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2008年10月 3日 (金)

泥沼の公立病院に出口は見えているのか?

今どき病院が儲かるなどと言う幻想は誰も抱いていないと思いますが、特に公立病院ともなるとどこもかしこも青息吐息という状況のようです。
医師が集まらない、それどころか常勤医は逃げ出す、相変わらず経営は赤字続きで年々悪化する一方。
公立病院の赤字率が8割だ、いや9割だとデータによって幾らか差があるわけですが、ああいうものをよく見ると必ず「自治体からの繰入金がなければ赤字」なんて表現が入っています。
要するに公金で赤字補填をしてもらわなければどこもかしこも赤字経営であり、医局なりから強制派遣でもしてもらわなければ医者が誰も行きたがらないのが公立病院というのが現実であるわけです。
長年続くそうした問題点の数々を放置したまま、未だに「いやぁ新臨床研修制度による医師不足で仕方ないんですよアハハ」なんて決まり文句で誤魔化しているのが現状というわけですね。
まあ公立病院については赤字になって当然な体質ではあるし、そもそも医師不足などと言ったところで過去の悪行の当然の報いとも言うべきで「頑張って自助努力してね」としか言いようがないわけですが、問題は国の対応です。

【リポートみえ】公立病院 膨らむ赤字

◇◆医師不足→患者減少→収益悪化◆◇
 地域医療の中核となってきた県内の公立病院で、慢性的な赤字が続いている。医師不足や診療報酬の減額改定の影響で収益が下がり、診察体制を縮小する病院も出始めた。各自治体は病院改革プランづくりに着手しているが、住民の不安は消えないままだ。(月舘彩子)

◆診療縮小に住民不安◆
(中略)
 医師不足の背景には、04年に始まった新臨床研修医制度がある。新人医師は2年間の研修先を自由に選べるようになり、都市部で待遇のいい民間病院に医師が集中。大学病院を研修先に選ぶケースが減った。そのため大学病院は、地域の公立病院に派遣していた常勤医を引き揚げた。

 医師不足で患者数は減り、06年には診療報酬が3・16%引き下げられる改定もあって収益はさらに悪化した。同病院の小児科には、07年の場合、入院患者が2793人、救急患者が2044人いた。外来患者数も減って、年間約1億円の減収になる。

◆改革の行方 不透明◆
 「県立病院の経営難は深刻で、改革を先送りする状況にはない」野呂昭彦知事は12日の記者会見で、県立病院の改革を急ぐ考えを強調した。

総務省は昨年12月、自治体病院の健全化を目指し「公立病院改革ガイドライン」を策定。今年度中に改革プランをつくらせ、3年以内に単年度の経常収支を黒字化するという努力目標がうたわれた

 県は昨年8月、「病院事業の在り方検討委員会」を立ち上げ、今月答申が出た。県立総合医療センター(四日市市)は独自の給与体系を導入できる一般地方独立行政法人に移行し、志摩病院は民間の運営ノウハウを活用できる指定管理者制を導入することなどが盛り込まれた。

 松林さんも「公立病院は公務員としての給与体系や定数が条例で決まっている。医師不足で診療科が減っても、事務職員などのスタッフ数が変えられず、人件費が抑制できない。運営形態の見直しが必要だ」と話す。だが、県職員組合などは「運営形態を変更しても、医師不足など医療環境の変化は改善できない」と答申の内容には否定的だ。
(中略)
 総務省は、改革プランの中で、地域での必要性に応じ周辺病院との統廃合などを視野に入れた再編計画も検討すべきとしている

かねてから国は「地域の実情に応じて適宜やってね」と言う言い方で廃止や統合・再編、病院から診療所への縮小などを誘導したがっていたわけですが、いよいよゼニ金の面から本格的な攻略に取りかかってきているようです。
基本的には縮小していくという方向の話ばかりで規模拡大して薄利多売?でもっと儲けましょうという話が出てこないのは、さすがにお役人の皆さんも少しは現場の空気を読んだ(あるいは診療報酬削減という現実をよく知っている)ということなのでしょうか(苦笑)。
いずれにしても民間なら黒字化できる部門であっても何故か赤字にしてしまうのが公立病院マジックというものですから、縮小均衡で少しでも赤字という痛みを減らすというのは現実的ではあると思いますが。

公立病院への財政支援で論点案―総務省

 総務省の「公立病院に関する財政措置のあり方等検討会」は10月1日、第4回会合を開き、事務局が最終報告に向けた論点整理案を提示した。これまでの普通交付税措置を見直し、病院建物の建築単価に上限を設定して、浮いた財源を充実が必要な分野に重点化する方向などを示している。

 総務省が提示した論点整理案では、▽病院建物の建築単価に枠を設定する▽許可病床数に応じて普通交付税を措置する仕組みに、新たに病床利用率を反映させる―の2点を挙げ、これらにより浮いた財源を過疎地の医療や救急医療に重点配分する考えを示した。
 また、公立病院の経営主体や存在意義のほか、他の医療機関や保健・福祉・介護との連携を推進する視点からの検討も促した。

 この日の検討会では「地元の建設業界にお金を落とすため、過大な規模になりやすい」などの意見があり、無駄を見直す必要があるという点では認識が一致した。ただ、公立病院では耐震構造を施して災害拠点病院を目指すなどのケースが多いため、民間病院との比較で慎重な取り扱いを求める声もあった。

 また経営主体については、複数の自治体が加わる広域連合や、都道府県による運営を主張する意見があった。
 次回の検討会では、不採算医療や過疎地の医療に対する財政支援などを話し合う。同検討会では当初、5回程度の会合で合意形成を目指す方針だったが、意見の隔たりが大きい部分もあり、審議がずれ込む可能性も出てきた。

そもそも公立病院と言えば何より無駄な人件費や医師を使い捨てにする公務員気質といった人事面、値引き交渉など縁遠く言い値で仕入れる納入価格の無駄などに加えて、何かにつけて無駄に新築移転したがる上にその建設費の高さでも知られているところです。
一病床あたりの建設費でみると民間病院の実に二倍とも言われますが、おもしろいのは現場で働く医療スタッフの設備環境が優れているだとか、利用者である患者や家族にとって素晴らしい利便性であるとか言う噂は全く聞こえてこないことですかね。
貴重な血税を惜しみなく投入した巨額の建設費用はいったいどこにどんな形で活用されているのでしょうか(笑)。

そうやって高い金を投じているわけですから当然ながら昨今の財政緊迫している折、どこの自治体も病院維持には四苦八苦しているのが現状です。
そうした自治体の足許をみるかのように、政府は平成今年度に限っての「公立病院特例債」発行を認めるなどと言い出したわけですね。
この公立病院特例債なるもの、CBニュースの記事によればこんな感じです。

公立病院改革で特例債の発行容認

 総務省は12月21日、地方自治体による公立病院改革のガイドライン(GL)をまとめた。
病床利用率が3年連続で70%を下回った公立病院に対して診療所への移行を含む
抜本見直しを求めるなどの内容。資金不足の病院に対して、不良債務を長期債務に振り返る
「公立病院特例債」の発行を認めるなど財政面での支援措置も講じる。

 総務省は24日付けでGLを自治体に通知。公立病院の改革プランを
08年度中に策定するよう自治体に促す。

 GLでは、これまで明らかになっていなかった財政支援措置の具体的な中身を示した。
それによると、医師不足などによって03年度以降に発生した不良債務を長期債務に振り返るため、
「公立病院特例債」の発行を08年度に限って認める。償還期間は7年。
 特例債を発行できるのは、医業収入に対する不良債務の割合(不良債務比率)が
07年度時点で10%以上の公立病院事業。自治体が08年度内に改革プランを策定することが条件。

 

特例債の発行容認には、資金不足が足かせになり抜本改革に踏み切れない
病院事業の債務返済を支援することで、再編・ネットワーク化を促す狙いがある。
 総務省によれば、不良債務比率が10%以上の病院事業は06年度末時点で全国に67ある。
債務の総額は03年度から06年度までに約560億円増えているといい、
特例債の発行額については600億円を見込んでいる。

なんと言いますか、いかにもその場しのぎの付け焼き刃的対策と言いますか、いつもの政府お得意の思いつき政策と言いますかなシロモノではあります。
まさか今どきこんな甘言に乗る奴もそうそういないだろうと思ったら、結構いるものなのですね。

56自治体が発行申し出 病院特例債500億円超

 公立病院の経営悪化で不良債務を抱えた自治体の支援策として、国が2008年度に限り発行を認める
「公立病院特例債」について、25道府県の計56自治体が、判明しただけで総額500億円超の発行を総務省に申し出たことが
1日、共同通信社の調査で分かった。総務省は今月から各自治体にヒアリングし、08年度内に発行額を確定する。
 千葉県銚子市の市立総合病院が医師不足と財政難で休止するなど、公立病院の赤字問題がクローズアップされている。
自治体財政健全化法では、08年度決算から病院など公営企業会計の赤字も、自治体の財政破たんを判定する重要な要素となる。
 発行を希望している自治体は病院事業の収支赤字を補てんするため、金融機関からの借り換えを繰り返し
一時借入金が不良債務化している。特例債を発行できれば、長期間にわたり計画的に償還することが可能になる。
 調査は、政令指定都市と都道府県に市町村分を含め、総務省への申し出状況を聞いた。
 都道府県別で申し出が最多だったのは北海道の12自治体で、希望総額は約136億円。道は自治体名を明らかにしていないが、
すでに赤平市が12億円超の発行を希望する計画を公表。特例債の発行により、08年度決算で国の財政破たん判定を
ぎりぎり回避する試算も示している。
 発行希望額が判明している個別の自治体では、最高は名古屋市の33億7000万円。沖縄県や神戸市、徳島市なども発行を申し出ている。

別に政府のやってることを擁護するつもりもないのですが、そもそもこの特例債と言うのは「抜本的改革はしたいが金がなくて出来ない」という自治体病院に対しての一度限りの支援策であったはずなのです。
ところが記事を見た印象ではどうも単なる赤字返済の先延べに使うつもりなのではないかという印象が拭えないところで、これでは本当に問題を単に先送りにするだけになるのではないでしょうか。

医師一人が平均一億の医業収入を稼ぎ出すと言われていますが、病院の収益というのは結局のところ収入を決める医師を何人抱え込めるかによって決まると言っても過言ではありません。
9時5時の公務員事務が「先生~収益落ちてんだからもっと頑張って働いてもらわないと困りますよ~」なんて幾らハッパかけたところで、気の利いた医師から先に公立病院から逃げ出している現状では屁の役にも立たないわけです。
やる気のある多くの病院が血眼になって医師確保に走っている中で、医師が逃げ出していく公立病院の現状というものを真剣に考え改革していかないことには、幾ら金をつぎ込んでもドブに(あるいは誰かの懐に、ですか?)捨てるようなものではないでしょうか。

こうした公立病院の現状を一般企業に置き換えてみればどうでしょう?
社員からの忠誠心を全く期待できない企業などというものは、業務成績が悪いのに社屋が立派すぎるとか言う問題以前に何かしら根本的に間違っているのではないかという気がしてきませんか?
要するに今どき医者を大事にしない病院などにわざわざやってくる奇特な医者など多くはないということであって、本気で医者を呼ぶ気があるならまず自分から待遇改善の努力を示せってことですね。

黙っていてもどこからか医師はやってくるものだという馬鹿げた妄想もいい加減にしておかないと、遠からず公立病院などに来てくれるのは自治医大出身者だけということになるのではないでしょうか。

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コメント

 はじめまして。
 公立病院改革ガイドラインの問題について特化したブログを運営しています。
 特例債は、問題の本質をきちんとマスコミが伝えていないことが問題だと思います。

 時々、おじゃまさせていただき、勉強させたいただきたいと思います。

投稿: 春が、来た | 2008年10月 5日 (日) 21時00分

はじめまして。コメントありがとうございます。
冒頭の会則にありますとおり、ぐり研は勉強するというような会ではございません(苦笑)。
またお暇な折にでもお気楽に遊びにいらしてください。

投稿: 管理人nobu | 2008年10月 6日 (月) 14時50分

初めまして、昨今の公立病院の赤字の状況には憂いでいるわけですが、まず病院の現状が経営的にどうなのか自分自身で知りたくなりました。
そこで総務省の地方公営企業年鑑を整理しましたので、見ていただければ幸いです。もっと充実をして行きたいと思っております。
「公立病院の統計資料・新聞記事」製作中です。

投稿: yychan | 2009年6月 4日 (木) 22時28分

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