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2008年10月11日 (土)

医療機関を悩ます未収金問題

医療機関の半数が赤字という時代、あちこちでこの話題があがっていますが、ようやく回収に本格的に乗り出すという動きが出てきています。

回収を民間委託 公立病院悩ます治療費滞納

 患者の治療費滞納が社会問題となる中、回収業務を民間委託する動きが、県内の公立病院で出始めている。横須賀市は先月、民間のノウハウを生かして徴収率の大幅アップを図ろうと、公立病院では初めて債権回収業者などに委託。県も今月中、厚木市は12月にも実施に移す。未収金は、赤字経営に悩む公立病院にとって頭の痛い問題で、追随する動きが広がりそうだ。

 県病院事業庁などによると、県立がんセンターなど7病院(2003年度に厚木市に移管した旧厚木病院も含む)の未収金総額は2007年度末時点で約3億9700万円(1万2080件)に上る。1年以上過ぎても支払われていない06年度以前分を見ると、約2億2500万円(6876件)と半分以上を占める。

 未収金は、サラリーマン家庭の負担割合が3割に引き上げられた03年以降、全国的に急増。特に救急医療を担う病院で「持ち合わせがない」などと未払いが目立ち、公立病院の経営を圧迫する要因になっている。

 担当者が電話や文書、自宅訪問で支払いを督促しているが、生活困窮者が支払いできないだけでなく、「求めていた治療ではないから、払いたくない」「治療費が高すぎる」などという理由で拒否されるケースが目立ってきているという。

 同庁では、このままでは赤字が拡大、一部診療科の廃止など県民に悪影響を及ぼすと危機感を募らせており、昨年度から回収対策の強化に乗り出していた。

 こうした状況は全国の病院でも同様で、今年3月末、総務省が「回収には民間委託が有効」との見解を示すと民間委託の動きが拡大、新潟など8府県が民間委託を導入しているという。

 同庁では9月下旬、公募に応じた「ニッテレ債権回収会社」(東京都)を委託先に決定。対象は原則1年以上が過ぎた未収金で、指定管理者が管理・運営する汐見台病院を除いた6病院の計約3800万円。故意に支払いを逃れる悪質なケースを主に想定しており、生活困窮者や分割納付者などの未収金は除くという。

 一方、横須賀市立市民病院は、債権回収会社と法律事務所との2団体と契約した。委託対象は県と同様、原則1年以上過ぎた未収金で、全体約7500万円の約6割が該当する。未収金が過去5年間で約5000万円(1160件)にふくらんだ厚木市立病院も近く、委託業者を公募する。

 同庁は「公的な病院として支払わないからといって診療を拒否するわけにはいかないが、病院職員による督促はどうしても甘く見られがち。専門のノウハウを持つ業者なら、未納者は支払い請求から逃れにくくなるはず」と期待している。

平成19年に総務省から自治体病院の未収金回収に関する通達が出ていますが、これによると民間業者に委託できる回収業務として以下のようなものが挙げられています。

・滞納者に対する電話や文書による自主的納付の呼びかけ業務
・滞納者宅への訪問による自主的納付の呼びかけ業務及び収納業務
・居所不明者に関わる住所等の調査業務
・脳入通知書、督促状等の印刷、作成、封入等の補助業務
・強制処分に関する補助的な業務 など

こういうものを踏まえた上で「民間委託も含めて適切な措置が講じられるよう、周知に努めてまいりたい」とのことですが、最近になってようやく民間委託ということが増えてきているようですね。
ちなみに厚労省も昨年から「医療機関の未収金問題に関する検討会」を開いてこの未収金問題を検討していますが、この報告書が今年の7月に出されました。
この資料について見てみるとなかなか面白い国民意識と言うのも垣間見えてくる気がして興味深いですね。

未収金問題、国民の3分の2が「知っている」 日医が調査結果報告 厚労省検討会(2007.6.1,23:50)

 日本医師会が行なった調査の結果、医療機関の未収金問題について一般国民も患者も3分の2が「知っている」ことが明らかにされました。厚生労働省が設置した「医療機関の未収金問題に関する検討会」が6月1日、第1回目を開催、その中で日本医師会常任理事の今村氏が報告しました。
 「強制的に取り立てるべき」は4分の1程度で、6割弱は「払えない人には一定の配慮をし、払える人からは強制的に取り立てるべき」としています。「強制的に取り立てるべきでない」は16から19%でした。

 調査は今年3月から5月にかけて、国民は無作為抽出による4000人を対象に個別面接調査、患者は医師会員の医療機関の協力を得て窓口で協力依頼した3250人を対象としたもので、回答率は国民65.6%、患者89.0%です。

 未収金問題は、患者負担の増大に伴い増えているとされ、調査ではまず患者負担の水準について質問しています。現状について、「高くなりすぎ」が国民63%、患者45%、「ほぼ妥当」は国民37%、患者55%で、「もっと高くすべき」は国民・患者とも1%未満でした。

現状では医療機関の負担となっている「未払い治療費」を誰が負担すべきかでは、医療機関は国民14%、患者6%と少なく、保険者(地方自治体、健保組合)が国民37%、患者45%、国が国民・患者とも49%となりました。

未収金は医療機関が負担すべきという意見が14%あると言うのは結構笑えるのですが、このあたり制度の上でどうなっているのか気になるところです。
そもそも法的に見れば患者負担分を医療機関での窓口徴収とすることになった昭和33年の国保法改正の時点で、

被保険者(患者)が一部負担金を支払わない場合には、保健医療機関等が善良なる管理者と同一の注意をもって、支払いの受領に努めたが、なおその支払いがない場合に、保険者が被保険者から徴収し保健医療機関等へ交付する

という保険者徴収制度が定められているのですね。
債権債務関係で見ると患者と医療機関との間に存在するのか、保険者と医療機関の間に存在すると見るのか未だ異論があるようですが、とりあえず患者がどうしても金を払ってくれないという場合には保険者に請求する、少なくとも保険者から患者へ請求させるというのが正道と言えるのではないでしょうか。
検討会報告書でも保険者徴収はまだまだ件数が少ないとされていますが、医療機関側もこうした制度をもっと活用すべきだと思いますね。

ちなみに「滞納は診療を拒む正当な事由に相当するか」の問題については厚労省から「社会通念に基づき、個々のケースに即して、診療の必要性を基本に判断されるべきもの」で、不払いを理由に直ちに診療を拒むことが出来ないと言う見解が示されています。
基本的には拒むべきではないが、拒んではならないわけでもないといういつもの玉虫色の見解と言うべきものですが、応召義務が存在し、一定確率で医療費が払えないという患者も必ず存在する以上、払えない患者が発生した場合にどうするのかというのは現実的問題であるわけです。
零細な末端医療機関では悪質常習者は公立病院送りなどといった自主的対応?をしているのやも知れませんが、今や私立医療機関には未払い患者を抱え込めるほど余裕のあるところはそうないんじゃないでしょうか。
各県にER型救急施設を整備するなどと言う話と平行して、こうした患者の受け入れ体制についても早急に話をまとめておかなければならないでしょうね。

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