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2008年10月16日 (木)

こんにゃくゼリーとゼロリスク症候群

第二戦目、ホームで勝ち点1のドロー…
まあ皆さん好き放題危機感煽ってくれてますが、今の時代楽に勝てる相手ってのはそうそういないってことですね。
どんな田舎に行っても世界トップレベルのプレイを目に出来る時代なんですから、「こんなすげえの見たことねえ!」なんてありえないわけです。
それだけ最低線のレベルも底上げされてくるのは当然のことなんで、内容自体は決して悪くなかったと思いますし、まだまだ焦るような時期じゃないですよ。

それはともかく、中国産食材など食の安全問題が巷間賑わせて久しい今日この頃ですが、こんにゃくゼリーで子供が死んだということで一部で大騒ぎになっているようです。
「こんにゃくゼリー自体を規制すべきだ」なんて声も飛び出しているそうですが、当然と言いますか予想通り議論は真っ二つのようで。

形は国が決める? こんにゃくゼリー 自民、議員立法へ 消費者行政迷走

 こんにゃく入りゼリーを食べた子供が窒息死した事件を受けて、自民党内で10日、ゼリーの形状などを規制する新法制定を検討する動きが出てきた。消費者庁設立のきっかけともなったゼリー被害の防止に焦点を絞った新法だが、窒息による死亡事故が多いモチの規制との兼ね合いなど課題は山積する。新法制定の背景には、政府が消費者の安全をはかるため国会に提出した「消費者安全法案」でも根本的解決にはならないとされる事情があり、ゼリー規制の議論は政府・与党肝いりの消費者庁構想にも影を落としそうだ。(酒井充)

 「子供が見て、食べたら死ぬと分かるようにしないと。それぐらいはできるでしょ!」

 こんにゃく入りゼリーの規制を議論した10日の自民党消費者問題調査会(会長・岸田文雄前消費者行政担当相)は、河野太郎氏ら出席議員らが怒声を発するなど、さながらゼリー糾弾の場となった。ほかにも「外国並みに規制する法律をつくるべきだ」といった意見が続出し、議員立法による新法の国会提出を目指す方針が確認された。

 政権与党の議員がゼリー規制に熱くなるのには事情があった。9月に兵庫県の1歳の男児がこんにゃく入りゼリーを食べ、のどに詰まらせて死亡する事件があり、平成7年以降で17人目の犠牲者となったためだ。
 国外では、EU(欧州連合)が独特の硬度を生み出すこんにゃく成分を添加物とし、ゼリーへの使用を禁止しているのに対し、日本国内では食品衛生法の対象は食中毒などに限られる。
 このため、今回のような死亡事故を防止する取り組みが「生産者重視から消費者の安全を重視する行政への転換の象徴」(中堅)と位置づけられている。
 そのためか、この日の会合では厚生労働省側が「製造中止や回収させる法制度はなく、強制力のない指導が限界」と説明しても、議員の怒号は消えなかった。

 だが、新法でゼリーの形状などを規制するには「法の下の平等」という点で大きな壁が立ちはだかる。こんにゃく入りゼリーはだめで、モチは規制しなくてもいいのか-という問題だ。
 実際、10日の調査会でも谷公一衆院議員が「モチは昔から死亡事故が多い」と指摘した。一方、野田聖子消費者行政担当相は10日の会見で「モチはのどに詰まるものだという常識を多くの人が共有している」と強調したが、「ゼリーだけを規制し、モチやアメを規制しない合理的な根拠は見つかりにくい」(厚労省)というのが実態だ。
 厚労省の調査では、平成18年中に食品を原因とする窒息で救命救急センターなどに搬送された事例は、把握できた計803例のうち、モチの168例が最多で、「カップ入りゼリー」は11例だった。
 政府が今国会に提出した消費者安全法案には首相の権限で商品販売などを最大6カ月禁止できる項目が盛り込まれた。だが、法案審議は民主党の難色でめどは立っていない。どの商品がどれだけ危険かという判断も容易でなく、ゼリー規制新法も、「なぜゼリーだけかと野党に突っ込まれても答えようがない」(政府関係者)のが現状だ。

しかし規制を主張する一派が多数派かどうかはともかく、少なくとも声の大きい側であることは確かなようですね(苦笑)。
マスコミがヒステリックに騒いでる時には用心すべしとは過去数多の教訓から得られた経験則ではあるのですが、実際のところ食品による窒息事故の件数はどうなのでしょうか?
厚労省の調査(2006年1月1日からの1年間、消防本部および救命救急センターを対象とした事故事例の調査)を良い具合にまとめてくださった方がいらっしゃったので転載させていただきます。

「こんにゃく入りゼリー」よりものどに詰まって死亡した件数が多い危険な食べ物ベスト10

1位:もち(168例、「こんにゃく入りゼリー」の84倍危険)

2位:パン(90例、「こんにゃく入りゼリー」の45倍危険)
3位:ご飯(89例、「こんにゃく入りゼリー」の44.5倍危険)
4位:すし(41例、「こんにゃく入りゼリー」の20.5倍危険)
5位:あめ(28例、「こんにゃく入りゼリー」の14倍危険)
6位:だんご(23例、「こんにゃく入りゼリー」の11.5倍危険)
7位:おかゆ(22例、「こんにゃく入りゼリー」の11倍危険)
8位:流動食(21例、「こんにゃく入りゼリー」の10.5倍危険)
9位:カップ入りゼリー(11例、「こんにゃく入りゼリー」の5.5倍危険)
10位:ゼリー&しらたき(それぞれ4例、「こんにゃく入りゼリー」の2倍危険)
☆選外:こんにゃくゼリー(2例)

こうしたデータから何を読み取り、どう考えるかは消費者であり有権者である国民の仕事ですが、同様に悲惨な小児死亡の事例として一つ思い出すべき教訓があるのではないでしょうか。
それは刑事、民事の裁判にまでなったあの有名な「杏林大学割りばし事件」です。

かの事件に対しては色々な意見があるでしょうが、少なくとも口にモノをくわえたまま走る子供がいれば止めさせなければならない、それがしつけというものです。
では、子供に与えてはならない食品をあえて子供に与える、そうした行為を我々は何と言うべきなのでしょうか?
少なくともヒステリックなこんにゃくゼリー糾弾を行うよりも先に、我々はそうした点についてもう一度考え直さなければならないはずです。

【眼光紙背】コンニャクゼリーと安全安心

先月、祖母が凍らせたコンニャクゼリーを1歳10ヶ月の子供に与え、死なせてしまった事故があった。
この事態に対して、野田聖子消費者行政担当相は、今回の事故で食されたコンニャクゼリーを製造した会社の会長と社長を呼んで説明を受けたという。(*1)
このやり取りの中で、現行商品の自主回収が野田の側から提案されたが、業界団体は3日に回収はしないことを報告している。(*2)
また、コンニャクゼリーによる事故によって子供を失ってしまった人(*3)や、主婦連合会事務局長(*4)、そして社民党党首、福島みずほ(*5)は、コンニャクゼリーの市場からの廃絶を訴えている。

報道を見ていると、野田担当相は「コンニャクゼリーで17人の命が失われた」と言っているそうだが、この数値はあくまでも1995年以降に判明している分の累計であって、一年に1、2人程度の話である。
こうしたことを皮肉って、ネットでは「餅の方が、毎年たくさん事故が起きている。餅こそ規制するべき」という意見をよく目にする。(*6)
これに対して「消費される総量が違うのだから、比較しても意味がない」という比較的冷静っぽい意見を見ることまあるが、それはこの問題の正しい意味を見間違えた意見だ。

また、今回の事故を起こしてしまった「蒟蒻畑」を製造するマンナンライフ社は、以前に自社製品で事故を起こしてしまった時に、容器1個あたりのサイズを大きくして、子供が一口で飲み込めないようにする。容器を従来の吸い出す構造ではなく、ハート型にしてつまんで押し出して歯を使って引き出す方式にする。そして、「コンニャクゼリー」という表記をやめ、「フルーツこんにゃく」と表記するなど、事故防止のためにさまざまな製品改良を行ってきた。
その一方で、いまだにおかし売り場で堂々と「コンニャクゼリー」を名乗り、昔ながらの小型でギザギザなカップゼリー容器で売られているコンニャクゼリーもあることを考えると、マンナンライフの企業努力はフルーツこんにゃく業界のリーディングカンパニーとして、非常に自覚があるものだったといえよう。
 そうした努力が、市場全体の2/3の売り上げを上げながら、窒息死亡事故17件中、マンナンライフ社製品での事故は3件(*7)という事故率の低さに繋がっている。

コンニャクゼリーを問題視する人たちは、「何かを食べる」ということが、決してゼロリスクではないという現実を完全に無視してしまっている
餅やご飯といった、私たちが普段当たり前に口にするもので窒息事故が起きる。それが現実である以上は、そのリスクを私たちは当然のように受け入れなければならない。
自動車事故があるからといって、外に行かないということができないように、私たちはリスクがあると知りながらも、食べ物を食べずにはいられないのだ。そうしたなかで、不慮の事故が起きて、人が死ぬことがある。それは人間の命が有限である以上、避けられない現実である。
そうした現実を「子供が口にするものは、ゼロリスクであるべきだ」という議論は、あっさりと無視してしまう。

いや、彼らが本当に見たくなかった現実は、「子供が事故で死んでしまったこと」か。
この事故で言えば、「おばあちゃんが不注意で凍らせたコンニャクゼリーを子供に与えて死なせてしまったこと」。そんな不幸な現実から目を背けるために、コンニャクゼリーをことさらに敵視しているのだろう。
辛い現実から目を逸らすためなら、コンニャクゼリーを製造しているメーカーをバッシングし、そこで働いている人間が不幸になっても構わないという感覚が優先される社会で、本当にいいのだろうか?

結局のところ、子供の安全安心を錦の御旗にした、監視カメラの設置や、公費でのスクールバス運行要求、そして偏見に満ちた不審者情報メールが飛び交う現状の一つとして、今回のコンニャクゼリー排除の問題もあるのだと、私は考えている。

子供にゼロリスクを与えるために、「家族」にとって少しでも怪しいものは全部排除という、マイノリティー排除の思想がそこには確かに働いている。
この問題は、決して野田聖子の就任直後のパフォーマンスが露骨過ぎるというだけの話ではない。

「危ないから禁止しよう」では結局のところ「生きているのは健康に悪い」になってしまいますから、議論の前提として相対的な危険度や社会に対する有益性といった客観的な指標が必要なのは当然なことです。
身近に見聞する範囲でもかまぼこ、うどん、おでんのスジ肉、天ぷらなどなどによる窒息の事例があるわけですが、これらが禁止食品リストに挙げられたことがあったか?
そもそも食品に限らず世の中に危ないものは多々あるのですが、何故こんにゃくばかりをこれだけ大騒ぎするのか?
そういった背景を考えてみれば、例えばこれが他の業界の話であったらどうだったか?という話にもなってくるわけです。

たとえば毎年パチンコ屋の駐車場で放置された子供が熱中症死しますが、「長時間入場を許容しているパチンコ業界の怠慢」だとか「パチンコ店が駐車場に日除けを用意していなかったのが問題」といった議論がなされたことがあったのかと考えてみれば判りやすいかも知れません。
マスコミも商売ですから仕方のないことですが、三十兆円産業であるパチンコ業界に対して、トップ企業のマンナンライフですらしょせん中小の地場産業に過ぎないこの業界の弱みと言うことなのでしょう。
このあたり法的に広告を打てない医療業界がバッシングされる一方で、トップ企業を叩こうと思えば縦読みでも仕込むしかない(苦笑)のと同じ構図で、何しろマスコミ業界事情というものは分かり易すぎます。

業界トップのマンナンライフでは結局自社製品「蒟蒻畑」の製造中止を決めたそうです。
既に流通している商品は「商品が危険だから製造中止にするわけではない」として自主回収せず、テレビCMなどで子供や高齢者は絶対に食べないよう注意を呼びかける予定だと言いますが、自社の取ってきた安全対策にはそれなりの自負があるということなのでしょう。

Yahooがネットで行っている意識調査では、「こんにゃくゼリーの事故対策で必要なのは?」の問いに対して販売中止という意見はわずか6%、一方で何も必要ないという声は実に48%となっています(10月14日現在)。
特定業界の思惑や一部の人びとのパフォーマンスに踊らされる人びとがどれくらいいるのかは判りませんが、案外国民は醒めた目で事態を見つめているのかも知れません。

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昨日、 少しふれたマンナンライフの「蒟蒻畑」なんですけど、 ネット上でも、反響が [続きを読む]

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