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2008年8月18日 (月)

救急医療、崩壊!? その五

少し間が飛びましたが、前回「救急医療、崩壊!? その四」の続きです。

題して「救急医療 やってはいけないこれだけの理由 ~患者編~」
まずは最初に記事を二つばかり紹介します。

医師らの対応への不満が減少 県の医療安全相談窓口

 医療に関する苦情や相談を受け付ける県の医療安全相談窓口に寄せられた相談は2007年度、29件増の234件だった。医師らの言葉や態度で嫌な思いをしたなど、対応についての不満は例年、トップを占めるが、今回は全体の1割以下で大幅に減少。県は「院内で研修会を開く病院もあり、対応改善の意識が浸透してきている」としている。

 県健康福祉企画課によると、医師や看護師らの対応・接遇への不満は、計21件(9%)。04年度が33.8%に上ったのに対し、05年度は18%、06年度は16.1%と、年々減少している。

 不満の内容は「子どもが骨折して急患で運ばれたとき、医師が『誰かこの手術をやりたい人はいないか』と冗談半分に言った」「夜間救急外来の待ち時間が長い上、医師に『症状が軽い。今後は考えて(救急に)来てくれ』と言われた」などのケース。

 同課は「医療機関側にとっては『簡単な手術だったので若手に経験させたかった』『緊急度が高い患者が優先。救急外来の適切な利用を呼び掛けるのも当然』ということになる。意識の違いが、言葉や態度に対する患者の不信、苦情として表れることが多い」と分析。その上で「医療機関側は、患者に配慮した言動にずいぶん気を付けるようになっている。情報提供などを通じ、今後も改善を図りたい」としている。

検査にクレーム、居留守… 「気にくわない」から医療費不払い

   

「気にくわないから払わない」。こんな理不尽な理由から医療費の支払いを拒否するケースが、全国の病院で相次いでいる。研究者の調べでは、都内の病院で06年度には、こうした拒否は727件に上ったという。病院側は、弁護士を使ったりしながら、対策に頭を悩ませている。
医療費払っていないのに、平然と診察に来る
   「救急施設を持っている病院は、集金がかなり大変だと聞いています。いつも来ている患者より、初めて来る救急患者の方が、不払いが多いようですから」
   東京都の病院関係者は、J-CASTニュースの取材に対し、こう答えた。

   不払いのケースとしては、督促しても払わないため、自宅まで徴収に向かうと、居留守を使われることが多いという。また、検査しても何も異常がなかった場合、「不必要な検査をした」と逆ギレし、検査費を払わないケースがあると話す。

   さらに、「前回の医療費を払っていないのに、平然とまた診察に来る患者がいます」とこの関係者。この場合でも、応召義務の規定が医師法にあるため、診察を断れないという。
    「民間企業なら、『料金を払っていない』と断れるのですが、そこがつらいところです。医療費は数万~数十万円と額があまり大きくならないので、訴訟経済に合いません。小額訴訟の制度はありますが、事務的に大変です」(前出の病院関係者)

近ごろでは医療に限らない話のようですが、病院にやってくる患者の中には「クレーマー」とか「モンスターペイシェント」とか呼ばれるにふさわしい人達が一定割合で存在していることは確かですし、スタッフと患者の間で何らかのトラブルが発生することは珍しくはありません。
これらの言葉の詳細な定義は本稿の目的でもなく省きますが、明らかに社会性を欠いた問答無用のモンスターから、たまたま担当者と折り合いが悪かったのか突然クレーマー化する例、あるいは何らかの疾患に由来するのでは?と推察される場合など個々の事情は様々ながら、共通する問題点としてはトラブルが発生すれば病院業務が滞ることです。
そうした人々がやってくるのは日中と夜間・時間外救急とを問わないはずなのですが、特に時間外救急における例が印象強いのはスタッフが手薄でイレギュラーな状況に普段以上に手間を取られるからという側面も大きいのでしょう。
何度も繰り返しますが時間外救急と言うものは夜間休日外来とは全く別物なのであって、コンビニが24時間営業しているような感覚で来院されても対応しかねるということを受診者の側も理解しなければなりません。

そもそも病院に来る患者はいずれも具合が悪いから来るのであり、一方で現代医療が何でも100%の治癒率を誇るなどという夢物語とは程遠いという厳然たる事実こそがこうしたトラブルの根本原因とも言えるのかも知れません。
つまり、ただでさえ罹患という事実に対して理不尽な思いを感じているところに必ずしも満足のいく治療結果が得られない、一体どうなっとんじゃこりゃ!と考えてしまうところまでは当たり前の人間心理と言うものです。
通常はそうした内面を率直に表現する以前に働く理性とか常識とか言われるような様々な抑制因子が存在しているわけですが、何らかの事情でそのたがが外れたり元々締め付けが緩いという場合にトラブルになっていくのでしょう。
そうした脱抑制を来す原因として知られている幾つかの疾患があって、こうした病気を患っている患者さんは総じて共通のキャラクターを有していることが現場では広く知られていますし、慣れてくると診察室でのやり取りから「ははん、この人は○○○持ちなのかな」と推察できる場合も多いのですが、まあそれは余談です。

先にも言ったように日中でトラブル担当者などが在院している場合はそちらに丸投げすれば問題ないわけですが、医師一人に看護師一人という夜間救急では一人トラブった瞬間に業務が完全にストップしてしまうわけです。
例えば先の記事で言うところの「夜間救急外来の待ち時間が長い上、医師に『症状が軽い。今後は考えて(救急に)来てくれ』と言われた」という例で言えば、待ち時間を長くしているのはまさしく患者自身の行動なのだとも言えると思います。
逆に言えば救急医療のスタッフが充実していたならばこうしたトラブル自体が少なくなっていたかも知れないし、当然それは患者待ち時間の減少にもつながり、ひいては医者やスタッフの労働環境を改善し逃散や救急崩壊といった現象を防ぐという効果が見込まれる可能性があるわけです。
そして今まで述べてきた通りこの状況が今後悪化することはあっても改善する望みは乏しいわけです。
明らかに需要に対して供給過少な現在の医療現場を利用しようとするならば、満員電車に乗ったときのアナウンスにあるところの「皆様どうぞ奥にお詰めください」の精神が患者の側にも必要だと言うことです。

こうした受診者側の当事者意識がようやく現れてきたかと感じさせられるニュースが最近話題になりました。
崩壊寸前だった兵庫県丹波市の県立柏原病院小児科を守ろうと、地域住民が「自分たちは何をすればよいのか?」を考え行動に移したのです。

地域で小児科救急を守る取り組み

7歳未満の子どもの救急搬送数は、全国で年間およそ30万件にのぼる。しかし、その8割近くは緊急性のない軽症だ。
「救急は不採算部門なので『奉仕の心』で成り立っているけど、それだけでは現実問題として難しい。やってあげたい気持ちはあるが、できなくなってきている・・・」

そんな状況の中、去年、子どもの時間外救急患者が激減した公立病院がある。
兵庫県丹波市にある県立柏原病院。一次救急から入院・出産まで受け入れているが、小児科医はたった2人。しかも、1人は院長。実質1人で全て診なければならない状態だった。

『柏原病院の小児科を守る会』。子どもを持つ母親らで作る、丹波市の住民グループだ。
【柏原病院の小児科を守る会代表 丹生裕子さん】
「先生たちが困っているのを知って、何か役に立ちたいと・・・」

おととし、3人いた小児科医が2人に減り、柏原病院の小児科は危機的状況に陥った。
このままでは、小児科がなくなる。それを知った母親たちが、「柏原病院にお医者さんを呼ぼう」と署名活動をしたのが始まりだった。
しかし、日本中で小児科医が不足する中、医者は来なかった。
小児科を守るには、自分たちが変わるしかない。守る会は、地元住民に向けてメッセージを発信した。

(1)コンビニ受診を控えよう
「微熱がある」「薬が欲しい」と、ちょっとしたことで夜間・休日に病院に行くことを避ける。

(2)かかりつけ医を持とう
近所のお医者さんや診療所に『かかりつけの医者』を持ち、まずはそこで診てもらう。

(3)お医者さんに感謝の気持ちを伝えよう
医者だって人間。気持ちよく診察してもらうためにも、「ありがとう」の気持ちを言葉にする。

講演会などを通じて呼びかけたメッセージは、地元メディアにも取り上げられ、母親たちの間に着実に広がっていった。
活動の成果は、数字になって表れた。
柏原病院小児科では毎月100件近くあった時間外の患者数が、40件程度まで激減したのだ。

この場合幸いだったのは、行政側も適切なタイミングで適切なサポートを行うことが出来たということでしょう。
ともすれば地域医療に対する行政の対応は医師招聘など即物的側面に偏りすぎてきたきらいがあったと思うのですが、この場合は一見遠回りな方法が時期を得て予想以上の効果をもたらした一例と言えるのではないでしょうか。
率直にいってこういう小回りの利く仕事も出来るのだなと、個人的に公務員というものを見直すところ大なのですが(笑)。

医療守る市民活動支援 丹波市が新制度

 丹波市は本年度、地域医療をテーマに講座を開く市民グループなどを対象に、経費の一部を補助する制度をスタートさせた。勤務医不足など地域の医療機関が抱える問題への理解を深めてもらうのが目的で、「市民主体で医療体制を守る運動の広がりを支援したい」としている。(仲井雅史)

 同市内では、地域医療の中核を担ってきた県立柏原病院や柏原赤十字病院で勤務医不足が急速に進行し、深刻な問題となっている。

 市は病院への支援を進める一方、勤務医の負担を減らすため、市民に対して開業医の「かかりつけ医」を持つことや、緊急性がないにもかかわらず診療時間外に訪れる「コンビニ受診」を避けるよう広報誌などを通じて呼び掛けてきた。また、子育て中の母親らが「県立柏原病院の小児科を守る会」を結成し、医師の負担軽減を呼び掛けており、市はこうした市民主体の活動を後押しすることにした。

 「地域医療市民講座補助金」として百五十万円を計上。地域医療に関する講座を開く自治会や婦人会などの団体を対象に、五万円を限度に講師への報償費など経費の一部を補助する。二十人以上の受講者が必要で、市の啓発資料をテキストに使うことが条件。開催の十日前までに申し込む。市地域医療課TEL82・4567

失礼ながら兵庫県下の公立病院と言えば医師の赴任先としては決して高い評価を得ている場所ではありません。
以前にも書きましたように医局という地域病院への医師派遣システムを破壊した結果なにが起こったかと言えば、こうした地域の不人気病院には全く医師が集まらなくなってしまったと言うことなのですね。
医師が集まらない、あるいはより良い待遇を求めて辞めていく、残った医師には更なる負担が増しますます退職者が続出する、典型的な地域医療崩壊のパターンです。
近ごろではよく「○○病院に医者を!」なんて署名活動が新聞紙面を飾るようになっていますが、こと医療崩壊問題に関して言えばハッキリ言ってああした署名活動ほど無意味なものはないと言いきってしまってよいと思います。
医者が逃げていくのは署名が足りなかったからではなく現実的な問題によるものなのであって、医者が集まる病院にも医者が逃げていく病院にもそれぞれに理由があってのことなのですから、問題点を改善しない限り医者が戻ってくることはありません
そうした意味で柏原病院に起こった活動は、地域医療のみならず今後の医療における利用者側たる国民の役割を考えていく上で極めて大きな意味を持っていく可能性があると思いますね。

「住民が奇跡起こした」 小児科医が着任 丹波市

 医師の負担軽減を目指す丹波市の母親グループの活動に共感した小児科医の石井良樹さん(32)=伊丹市出身=が、岡山県内の大学付属病院から同市柏原町の兵庫県立柏原病院に転勤を希望し、四月から常勤医として働いている。兵庫県病院局によると、他府県の大学医局を離れ、県内の地方に進んで赴任するのは極めてまれという。石井医師は「勤務医の負担を考えた地域は全国でも珍しい。住民の動きに応えたかった」と話す。(小林良多)

 診察時間外に小児救急に訪れる患者は、全国的に約九割が緊急度が低い軽症とされる。柏原病院小児科は丹波地域の中核だったが、医師が三人から二人に減った二〇〇六年四月から危機的な状況になり、〇七年四月から一般外来を紹介制にし診察を制限している。

 勤務医が疲弊する様子を知った母親たちが〇七年四月、「県立柏原病院の小児科を守る会」を結成。症状を見極めて病院を利用するよう住民に呼び掛けた。病院間の輪番制の徹底にこの運動が加わり、小児救急利用者は半減。先駆的な取り組みとして注目された。

 昨年夏、インターネットで住民の活動を知った石井医師は、同病院に「会の活動は極めて意義がある」とメールを送信し、見学に訪れた。軽症患者が夜間に列をなしたり、患者の親が必要性の低い点滴などを執ように求めたりすることが多い中で、この地域では住民も医療を支えていることを実感した。大学病院を出るタイミングと重なったこともあり、転勤を決めた。「ここ数年の医療関係の話題は、患者のたらい回しや訴訟ばかりだった。地域の取り組みで心が救われた」と話す。

 同病院小児科の和久祥三医師(41)は「自ら医師がやってきてくれたことは、地域に勇気を与える。住民が奇跡を起こしてくれた」と喜んでいる。

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