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2008年9月26日 (金)

今どきメディカルスクール?

まずは記事を紹介します。

メディカルスクール導入提言まとまらず―四病協

 日本病院会の山本修三会長は9月24日の記者会見で、四病院団体協議会(四病協)の「メディカルスクール検討委員会」による
報告書案についてこの日の総合部会で意見交換したものの、最終的な取りまとめには至らなかったことを明らかにした。
 山本会長は「一部メディアで、四病協としてメディカルスクール推進という報道がされていたが、それは違う」と、現時点では
検討委員会の案にすぎないことを強調。「検討委員会の案は総合部会として尊重するが、まだ各団体の議論は結論に至っていない」と
引き続き検討する考えを示した。
 メディカルスクールは、4年制大学の卒業者を対象に、医療に関する専門的学修を集中的に実施する医学教育システム。米国を中心に行われている。
 検討委員会の報告書案では、現状の医学部教育や卒後臨床研修を維持したまま医学部の定員を増やしても、不足が深刻な「病院医師」の
増加にはつながらない可能性を指摘。優秀な病院医師を増やすには、メディカルスクールの導入が鍵になるとしている
 その上で報告書案では、メディカルスクールの利点として、▽すでに幅広い教養が身に付いた人が入学することで、優れた臨床医の
養成が見込める▽医学教育を短期間で修了できるなど効率的で質の高い教育が可能になる―などを挙げている
 山本会長は会見で、「メディカルスクールが安易に医師を増やすと捉えられるのが一番困る。基本は良い臨床医をどう育てるかだ」と強調した。

まだこんなことを言っているのかと言うような話ですが、こんな短い記事を見るだけでも幾らでも突っ込み所がありますね。
そもそも向こうのメディカルスクールは決して「医者になるための早道」などというような存在ではないんですが…

第一には、「すでに幅広い教養が身に付いた人が入学することで、優れた臨床医の養成が見込める」という根拠が全く存在しないことです。
現状でも学士入学、社会人入学組の医師と言うのはそれなりの数がいますが、彼らが高卒ストレート入学組と比較してより優れた臨床医となっているなどという話は寡聞にして知りません(その逆の話は幾らでも、ですが)。
そもそも医学教育を短期間で終了できるというのも根拠のない話で、増える一方の医学知識を詰め込むためほとんどの医学部では教養時代に医学教育の前倒しが行われているのが現状なわけです。
そしてまともな教養部の教官であれば、医学部相手の講義には後々医学に進んでも役に立つ教育内容を少しでも取り入れようとするもの。
こうした基礎教育を受けていない他学部卒業生はそもそもスタート地点でハンデがあるし、その分を残りの年数に回して詰め込むとなれば当然促成栽培になるのは誰が考えても判りそうなものです。

第二には、メディカルスクールは医師不足が叫ばれる現状下で「安易に医師を増やす」手段としてすら意味がないということです。
ご存知のように医師国家試験の合格基準は毎年一定ではなく、年ごとに決められるようになっています。
毎年の問題の難易度が同じでないにも関わらず合格者数がほとんど一定であるのは、この合格基準の変化で調節をしているからです。
つまりメディカルスクールや医学部定員増によって受験者数を増やしたところで、合格基準を変更しなければ医師数が増えるという保証など全くないということですね。
ネームバリューの上からもメディカルスクールが既存の医学部以上に人気が出るとは到底思われませんから、優秀な学生が集まりにくく合格率も低くなるとすれば、「医師養成学校の実体は授業料搾取学校?!」などといずれ週刊誌あたりのネタに取り上げられる恐れは十分にありそうですね。

そして第三は、そもそもメディカルスクール卒業生は現場が求めている類の人材では決してないということです。
何故なら医師不足だ、医療崩壊だと叫ぶ各地の病院で求められているのは「優れた臨床医」などではないからです。
そもそも現場が求めているのは40時間連続勤務だろうが、二日に一回の当直だろうが、年休二日だろうが文句を言わずに働く、世間知らずで甘ちゃんな「奴隷」にしか過ぎないのですから。
そしてその目的に最も適うのが受験勉強一筋で世間を知らないストレート入学組であって、世の中の仕組みの何たるかを知った頭の良い学士様などお呼びでないということです。

実はこうした危惧は別に想像上の可能性などというような不確かなものでも何でもなく、一足先にロースクールを実現した法曹界ではとっくに問題となっていることなのですね。
二つばかり記事を紹介してみますが、まさに上に挙げたような問題点がそのまま具現化していることがご理解いただけるかと思います。

司法試験合格ゼロ3校に 合格率も33%にダウン

 法務省は11日、法科大学院の修了者を対象に平成18年から始まった「新司法試験」の20年の合格者を発表した。合格者数は2065人にとどまり、合格者数の目安とされた「2100~2500人」の下限を下回った。合格率も前年より約7ポイント低く、過去3回で最低の32・98%だった。受験生のレベルの低さが浮き彫りとなり、法科大学院のあり方の見直しが急務となりそうだ。

 法務省によると、今年の受験者数は計6261人。大学の法学部出身者が入る「2年コース」修了者の合格率は44・34%にのぼったが、法学部出身者以外の未修者向けの「3年コース」の修了者は22・52%と低調で、既習者と未習者の合格率の開きは、前年から約8ポイントも上昇した。

 大学院別の合格者数は東大が200人でトップ。中大(196人)、慶大(165人)、早大(130人)、京大(100人)と続いたが、愛知学院大、信州大、姫路独協大の3校は合格者がいなかった。昨年は合格者なしの法科大学院はなかった。

 合格者数の目安は、これまで2回の試験で下限を下回ったことがなかった上、合格者ゼロの法科大学院が複数校にのぼるなど、一部の法科大学院の教育が、法曹界の求めるレベルに達していないことを示した。

 法曹関係者は「都市部や名門大学の法科大学院に優秀な生徒も教員も集中している。合格率の低い学校の中には、生徒数の減少で大学経営が先細っているため、授業料目当てに設置したとしか思えない法科大学院すらある」と指摘する。

 

保岡興治法相はすでに、司法試験の合格実績の低い法科大学院の統廃合を進めるべきだという考えを示しているほか、中教審の法科大学院特別委員会も質の高い教員確保が困難な学校の統廃合の促進を検討するよう求める改革案を提示。改革を求める声は高まっており、今回の結果によって論議に拍車がかかりそうだ。

 2年コースと3年コースの合格率の差が開いたことも深刻な問題だ。法学部以外を卒業した社会人を、社会経験を生かせる法律家に養成することが法科大学院制度の大きな目的の1つだが、3年コースの低迷ぶりで、社会人の司法試験離れが進むことも懸念される。

法科大学院:「定員削減必要」4割 司法試験合格率低く--毎日新聞アンケート

 全国の法科大学院74校の4割が、現在の総定員約5800人の削減が必要と考えていることが、毎日新聞のアンケートで分かった。目標の合格率(8~7割)を大幅に下回り、法曹資格を手にできない志望者が増えているためで、既に3校が定員の削減を決め、5校が定数減を検討している。地方の法科大学院には「首都圏への偏重を解消すべきだ」との意見が多く、首都圏に乱立する法科大学院を軸に再編論議も起きそうだ。

 アンケートは3回目の新司法試験合格発表となる11日を前に、法科大学院全74校を対象に8月下旬~9月上旬に行い、55校(74%)が回答した。

 総定員について「整理(削減)が必要」と回答した法科大学院は22校(40%)。「必要ない」が25校(45%)でほぼ同じ割合となった。無回答か「どちらとも言えない」は8校あった。

 「整理が必要」と回答した大学院には、都市部に集中した大学院の定数を減らすべきだとの声が多く、「首都圏一極集中の配置は避けるべきだ」(鹿児島大)、「大規模な法科大学院の定数を削減し、入学者を地方に分散させるのが良い」(久留米大)など、偏在の解消を求める意見が目立った。関東学院大が法科大学院の定員を今年度、30人削減した。来年度は福岡大が20人、姫路独協大が10人削減する。

 07年の新司法試験合格者数は1851人で、合格率は40%にとどまっている。政府の司法制度改革審議会の意見書(01年)が例示した「約7~8割が合格」とする目安を大きく下回った。【石川淳一】

 ◇認識まだ足りない--宮沢節生・青山学院大法科大学院教授の話

 4割が定員削減を必要としている意味は大きいが大多数が自校の問題として認識していない。過半数が法曹資格を取得できない定員の維持は、学生の搾取にほかならず全法科大学院が削減に取り組む状況をつくるべきだ。

医師国家試験にしろ司法試験にしろ目的の違いはあるものの、高度の専門性を求められるからこそ試験による最低限の質の確保を行っているという点では共通するものがあります。
既に先行する法曹界においてこれほど失敗だと言われているものと類似の制度を、わざわざ後発の医療界でも取り入れようとする意図が報じられている内容からは全く理解できませんね。

いずれにせよ今の医療界に失敗の可能性の高い試行錯誤などやっている余裕はないということだけは事実である以上、もし政府、厚労省が積極的にこうしたシステムを導入しようとするようであれば、そこには何らかの意図、国策というものが秘められていると考えておくべきなのでしょうね。

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