戦争は出来んと言って勝手に退りよった。これが皇軍か。皇軍は食う物がなくても戦いをしなければならないのだ。兵器がない、やれ弾丸がない、食う物がないなどは戦いを放棄する理由にならぬ。弾丸がなかったら銃剣があるじゃないか。銃剣がなくなれば、腕でいくんじゃ。腕もなくなったら足で蹴れ。足もやられたら口で噛みついて行け。日本男子には大和魂があるということを忘れちゃいかん。日本は神州である。神々が守って下さる…
以下、訓示は1時間以上も続いたため、栄養失調で立っていることが出来ない将校たちは次々と倒れた。

|

« 宇宙船「神舟7号」の悲喜劇(続報) | トップページ | みんな貧乏が悪いんやっ! »

心と体」カテゴリの記事

コメント

最近まで超過勤務月100時間の世界で働いていて、体を壊しましたので、早期退職しました。患者さんの状態が悪くて、時に居残ったり、泊まり込んだりはしょうがないですが、過労死の定義に当てはまる程働かせておいて、超過勤務は月30時間程度で足切りではやる気も起きません。(2重の違法)
インパール作戦は高木俊朗氏の本すべてを読みました。このメンタリティーは現在も日本の官僚機構に色濃く残っていると感じるこのごろです。

投稿: 666AKS | 2008年10月 6日 (月) 18時55分

コメントありがとうございます。
抜け出してみて初めて判る洗脳の意味と言うところでしょうか(苦笑)。
「自分が患者の立場なら、徹夜明けの医者に手術してもらいたいか?」ということを全ての医療関係者はもう一度よく考えてみるべきだと思いますね。

投稿: 管理人nobu | 2008年10月 7日 (火) 12時36分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/519753/42704362

この記事へのトラックバック一覧です: 足りぬ足りぬは…が足りぬ:

« 宇宙船「神舟7号」の悲喜劇(続報) | トップページ | みんな貧乏が悪いんやっ! »