「救急受け入れ問題FAQ」ってな~んだ?
Yahoo!ニュースで掲載された「救急受け入れ問題FAQ」という記事がちょいとした話題になっているようです。
元をたどってみるとこちら「ぷにっと囲碁!なブログ」さんところの記事「「よくある質問・発言」に簡単な説明を…。」が引用元のようですね。
もちろん個別に見ていけば異論や突っ込み所は多々あると思いますが、こういう質問ってのは何か一つの正解があるというものではなくて答えは色々あって当然ですしね。
なによりこういう記事がYahoo!ニュースあたりのそこそこメジャーなところで配信されるようになったという事実とその影響は過少評価すべきではないと感じています。
「何が原因でこのような事態が起きているのか、どうすればこの問題が改善されるのか、よく調べて、考えて欲しい。」という言葉通り、日頃抱く素朴な疑問に対して自分なりに考えていく一つのきっかけになっていくといいかなという期待値込みで、なかなか興味深い試みだと思いますね。
特にマスコミ関係者には必読、ですか(笑)。
「ベッドが無ければ、廊下で治療すればいいんじゃないの?」などなど、現在起きている「救急受け入れ問題」に関して、よくある質問に対する回答集。
現在起きている問題を、「医療従事者の怠慢だ!」と思っている方は、是非、下のFAQを読んで欲しい。◇◇◇
●なんで急患の受け入れを断るの?
・(人員・設備が足りない…などの)物理的問題で、(受け入れると犯罪になってしまうケースがある…などの)法的問題で、断らざるを得ない状態にあり、これは「受け入れ拒否」ではなく「受け入れ不能」なんです。●なんで「専門外だから」が断る理由になるの?
・「専門外の患者を受け入れるのは犯罪」という司法の判例(奈良心タンポナーデ事件)があるからなんです。●ベッドが無いなら、廊下で治療すればいいんじゃないの?
・「設備不十分な状態で患者を受け入れるのは犯罪」という司法の判例(加古川心筋梗塞事件)があるんです。
・そもそも、「ベッド」「ベッド」って言われてますけど、病院でいうところの「ベッド」は、心電図とか、酸素マスクとか、呼び出し用ボタンとか、それを管理する人員とか、それら全て「込み」ですからね。もはや「ベッド」というより「設備」と言ったほうが適当かもしれません。●応急処置してから、他の病院に移すのは駄目なの?
・「応急処置の後、他病院に転送するのは犯罪」という司法の判例(上に同じく、加古川心筋梗塞事件)があるんです。●なんで、一度断った病院が、後になって受け入れるなんて事があるの?
・救命中であった患者が「落ち着く」か「亡くなる」かのどちらかで、病院側に「空き」が出来たからです。●有名人や金持ちだったら嬉々として受け入れるんじゃないの?
・西村真悟議員の息子の飛び降り自殺…アレも、重度のうつ状態で入院の必要があるとされながらも、「ベッドが無い」という理由で入院できませんでしたよね。もはや、コネやカネではどうにも出来ない程に、患者の受け入れが困難な状況なんです。●ぶっちゃけ、人の命より金儲けのほうが大事なんでしょ?
・金儲けのほうが大事だったら、そもそも、不採算部門である救急なんて、最初からやりません。●医師が足りないなら、海外から医師を呼んだらいいんじゃない?
・本国より遥かに待遇の悪い日本に来る理由が見当たりません。…というのも、実は、日本の医師の待遇は、諸外国のソレよりも遥かに悪いんです。●ドクターヘリを導入したら?空からなら直通でしょ?
・ヘリを導入するにも、周囲の建物が邪魔で安全に飛べなかったり(ビルに激突、民家に墜落…の危険性あり)、ヘリポートのある(作れる)病院が少なかったり、騒音問題で導入を反対する住民がいたり…など、色々と問題が山積みなんです…。
・あと、ドクターヘリを必要とするほどの重症患者を扱う「3次救急」自体の数が減っていることも問題の一つとなっています。●リアルタイムでベッドの空き情報の分かるネットワーク、システムを作ったらいいんじゃない?
・いくら良いシステム、良いネットワークを作っても、医師の手術スピードが上がる訳でもなく、患者を診るための設備が増える訳ではないため、根本的な解決とはなり得ません。
・また、それに近いシステムが既にあるのですが、現在、病院側にそのシステムを操作するマンパワーが足りないために、空き情報をリアルタイムに更新出来ない…という問題が発生しています。●救急病院が急患を受け入れられないなら、救急病院を辞めちゃえば?
・現実に次々と辞め…ていうか、潰れていってるんです…。過去5年で430件以上…。
・特に、重症患者を扱う「2次救急」、救急最後の砦である「3次救急」が減っていることが深刻な問題となっています。
・また、一つの病院が救急を撤退してしまうと、その病院が受け入れていた患者が他の病院に流れ込み、その病院のキャパシティをオーバーして受け入れ不能…という、「受け入れ不能のドミノ状態」に陥ってしまう…という危険性があります。●1次・2次・3次って何?どれも救急病院じゃないの?
・救急病院は、患者の緊急度の度合いによって、「1次救急」「2次救急」「3次救急」…と種別されています。
・「1次救急」は、入院や手術の必要が無い患者が対象で、「2次救急」は、入院や手術が必要な患者が対象、「3次救急」は、1次・2次では対応できないレベルの重症患者が対象となっています。
・ここ数年、救急医療が不要なレベルの「軽症患者」が、夜間救急…特に「2次救急」「3次救急」に駆け込み、夜間救急がパンク状態になっている事が、深刻な問題となっています。●2~30件も断わられる事なんてあるの?
・大多数の救急が、マンパワー不足・キャパシティ不足のために、常にパンク寸前(or 本当にパンク)の状態に陥っており、2~30件、いや、それ以上断られる可能性は、大いにありえます。
・また、過重労働で医師が倒れる、燃え尽きて退職…などで、救急を辞める病院も出ており、今後は「受け入れ不能」状態が加速、最悪、「たらい回せる病院」すら無くなり立ち往生…という事態もあり得ます。◇◇◇
患者を受け入れられない医療従事者を責めても、この問題は解決しない。
何が原因でこのような事態が起きているのか、どうすればこの問題が改善されるのか、よく調べて、考えて欲しい。
さて、よく考えてみる端からまた新たなニュースが出ていますが、こちら防衛医大で産科廃止!?という記事です。
防衛医大と言えば福島県に産科医官を派遣したりと結構ああ見えて産科医いるのか?とお思いの方もいらっしゃるかも知れませんが、こちら「産科医療のこれから」さんの情報によればご多分に漏れず…という状況のようですね。
防衛省は、埼玉県所沢市にある防衛医科大学校病院の診療科のうち年間600件の分べんを扱う産婦人科などについて、今後、採算の取れなくなる可能性が高いことを理由に廃止を含めた態勢の見直しの検討を始めていることがわかりました。
埼玉県所沢市にある防衛医大病院は、15の診療科、800床のベッドを持つ病院で、重症の患者を受け入れる第3次救急医療機関に指定され、埼玉県南西部や隣接する東京・多摩北部から患者が訪れています。
特に産婦人科は年間、600件の分べんを扱い、このうちの半数近くはリスクの高い出産です。
ところが防衛医大と病院が平成22年の4月に独立行政法人となって独立採算制が導入されるため、防衛省は、採算の取れなくなる可能性が高い産婦人科と小児科、それに救命救急センターについて
廃止または縮小することを含め態勢の見直しの検討を始めていることがわかりました。
脳内出血を起こした東京の妊娠中の女性が病院に受け入れを断られたあと死亡するなど、産科医や小児科医の不足が全国的に問題となっているなかでこれらの診療科の廃止・縮小は地域医療の態勢に大きな影響を与えることになりかねず、防衛省内でも疑問の声が上がっているということです。
むろん産科に限らず昨今こういう話はよくあることではあるのですが、少しばかり注目すべきは廃止理由というのが「今後、採算の取れなくなる可能性が高いこと」となっていることなんですね。
平素からお役人体質を批判することに熱心なマスコミさんは大勢ありますから、赤字部門を平気で抱え込むからお役所って経営感覚がないんだなんて批判がどこからか出てくれば面白いんですけどね。
ご存知のように今の時代に医療というものは基本的に儲からない商売ですが、特に赤字部門の三巨頭と言えるのが記事中にも挙げられている「産科・小児科・救急」の三部門なんですね。
ピンと来た方は鋭い!巷間特に不足が叫ばれているのもこの三部門であることは留意する必要があります(もちろん実際には外科不足なども大変深刻かつ大問題ですが)。
要するに桝添大臣のの言うところの「人間はインセンティブがあってはじめて動く」という極めてシンプルな構造が浮かび上がってくるわけです。
そして官の医療機関である防衛医大のようなところにおいてもこういうシンプルな論理が公に語られるようになったというところに時代の変化を感じませんか。
世の中金を出せば全てが解決するわけではありませんが、金を出すことで解決する問題が多々あることもまた事実です。
例えば急性期病院が一定の空きベッドを抱え込んでいる状況でも経営がなり立つようになる程度の診療報酬上の配慮を行うだけで、救急受け入れ不能問題も結構改善してくる場合がありそうに思いますね。
「足りぬ足りぬは工夫が足りぬ」なんて言う輩に限って十分に充足していると言えるほどのバックアップ体制を整えようとしないのは古今東西ありきたりに見受けられる事例ですが、後の世に平成の牟田口廉也などと呼ばれることのないようご注意を願いたいものです。
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