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2008年8月13日 (水)

【医療崩壊番外編】 8月20日は何の日? その一

前回の「救急医療、崩壊!? その四」の続きを書く予定だったのですが、時期的な問題もありまして今回は少し別な話になってしまいました。

のっけからいきなり疑問文で始まった今回ですが、さて皆さんは「平成20年8月20日」と聞いて何を思い浮かべるでしょうか?
五輪あたりで何かしらがあるのかも知れませんが、不肖管理人はそのあたりのスケジュールの詳細を知りませんのでコメントは差し控えます(汗)。
それはさておき、今回是非とも取り上げたいのはまさにこの8月20日に刑事裁判の判決が予定されている「大野病院事件」についてなのですね。
医療界のニュースに多少なりとも関心がある人であれば知らぬ者はないとまで言われるこの事件、まずは二年あまり前の第一報から振り返ってみましょう。

帝王切開で出血死、福島県立病院の医師逮捕

 福島県警富岡署は18日、同県大熊町、県立大野病院の産婦人科医師加藤克彦容疑者(38)(大熊町下野上)を業務上過失致死と医師法(異状死体の届け出義務)違反の疑いで逮捕した。

 医師が届け出義務違反で逮捕されるのは異例。

 調べによると、加藤容疑者は2004年12月17日、同県内の女性(当時29歳)の帝王切開手術を執刀した際、大量出血のある恐れを認識しながら十分な検査などをせず、胎盤を子宮からはがして大量出血で死亡させた疑い。また、医師法で定められた24時間以内の所轄警察署への届け出をしなかった疑い。胎児は無事だった。

 医療ミスは、05年になって発覚。専門医らが調査した結果、県と病院側はミスを認めて遺族に謝罪。加藤容疑者は減給1か月の処分となった。
(2006年2月18日  読売新聞)

業務上過失致死および医師法(異状死体の届出義務)違反の疑いで逮捕したという点と、最後の一文「専門医らが調査した結果、県と病院側はミスを認めて遺族に謝罪」という点について留意ください。

その後今日に至るまで公判等も含めて、この事件について極めて多くの情報が集積されてきました。
事件の経緯についてはあちこちのサイトでまとめられていますが、ここでは代表的な二つを紹介させていただきたいと思います。
まずはいつも大胆なプレゼンテーションで医療問題にするどく切り込んでいらっしゃる農家こうめさんのサイトから非専門家視点でのまとめを。

☆医療問題を注視しる!その3 大野病院事件☆

そしてもう一つはかの高名なるサイト「ある産婦人科医のひとりごと」から、少しチェックが大変なのですが専門家の視点から極めて詳細な一連の記事を。

福島県立大野病院の医師逮捕事件について(自ブロク内リンク集)

さて、現場で診療に従事する臨床医の逮捕というキャッチーなネタだったためか、この事件は当初からマスコミ各社の注目を集めました。
福島県警にとってもこの逮捕はよほど誇らしい出来事だったのか、マスコミ各社の居並ぶ中を診療に従事していた加藤医師を連行するという華々しい逮捕劇が繰り広げられ、実際に捜査にあたった富岡署にはこの一件によって福島県警本部長賞が贈られているほどです。
しかし何よりもこの逮捕は全国の医師達の注目を集めることただごとではなく、産科以外の他診療科も含めた多数の医師団体から相次いで抗議声明が表明されるという異例の事態となったことに注目しなければなりません。
ブログや2ch等での反共も極めて大きく、集められた抗議の署名はわずか一週間で六千を超え、ネットと実社会とを問わず加藤医師支援のための運動が広がりました。

こうした過程で幾つかの興味深い現象が発生してきています。
まず一点として、マスコミの報道が次第に当初のものから変化してきたということです。
まさしくこの事件も一つの大きな契機として医療崩壊という現象が表面化してきたとも言えるわけですが、ちょうど社会的に医療崩壊が注目されはじめた中で改めてこの事件の存在感というものがクローズアップされるようにもなってきたと言うことです。
たとえば最初期の報道から眺めていきますと、医療界の広範かつ迅速な反応を報じる一方で検察の反論や検察批判に対する逆批判的な声も結構取り上げられていて、このあたりは奈良・大淀病院事件などと少なからず共通するものを感じます。

(上)医療ミスか難症例か (2006年3月11日)

 一方、事故調査委員会が「癒着胎盤の無理なはく離」を事故の要因の一つとし、医療ミスと認定しているのは明白な事実。「医療事故情報センター」(名古屋市)理事長の柴田義朗弁護士は「あまり情報がないまま、医者の逮捕はけしからんという意識に基づく行動という気はする」と指摘する。

 片岡康夫・福島地検次席検事は10日、逮捕や起訴の理由について説明し、「はがせない胎盤を無理にはがして大量出血した」とした上で、「いちかばちかでやってもらっては困る。加藤医師の判断ミス」と明言。手術前の準備についても「大量出血した場合の(血液の)準備もなされていなかった」と指摘した。

この「いちかばちかでやってもらっては困る」の名言で一躍全国区の人気者となった片岡康夫検事の活躍もあって、その後の医療界はますますヒートアップし加藤医師支援活動を活発化させていくことになるのですね。
なにしろ全国の医師団体が一斉に立ち上がるということ自体ちょっと前例のない異例の事態ではあるわけで、マスコミとすればネタになるから報道する、そして報道するために更なるネタを探すことになるわけです。
その結果としてでしょうか、「あれ?何かちょっといつもの医療ミスとは違うんじゃないの?」といった空気が次第にマスゴミ内部にも広がっていったことが、当時の報道を追っていた我々外野からも推察されたものでした。
なにしろ普段は一方的な医療バッシングが三度の飯より大好きなワイドショーですらいつの間にか「いや実はこの事件はですね」などとしたり顔で語り始める始末。
そもそもこうした事件で医療側の声が取り上げられるということ自体がこれまでは極めてまれであったわけで、ついには「黒岩祐治のメディカルリポート」のような自己批判的な報道まで登場したことについてはまさに隔世の感がありました。

検証!医療報道の光と影2~大野病院妊婦事件 メディアの功罪 ( その1 / その2 / その3 )

そしてもう一点の興味深い現象ですが、このマスコミ報道の変化とも関連してか、医療の受益者たる市民の間で医療崩壊、特に産科医療崩壊への関心が高まり始めたことです。

これには二つの面があって、一方では「自分たちの医療は自分たち自身で守る」という市民運動的な側面が一つ。
これにはたとえば「周産期医療の崩壊をくい止める会」に代表されるような医療関係者主体の組織が先頭に立って、熱心に旗振りを始めたという点も確かに一つの理由ではあったでしょう。
しかし実際問題として全国的にお産を扱う医療機関が雪崩を打ったような減少傾向を示す中で、ついに市民の間にも危機感を覚える者が出始めたとい点も決して見逃すことはできません。
皮肉な言い方をするならば、医療崩壊という現象はまさにその最大のターニングポイントを通り過ぎた瞬間から、医療関係者と市民、さらにはマスコミ、政治家といった諸集団が等しく危機感を共有する問題となったとも言えるかも知れません。

市民の関心の高まりと言う点でもう一つの変化は、残念ながら必ずしもポジティブなものではないかも知れません。
この一例としてここでは利用者参加型のオンライン辞書wikipediaにおける編集合戦を取り上げてみたいと思いますが、たとえばこの「医療崩壊」の記事。

医療崩壊@wikipedia

随時書き込み可能であることがウリのwikipediaですが、現在この記事に関しては書き込み禁止となっています。
いったい何があったのかと舞台裏を見てみますと、こんな感じに編集合戦になっていたのですね。

ノート:医療崩壊@wikipedia

ここで名前が出る個人、団体につきましては特にこの場で言及するつもりはありませんし、実際のところその名前通りの存在であるのかどうかすら確認はできません。
しかしながら医療問題を追及していく上で今後もあちこちで目にする機会があるかと思いますので、記憶の片隅にとどめておいていただければと思います。

長くなりましたので今回はこのあたりで終わりにして、近日中に次回に続く予定です。

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コメント

ご挨拶が遅れました。ご紹介とトラックバックありがとうございます。
注視しる!シリーズは基本的にネタサイトなので、代表的とされてしまうと非常に恥ずかしいものがあります(^^;先日、なんだか真面目そうな論文の参考サイトとして挙げられている例も見ていて、嬉しくなくはないのですが、なんだかなあと言う感じです(笑

投稿: koume | 2008年8月13日 (水) 21時33分

わざわざのご挨拶恐縮です。いつもお世話になっております(笑)。
むしろこの場合はネタである、門外漢であるということに意味があると私は考えております。
専門教育とそれに基づく情報量とは問題の理解の助けになるのはもちろんなのですが、理解に必須であると言うわけでは決してないという一つの実例でしょう。
医療問題に限らず一番の当事者が最大の理解者でなければならないのは当たり前で、国民一般はもっと当事者意識を持たなければならないのではないかなと思うところです。

投稿: 管理人nobu | 2008年8月14日 (木) 08時08分

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