« 今日のぐり「餃子の王将 国道太子店」 | トップページ | 大野事件後に医療事故調問題を考える その二 »

2008年9月 4日 (木)

大野事件後に医療事故調問題を考える その一

本日9月4日0時をもって控訴の期限を迎え、大野病院事件の無罪判決が確定しました。
やれやれと言ったところなのですが、これで全て解決万々歳とは到底言えなさそうな気配なんですよね。
まずは共同通信の記事を紹介します。

産科医の無罪確定  帝王切開死の大野病院事件

 福島県大熊町の県立大野病院で2004年、帝王切開で出産した女性=当時(29)=が死亡した事故で、業務上過失致死などの罪に問われた産婦人科医加藤克彦医師(40)に無罪を言い渡した福島地裁判決が3日、控訴期限を迎え、4日午前0時で無罪が確定。

 福島地検は地裁の判断を覆すのは困難として控訴断念を決めていた。

 県病院局は4日、休職中の加藤医師に復職の辞令を出す。勤務先などは本人の意向を含めて決めるとしており、減給とした処分について見直しも検討する。遺族から賠償の要望があれば交渉に応じるとしている。

長くもない記事の中にも突っ込み所といいますか、まず気になるのが処分見直しを検討というくだりです。
当然県当局も言っていたように例の「疑惑の報告書」も見直さざるを得ないわけですが、そうすると加藤医師の罪を認めるものは何も無くなってしまうわけです。
このあたり、ちょうど「産科医療のこれから」でMTproの記事から引用されていますので参照いただければと思うのですが、いずれにしてもこういう状況下で遺族に賠償を行うということになるのであればどういう名目で公金を支出していくのか?
医療訴訟保険であれば過失がないのに保険金を出すということもなかなか認められそうにないところだけに、これから先の議会の判断なども注目していかなければなりません。

判決後のマスコミ関係の報道はおおむね毎日など一部を除いては抑制された口調で、以前のように医療バッシング一辺倒というものでもないようです。
勝谷誠彦氏などはいつもの調子で余計なことまで口走っている気がしますが、むしろこうした医療側に共感的な論調すら見受けられるという点ではマスコミも変わってきたのか?という印象を受けた方も多いのではないでしょうか?
個別の記事を見ていけば色々とスタンスの違いが見え隠れして面白いのですが、大本営発表よろしくべったり同一色に塗り込まれるよりは報道機関としては健全という言い方もできるでしょう。

公的な立場からのコメントについては、警察庁長官がコメントを発表したことは記憶に新しいところですが、他にも幾つか見られるようです。
保岡法相は「これから医療事故捜査は謙抑的になる」と言ったようですが、自身が総理辞任騒ぎに巻き込まれてしまっているような現状でこの発言がどれほど担保されるか微妙なところでしょう(苦笑)。

「医療事故の捜査謙抑的な対応を」…保岡法相

 保岡法相は29日、大野病院事件で検察当局が控訴を断念したことを受けて記者会見し、「医療事故の真相究明については、第三者機関が専門的な判断を下すようにし、刑事訴追は謙抑的に対応するべきだ。私のこの考えなどもあり、検察や警察では謙抑的な対応が事実上始まると思う」と述べた。

ま、そういう社会情勢下ですので現時点で注目すべきは政治家よりも厚労省の見解なのですが、このタイミングでこういうちょっと気になる話が出てきているようです。
少し判りにくい話なので記事を長々と引用します。

医療事故の報告範囲を再通知―厚労省

 医療事故に関する情報を医療機関から収集し、事故原因を分析している財団法人・日本医療機能評価機構の「医療事故情報収集等事業」に関し、厚生労働省はこのほど、同機構への報告が義務付けられている医療機関に対し、「報告すべき事案の範囲」について周知徹底を図るよう求める通知を出した。厚労省の担当者は「大野病院事件や医師法21条の議論とは全く関係がない。有用な情報を積極的に出していただき、事業の一層の充実を図りたいという趣旨」と話している。

 通知では、「医療事故情報収集等事業」に関し、厚労省が2004年9月21日付で出した通知(医政発第0921001号)を「御確認いただき、事故等事案を報告されるよう宜しくお願いします」としており、報告が必要な事案の範囲について変更がないことを確認している。

 「医療事故情報収集等事業」は、医療事故の原因究明や再発防止に当たる第三者機関(医療安全調査委員会、仮称)の創設に向けたモデル事業として、日本医療機能評価機構が04年から実施している。医療法施行規則により、報告義務のある医療機関は、特定機能病院など273施設(07年12月31日現在)で、事故などの報告があった施設数は、05年176施設、06年195施設、07年193施設となっている。

 同事業では、診療行為に関連した死亡のうち、報告すべき医療事故の範囲について定められている。それによると、報告が必要となる場合の一つとして、「誤った医療または管理を行ったことが明らかではないが、行った医療または管理に起因して患者が死亡し、もしくは患者に心身の障害が残った事例または予期しなかった、または予期していたものを上回る処置その他の治療を要した事案」が挙げられている。
 つまり、医療行為に過失があったかどうかが不明でも、「予期しなかった」場合は報告が必要な事案であるとしている。医療安全調査委員会の創設に向けた厚労省の検討会でも、同様の基準に基づいて議論が進められていた。ただ、「予期」の意味が、「死亡という結果の予見可能性」か、それとも「因果関係の相当性を判断する際の予見可能性」かは明確になっていない

■大野病院事件の判決とは関係がない?
 産科医が無罪となった大野病院事件の判決では、医師が癒着胎盤と認識した時点で、「胎盤剥離を継続すれば、現実化する可能性の大小は別としても、剥離面から大量出血し、ひいては、本件患者の生命に危機が及ぶおそれがあったことを予見する可能性はあったと解するのが相当である」としている。
 このため、死亡に対する予見可能性を認めた大野病院事件を「医療事故情報収集等事業」の要件に形式的に当てはめると、「報告すべき事案には該当しない」という解釈もあり得ることが指摘されている。

 また、医師法21条の「異状」の解釈について、大野病院事件の判決は「診療中の患者が、診療を受けている当該疾病によって死亡したような場合は、そもそも同条にいう異状の要件を欠く」としている。その一方で、「死亡という結果は、癒着胎盤という疾病を原因とする、過失なき診療行為をもってしても避けられなかった結果といわざるを得ないから、本件が、医師法21条にいう異状がある場合に該当するということはできない」とし、過失の有無と「異状」の判断とを完全に切り離してはいない。

 このように、医療事故情報の収集事業における報告すべき範囲と、大野病院事件の判決が示した届け出の範囲は異なっているようにも考えられるため、医療事故の届け出範囲をめぐって混乱が生じる恐れがあることが懸念されている。

 しかし、今回あらためて04年9月の通知を示した狙いについて厚労省の担当者は、「大野病院事件や医師法21条の議論とは全く関係がない」と強調している。今年8月に「医療事故情報収集等事業」に関する07年年報が公表されたことを受け、「今後も有用な情報を積極的に出していただき、事業の一層の充実を図りたいという趣旨。対象病院には、幅広く情報を出してもらいたい」と話している。

 詳しくは、厚労省のホームページで。

 相変わらず役人言葉は何を言っているのか意味不明で結局何なの?という話になるのですが、平たく言えば疑わしきは全部レポートを出せという姿勢でやれと言うことですね。
表向き大野事件判決は関係ないということを言っていますが、判決を知っている医師ほど届出不要と考えるマージンを広く取りがちになるという予測をしての通知なのは見え見えです。
ま、今のところ一部医療機関だけが関わっている事業なだけに、この段階では何でもかんでも届け出てもらうという姿勢で全例届出という一つの極限状態を見ておきたいという気持ちは判らないでもありません。

元々この医療事故情報収集等事業というものは「医療事故の発生予防・再発防止のため、「第三者機関」において、医療機関等から幅広く事故に関する情報を収集し、これらを総合的に分析した上で、その結果を医療機関等に広く情報提供していく」ものとされています。
で、この事業の実施主体となっているのが例の「病院機能評価事業」を手がけている日本医療機能評価機構…とくれば、この時点でいかにも眉に唾をつけたくなる話という気もしてくるのですが、どうなんでしょうか。

それはともかく、後日紹介する別な記事の記述などもあわせて考えていくと、厚労省としては事故調はあくまで医療事故の予防・再発防止目的のシステムであるという点を強調していきたいようです。
そしてこれは事故調のパイロットスタディであって、教訓として活用する目的であるから届出を躊躇せずなるべく広く事例を集めましょうねという公式見解の一方で、実際に全医療機関で事故調なるものを立ち上げた場合にどの程度の業務量が必要になってくるのかという予測にも役立つという気でしょう。
ま、その結果「こんなにとんでもない業務量が必要なのです!だからもっと人手と予算を増やさねば!」なんて結論になってくれれば万々歳という…ああいやいや、そんなことはどうでもいいんですがね。

そこでようやくスレタイの事故調の話になってくるわけですが、長くなったので今日はここまで。

|

« 今日のぐり「餃子の王将 国道太子店」 | トップページ | 大野事件後に医療事故調問題を考える その二 »

心と体」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/519753/42377630

この記事へのトラックバック一覧です: 大野事件後に医療事故調問題を考える その一 :

« 今日のぐり「餃子の王将 国道太子店」 | トップページ | 大野事件後に医療事故調問題を考える その二 »