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2008年10月21日 (火)

揺らぐ医療制度の根幹 いっそもっと揺らすべき?

かつては国保などに比べてずいぶんとお得感があった組合健保ですが、最近はずいぶんと様変わりしてきているようですね。
まずはニュースから紹介します。

相次ぐ健保組合の解散 サービス消え募る不安

 企業などが独自運営する健康保険組合の解散が相次いでいる。陸運の西濃運輸グループ、持ち帰りすしの京樽など、本年度すでに十三組合が解散。今春始まった高齢者医療への拠出金増加が主な原因だ。解散で付加金サービスなどがなくなり、加入者に不安が広がっている。  (山本哲正)
(略)
 健保組合は、一社単独なら被保険者七百人以上、同業複数社なら三千人以上を要件に、国の認可を受けて設立でき、医療保険給付などを代行する。加入者は、法定給付とは別に高額療養の付加金が受けられるほか、定期健康診断や人間ドックの補助や出産育児付加金など独自のサービスもある。
(略)
 健保組合の解散が増えているのは、今春から高齢者医療への拠出金が増加したからだ。健康保険組合連合会(東京都港区)の集計では、本年度の全保険料収入から見た高齢者医療への支出額は46・5%で、前年度の39・4%から大幅に増えた。この結果、赤字組合は九割に達する見込みだ。さらに社会保障費の削減を進める国は、本年度予算で旧政管健保への国庫補助を減らし、健保組合に約七百五十億円を肩代わりさせる法案を国会に提出した。法案が成立すれば、健保組合の負担はさらに増し、解散がさらに増加する可能性もある。

 解散した健保組合の加入者は、協会けんぽへ移る。「公費が投入されている協会けんぽの加入者が増えていけば、国の財政を圧迫する」と懸念する声も出る。
 健保組合連合会は、来年度の国予算編成に注文をつける。「これ以上の負担は健保組合制度の崩壊につながる。消費税やたばこ税の引き上げなどの税制改革で、社会保障の安定的財源の確保に努めるべきだ」と主張する。

ご記憶の方も多いと思いますが、この話題の発端になったのが今夏の西濃運輸健保組合解散のニュースでした。
夏の段階では「きわめて異例」で「制度崩壊の予兆」にとどまっていたのが、わずか数ヶ月でこうなるわけですから事態の進行は早いですね。
ま、これも政府の主導するところの国策のなせる業ですから仕方がありません。

西濃運輸、負担増で組合解散 「健保」制度崩壊の予兆

   5万7000人が加入する大型の健康保険組合(健保組合)が解散していたことがわかった。倒産以外で健保組合が解散するのはきわめて異例だ。「高齢者医療改革で負担が増え、保険料率の引き上げが避けられないため」というのがその理由だ。健保組合に加入していた人は「政府管掌健康保険(政管健保)」に移ったが、そうなると国庫負担が増えてしまう。「高齢者の医療費を健保組合に肩代わりさせ、財政再建を図る」という制度そのものの狙いが揺らぎ始めた形だ。

自前で組合を持つ意味がなくなった!!

   2008年8月1日に解散していたことがわかったのは、陸運大手の西濃運輸(岐阜県大垣市)の関連企業58社のうち、31社の従業員と扶養家族約5万7000人が加入していた「西濃運輸健保組合」。西濃運輸の広報課の説明によると、 07年度には、老人保険制度と退職者医療制度への負担金が35億8700万円だったのが、08年度は前年度比約62%増の58億円にまで増加。これに耐えられなくなったのが解散の原因だという。

   具体的には、08年4月に高齢者医療制度が改革されたのにともなって、65-75歳の「前期高齢者納付金」25億2500万円と、75歳以上の「後期高齢者支援金」21億1000万円の負担を、新たに強いられることになった。この組合の保険料率は、月収の8.1%だったが、この負担増をまかなうためには、これを10%以上に引き上げる必要が出てきた。ところが、「政管健保」の保険料率は、これよりも低い8.2%だ。そのため、
    「自前で組合を持って、10%の保険料を徴収する意味がなくなった」
として、解散を決めた、というのだ。

   この組合に加入していた組合員が移行した「政管健保」は、社会保険庁が運営する医療保険で、中小企業の従業員と扶養家族、約3600万人が加入している。全国に約1500ある健保組合(約3000万人が加入)への国庫負担は50億円なのに対して、政管健保への国庫負担は8250億円。今回の西濃運輸のようなケースが増えれば増えるほど、国庫負担が増えていく、という構図だ。

08年度は、健保の約9割が赤字

   08年度は、健保の約9割が赤字に陥る見通しだ。現段階での健保平均の保険料率は7.39%で、これが負担増などで政管健保の8.2%に近づくについて、「解散リスク」が高まる、ということになる。西濃運輸の健保組合は、もともと保険料率が8.1%と高めだったことから、解散へのハードルが低かった、という面はありそうだ。
(略)
   「財政再建のために、これまでは公費負担だった高齢者の医療費を健保組合に肩代わりしてもらう」というのが新制度の枠組みだったはずだが、仮に「解散ラッシュ」が起これば、制度自体の意義が問われることにもなりかねない情勢だ。

そもそも大元をたどれば例の高齢者医療制度によって健保組合の負担が増したという背景事情があるわけですが、国は健保組合に金を出させることで医療費公費支出の削減を狙っていたのですから肝心の健保組合が潰れる一方では本末転倒な事態でしょう。
医療において近年相次ぐ診療報酬改訂などでもままみられる事ですが、どうも近ごろ政府がこういう方向に持っていこうという意図とは全然異なった方向に事態が流れていくという事例がありすぎるように思えるのは気のせいでしょうか。
特に看護の7:1新基準など明らかにどういうことになるか容易に想像できることをわざわざ強行して予想通りの大混乱を招いたあげく、さっさと空文化するという頭の悪さ、場当たり行政はいい加減にしてもらいたいものです。
そのたびに少なからぬ人手とお金が浪費されているわけですから、当事者はちゃんと責任感と危機感をもってやってもらわないと困るわけです(そして公務員体質のなせるところ、それが最も難しいことでもあるわけです)。

さて、場当たり行政と言えば、上記諸問題の元凶とも言うべき後期高齢者医療制度も早速見直すと桝添大臣は言っていますが、どうなのでしょう?
高齢者医療の現場におけるこの制度の評判というものは実のところ、決して悪くありません。
ことある毎にマスコミが叩く年金からの天引きについても、高齢者に払い込み手続きなんて面倒くさいことをやらせるよりよほどシンプルで分かり易い話ですし。

もちろん政府厚労省の本来の狙いであったと想像されるところの「こんなに金がかかるんなら年寄りの医療なんて程ほどのところでいいじゃん」という国民世論の喚起であるとか、医療費公費支出の削減であるとかの是非と実効性に関してはまた別問題かも知れません。
しかし財布に優しすぎる国民皆保険制度下の高齢者医療がそうした金銭的問題からも離れた部分で、何かしら倫理的にも人道的にも歪んでしまっているのではないかという危惧は医療現場に携わる人間の多かれ少なかれが共有するものであったわけです。

「私はお爺ちゃんを自然に看取りたいと思ってるけど、でも後で人から何を言われるか判らないから出来るだけのことをしてください」なんてセリフがどれだけ現場のモチベーションを低下させてきたか。
しかも誰からも感謝される訳でもなくマスコミからはスパゲッティ症候群などとバッシングされ、国からは医療費の無駄遣い扱いをされ保険査定で切られてきた経緯を考えれば、そろそろ高齢者医療も世界標準並みを目指していくべき時期ではあるんじゃないでしょうか。

日本では北欧と言うと高福祉の夢のような国とされていて、マスコミなどでも税金は高いけれど老後に何の心配もない、ほらこんな立派な老人ホームでお年寄りが生き生きしてます!なんて盛んにヨイショされていますが、その実態が「自力で食事をとれなくなれば放置されてそのまま餓死させられる国」であるということは誰も言わない。
そういう国民コンセンサスのもとでやられている根本的な差を無視して「日本の高齢者はなんと人権無視のひどい扱いをされているんだ!」なんて言ったところで、知っている人間からすれば何を言ってんのかって話なんですよね。

まあ北欧式が日本でそのまま同じシステムでやれるかどうかは別として、もしかしたら半世紀続いた国民皆保険制度下でいつの間にか歪められてしまった日本人の死生観を修正する好機ともなり得たかも知れない制度改革が役所のゴタゴタ絡みで妙なことになってしまうというのであれば、長い目で見て良かったのか悪かったのかですよね。
桝添大臣も後期高齢者医療制度は根本的に見直すだのと言っていますが(ついでに官僚から思いっきり否定されちゃいましたが)、どうも持病の口先病が再発しちゃったのか、あるいは選挙を睨んで妙にさじ加減をしているのか、妙に迷走してそうな気配なんですよね。
口当たりがマイルドになっていくほどに国民の意識改革につながる刺激としては弱くなっていく道理ですが、さて結局のところ増税の根拠につなげて終わりってなことになるんでしょうか?

国保と後期医療を一体化、運営は都道府県単位 厚労相案

 舛添厚生労働相は7日、後期高齢者医療制度(後期医療)の見直し私案を公表した。国民健康保険(国保)を都道府県単位に再編したうえで後期医療と一体的に運営する。75歳での線引きを改め、すべての年齢層が加入する新制度とすることで、「切り離された」という高齢者の不満解消を狙った。財源については、「税の比率を増やさざるを得ないので、福祉目的税構想につながるのかなと考えている」と述べた
 厚労相が設置した「高齢者医療制度に関する検討会」(座長・塩川正十郎元財務相)で明らかにした。

 私案では、都道府県が新制度の運営主体となる。75歳以上でも企業で働いている人は、後期医療への加入を強制せず、被用者保険に引き続き加入できるように改める。
 再編後の医療費財源について、舛添氏は福祉目的税に触れたが、具体的な負担割合は「今後解決すべき課題」として言及を避けた。現在の後期医療は「保険料1割・公費5割・現役世代の支援金4割」と負担割合が明確だが、再編により大部分の高齢者を抱えることになる国保に対し、被用者保険からどれだけ「支援金」が必要になるかは未知数だ。
 また、後期医療などの保険運営の引き受けに抵抗してきた都道府県に対する条件整備も今後の課題とされた。

 後期医療の保険料について、年金天引きの見直しを打ち出している舛添厚労相は、介護保険料の支払い方法についても、年金からの天引きか口座振替かの選択制にすることを「今後検討する」と述べた。7日の衆院予算委員会での答弁。介護保険料は現在、年金額が年18万円以上の場合、天引きされている。

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